アメリカとカナダが拠点のデザインエージェンシーでデザイナーとして働くYujiさん
専門学校を卒業後、アメリカのニューヨークと、カナダのバンクーバーに拠点のある北米のデザイン会社Engine Digitalで、約3年半デザイナーとして働いているYujiさんにインタビューしました。Frogにはバンクーバーで就職している人はたくさんいますが、デザイナーとして就職している人はまだまだ少ないのが現状です。その理由やデザイナーとしての働き方まで幅広くインタビューしました。
今回はいつものFrogのインタビューで聞いている学校の話などはあまりありません。主に経験のあるデザイナーや社会人として働いている人に向けて、北米のデザイン会社でYujiさんがどういう風に働いてきたか、どのような人物が求められているのかという部分に焦点をあてた記事です。
Yujiさんの元ルームメイトでもあるFrog/COSスタッフのRyohei(@chan_gami)さんにも参加してもらい、Yujiさんのプライベートや性格からもデザイナーとして働いている秘訣をうかがっています。
すごく人間として参考になる内容です!
経歴
Suige: 本日はインタビューよろしくお願いします。
Yuji:よろしくお願いします!なんか緊張しますね(笑)
Suige: まずはYujiさんの経歴を教えてください。
Yuji:大学卒業後に印刷会社で、DTPオペレーターをやることからはじまりました。
Ryohei:こう見えて、最初からWeb系ではないっていう。
Yuji:どう見えて?(笑)大学のときもデザインの勉強ではなくて、工学部でC言語などのプログラミングを勉強していました。卒業後、運よくDTPオペレーターとして雇ってもらって、Adobe PhotoshopやIllustrator、QuarkXPress(今で言うAdobe InDesign)など幅広くデザインアプリケーションの使い方を学びました。
Yuji:ちょうどそのころ、世界的にもよりデジタルが注目されてきて、俺もWebデザインなどデジタルなデザインをもっとやりたいなと思ったので、従業員3,4人程度の小さなデザイン制作会社に転職しました。
Suige:そのときはWebは未経験だったんですか?
Yuji:そうですね(笑)デザインもコーディングの経験もなかったです。「やる気だけあります!!おねしゃす!!!!!」的な感じで。小さな会社なのでスタートアップに近い不安定さはありましたが、自分で見積もって、デザイン、コーディングと幅広くやらせてもらってすごくいい経験になりました。そこで自分の社会人としての軸が作られた気もしますね。
Yuji:その後は、中企業と小企業と働いてみて、大企業ってどんなもんなんだろうと思って、サイバーエージェントのゲーム関係の子会社(以下C社)に入りました。
Suige:そこで入れることがすごいです!
Yuji:全っ然そんなことはないっすよ。そこではデザインをたくさんやらせてもらいました。アートディレクションを任せてもらったり。でもある程度デザインに集中したあと、あらめて自分のキャリアとデザイナー像を考えたときに、フロントエンドをやってデザイナーとして幅を広げたいなーと。
Yuji:前のデザイン制作会社でペライチのWebサイトを作ったり、WordPressを改修するくらいはできるようになっていたんですが、胸を張って「フロントできます」とは言えなかったです。だから、C社にフロントエンドやりたいですってわがまま言ってフロントをやらせてもらいました(笑)
Ryohei:キャリア戦略がしっかりしてますね!
Yuji:そうかねぇ…まぁでも気づいたら「おお、29歳」て感じで。
Ryohei:そのときに海外で働くことを考えたんですか?
Yuji:中学のころから北米で働きたいなっと思ってたけど、超漠然としてて。そのころは「何して」「どうやって」働けるのか全くわからなかったし、イメージしてなくて。30歳手前になって、今の自分のスキルで挑戦する最後のチャンスだと思ったんだよね。そのときに、ちょうどFrogが発足したんですよ。Twitterを見てたときにSenna君(Frogの代表)を見つけて「うわ、タイミングばっちり」と。
英語
Suige:英語はどうでしたか?
Yuji:ITDに入学したときには、幸いにも一番上の英語クラスに入れてもらえました。
Ryohei:そうでしたね。普通に英語を話してるなって人でした。
Yuji:自分の興味の賜物ですね。子どものころからバスケが大好きで、NBA見てました。その影響でアメリカ自体に興味を持ち出して…一時期はアメリカ50州すべて言えましたねぇ。ちょい気持ち悪い(笑)
Ryohei:アメリカオタク(笑)
Yuji:NBAは英語の副音声で見てました。英語の実況の方がテンション上がるんですよ!あとは、父が英字新聞をとっていて、そのNBAの部分をひたすら読んでました。英字新聞だと日本のと比べてNBAが大きく掲載されてるんですよね。インターネットもまだダイアルアップの時代で、たまにこっそり部屋に忍び込んでサイト見たり(笑)そういうことをしていたら、自然に英語のスコアが上がっていきました。
Yuji:あとは、アルフとかフルハウスとかの海外ドラマを見たり。映画も生の英語で聞いたほうがニュアンスやテンションがわかるので、なるべくそうしてました。まぁ、かぶれてたんですよね(笑)
Ryohei:参考までに、センター試験の英語は何点でしたか?
