カナダで描くグローバルキャリアの構築、理想を現実にするAWS CanadaのYanoさん

日本で2年の業界経験を積んだ後、「いつか海外で働きたい」という思いを胸にカナダへ渡ったYanoさん。Frogに相談した当初はTOEICスコアも500点台、開発経験もわずか。それでも、海外挑戦を諦めず2023年にカナダへ渡航されました。
Yanoさんは渡航から約1年後、届いたのはAWSからのオファー。そしてYanoさんは先日インタビューさせて頂いたKotaさん同様、以前Frogで行われたAWS説明会を主導して頂いた方でもあり、YanoさんやKotaさんのAWSでの尽力があったからこそ、多くのFrogメンバーの未来に繋がりました。彼が先導してくれなかったら今がなかったという方もいらっしゃるでしょう。
英語力、職歴共に未完成だったYanoさんですが、日本から海外、そして今もさらに先を見据えるキャリアの物語には、「自分には無理かも」と感じている誰かの背中を押す力があるなと感じます。技術力・英語力・実務経験、すべてが不安だったと語りますが、それでも「まずはやってみよう」と一歩を踏み出したYanoさんのリアルな体験をお届け出来ればと思います!
Senna: 本日はよろしくお願いします。早速ですが、改めてこれまでのご経歴について聞かせてください。日本ではエンジニア経験がある状態でカナダに来られたかと思うのですが、業界歴は長いのでしょうか?
Yano: いえ、実務として開発をしていたのは日本で1年間です。その前に1年間、主にテスターとしてIT企業に勤務していまして、それを合わせるとIT関連の業界経験は2年になります。
Senna: カナダに来た時点で、業界経験としてはちょうど2年ほどになるんですね。
Yano: そうですね、2年です。
Senna: 2〜3年の業界経験で来られる方、多い印象です。Kotaさんも同じく3年ほどでしたし。
ということは、日本でのご経験としては、主にテスターやQA職がメインで、2年目から開発に移行されたという流れですね。
Yano: そうです。1年目はテスター、2年目はフルスタックで開発に従事していました。その後にカナダに渡航しました。
Senna: そういうことなんですね。そしてカナダに来てからはAWSで働かれているわけで……これはもう聞く人が聞いたら「えっ?」と驚くような経歴ですね。
Yano: そうですね(笑)。
文系から理系へ、営業からエンジニアへ
Senna: ちなみに学歴のほうですが、大学は早稲田大学でしたよね。専攻は理系だったんでしょうか?
Yano: 入学時は文系でした。ただ、学部内で文理が混在しているような構成で、最終的には理系寄りの専攻を選びました。
Senna: なるほど。大学卒業後、確かセールスとしてのご経験もお持ちでしたよね?
Yano: はい。4年間、営業として働いていました。
Senna: 何を売る営業だったんですか?
Yano: クリーニング関連のサービスを扱う会社で営業をしていました。
Senna: そこからエンジニアへと転向されたわけですね。
Yano: そうです。完全に未経験からの転職でした。
Senna: 自分が21歳のときにカナダに来たので、日本でのキャリアチェンジ事情って実はあまりよく知らないんです。未経験で営業からエンジニアって、どのくらい現実的なルートなんですか?
Yano: 正直、難しい部分もあります。自分の場合はうまくいきましたが、途中で断念してしまう方も多かったです。
Senna: カナダだったら、普通は大学に入り直したり、ブートキャンプやカレッジに通うのが一般的じゃないですか。ある意味「それなりの投資をしてキャリアチェンジする」というのが前提な気がします。日本での転職では、そこまでの壁は感じませんでしたか?
Yano: はい、日本では会社によっても異なりますが、何を開発したか、どんな技術力があるかという“プロダクト”が重視される傾向がありました。
それがきちんと証明できれば、キャリアチェンジも比較的スムーズに進む印象です。大きな投資をしなくても、自分の努力次第でカバーできる部分が多いですね。
独学とコミュニティで切り拓いた道
Senna: 気になるんですが、実際にエンジニア転向のためにどんな準備をされたんですか?
Yano: 最初は「副業でプログラミングでもやってみようかな」くらいの気持ちでした。本業の営業を続けながら、趣味感覚で始めたんです。
Senna: 「よくあるやつ」ですね(笑)
Yano: はい(笑)。ただ、思ったよりもプログラミングが楽しくて、これはもう本業にしたいと思うようになりました。
Senna: ブートキャンプや専門学校などは行かれましたか?
