キャリアのスタートは研究者。コーディングの楽しさに突き動かされ輝かしいキャリアを築いてきたAkiさんの歴史を紐解く
みなさんこんにちは!FrogメンバーのHiroshiです。今回インタビューに応じてくださったのは、現在Treasure Dataという会社でStaff Software Engineerとしてご活躍中のAkiさん。キャリアのスタートは研究者として東芝に勤められていました。その後Cookpadに転職し、副菜レコメンド機能の開発に貢献。その後はClouderaという会社での勤務を経て現在に至ります。エンジニアであれば誰もが二度見するような素晴らしいキャリアの持ち主ですが、Akiさんは更にオライリーから書籍も出版されています。
バンクーバーに来られてから約2年が経過したAkiさん。インタビューの中では、キャリアに関するお話に加え、子育ての観点から見たバンクーバーという街に対する感想、そして今からエンジニアを目指す人に対するアドバイス等もお聞きしています。
新米エンジニアの私としては、Akiさんのお話を聞けるのは非常にありがたい勉強の機会でした。そこで学んだことを読者の皆様方にも還元できるよう、今回も精一杯記事を書きましたので、是非最後までご一読ください!
記事の最後では、Akiさんオススメの書籍についてもご紹介しています。
このインタビューは一部、以下のYoutube動画、Podcastを前提にしていますので、先にこちらをご視聴頂くとよりわかりやすいかと思います。
- ML Career Lounge #2「海外をフィールドとして選ぶ」 (Youtube動画)
- Treasure DataでStaff Software Engineerとしてバンクーバーで働くAkiさん (Podcast)
転機となった、東芝研究所でのプロダクト開発経験
Hiroshi: 本日はよろしくお願い致します!Akiさんのことを事前に色々と勉強させて頂いたんですが、自然言語処理と機械学習の専門家…というイメージで合っていますか?
Aki: かつてはそういう感じだったんですが、ここ最近はNLP (Natural Language Processing, 自然言語処理) とML (Machine Learning, 機械学習) はあまりやってないんですよね。今はマーケター向けのデータプラットフォームに関する仕事をしているんですけど、そのプラットフォーム向けに、データパイプライン生成の為のサーバーサイドのコードとかを書いています。主にRailsを使ってますね。
Hiroshi: そうなんですね!マネジメント系のお仕事が多いのかと思ったら、結構現役プレイヤーって感じでコードを書かれているんですね。
Aki: そうですね。IC (Individual Contributor, 非役職者) として働いています。
Hiroshi: キャリアのスタートはは東芝の研究所で、NLPと音声対話に関する研究開発をなさっていたんですよね。そこで、テレビの字幕からシーン分類をするという商品を開発されたとのことですが、エンドユーザーに使われるプロダクトを作る経験が、研究職からのキャリアチェンジするきっかけとなったんでしょうか?
Aki: はい、そうですね。研究所って、いろんなタイプの人がいるんですよ。理論的なことを突き詰めていきたいっていう人もいれば、物を作るのが好きっていう人もいるんです。自分の場合は当時、動く物を作って誰かに届けて喜んでもらう、みたいなことが面白いと感じてたんです。
Hiroshi: 大学もコンピューターサイエンス系の学部に通われてましたよね?
Aki: そうですね。電気系のものでしたが。
Hiroshi: 大学でエンジニアリングを学ばれていた時は、今のようなマーケティング寄りのエンジニアではなく、研究者として生きていくような将来像があったのでしょうか?
Aki: 研究者になるっていうのは実はあんまり考えてなかったんですよね。当時大学研究室に入ったものの、解くべき問題もわからなければ答えがあるかもわからない世界でもがくのが結構辛いな…って思い始めていたんです。メーカー系の研究所だともっとプラクティカルなことをやれるかなと思い、東芝の研究所を選んだという感じです。
Hiroshi: なるほど、そうなんですね。そこからCookpadに転職されたとのことですが、テレビ字幕の件と同じく、よりユーザーに近いプロダクトに携わりたいというモチベーションでのことだったのでしょうか?