Yuji:ほぼ満点に近かったかな。英語だけはなんか自信あった。
Suige:バンクーバーに来たときは、スピーキングも問題なかったんですか?
Yuji:正直学校ではほとんど問題なかったです。学校だとネイティブは先生くらいしかいないし、めちゃくちゃ英語が話せる人もいなかったから、学校では英語で不自由を感じたことはなかったかな。
Ryohei:Yujiさんはいろんな人にどんどん英語で話しかけるんですよね。英語ができない留学生の俺とかは日本人と話している方が落ち着くし、話しやすいんですけど。
Yuji:それは俺もですが?
Ryohei:違うんですよ。俺は日本人95%、他の国の人5%くらいで接してたんです。でもYujiさんは50%/50%。よく一緒にランチしているのが日本人じゃないし。
Yuji:当時のクラスに日本人がほぼいなかったからね。でもまあ、50%/50%くらいだったかな。
Suige:意識して他の国の人と話そうとしていたんですか?
Ryohei:それはたぶん違うんじゃない?俺ともよく話してたし。
Yuji:英語じゃないと話さないっていう人もたまにいるじゃないですか。でも、僕は話したい人と話すだけで、言語はあまり関係ないんですよね。日本語も下手になりたくないし。その姿勢がうまくいって、色んな人と話しているうちに少しずつ英語もうまくなったと思います。英語縛りとかしてたらもっとうまくなったかもしれないけど、俺には合わなかったと思います(笑)普通にジャパニーズレストランもよく行って、日本の人ともよく話して、英語も話して。それでよかったんじゃないかなと思います。
専門学校
Suige:YujiさんはWebの経験も英語力もありますが、専門学校(ITD)にも行ってますよね?
Yuji:完全にSenna君のプランにのっかりました。最初に会ったときに、素直に「予算はこれくらいです」と伝えました。経験もある程度あったので、学校に長く行くよりかはすぐ働きたかったんですよね。ITDの半年コースで勝負して、ダメだったら帰ろうと思っていました。まぁ、当時は金銭的に半年しか行けなかったかも(笑)
※ITDの半年コース(6ヶ月授業、6ヶ月Co-op)は現在廃止されています。
Suige:Co-opのために学校に言ったという感じですか?
Yuji:そうですね。
Suige:在学中はどうでしたか?
Yuji:なかなかこっちの人間らしくない生活をしてましたね(笑)朝から授業を受けて、午後4時から夜中の12時まで日本の会社と仕事していました。Ryoheiくんとかみんなつきあってくれるんすよ。
Ryohei:スタバとかカフェでやってましたね。
Yuji:そのときは朝から夜まで外にいましたね。
Suige:2人はいつごろ一緒に住んでたんですか?
Yuji:俺の授業フェーズが終わるときに部屋を探して一緒に住みはじめました。いろいろタイミングがあって、引っ越したあとは就活に専念できました。
就活
Yuji:9月末に授業が終わったのでCo-op的に12月末までには就職先を見つけないと卒業できないという状況でした。10月頭からはじめたので実質3ヶ月しか就活期間はありませんでしたね。
Suige:一日中就活してたんですか?
Yuji:そうですね。日本との仕事も一旦辞めて、完全に専念しました。簡単な3ヶ月のプランを立てました。最初の1ヶ月(10月)はカナダで行きたいデザイン会社の洗い出しと、ポートフォリオを綺麗に作る。11月は、行きたい会社を希望順にならべて、上から順番に応募しました。
Suige:行きたい会社から応募したんですね!