Yano: いえ、特にどこにも通わず、完全に独学でした。その中で、同じように勉強している方々とコミュニティで出会い、情報共有をしながら学習を進めていきました。
Senna: 素晴らしいですね。今やAWSにお勤めとのことで、転職セミナーとか開いたら大盛況になりそうな気がします(笑)。
Yano: そうかもしれませんね(笑)。
Senna: 独学しながらコミュニティを活用し、自分の開発実績を示せるものを作って転職活動をされたんですね。最初はフリーランスで案件を受けて……という流れだったのでしょうか?
Yano: いえ、実はフリーランスとしては活動していません。いきなり就活して企業に応募しました。
Senna: それはすごい。最初の1年目はテスターとして働かれていたということですが、その時はあまりプログラミングはやっていなかったんですよね?
Yano: そうですね。本当にゼロからのスタートでした。最初は「IT業界に入る」というのが目的で、そこから経験を積みつつ、プログラミングスキルも磨いていって、最終的には自社開発を行う会社に転職しました。
Senna: それがQAの後の会社なんですね。
Yano: はい、そうです。
Senna: 今はサポートエンジニアとして働かれていると伺っていますが、そのQA時代の経験も活かされているのではないでしょうか?
Yano: そうですね。最終的には役に立っていて、今の業務にも活用できています。
Senna: なるほど。ありがとうございました!
Frogとの出会いと、カナダ渡航を決断した“その日”
Senna: ここまでのお話を聞いていると、日本でのご経験がQAやデベロッパーという形で2年間。そのあと、カナダに渡航されたという流れになりますよね。最初にカナダに来られたときは、確かCICCC(Cornerstone International Community College of Canada)でしたよね?
Yano: はい、CICCCです。
Senna: この学校は、ビザ面や英語力の強化という部分で選ばれる方が多い印象がありますが、Yanoさんもそういった理由で選ばれたのでしょうか?
Yano: はい、まさにその通りです。
Senna: そもそもカナダに来るまでの経緯、つまり「なぜ海外を目指すようになったのか?」についてもお伺いしたいです。いつ頃から海外に行こうと思っていたのでしょうか?
Yano: それで言うと、かなり特殊かもしれませんが、私はカナダに来ることを“1日で決断”しました。
Senna: えっ、1日で?!
Yano: はい(笑)。もともと海外への漠然とした憧れはずっと持っていました。いつか英語を使って、英語圏の国で挑戦してみたいという思いはあったんです。ただ、具体的なプランは特になくて、キャリアをエンジニアとして進めていくなかで、「これからどうなっていきたいか」というのを考えていたタイミングでした。
Senna: その時、誰かからアドバイスをもらったりしたんですか?
Yano: はい。実際に先輩エンジニアの方に相談した際、その方が以前からカナダへの渡航を計画していたという話を聞きました。その話を聞いたその日に「自分もこのプランでやってみよう」と決めました。
Senna: それはすごいですね。ちなみにその先輩というのは……?
Yano: Frogに以前相談された方ですね。私が日本で自社開発企業に勤めていた時の先輩エンジニアで、Frogに相談することを勧めて頂きました。
Senna: それでは、その方からFrogの話を聞いて、紹介してもらったんですね。 そうやって紹介してもらってFrogに来てくださる方がいるっていうのは、本当に嬉しいです。
アメリカを目指し、まずはカナダへ
Senna: そのとき聞かれたプランというのは、CICCCのCo-op制度を活用しながらビザを維持し、英語を鍛えながら就職活動もしていこう、というような流れだったのでしょうか?
Yano: はい、そうです。
Senna: カナダを選ぶとき、迷いはなかったんですか?例えばアメリカやイギリス、オーストラリアなどの国と比較して……。
Yano: 実は最初はアメリカを考えていました。ただ、最終的にカナダを選んだのは「アメリカで働くためのステップ」としての選択です。
アメリカで働こうとすると、やはりビザ問題にどうしても行き着きます。それであれば、まずはカナダで経験を積んで、AmazonやGoogleなどのビッグテックに入って、そこからトランスファーという形でアメリカに行くというルートを考えました。
Senna: 今のお話を聞くと、まさにその描いたプラン通りに進んでいますよね。すごいです。
Yano: 自分でもちょっと驚いています(笑)。
Senna: FrogでAmazonに内定された方って他にもいらっしゃるんですが、皆さん共通して「自分の中にある明確なビジョン」が形になっているんですよね。そういう意味では、Yanoさんも「持ってる人」なんだなと感じます。
なぜ日本で外資系ではなく、海外を直接選んだのか?