Aki: そうですね。当時、コードを書くこと自体が楽しいという気持ちが結構高まっていたんですが、研究所では、コードを書くことよりも特許や論文と向き合うことのウエイトの方がでかいんですよね。コードを書くことは「やるのはいいけどそんなに大事じゃないよね」みたいな認識のされ方なので、そこのギャップが自分の中で大きくなっていったんです。
Hiroshi: なるほど、そのギャップは無視できませんね。
Aki: あとは、研究所は事業部門ではないので、自分の作ってるものが世に出るかどうかはわからない…というか、ほとんどの成果は製品として世に出ないんですよ。笑 世に出るには、めちゃくちゃ長い承認プロセスの中で偉い人にハンコをもらい続けるという戦いに勝たないないといけないので。
Hiroshi: 組織が大きくなるとどうしてもそうなっちゃいますよね。
Aki: 先程話に上がったテレビの字幕のやつは、たまたま事業部門の人から依頼されたものと自分たちが実現できることが上手く合致したんですよね。そういう巡り合わせがないと、世に出るプロダクトにいつ携われるかわからないことが多いです。
Hiroshi: なるほど。エンドユーザーに使ってもらうまでとても長い時間がかかるんですね。
Aki: そうですね。研究所でも、作ったものを通じて論文を書いたりとか、その論文で賞が取れたりするまでのサイクルはもうちょっと短いんですが、エンドユーザーに使ってもらうのはその更に先なので。
Hiroshi: 当時、Akiさんの周りで研究職からプロダクト側のエンジニアに転向される方って他にもいましたか?
Aki: 当時は、かなり少なかったですね。ただ、僕が転職した後何年かしてから結構出ていってる気がします。当時の同期の中には今日本のウェブ系の企業に務めている人もいるので。特にデータ系とか機械学習系が流行り出してからその流れを辿る人が増えた気がしますね。
Cookpadへの転職、副菜レコメンド機能の開発
Hiroshi: なるほど。研究所から、自社プロダクトを持ってるような企業に転職するという流れですね。確かAkiさんがCookpadに転職された時って、「どこでも好きなところ選んでいいよ」ってエージェントに言われたんでしたっけ?笑
Aki: そうです。笑 当時ブログを書いていたんですが、「ブログの記事見ました!」ってエージェントからメールが来たんですよね。そんな見てくれてるんだったらちょっと話聞いてみようかな…ってホイホイついていったって感じです。笑
Hiroshi: 発信活動が功を奏した良い例ですね。自社プロダクトを持っている企業って、もちろん他にも色々あったかと思うんですが、その中でCookpadを選んだ決め手は何だったんですか?
Aki: 私は当時Rubyコミュニティを立ち上げるくらいRubyに熱があったんですが、当時のCookpadってRubyの界隈では日本の中でもトップクラスにすごい人たちが集まってるっていう認識だったんですよね。Chad Fowlerが ”The Passionate Programmer (情熱プログラマー)” の中で言っていた “Be the Worst. (一番の下手くそでいよう)”という格言に従いました。
Hiroshi: なるほど。そこで副菜のレコメンド機能を開発なさったんですよね。
Aki: そうですね。他にも色々やってました。基本的にはRailsでいろいろ書いていたんですが、当時はフロントエンドとバックエンドが分離されていなかったので、CSSもHTMLテンプレートもJavaScriptも書いて…みたいな感じで機能開発をしてました。
Hiroshi: 大変そうだ… 確か、この副菜レコメンド機能開発の話はAkiさん発信だったんですよね。
Aki: そうですね。ユーザーは何を欲しがっているのか…ということを色々議論していた時に、自分が普段の生活で解決したいと思ったことを言ってみたんですよ。自分は料理がめちゃくちゃ得意というわけではないので、週末に子どものご飯を作ってあげた時とか、毎週同じ主菜にしがちで副菜選びに困ることが結構あったんですよね。
Hiroshi: なるほど!そうやってエンジニアの提案から商品が生まれるっていうのはとても素敵な話ですね。
Aki: Cookpadって、エンジニアだからどうこう、っていう線引きみたいなのは結構薄いんです。お客さんの価値になるものは何だろう、っていうのを日々みんなで議論して進める文化なんですよね。Webディレクターとか、企画職の人も巻き込みながら。なので、多少のグラデーションはあれど、エンジニアのアイデアもいっぱい取り入れられていました。
Clouderaへの転職、書籍執筆
Hiroshi: なるほど!そこからClouderaという会社に転職されたとのことですが、Cookpadには合計で何年くらいいらっしゃったんですか?
Aki: 確か、3年いかないぐらいだったと記憶しています。
Hiroshi: Cookpadでそういった大きい仕事をされて、とても充実していたような印象を受けるんですが、そこからClouderaへ転職を決めるまでには、どういう経緯があったんでしょうか?