Yuji:僕はそうですね。自分的に滑り止めみたいな会社からはじめて、オファーをもらうと絶対迷うと思ったんです。だからダメ元って気持ちで行きたいところから応募しました。とにかくはじめの方は手裏剣みたいに、ばばーっと全投げでしたね。レスポンスが遅いというのは知っていたので、ひたすら送る感じで。
Suige:本当に遅いですよね。余裕で1,2週間は待ちます。
Yuji:そうですね。1,2週間後からは、連絡が来たものに返信と引き続き応募というフェーズに変わりました。「電話インタビューどう?」「もっと詳しいレジュメない?」とか連絡がきました。11月中旬になると1日2,3件ずつ応募して、そのあと返信したり課題やったり。
Yuji:1件応募するのも俺的に結構大変で…LinkedInとレジュメだけ送る会社もあるけど、応募の段階でいろいろ聞いてくる会社もあって、それぞれにちゃんと考えて書いてるとせいぜい1日2,3件が限度でした。ただこのペースだけは落とさないようにしていました。
Ryohei:今の会社との出会いがすごいんですよね。
Yuji:そう(笑)今の会社(Engine Digital、以下Engine)は僕のリストでベスト5の中にいた会社で、応募してたけど全く返事がこなかったんです。でも、12月頭くらいに急にEngineのCCO(Chief Creative Officer)から「今お前のポートフォリオみてるんだけど、うちに興味ない?」ってメールが来て…
Suige:え(笑)
Yuji:「いや、ちょ、俺レジュメ送ってる…」って返事したら、「やべ。あ、あった机の上にあったよー」って。
Ryohei:北米の会社っぽいですね(笑)
Yuji:結果、12月中旬にEngineからオファーもらいました。Co-opの条件がクリアできるギリギリ。いくつか選考が進んでたんだけど、一番最初に正式なオファーをくれたし、行きたかったところなのでEngineに決めました。過去にEngineはNBAのアプリも作ってて、俺的にドンズバでしたね。
Suige:Engineはどういう選考があったんですか?
Yuji:俺はちょっと変わってて、彼らは俺の応募から連絡を返してくれたわけじゃなくて、LinkedInかなにかで見つけてくれたんだよね。ちょっと前に「どうやって俺のこと見つけたの?」ってあらためて聞いたんだけど誰も覚えてなくて(笑)
Ryohei:ヘッドハント状態ですよね。
Yuji:若干ね。応募してたんだけどね(笑)
Ryohei:最初に連絡してくれたのがCCOなら、最終面接がOKでてるところからはじまったってことですよね。
Yuji:んーまぁそんな感じか。CCOと最初に1対1で面接で、「自分がどんなプロジェクトをやってきたか」「何ができるのか」「どんな会社で働きたいか」とか話して。でもCCOだけでは決められないので、後日各部署のリーダー陣と面接しました。
Ryohei:ほぼ確定なのに、どうなるかわからないっていう変な気持ちでしたよね(笑)
Yuji:そう!そうなのよ!ちなみにEngineの今の採用フローは、最初に360度評価といって、会社のカルチャーにフィットするかの適正審査的なものをします。例えば、UIデザイナーで応募したら、UIチームだけじゃなくて、フロント、バック、UXなどの各チームのメンバー数人がスキル以外のパーソナリティを見ます。社会人として、人間としてどういう人なのかって。例えば「休みの日は何してる?」「同僚と意見が食い違ったときどうする?」とか。俺の場合は、それを最後にやった感じ。
Suige:CCOが技術面でOKを出して、次にパーソナリティを見られたってことですね。
Yuji:もし2回目の面接で落とされてたら、性格的に俺が会社にあわないってことになってましたね(笑)でも、こっちでは全然あることですね。
Suige:他に印象に残ってる採用プロセスはありますか?
Yuji:ありますよ。A社とかね。
Ryohei:あそこは課題が2,3個ありましたよね。
Yuji:なかなかの歯ごたえだったね。
Ryohei:最初は電話インタビューでしたっけ?
Yuji:電話インタビュー→面接→課題→課題をプレゼン
Ryohei:プレゼンありましたね!シャワーから練習している声が聞こえてましたよ。
Yuji:恥ずいわ(笑)英語でプレゼンしたことなんてなかったし、しかも自分の仕事のことじゃなくて課題のことだったから大変でした。「なぜこういうデザインしたのか」「なぜこういう処理をしたのか」とか。彼らはめちゃくちゃ質問してきて、「なぜシェアボタンはAppleが使っているそのアイコンなの」「なぜそこにボタン置いたの」とか。それを当時めちゃめちゃ拙い英語で話しましたよ。すごくいい経験だったけど。
Yuji:A社はすごくいい会社で、俺は最終プレゼンで落ちたんだけど、落ちた理由をちゃんと教えてくれました。俺のコードの書き方がまだあまりよくなくて、もう少しうまくかけるところがあったというのを指摘してもらえました。なかなかこういうフィードバックってもらえないんで、悔しかったけどなんか「あーなるほどね」って。客観的に見れたというか。
Suige:課題はどんな内容だったんですか?
Yuji:架空のWebサービスのブランディングデザインをして、ホームページをデザイン、コーディングまでしました。それを指定されたGitリポジトリににプッシュして終了です。これが一番気合入ってましたね。
Suige:課題を出されてから提出するまでの期間はどれくらいだったんですか?