Senna: とはいえ、日本でアメリカを目指す方ってまずは日本の外資に入って、そこからトランスファーっていうルートが定番だと思うんです。Yanoさんの場合、最初から海外を目指されたのはどうしてですか?
Yano: 私の場合は「とにかく海外で働いてみたい」「英語圏で生活してみたい」という気持ちが強くて、日本で転職するという選択肢はほとんど考えていませんでした。
Senna: なるほど。海外経験そのものに価値を感じていたんですね。ちなみに、オーストラリアやイギリスは選択肢には入らなかったんですか?
Yano: 全く考えていませんでした。
Senna: えぇー(笑)。自分はイギリスに憧れがあって、結構ギリギリまでカナダと迷ったんですよ。
Yano: なんとなくわかります(笑)。
Senna: まあ、結局はタイミングと縁ですよね。Frogを利用されたお知り合いの存在もあって、Frogのプランも合っていた。だからカナダが自然な選択になったんですね。
Yano: そうですね。
海外への憧れと英語について
Senna: 先ほど「海外への憧れは昔からあった」とおっしゃっていましたが、その原体験のようなものって何かあったんですか?
Yano: 振り返ってみると、中学生の頃ですね。当時、私は英語が苦手だったんですが、学習塾で「くもん式」の英語を始めたことで、少しずつ成績が伸びていきました。その成功体験から、英語を使うことへの憧れが芽生えたと思います。
Senna: なるほど。そこから教員免許まで取られたんですよね?
Yano: はい。大学時代に英語の教員免許を取得しました。いつか英語を使って働きたいという思いがあって、自然とそういう道を選んでいました。
Senna: 教員免許って、そんなに簡単に取れるものじゃないですよね?
Yano: 大学で決められた単位を取得すれば取得は可能でした。科目ごとの条件や英語レベルの要件もありましたが、しっかり取り組めば問題ありませんでした。
Senna: なるほど。ちなみに、実際に教員として働いたことはあるんですか?
Yano: いえ、教員になったことはありません。
Senna: それでも、教員免許を持っているというのはすごいことですよ。Frogにも元教員の方って結構いらっしゃるんですけど、そういう方々ってみんな「伝える力」があるんですよね。漠然とした夢を、形にしていく力を持っているというか。
Yano: ありがとうございます。
Senna: ちょうど英語の話も出ましたが、英語の取得について、最初のきっかけはやはり「くもん」での学習経験が大きかったのでしょうか?その後も継続して英語の勉強はされていたんですか?
Yano: 継続して勉強していたかというと、自信を持って「やっていました」とは言えませんが……。
Senna: とはいえ、CICCCに入学された時期ですと、すでに「IELTS 6.5必須」の時期ですよね。確かその頃、TOEIC850点でも申請できる裏基準みたいなものがありましたよね。
Yano: はい。表向きには記載されていなかったのですが、裏ではそういったスコアも評価対象になっていました。
Senna: そのTOEICのスコア、どうやって突破されたんですか?最初にFrogにお問い合わせいただいた時のスコア、確か500点台でしたよね?
Yano: はい、当時はTOEICで400点台後半から500点前半ぐらいしか取れていなかったんです。そこから、ものすごく勉強しました。
Senna: 本当ですか。いつ頃から本腰を入れて勉強されたんですか?
Yano: その時点でTOEICは500点台だったんですが、そこから5ヶ月で870点まで上げました。
Senna: 5ヶ月で300点アップ!?むちゃくちゃすごいですね。
Yano: そうですね、毎日必死に勉強しました。
Senna: 確認ですが、最初にFrogにお問い合わせいただいたのが2022年4月22日。その時点でTOEICスコアは575点だったと記録されています。ということは、その時期から5ヶ月ほどで870点まで引き上げたということになりますね。
Yano: はい、そこから一気に集中してスコアを伸ばしました。
Senna: Frogももう10年以上やっていますが、TOEIC500点台でお問い合わせいただいた方が、ここまでスコアを伸ばした例は正直ほとんどありません。本当にすごいことです。

DMM英会話やTOEICアプリも活用
Senna: ちなみに英語学習はTOEIC対策だけでしたか?