Aki: その頃、データとか機械学習とか、その辺を生かした仕事がしたいな、という風に思ってたんです。先ほどもちらっと話にあがりましたが、当時はバックエンド・フロントエンドが分かれてなかったので、プロダクトに関することを全部やってたんですよね。そんな中、なんかこう、CSSをモック (デザイナーが作成する試作品) 通りに細かく書いたりするのが自分はあまり好きじゃないな…ということに気がついたんです。笑
Hiroshi: そこは確かに、適性がものを言う印象はあります。笑
Aki: もうちょっとデータ寄りの部分にフォーカスできるような道はないかなと探していたんですよね。その辺りから、機械学習とか、データを活用してそれをビジネスにする、みたいなことに対する興味が強くなってきまして、それが転職の理由としては大きかったかなと思います。
Hiroshi: なるほど。非常に筋の通ったお話ですね。
Aki: あとは、Clouderaは本社がアメリカなので、ワンチャン海外に行ける道をつかめたらいいな…みたいなのも選んだ理由の一つでしたね。
Hiroshi: とすると当時は、アメリカ大陸に本社があってかつ、データを使ってビジネス展開してる…みたいな感じの軸で色々な会社を見ていたというイメージですか?
Aki: 基本的にはそうなんですが、Clouderaには知り合いがいたんですよね。Podcastでも話したかも知れないんですけど、Ingress (Niantic社のゲーム: https://www.ingress.com) でつながった仲間の一人です。笑
Hiroshi: これがあの話の時なんですね!かなりガチでやられてたという笑
Aki: ガチでやってました。笑
Hiroshi: なんか、こういうソフトな繋がりから実際の仕事につながるっていうのは、アメリカらしいですね。
Aki: Ingressって、地域ごとにプレイしていくゲームなんですけど、その過程で自然発生的にコミュニティができていくんですよね。そこで中心となってコミュニティマネジメントをやっていく人たちが何人かいて、僕とその知り合いがどちらもその一員だったという背景があります。
Hiroshi: なるほど、とすると、純粋にゲームというよりは、割とプロフェッショナルなコミュニケーションが発生しそうな文脈ですね。
Aki: そうですね。コミュニティ内でトラブルが起きたりもするんですけど、そこでのやり取りとかを見て下さっていたみたいで。
Hiroshi: そういう文脈だと、どういう働き方をする人かがちょっと見えてきそうな感じですね。オライリーで書籍を出版されたのは、Clouderaにいらっしゃった時期ですか?
Aki: そうですね。あれは元々は、Cookpadの時代に知り合いを通じて別の会社の編集者さんを紹介してもらったんですよ。ただ僕が転職してから、書き続けるのがちょっと難しくなって一旦保留になりました。
Hiroshi: 転職を挟むと確かに難しそうですね。
Aki: そこからその話はしばらく寝かせてたんですけど、ある時に技術書典 (技術書の同人誌を展示即売するイベント) で出そうってまた動き出したんです。ボツ原稿を集めたりしながら。それをベースにしてちゃんと本にしたいんですけどどうですか、っていう話をオライリーの人にして、正式な出版に至った…という背景です。
Hiroshi: 元々はCookpadの頃に始まったお話とのことですが、その時にAkiさんに声がかかったのは、Akiさんが当時なさっていた発信活動を見られてのことだったんでしょうか?
Aki: 「10年戦えるデータ分析入門」という本を書いた青木峰郎さんという方が当時同僚にいらっしゃって、
当時はそのシリーズでどうですか、という形で始まりました。
Hiroshi: 正式な出版の1冊目は確か、機械学習に関する本ですよね?
Aki: 内容としてはそうですね。
Hiroshi: 今までで合計何冊ぐらい書かれてるんですか?
Aki: 僕が本として出しているのは「仕事で始める機械学習」という本1冊で、あとはn月刊ラムダノートという雑誌に機械学習系の記事を1つ寄稿しました。そのくらいですね。本はおかげさまでだいぶ売れました。笑
Hiroshi: そうなんですね!笑 本を書くことって、僕からすれば全然想像できないような分野なんですけど、プロセスとしてはどのくらいの時間がかかるものなんですか?
Aki: 僕の場合は、1回保留になった後同人誌プロジェクトに変わって、その後オライリーで…と紆余曲折あったので、合計の時間としては2年くらいはかかってるんですけど、実際に書く作業をしていたのは1年くらいですかね。
Hiroshi: それってもちろん、プライベートの時間を使って、ということですよね。
Aki: そうですね。仕事終わって帰ってから書くとか、週末奥さんに頭を下げて書くとか笑、そんな感じでしたねー。
Hiroshi: それは大変そうですね…。僕技術同人誌っていう概念を知ったのが結構最近なんですが、自費出版みたいなイメージですよね?