Yuji:これがトリッキーで…どれくらい欲しいか聞かれるんですよ(笑)
Ryohei:そっから始まってるんですね。
Yuji:そうそう。僕は率直に1週間半くらい欲しいって言った気がします。すんなりOKって言われました。僕が思うに速さも見てたと思うんですが、あたえられた日数に対するクオリティのバランスとか、自分の作業スピードに対する見積もり能力を見てたと思う。あとは言ったことを守るかどうか。3日って言ったら3日で仕上げるし、1ヶ月って言ったら1ヶ月だし。期間を聞かれたことなかったし、最初ビビって、Ryoheiくんに相談したよね?「4日って言ったら徹夜だよねぇ」て。
Ryohei:「無理しないほうがいいんじゃないですか」と言ったような気がします。
Suige:多くの場合はこの課題は1週間でやってきてって期限も言われますよね。
Yuji:そうそう。でも、すごくフェアだなって。
Suige:働くことを想像して課題を出していますよね。
Ryohei:本格的ですよね、やってることが。
Ryohei:そういえば、Engineで働き出したあとに、EngineがホストしたデザインのイベントのアフターパーティでA社の人たちに会っちゃって「あ、お前Engineに行ったんだ」て言われる事件があったんですよね(笑)
Yuji:そうそう。ちょっと気まずかったけどね。ちょうどそのイベントにA社の人も来てて、俺のこと覚えててくれましたね。バンクーバーはそんな感じです。業界も狭いし。
Ryohei:確実に爪痕は残せてましたね。
Yuji:一人ずつちゃんと見てるんだと思います。
Suige:バンクーバーに来る前に、就職について不安に思ってたことはありますか?
Yuji:んーなかったすねぇ…。29歳でやっとチャンスに飛びつける余裕ができて、カナダのワーホリは30歳までだから、ワーホリを使うラストチャンスだったし。就職できなくても得るものはあるなと。英語も日本にいるにしては、割と当時のベストを尽くしてたと思います。あと、僕にとっては学校自体が就活の準備でした。学校にいる期間で少し不安に思っていた英語を出来るだけ磨こうって考えていました。学校という準備期間があったから不安は特になかったです。
Ryohei:若干不安だった英語は、就活で足を引っ張りましたか?
Yuji:自分が予想してたよりはうまくできたかな。もっと苦労するかなと思ってたけど。あとは、英語で苦労することは覚悟してた。
Ryohei:苦労しないわけないと。
Yuji:そう。でも、デザインとかの技術面で苦労するのは悔しかったですね。今までやってきたことだし。A社でのプレゼンも英語が話せないことが悔しいんじゃなくて、プレゼンという場にあがってしまってうまく話せないということが悔しかったです。英語が話せないのは当たり前。覚悟してたから不安ではなかった。でもその時のベストは尽くしました。
会社と仕事
Ryohei:会社での英語はどうですか?
Yuji:これまじで本当にきつかったです。僕以外は全員英語が第一言語。カナディアンかアメリカンかブリティッシュ。今はニュージーランドもいますね。
Suige:完全にですね。
Yuji:いやもう逃げ場ゼロ。やっぱ僕が英語を日本語と同じレベルで話してるなって思うことは一生ないし、これから10年英語圏にいたとしても多分それは変わらないと思うんですよね。でも、働き始めたときと今を比べると英語力は圧倒的に違うって自信を持って言えます。
Yuji:1年目は、電話会議がとにかく大変でした。生で聞くよりも声がこもってて。日本語でも大変じゃないですか。あとは、カジュアルな会話が意外と大変ですね。カルチャーとか笑いのセンスも違う。例えば、「ガリガリ君ってなつかしいよね」って話をしてても、俺がそもそもガリガリ君を知らないっていうことがよくある。空気を壊して「なにそれ?」って毎回言うのも嫌だし。むしろ何を言ってるのかわからないときも最初はありました。
Yuji:でも、徐々に聞けるようになりましたね。もちろん今でも3割くらいは理解してない部分があるし、ジョークもまだ全部は笑えない。でもつい最近になって、英語で話すことが楽しくなってきたかな。1,2年目は会社に行くのが辛いなって思うこともありました。それは、自分に対する苛立ちが大きかったですね。なんでできないのっていう。
Ryohei:悔しさみたいな。
Yuji:うん。同僚と笑って話せないっていうのが単純に悔しかったね。いっそお前ら日本語話せよって思ってました(笑)僕は何語でもいいので同僚と普通に楽しく会話がしたいと思ってるから、コミュニケーションができないのがシンプルに悔しかったね。本当に今はこんな風に感じられるのも想像できないくらい苦労していました。結構愚痴も言ってたっしょ?