Yano: 最初はTOEIC対策に集中していました。その後、スコアが850点を超えてからはDMM英会話を始めました。
Senna: DMM英会話、ここでも出てきましたね(笑)。ありがとうございます。
Senna: 最初にFrogにご相談いただいたのが2022年の4月。実際にカナダに渡航されたのは2023年の3月29日とのことでしたので、ちょうど1年ほどの準備期間があったわけですね。
Yano: そうですね。その1年の間で、開発業務をしながら、英語力も高め、DMM英会話なども活用しました。
Senna: 実は、当時いただいた個別相談フォームに「将来的にはGAFAMに通用するソフトウェアエンジニアになりたい」と書かれていたんです。今、その道の第一歩としてAWSに就職されたわけで……これはもう“有言実行”すぎますよね。
Yano: ありがとうございます。
学校生活は、図書館での“こもり勉強”
Senna: 実際に渡航された後のお話も聞かせて頂ければと思うのですが、ここで一度、学校生活についても聞いておきたいです。CICCCでの1年間、どのように過ごされていたのでしょうか?
Yano: そうですね。CICCCに通っていた当初は、英語力・技術力ともにまだまだ自信がなく、正直経済的にも余裕がない状況でした。そのため、学校以外の時間はほとんど図書館にこもって、英語と技術の勉強を続ける日々でした。
Senna: 図書館にずっと、一人でこもって勉強されていた感じですか?
Yano: はい。ほとんど一人で、引きこもるようにして勉強していました。
渡航直後から就活スタート。数百通送っても返信はわずか
Senna: カレッジ時代って、英語の勉強もありつつ、就活も進めないといけないので忙しいと思うんですが、その時期の優先順位はどうされていましたか?
Yano: もともとのプランとして、「カナダに着いたらすぐに就活を始める」と決めていました。実際、渡航した2023年3月の末から就活をスタートしています。最初の1ヶ月は様子見で少しアプライし、2ヶ月目からは本格的に大量に申し込みました。
Senna: その春は、ちょうどリセッション(景気後退)の真っ只中で、返信が全然来なかった時期ですよね。100通くらい出しても返信ゼロみたいな人もいたと思います。そのあたり、どうでしたか?
Yano: 自分も同じような状況でした。3ヶ月の間に100通ほど応募したと思いますが、返信はほんのわずかでした。月に1回くらい、ようやくテスト課題が送られてくるという感じでした。ただ、そのテストでも失敗してしまうことも多かったです。
Senna: では、最初の仕事が決まったのは、どういった経緯だったのでしょう?
Yano: CICCCのキャリアサポートにコネクションで紹介頂いた会社でした。その会社に入り、最初の職務経験を積むことができました。プロジェクト自体は3ヶ月で終了してしまったのですが、非常に貴重な経験になりました。
Senna: やっぱりコネクションって大事ですよね。最近もFrog経由で決まった方々の中に、Co-opやインターンを通じて職歴を積まれる方が多いんですが、やはり人脈は大きな意味を持っていると思います。
Yano: 本当にそう思います。こうした最初のキッカケとしてのコネクションがなければ、最初の一歩がとても難しかったと思います。
Senna: CICCCの紹介で入ったそのプロジェクト、内容的にはどういった案件だったのでしょう?学校から紹介される案件って、当たり外れが激しい印象があるんですが……。
Yano: そうですね。個人的には“当たり”だったと感じています。これまで触れたことのない新しい技術に触れたり、テストオートメーションの導入など、未知の分野にも挑戦できたので、大きな経験になりました。
Senna: まさにタイミング的にも、自動化テストのニーズが増えてくる時期だったので、いい経験を積まれましたね。
Yano: はい、そこに立ち会えたのはありがたかったです。
FrogのSlack経由で得た次のチャンス
Senna: そのあと、2023年9月頃から次のプロジェクトにも参画されていますよね。これはどういった経緯だったんですか?
Yano: こちらはFrogのSlackで募集されていた案件でした。投稿を見て、自分から申し込みました。
Senna: そうだったんですね。これはフリーランス的なプロジェクト単位の仕事だったんですか?
Yano: はい、プロジェクト単位での契約でした。設計や実装などはすべて自分が担当し、デザイナーの方からデザインだけ支給されて、それをもとに自分で実装していくスタイルでした。
Senna: それは大変そうですね。リードもしながら、フルスタックで開発もしながら……。
Yano: そうですね。リードというより、全部自分でやるような感じでした。
Senna: このプロジェクト、使用技術がRubyだったと思いますが、日本の会社さんだったんですか?