Aki: 実態は近いですね。ただ同人誌の場合は「販売」でなく「頒布 (はんぷ)」という言葉を使っていて、儲けのためにやるというよりは好きな人間に配る、というような建て付けですね。
現職Treasure Dataへ転職、バンクーバーへ
Hiroshi: なるほど。そしてClouderaでは2年くらい在籍され、そこから現職のTreasure Dataへ転職と。これは、海外リロケーションの制度があるかどうかという基準で決められたんでしたっけ?
Aki: そうですね。本社がドイツにあるスタートアップとか、色々受けてたんですけど、基本的にはリロケーションができそうなところに絞って受けてました。
Hiroshi: Treasure Data入社時には、バンクーバーをリロケーション先にしようと既に狙いを定めていたんですか?
Aki: その時はまだ決めてませんでしたね。なんとなく北米がいいかなっていう考えはあったので、最初はアメリカにリロケーションしようかなー、ぐらいの感覚で入った感じです。
Hiroshi: なるほど。今は働き始めてもう6年目くらいですかね?リロケーションの話はいつ頃から出始めたんですか?
Aki: その話自体は、最初の面接の時に人事担当の人に言ってたんですけど、その後その人事担当の人が辞めちゃって、全然そんな話知らんかったわって一旦なりました。笑
Hiroshi: せっかくの事前交渉が…笑
Aki: 今のCEOである太田さんがCTOだった当時、僕は彼の直下でML系の仕事をしていて、入社してから半年くらい経った頃彼に「リロケーションしたい」という旨を伝えたんですね。
Hiroshi: ほうほう。その時の返答はどうでした?
Aki: すると「一定の成果を出して、リロケーションの根拠となるような推薦状を書けるようになったら可能です」という返答がきまして。それでとにかく頑張ったって感じです。
Hiroshi: なるほど、それで実現できたのは素敵ですね!会社がリロケーション許可の判断を下すための材料になったAkiさんの功績はなんだったと思われますか?
Aki: やっぱり大きめの機能をリリースするのに貢献したという実感はありますね。あとは、Treasure Dataのプラットフォームの上でワークフローを動かすDigdagというプログラムがあるんですが、その機能拡張に貢献したのも大きかったと思います。
Hiroshi: それは具体的にどのような拡張だったんですか?
Aki: 従来はSQLを使って処理をするものだったんですが、ユースケースを広げる為にPythonも動かせるようにしたんですよ。そのアップデートに色々貢献しましたね。その後も、ML系のユースケースだったらこういうことができるよ〜みたいなことをワークショップで社内に広めたり…もうなんか何でもやってたって感じです。笑
Hiroshi: ここにきてAkiさんの専門分野が再登場しましたね!素晴らしい!そこまでやってると社内での影響力もかなり強くなりそうですね。その辺りのことは、MLのチーム内でなさっていたんですか?
Aki: そうですね。ただ、そのチームは僕が入社してから2年くらい経ったころに解散しました。
Hiroshi: そうだったんですか!今の肩書はStaff Software Engineerのようですが、その解散後にML系から肩書が変わったんですか?
Aki: いえ、入った時から肩書はStaff Software Engineerでしたね。
バンクーバーでの生活・子育て
Hiroshi: そこから晴れてバンクーバーにリロケーションして今2年くらいが経った頃かなと思うんですが、今はもうPR (永住権) は取られているんですか?
Aki: はい、もう持ってます。2022年の12月に取得できたので、リロケーションから1年8ヶ月くらいかかりましたね。申請の手続き自体は2021年の夏頃に始めて、BCPNPとかを経て実際に申請できたのが2021年の11月末とかそれくらいだったように記憶しています。
Hiroshi: 申請費用はもちろん会社負担ですよね?
Aki: そうですね。費用以外でも、プロセスの中で、書類の提出等で会社に協力してもらわないといけない場面はたくさんありました。
Hiroshi: バンクーバーで2年という期間を過ごされた感想はいかがですか?