Ryohei:たまーに。
Yuji:学校にいるときは多少英語が話せるなとか調子に乗ってたけど、もーーーバッキバキにやられました(笑)
Suige:会社で技術的に困ることや苦労していることはありますか?
Yuji:プレゼンテーションスキル。
Ryohei:デザインスキルやコーディングスキルが足りないってことはないんですか?
Yuji:「やばい足りない」と思ったことはないですね。基本足りてないので自分的には。当たり前のことを言うかもしれないんですけど、何かが足りないときって、割と何かが期待されてる時だったりするじゃないですか。でも、Engineは僕のスキルをちゃんと見てくれているので、過剰な期待もしないし過小な期待もしないです。僕ができることそのものを見てくれています。だから足りないと思ったことはあんまりないですね。
Yuji:でも、もっとこうしたら良くなるとか、アドバイスは常にくれます。これは俺が成長するようなことを言ってくれるので、足りなかったなとか、焦ったりまずいなっと思うことはないです。
Ryohei:それ…ただのいい会社!
Yuji:うちは、1対1面接が2週間に1回あるんですよ。僕とアートディレクターで「今どんなプロジェクトやってる?」「この2週間で一番の成功は?」「チャレンジはなに?」「何か助けられることある?」とか定形だけど毎回聞いてくれます。あと1年に1回、僕のパフォーマンスに対して同僚が匿名で評価とコメントしてくれます。「Yujiはこういうところがよかった」「ここをもっと伸ばした方がいい」とか。
Suige:そういう振り返りや評価って大事ですよね。
Yuji:正直、切られるかなって焦るとすれば英語かな。
Ryohei:コミュニケーションが取りにくいって思われる可能性がありますからね。
Yuji:そうそう、英語ができなくて普通のコニュニケーションが取れずに仕事ができないというのは、他の人の時間をとってしまうってことだから。会社的にもよくないし、一番不安でした。他は、自分で足りないと思ったところは自分で補っていってます。
Ryohei:おーーー。ちゃんとやってますね。
Yuji:もしかしたら、自分が持ってるスキルのちょっと上のことをずっと求められていたのかもしれないなぁと。例えば、SketchもShopifyもVue.jsもやったことなかったけど、そのプロジェクトに入れられたら、やるしかないみたいな。
Yuji:でもそれって俺だけじゃなくて、誰でもそうじゃん?CTOでもVue.jsが出たときはVue.jsを知らないし、いつもエキスパートがいるわけじゃないから、そういう時は自分で勉強するしかないし。新しいことを少しずつやっていくことは、今までと何も変わらないです。
Ryohei:Yujiさんの考え方で目からウロコの人たくさんいると思いますよ。
Yuji:え、こんなんでいいんかな。
Suige:今の仕事の内容を具体的に聞きたいです。
Yuji:半分デザイン、半分フロントです。今は、1年前からやってたECサイトがローンチして運用しています。この1週間でやったことは注文履歴のUXを強化したいと要望があったので、そのデザインをしていました。UXの人にアドバイスほしいんだけどって声をかけて、2人で1時間くらいで簡単なスケッチをしたり…その後、僕がデザインを完成させて、来週はそれを実装ですね。
Ryohei:自分でデザインしたやつを自分でコーディングするんですか?
Yuji:たまーにね。インタラクションデザインしてそのままコーディングとか。でも、ひたすらフロントやったりバグ修正をやる案件もある。
Ryohei:フロントはアニメーションとかファンクショナルな部分もやるんですか?
Yuji:やる。
Ryohei:JavaScript的な部分も?
Yuji:全部やる。バックエンドだけは触れない。
Suige:Yujiさんは日本でもバンクーバーでもデザイン会社で働かれた経験がありますが、何か違いや特徴などを感じますか?
Yuji:バンクーバーはEngineしか見てないので、なんとも言えないんですけど、他の人の話も踏まえていうと、日本とバンクーバーという国の違いというよりも、やっぱ結局は会社の違いなのかなぁと。バンクーバーだからこうっていうのは基本ない気がしてます。
Yuji:でもEngineに関していうと、まずはプロジェクトマネージメントはすごい力入れてますね。とにかく最初に出来るだけ計画をします。
Ryohei:具体的にどういう感じなんですか?