Yano: はい。会社は日本とバンクーバーに拠点がありました。
Senna: なるほど。現地で日本案件を受けるというのもレアですよね。ちなみに、その会社はどうでした?
Yano: 正直に言うと、少し厳しかったです。ロケーションがバンクーバーだったことで現地での職歴を得られたのはよかったですが……。
Senna: なるほど(笑)。実情が垣間見える貴重なコメント、ありがとうございます。

突然のDM。「まさかAWSが自分に?」から始まった話
Senna: そろそろ話もAWSに近づいてくるかなと思うんですが……僕も最初は「えっ?」ってなったんですよね。なんかAWSに決まった方がいるらしい、しかも場所がトロントらしいって。まさに寝耳に水で。Yanoさんは、どうやってAWSに入ることになったんですか?
Yano: 本当に運が良かったと思っています。今のマネージャーの方から、LinkedInでダイレクトメッセージをいただいたのがきっかけでした。「経歴を拝見してポジションに合っていると感じたので、ぜひ応募してほしい」という内容で。
Senna: なかなか自分が貰ったら怪しく思いそうな内容ですね。「詐欺かな?」って(笑)
Yano: 正直、私も最初は「なんで自分に?」という気持ちでしたし、「これは怪しいかもしれない」と警戒しました(笑)
Senna: めちゃくちゃ分かります。実際にFrogの他のメンバーからもリクルーティング詐欺の相談が多い時期だったので、警戒もしますよね。でも本物だったという(笑)。
Yano: はい、本当に驚きました。
Senna: でも失礼ながら、経歴だけで言えば、もっと凄い方は日本にもたくさんいるわけですよね。その中でYanoさんに声がかかったのは、何がポイントだったと思いますか?
Yano: 募集要項にマッチしていたというのが一番大きいと思います。具体的には、私がその時点ですでに「フルタイムで働けるビザを持っていた」こと。そして、ちょうどAWSがトロント拠点を拡大しているタイミングだったこと。加えて、英語力やエンジニアとしての経験も一定あったので、条件が揃っていたのかなと。
Senna: なるほど。場所とビザ、そして言語力の3拍子が揃っていたと。AWS説明会の中でも「半年以上のオープンワークパーミットがあること」が条件として挙がっていましたし、やっぱり「そこにいる」というだけでもチャンスの幅が違ってきますね。
Yano: そういった面でも、タイミングがすべて重なったという印象です。
決断の裏にあったもう一つの内定と、スタートアップの不安定さ
Senna: AWSへの就労に際しては特に悩みなどもなかったのでしょうか?
Yano: 実はそのとき、他のスタートアップ企業からもオファーをいただいていたんです。でも、トントン拍子で進んでいたその会社のお話も途中で雲行きが怪しくなっていたので、その流れの中でAWSからの話が来たので、悩む間もなく「もう行くしかない」と決断しました。
Senna: なるほど、それはタイミング的にも絶妙でしたね。最近もスタートアップに入社した直後に買収や方針転換で不安定になるという話をよく聞くので、慎重になるのも分かります。
Yano: そうですね。
Senna: ちなみに、勤務地がトロントということで不安はありませんでしたか?バンクーバーと違う街での生活という点で。
Yano: 場所に対してのこだわりは特になかったです。最終的にはアメリカで働くという目標があるので、まずは北米での経験を積めるのであれば、場所についてはどこでも問題ないと思っていました。
Senna: その割り切り、素晴らしいですね。では、実際にAWSからオファーが届いたときの心境はどうでしたか?
Yano: もう「やったー!」という感じでした(笑)。
オファーのきっかけはLinkedIn。「できる人に見せる」工夫がカギ
Senna: 読者の中には、海外でチャンスを掴みたいと思っている方も多いと思います。その中で「これだけはやっておいた方がいい」というアドバイスがあれば、ぜひ教えてください。
Yano: やはり「LinkedInで自分を“できる人”に見せる」ことは、本当に大切だと思います。
Senna: それ100回くらい言ってほしいですね(笑)。日本人のレジュメやLinkedInの記述って、正直すぎることが多いんですよね。わざわざ「これはボランティアです」とか「これはCo-opでした」とか書く必要のないことまで載せてしまう。あれ、すごくもったいない。
Yano: はい。自分の場合は、「何を成し遂げたか」を数字で表現することに注力していました。例えば、「テスト自動化で90%以上の手作業を削減した」など、具体的な成果を記載するようにしています。
Senna: KPIやOKRを意識するというのは、まさに現地のレジュメでも重視されるポイントですよね。その辺の感覚をご自身で掴んで工夫されていたのは、本当にすごいと思います。
Yano: ありがとうございます。
AWSの選考フローとは?技術力+リーダーシップを問われる
Senna: AWSの内定まで、実際にはどのような選考プロセスがあったのでしょうか?