Aki: 基本的にはポジティブな感想をもっています。まず子どもと一緒に住むには良いところだな、と思いますね。ちょっとしたハイキングをする場所なんてほんとにたくさんあるんで、自然と触れ合う機会がたくさんあるところはとても好きです。
Hiroshi: おっしゃる通りですね。自然の身近さは最大の魅力の一つです。
Aki: 犬も飼っているんですが、こっちってリードなしで犬が走り回れる公園が結構あるじゃないですか。それも良いですよね。
Hiroshi: こっちでみるワンちゃんはみんなとても幸せそうだといつも思っています。笑
Aki: こないだ2年ぶりくらいにRuby会議とかその他のカンファレンスに参加する為に日本に帰国したんですけど、ものすごい人口密度の差を感じましたね。笑
Hiroshi: あの国土の大きさで1億3,000万人くらいが住んでる日本はほんとにミラクルですよね。笑 自然との触れ合い、という話が出ましたが、その他に、バンクーバーが子育てに良い街だと感じる理由はありますか?
Aki: 多種多様なバックグラウンドの人がいるところですかね。小さい頃からそういう環境に身を置くと、多様性のある環境が当たり前になるので、それは良いことですよね。
Hiroshi: そうですね、ほんとに色んな国の人がいますね。
Aki: あとは、僕の子どもたちは「みんなこういう風にしてるからあなたもこうしなきゃだめ!」みたいなのが苦手なタイプだったんですよね。こちらではそういう風潮はあまりなく、自分の好きなようにやる、という雰囲気なんですよね。そこは子どもたちも気に入ってるみたいです。
Hiroshi: なるほど。バンクーバーらしいお話です。
Aki: 上の子は中学受験を回避したかったみたいなので、そういう理由もありますね。笑
Hiroshi: そういうのもあるんですね。笑 住む場所として、他に気になる国や街はありますか?ご家族がいらっしゃるので実現は難しいと思うんですけど、一旦その成約を差っ引いて、という意味で。
Aki: その話、ちょうどこないだこっちの友達ともしてたんですけど、みんな家賃以外はバンクーバーが気に入ってるっぽいんですよね。なので僕も今のとこはあまり他が思い浮かばないです…
Hiroshi: 家賃! 確かに。笑
Aki: 昔はヨーロッパに行きたいな〜とか考えたことがあったんですけど、やっぱり英語の通じる国じゃないときついな…というのを最近思いますね。今からドイツ行ってイチからドイツ語を覚えるのはちょっとしんどそうかなと。
Hiroshi: 確かにそうですね。
Aki: あと、やっぱりヨーロッパってアジア人の割合が少ないので、差別的に扱われることが珍しくない…というのも耳にするんですよね。そういうのを聞くと、バンクーバー以上に過ごしやすいところってそうそうなさそうだなぁと思うんですよね。アメリカと比較しても、似たような結論になりそうだなと思ってます。
Hiroshi: 概ね僕も同じような意見を持っています。カナダってアメリカに近いけど、アメリカよりは治安が良いですし、資本主義的な傾向も比較的薄いですよね。そこが多くの人が過ごしやすいと感じる理由だと思っています。
Aki: アメリカは…ちょっと違いますね。笑
エンジニアはAIとどう生きていく?
Hiroshi: もともとのAkiさんのルーツはNLP、MLの領域だと思うんですけど、今そこの領域って結構ホットになってきているイメージなんですよね。
Aki: そうですね。
Hiroshi: 未経験からエンジニアとして就職ってなると、大体その入口ってWeb系だと思うんです。もちろん僕もそうなんですけど。NLPとかMLの領域って、Web系エンジニアから転向する選択肢って考えられます?大学で結構がっつりその分野の学問を修めてないとキツそうだな…というイメージがあるんですが。
Aki: どうですかね。今のLLM (Large Language Model: 大規模言語モデル。ChatGPTに使われているGPT-4はLLMの一種) のブームと、僕が専門としていた頃のNLPとかMLはちょっと毛色が違うなと思っています。
Hiroshi: そうなんですか。
Aki: 今のLLMブームって、基礎的な研究をしている人を除くとGPT-4とかAPIを叩いてマッシュアップして…みたいな、今あるものを組み合わせて新しいツールを作る、っていう要素が強いと思うんです。それに対して、大学でしか身に付けられないような知識はそこまで重要ではないと思いますし、実際なくてもみんな全然飛び込んでますよね。
Hiroshi: 確かに…ほんと色んなところから新しいツールが出てますよね。
Aki: なので、入り口がWeb系だった人でも、その辺りの分野に参入することは全然可能なんじゃないでしょうかね。ただ僕はアイデア勝負が得意ではないので、そっち系にはあまり手を出してません。笑
Hiroshi: なるほど。ここ最近、AIに関するニュースを見ない日ってないかなと思うんですけど、技術がコモデティ化していくことを恐れているエンジニアってたくさんいると思うんですよね。そういう環境の中で、Akiさんが考える生存戦略みたいなのって何かありますか?