Yuji:まずプロジェクトが始まるときに、プロジェクトメンバー全員を集めて内容をしっかり精査をします。「どういうプロジェクトなのか」「どんなリスクがあるのか」「クリティカルなタスクはどれか」「誰がステークホルダーか」「プロジェクトのゴールは何か」とか。もちろんデザイン完成の期限とかも話しますし。1時間半くらいかけて疑問点やリスク含めてがっつり洗い出します。それらを次のクライアントとのミーティングで全部共有して。それである程度内容がクリアになったら、全メンバーでロードマップの作成に入ります。
Yuji:ロードマップ作成の流れは、まず全タスクを全員Post-itに書き出してから壁一面に貼って、それぞれのタスクがどれくらいかかるのかを粗見積もりします。それをPMが合計して、おおよその費用を計算します。予算との差を見て、もしオーバーだったら、こちら側ではどこか削減できるところがあるかを考えます。削減できないとなると、それをクライアントに共有しどこの作業を優先するか、または予算をあげてもらうか等の交渉に入ります。
Ryohei:却下されることはないんですか?
Yuji:PMは俺ら現場と契約書のバランスを取るのが仕事だったりするじゃない?やっぱり会社としても利益を上げなきゃいけないけど、でも無理のあるプロジェクトはどこかでガタが来るし。だから無下に却下はされない。PMは現場とクライアント両方と交渉してプロジェクトをスタートラインに持っていくのが最初の仕事かな。
Yuji:あと、彼らはプロジェクトの健康状態を常に把握しようとしている。特に現場に異常な無理はさせないようなはからいが基本にある気がする。僕はそこまでのPMに日本で出会ったことがないです。常に状況を知っているので、問題が起きたときの打開策も早いです。そのまま野放しにすることはないですね。
Ryohei:マネージャーがレベル高いですね。
Yuji:そうね。今までとは違いますね。日本のときは、割とすーーってやってた(笑)
Ryohei:すーーってね(笑)わかります(笑)
Yuji:Engineは最初に全力を出しますね。
Suige:それは大事ですね。
Yuji:そう、大事だなって思います。僕自身の働き方も変わりました。今は会社に行って、最初にタスクを確認して書き出して、各タスクが何時間かかったかノートに書くようになりました。1日の最後にノートを見て、「見積もりが甘かったな」「同僚と喋りすぎたな」「ランチ長かったな」「ここで躓いたな」とか振り返ります。個人としてのタスクマネージメント力もすごくあがりました。なぜ時間内にできなかったのか説明しないといけないし。
Yuji:スキルもですが、その「働き方」っていうところをすごく学びました。限られた時間の中で最大限のパフォーマンスをどうやって出すか。彼らはだらーーっとはやらないんですよ。彼ら仕事しないってなったら絶対仕事しないです。土日にSlackがついてることはほとんどない。
Ryohei:残業もないですか?
Yuji:残業するときはもちろんあるよ。たまにタイトな締切もあるので、それはやらなきゃいけないし。ただ、あんまりだらーーってはやらない。
Ryohei:すーーってやらないんですね。
Yuji:すーーっはないね(笑)
Ryohei:逆に日本のいいところはありますか?
Yuji:僕は人間味がある働き方をする日本のスタイルは好きです。日本の職場には「同志感」がある気がします。逆にこっちの人はやりたいことがあるとすぐ他の会社で働きだしますね。独り立ちしているプロが集まってる感じ。あとは…日本人はよく働くね。
Ryohei:中身は伴ってるんですかね?笑
Yuji:それはわかんないな(笑)ただ、これも結局会社のカルチャー次第だけど、こっちの人の方が無駄なことに対する嫌悪感がすごい。とにかく早く終わらそう、効率よくやろうって気持ちが強い。後は自分じゃなくてもできる仕事は基本やりたがらない。大げさに言えばテキストの打ち込みとか。基本的に効率的にできる方法をずっと探してる。
Yuji:Engineでは会社のメンバー全員で、2週間の振り返りを必ずします。いつも自分たちの働き方をいい意味で疑ってる。無駄を探したり、機械ができることは機械にやらせるように考えたり。そういう考え方はいいなって思います。
Ryohei:振り返ることって蔑ろにしがちですよね。
Yuji:俺もそうだったの。今でもそういうところあるけど(笑)でも、彼らを見てると変わってきましたね。あといつもすごいなぁと思うのは、もっとうまくできそうだなと思ったことは、彼らは絶対すぐに何かしらのアクションを起こす。
Yuji:例えば、本当は新しいことを勉強したいけど忙しすぎて無理だなって思うじゃないですか。彼らはまず、なんで勉強する時間が1時間もとれないのかって疑うんですよ。僕の場合は、毎日1時間の勉強時間が欲しい。仕事の終わりの1時間を勉強に当てようとしたんだけど、ずっとできてなくて。仕事を引きずってやっちゃうんですよね。リマインダーも設定したけど、それでもずっとできなかった。
Yuji:でも、僕も少しずつ彼らのような思考回路が身についてきて、なぜできないのかって考えたんです。いわゆる自己分析的な。いきついた結果は、俺は一旦仕事をやりだすとなかなか止められないタイプだと。だから勉強の時間を仕事前の1時間にしてみました。朝活ってやつ?そしたら続いてますね。
Ryohei:いい影響ですね!個人が集団に影響を受けて、そして集団が個人の影響を受けてっていうプラスのサイクルですね。
Yuji:でも、やっぱきついですよ(笑)例えば、日々の仕事でも半年くらい問題点を放置していることがあって、そういうのはリーダークラスから言われますよねぇ。「なんでやらないの」って。僕はなーなーな感じも好きです(笑)
Ryohei:逆に今の会社の気に入らないポイントありますか?