Yano: はい。公開されている情報になりますが、プロセスとしては最初に電話で、ビザステータスや就労可能かどうかの確認、次に1次面接(技術面接)、そして最終面接(ループ面接)という流れですね。1次面接は、ネットワークやOS、サーバー周りの基本知識、トラブルシューティングの能力などが問われる形でした。最終面接は「ループ面接」と呼ばれていて、私の場合、4名の面接官による連続面接でした。
Senna: なるほど、AWS独特の面接ですね。面接ではどんなことを聞かれたんですか?
Yano: 技術的な質問に加えて、「LP(リーダーシップ・プリンシプル)」に基づくビヘイビアルインタビューが行われました。
これまでの経験の中で、どうリーダーシップを発揮して課題に取り組んできたかを問われました。
Senna: ループ面接と聞くと、何回も選考があるイメージでしたが、意外とコンパクトなんですね?
Yano: はい、技術面接とループ面接の2回です。ただループ面接では4名が担当するので、実質的には5人と面接しました。内容としては十分に濃いものだったと思います。
Deploymentプロファイルで得られた「低レイヤー」の知識
Senna: 実際にAWSで働き始めてみて、感じたギャップや気づきなどはありましたか?
Yano: 事前に情報収集をしていたこともあり、大きなギャップはありませんでした。
主な業務は、お客様からのお問い合わせに対するトラブルシューティングです。
コードを書くというよりは、より低レイヤーのネットワークやサーバーに関する知識を使う業務で、毎日が学びの連続です。
Senna: 今はどのチームに所属されているんですか?
Yano: 私は「Deployment」プロファイルに所属しています。主にコンテナサービスやInfrastructure as Code(IaC)を担当しています。
Senna: トラブルや相談が多そうなセクションですね。
Yano: はい。特にアプリケーションを扱っているコンテナ系のサービスでは、緊急度の高い案件も多く、迅速な対応が求められます。
Senna: トラブルの内容としては、やはり「ログを見てください」で済むものが多いですか?
Yano: 実際には、お客様のトラブルについて詳細にお伺いしながら進めることが多いです。例えば、「500エラーが出た」というだけでは、サーバー内部で何が起きているかまではわかりません。そういった場合は、お客様にヒアリングもしつつ、トラブルシュートを進めていきます。
今後の目標は「デベロッパーへの転身」、そしてアメリカへの挑戦
Senna: AWS内での今後の目標などはありますか?やはり、もともとの夢だったアメリカでしょうか?
Yano: はい。将来的にはアメリカで働きたいという目標があります。今はまずAWS社内で「デベロッパーのロール」に移ることを目指しています。
Senna: それは入社時点からマネージャーの方にも伝えていたんですか?
Yano: はい。入社時から、マネージャーには「将来的には開発をやりたい」と伝えていました。驚いたのは、そういう希望を伝えても、引き止められることなく、むしろ背中を押してくれることです。
Senna: それは素晴らしいですね。普通の感覚なら一度就いたポジションを離れて欲しいとは思わなそうですが。
Yano: 本当にそう思います。ですが、「こういうポジションを狙ってみたら?」とか「この人に1on1を申し込んでみたらいい」といった情報まで提供してくれるんです。そういう文化に驚きましたし、感謝もしています。
Senna: ちなみに、AWSからアメリカ本社に転籍されたImaiさんという方がいらっしゃって、彼のことはご存知ですか?
Yano: Frogのブログで記事を読んだことがありました。
Senna: Imaiさんとは以前、バンクーバーアイランドに一緒に旅行に行ったんですよ。Yanoさんが目指すのはまさにそういう姿ですよね?
Yano: はい。まさにその通りです。デベロッパーに転身し、最終的にはアメリカへ移るというのが今の目標です。
Senna: 素晴らしい。Frogのメンバーでアメリカ進出がどんどん増えてくれると、僕としても本当に嬉しいです。応援しています!