Aki: どうだろう。あまり戦うという感覚がないというのが正直なところなんですけど…笑 まあまずはそういうツールを自分で触ってみるのがいいんじゃないですかね。これはどこかで聞いた話の受け売りになっちゃうんですけど、知らないものってどうしても怖いじゃないですか。でも実際触って「今はこれぐらいのレベルなのか」っていう感覚が掴めると、その怖い気持ちって結構減ると思うんですよね。
Hiroshi: 確かに。
Aki: その辺の感覚を掴んだ上で、「便利な道具」として使う、っていう感覚で触れあえばいいんじゃないかという気がします。例えば、そろばんを使っていた人が電卓を与えられて「電卓なんて怖い!」って言ってたら変に感じるじゃないですか。(※本記事末尾に参考リンクあり)
Hiroshi: なるほど!おっしゃる通りです。
Aki: こういう目新しいツールが出てきた時は「ふーん、とりあえずこういうことができるのね」って感じで、まず使ってみるという風にした方が、変化には適応していきやすいんじゃないかな、と思いますね。
Hiroshi: 確かにそうですね。必要以上に恐れることはないと。
Aki: 今だとNotionにも手軽に使えるGPTベースのAIツールが含まれてますし、そういうのをアイデアの壁打ちに使う人もいますよね。GitHub Copilotも使ってる人増えてますし、色々触ってみて「こういうことができるんだ」という感覚を日々磨いていくのがいいんじゃないでしょうか。
Hiroshi: なるほど、おっしゃる通りです!Frogのサイト読者にはですね、エンジニアになるかどうか、あるいは海外に行ってみようかどうか迷っている、という方が結構いらっしゃるんです。そういった方々に対して、Akiさんから何かメッセージを頂けますでしょうか。
Aki: ソフトウェアエンジニアリングの分野では、学び続けないと知識が陳腐化していくという前提があるじゃないですか。そんな中で、何か一つでもいいから「これをやると楽しい」とか「こういうのを作ると面白い」と思えるようなものを見つけるのが重要だと思います。そうでないと継続しにくいですよね。
Hiroshi: そうですね。
Aki: 自分が欲しいと思うアプリを作ってみるとか、今流行りの生成AIを使ってこれを自動化してみようとか、何か自分自身の生活が便利になる、自分自身が嬉しくなるものを作る、という視点を軸に持ってもらえればいいんじゃないかと思います。そうすれば、新しいことが起きても、自分の視野をちょっとずつ拡張して、変化への対応・学習の継続がしやすいんじゃないでしょうか。
Hiroshi: 能動的な姿勢が重要ですね。
Aki: やっぱり、自分で手を動かした結果って、いちばん分かりやすいじゃないですか。そういうのを繰り返して、自分が楽しいと思えるポイントを見つけてもらえたらいいんじゃないかと思います。
Hiroshi: Akiさんのキャリアから子育てに関することまで、とても面白い話がたくさん聞けました。本日はお時間頂き本当にありがとうございました!
いかがでしたか?
ChatGPTを始めとするAIツールが世を席巻する昨今、NLP・ML界隈の専門家のお話は非常に興味深いものだったのではないでしょうか。私としても、とても良い学びの機会となったインタビューでした。
毎日大量に新しい情報が溢れ、自分の進むべき道に迷ってしまいそうになる世の中ですが、インタビューの中でAkiさんが繰り返しおっしゃったように、まずは何でも臆せずに自分の手を動かしてやってみる、ということが大事ですね。細かい判断をするのはそれからでよさそうです。
冒頭で触れた、Akiさんおすすめの本は以下3冊です!
同じく冒頭で紹介したYoutube動画の中でも、1:37:57頃から紹介されていますので、この3冊に関するAkiさんの想いにご興味のある方はぜひ動画もご覧ください。
- 人生で衝撃を受けた本:異文化理解力― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養 / E.メイヤー
- 英語の勉強で役に立った本:速読英単語 必修編 / Z会
- 自分の哲学に影響している本:岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。/ ほぼ日刊イトイ新聞
また、記事内で触れた「そろばんを使っていた人が電卓を与えられて…」という件について、似たトピックを扱ったWeb漫画をAkiさんが紹介してくださいました。
目頭が熱くなる作品でした…
ではまた次回のインタビューをお楽しみに!
AkiさんのLinkedIn / X(Twitter)
コメント