Yuji:(うーーーーーん)
Ryohei:ないですか?笑
Yuji:もともと会社に対して気に入らないって思ったことがあんまなくて。会社が嫌で辞めたいって思ったこともないですし。
Ryohei:日本にいたときも?
Yuji:そう。給料低いときとか嫌だと思ったけど、その時は、もっと良い給料もらえるように自分が頑張ればいい話だったので。強いて言うならここが日本じゃない、ってところかな(笑)
Ryohei:バンクーバーという都市が悪いと(笑)
Yuji: いや、今の会社が東京にオフィスがあれば最高だなって。バンクーバーすごい好きなんだけど、雨多いし。俺は雨が嫌いで(笑)
Yuji:あとは、もうちょいデザインの仕事がしたいかな。バンクーバーはフロントが足りないので、フロントとデザインの両方できますって言ったら、必ずフロントやらされますね。優秀なフロントはなかなか見つけられないです。僕はフロントができるデザイナーになりたかったんだけど、会社的にデザインができるフロントになってる気もします。
Ryohei:バンクーバーを代表するデザイン会社にいるYujiさんからみて、デザイナーとして求められる人物像ってどんな感じですか?
Yuji:俺が大きく思い浮かぶのは2つですかね。
Yuji:1つ目は、「自分が考えたデザインをちゃんと説明できる人」。デザインは問題を解決するのが前提で、きれいとか見た目がかっこいいとかは一番重要というわけではなくて。「なぜそういう見た目なのか」「なぜそういう処理をしたのか」ということを理論的に説得力もって説明できる人はうまくいくと思います。それができないと結構厳しい。いくら見た目がかっこよくても、必ず理由を聞かれます。それをしっかり英語で伝えられる人じゃないと難しいかなー。
Yuji:2つ目は、「トライ&エラーをたくさん早くできる人」。というのは、早く数多く失敗できる人はゴールに近いデザインにたどり着くのが早いから。失敗のアイデアや試行は、最後に行き着いたデザインにより説得力を持たせます。ビジュアル面を磨いていく作業というのは後からでもできるので、まずはコンセプトレベルとかでとにかくいっぱい案を出すことが大事かと。その中で一番うまく機能している、コミュニケーションできている案は自分も自信を持って出せますよね。俺もまだまだ出来てないところです。
Ryohei:Yujiさんも会社の人にもっと案を出せって言われていましたね。
Yuji:CCOから言われたね。クオリティはどうでもいいから、1時間でとりあえずたくさん案を出せと。あとからみんなで見て意見を出すからと。
Ryohei:いくつくらい出したんですか?
Yuji:1ページのモックで30個くらいかな。その決められた時間は、脳みそ爆発するくらいのフル回転で。デザインの試行錯誤をたくさんやるのはとにかく大事だと思いました。
Ryohei:自分がやってることを説明できるって大事ですよね。
Yuji:そうですね。だからやっぱりデザイナーはどうしても少し敷居が高いですね。
Ryohei:そういえば、Yujiさんと一緒に生活しててすごいなと思ったことがあって。
Yuji:え、なにこれ?
Ryohei:これは一緒に引っ越すって時の話なんですけど、家具を選ぶときにいっちいちこだわるんですよね。
Yuji:…あれ?今日こういうコーナーあったの?