カナダで感じた「システムで動く職場」の安心感
Senna: 日本とカナダでの働き方に違いを感じたことはありますか?
Yano: はい、大きく感じた違いがあります。日本で働いていたときは「誰がやるか」によって仕事の進み具合が変わる、つまり属人化していると感じることが多かったです。結果として、担当者がいなければ仕事が進まない、といったようなこともありました。それが少なくとも私が見ている環境では、誰がいても業務が回るようなシステム設計がされています。働き方が標準化されていて、属人化していない安心感があります。
Senna: 確かに、日本では大企業でさえ属人的な面が残っていることもありますよね。
Yano: そうですね。あとは、日本では空気を読んで、相手の意図を先回りして動くことを求められることが多かった印象ですが、カナダではそういったことが少なく、その分ストレスが少ないと感じます。
最終目標は起業。肩書きと実力を携えて世界へ
Senna: 今後のキャリアについて、目指しているところがあれば教えてください。
Yano: はい。最終的な目標は、自分で起業することです。今はそのための「核」をつくっている段階です。AWSで得られる肩書き、優秀な仲間との実務経験、それらを自分の力に変えていく時期だと思っています。
Senna: デベロッパーへの転向、そしてアメリカへの挑戦、その先の起業まで……。このキャリア設計、本当にワクワクしますね。会社を立ち上げる際は、ぜひまた声をかけてください。何でもサポートします!
Yano: ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします!
海外を目指す人へ。「まずやってみる」
Senna: これから留学や海外就職を目指す方々に、何かメッセージがあればお願いします。
Yano: 「とにかくやってみよう」。それに尽きると思います。学生時代の私は、不安や迷いが多く、挑戦を見送ることも多かったです。でも今は、たとえ失敗しても、その経験が次に繋がるということを実感しています。英語が不安でも、技術力が足りないと感じても、「まずは一歩を踏み出してみる」。そうすれば、見える景色が必ず変わってきます。
Senna: 本当にその通りですね。行く前に全てを整えようとして結局動けない人もたくさん見てきました。行動に勝る準備はない――Yanoさんの言葉が、きっと多くの方の背中を押すと思います。
Yano: そうだと嬉しいですね。
Senna: この記事も、Frogの他のインタビューと同じように多くの方に読まれると思います。Yanoさん自身、Frogのブログを読んでいたとおっしゃっていましたね。
Yano: はい。学校生活の実態や心構え、実際にどんな努力をされてきたのか、過去の記事を通じて、留学前の自分がどれほど励まされたか計り知れません。なので、自分の記事がその一つに加わるというのは、とても不思議で、光栄な気持ちです。
Senna: ちなみにすいません、どうしても気になるんですが、あくまで推移の参考までに聞いてみたいだけなんですが、日本で得ていた年収の何倍くらいに今なりました?
Yano: 大体3倍くらいでしょうか。
Senna: 人の年収って、たった3~4年くらいで3倍に広がる物なんですね(笑)本当に人生何があるかわからないですね。
Yano: 本当ですね。
Senna: 今日は貴重なお話を聞かせて頂きありがとうございました!
いかがでしたでしょうか。非常に驚くことが多いインタビューでしたね!TOEIC300点アップ、AWS内定、そして起業を見据える視線など、インタビューしている私自身も初めて知ることも非常に多いインタビューでした。
Frogに相談をくれた日からわずか1年ほどで、Yanoさんは驚くほど大きな変化を遂げたことになります。
特別な何かを持っていたわけではなく、英語が苦手で、キャリアもまだ浅く、ないものを数えることは容易だったと思われますが、それでも海外挑戦を諦めなかった姿には頭があがりません。文中にも書かれていましたが、すべての準備を整えて来ることはなかなか難しいです。その上、海外挑戦へのモチベーションは何年も保ち続けられる物ではありません。何百人という海外挑戦者と話していると、その時『海外に挑戦したい』と思ったこと自体が奇跡みたいな物であると感じます。
Yanoさんも、自分がやりたいこと、行き着きたい場所、成りたい姿になることを諦めなかった、そしてすぐに行動に移したからこそ今があるんだなと感じます。「最初は何もできなかった自分が、インタビューに出るなんて不思議です」と話すその姿に、これからの可能性が詰まっていると感じたインタビューでした!
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