Ryohei:ちゃんと褒めますから(笑)おしゃれなホテルの写真とか持ってきて、こういう部屋にしたいって家具を探すんですよ。納得するまで買わないし、とことん迷う。あとは、雑な服を着ない。
Yuji:服はねーこだわるねぇー。
Ryohei:あとは北米へのあこがれがあって、デザインも北米チックなデザインをするんですよ。
Yuji:うん、そうね。
Ryohei:そういうこだわりが、北米でデザイナーとして活躍できる理由の一つかなと思います。ピッキーなところも含めて全部。北米が好きで、すごくこだわる。他で妥協しようとすると「もうちょっと探さして」「あと一週間待って」て言ってくるんですよ。僕としては、はよしろって思いますけどね。
Yuji:自分でも結構本気で嫌になる時があるんです、これでも(笑)
Ryohei:そのおかげで、めっちゃおしゃれなテーブルが買えたんですけどね。探さないと見つからないんですよ。だからこの男は本物を知ってるんですよね。
Yuji:スティーブ・ジョブズと真逆ね。毎日タートルネック着れない。
Ryohei:ある意味、こだわりが強いって意味では一緒ですけどね(笑)
Ryohei:あと、自分で作ったものも好きですよね。ポートフォリオが完成したときも自慢してきましたね(笑)
Yuji:そうねえ。自分でまず褒めてあげないと(笑)納得いってない部分も全然あるけど、当時の自分が目指してたラインはちゃんとクリアしてるかな。作り込むことに対してはちょろっと寝る間を削っても別に大丈夫。
Ryohei:そういえば、給料はどうですか?
Yuji:悪くないです。日本のときよりは確実にもらってます。
Ryohei:どのくらいもらってるんですか?
Yuji:うーん。飲みに行くことに対して、気兼ねがなくなった?
Ryohei:わかりにくい(笑)
Yuji:…食べるご飯をあんま気にしなくてよくなった。
Ryohei:うーん。他には?
Yuji:あ、タクシーを使うのを気にしなくなった!
Ryohei:なんでそういう例えなの(笑)
Yuji:でもさ、よく考えて。これ、すごいことじゃね?
Ryohei:じゃあ、毎月MacBook Proをフルカスタムで買えるくらいっすかね。
Yuji:それはない…かな??
アドバイス
Suige:経験があるデザイナーさんで留学や海外就職を考えている型へのメッセージやアドバイスをお願いします!
Yuji:ありきたりなことでアドバイスにならないかもなんだけど、今、日本でできることを一生懸命やるのが一番かと。生活とか就活のテクニックはバンクーバーに来てからどうにかなるので、自分のスキルと英語をとにかく磨いてください。
Yuji:日本にいるときの方が時間には余裕がないかもしれないけど、心にも金銭的にも余裕があると思います。それって意外と大きくて、海外に行ったら、人間として生活に順応しなくてはいけないとか、無意識の疲れがあります。俺的には今できるだけの準備をするのがベストです。
Yuji:十分に準備していた方が、こっちに来て自信をもって就活もできると思う。こっちは、とにかく自信のある人間が好きです!できるだけの準備はしてきましたって胸張れるくらいは、やった方がいいと思います。
Yuji:…うーん。なんかもっとうまい言葉に落としたいな。
Ryohei:こだわりが強い(笑)
Yuji:日本人として海外で頑張ることって、想像しているより大変なこともあるし、そうじゃないこともあるじゃない。それは来てみないとわからない。
Ryohei:イチローの引退記者会見でも言ってましたね。
Yuji:俺の場合だと、バンクーバーに来る前は外国人対して俺はフレンドリーとか思ってたけど、今は全然そういうレベルじゃないっていうか。
Ryohei:今はもはや普通ですよね。
Yuji:そうそう。1人の人間として接することができるようになったなと思います。日本語が話せなくても英語が話せなくても人として接することができるように少しなりましたね。
Yuji:バンクーバーにきていろんな人種の人に会って、外国人って言葉が陳腐に思えるくらい、彼らは俺らが日本人ってことを全然気にしてない。自分たちで気にしてるより。英語が話せないのも、俺らが気にしてるより全く気にしてない。そういうのを肌で感じられただけでもすごいいい経験だったなと思います。
…あ、アドバイスまとまりました!
Suige:どうぞ(笑)
Yuji:仕事が見つからなかったとしても、決して失敗ではないと思います。僕自身、仕事が見つからなくても、スキルでも人間性でも絶対何かしら持って帰れると思ってたので、絶対就職しなきゃっていう気負いはなかったです。今思うと、それがうまくいった秘訣な気がします。仕事を見つけなきゃとか、英語が話せるようにならなきゃとか、何かしら得ないといけないって追い込まずに。行きたい、そして自分にとっていい時間にしようと思っている時点で、来れば絶対いい経験になる。
Yuji:そういう風に思えるまで準備して、来ていただきたいですね。
いかがでしたか?
北米でデザイナーとして働きたいと思っている方はもちろん、多くの人にとって参考になる部分があれば幸いです。
わたし自身、Yujiさんの考え方や働き方には勉強になることがたくさんありました!
「今どんなことやってるの?」「この2週間で一番成功したことなに?」「チャレンジはなに?」
自分の生活を振り返って、留学期間を有意義に過ごしていきたいと思いました。
「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。」という言葉の通りだなと思いました。
コメント