日本のデザイナーからインターナショナルなデザイナーへ。スキルを強みに活躍するMinamiさん
今回インタビューしたのは、バンクーバーでWebデザイナーとして働くMinamiさんです!
Minamiさんは日本で数年間デザイナーとして働き、一通りのスキルを身につけた後の挑戦として留学・海外就職を選択。バンクーバーに来て2年半、働き始めてからは約1年というタイミングでお話を伺いました。
高校でデザイン科に進学してから一貫してデザインの道を進み、それでも甘えることなく走り続ける姿勢がとても素敵です。日本にいた時から今まで目標は変わらず「インターナショナルなデザイナー」。日本でも多大な努力をしてスキルを身につけ、その積み重ねがバンクーバーに来てからも続いている、そんな印象でした。
“WORK”に励む一方で、家族を含む”LIFE”も重視されています。パートナーさんのお話や、女性ならではの妊娠・出産というライフイベントを考慮した将来の展望もあり、非常にリアルで共感できる内容だと思います!
経歴
―― 数年に及ぶ日本でのデザイナー経験を経てこちらに来たと伺っています。デザイナーになるまでの経緯を含め、略歴を教えていただけますか?
物心ついた頃からアートが好きで。その時は「デザイン」という言葉もわかっていなかったんですけど、後から考えると自分がなりたかったものは当時からデザイナーでした。なので自然と高校のデザイン科に進学して、卒業してすぐにグラフィックデザイナーになりました。
新卒で入った会社で一年働いたんですが、ブラックな環境だったので適応障害という病気になって…。労働時間も長かったし、縦社会だったり上司がパワハラ系だったりしたのもあると思います。それで業界から逃げたくなって、辞めて半年くらいで世界一周しました。ハタチ前のことですね。
でもやっぱりデザインが好きで、帰国してからはデザイナーキャリアを再開しました。いくつかのデザイン事務所を経験しましたが、その間でグラフィックデザイナーからWebデザイナーに移行していきました。
数年経って、自分でWebデザイン周りを一通りできるようになった段階があったんですね。ブランディングから、Webサイトのデザインからコーディング、SEOまで全部できる。そうなった時にステップアップしたくて、地元で一番良いデザイン会社を受けてみました。そうしたら簡単に受かってしまって「つまらないな」と。自分の将来が簡単に想像できちゃったんですよね。自分の目標が「インターナショナルなデザイナーになること」ということもあり、それなら一回挑戦してみようかな、と。受かったデザイン会社は辞退し、お金を貯められて且つ融通がきくようなスタートアップで働いて留学資金を貯めました。
そしてバンクーバー来たのが2015年7月です。半年くらいESLに通った後、2016年1月から専門学校のGraphic&Developmentコースに通いました。2017年1月にCOOP期間が始まって、その時から今までマーケティング会社で働いています。ロゴやWeb、UIなど幅広くデザインしていますね。
ーー なぜバンクーバーを選んだのですか?
北米の仕事の仕方を学びたくて。アメリカだとビザが大変だけど、バンクーバーならFrogの方々がいて前例やサポートがあるし、その方々への憧れもあったので。
Frogの存在はかなり前から知っていました。
ーー 先ほど「インターナショナルなデザイナーになりたい」というお話がありましたが、その気持ちはどこから来たものなのでしょうか?
日本で働きたくないからですね(笑)。社会人一年目で病気になりましたし。その時は「インターナショナルなデザイナー」とまでは思わなかったけど、早く力をつけて一人前になりたいと思っていました。世界一周から戻って来てから日本で働いていた期間は狂ったように、1年で360日くらい働いてましたね。海外に行くと決めてからはお金も貯めたくて。決めたら「すぐやりたい!」ってなっちゃって頑張りました(笑)。
英語について
ーー バンクーバーに来た時点で英語は喋れましたか?
全く喋れなかったです。外国人に話しかけられられたらフリーズするくらい(笑)。
バンクーバーに行くと決めてからも、ギリギリまで仕事していたこともあってほとんど勉強しませんでした。「勉強はバンクーバーでESLに通ってから」と思って。
ESLの最初は散々なレベルでしたよ、エレメンタリーレベルで(笑)。
ーー そこから約2年半が経って、今はどうですか?英語力に関して不安は無くなりましたか?
不安ばっかりですよ〜!(笑)
でも最近はミスを恐れなくなりました。「文法間違えても良いから言いたいことは言おう」と。リスニングも強いアクセントがなければ問題なく聞き取れるようになりました。
働いている会社が海外に支社を置いているのですが、支社と繋ぐSkypeミーティングでも最近発言できるようになって…。やっとここまで来たという感じですね。
ただ、働き始めた頃は大変でした。欧米の人は思ったことをすぐに口にするので、英語力が足りない分勢い負けしがちで。それで、デザイン力を認めてもらうことで、聞く耳を持ってもらうようにしました。この作戦は成功でしたね。同僚は私から良いアイディアを聞けると考えるようになって、優しく聞いてくれるようになりました。デザインの仕事ではアイディアをシェアする必要があるので、技術だけでなくコミュニケーション能力と理解力がとても重要です。
ーー ESL以外で英語のためにしたことはありますか?
勉強らしいことは何もしていないけど、自分の周りを英語環境にするよう意識はしていましたね。
友達づきあいもそうです。言語で決めるのもどうかとは思うんですが、最初は気になりますよね。内気なのでMeetupにはあまり参加していなくて、学校でできた友達とよく話していました。
それもあって、学校で出会ったオランダ人の友達と付き合ってコモン・ロー・パートナーになりました。もう2年くらい一緒にいます。
専門学校について
ーー Minamiさんが留学した専門学校の卒業生には学校を「クソだ」と言っている人が多いですが…
辛かったです(笑)。
受けたコースがGraphic&Web Developmentだったのに、どこにGraphicがあるんだろう?って感じで。フロントエンドとバックエンド両方学んで自分のスキルを強めたいと思って来たのに、授業は丸々バックエンドの内容でした。期待を裏切られましたね…。
でも他のみなさんも言っているように学校は一つのツールでしかないし、学校のことは最低限にやって残りの時間を自分の勉強に回しました。新しいことを学ぶこと・バックエンドを学ぶことはプラスになりますし、良い機会だったとは思います。プログラミングの考え方を全く知らなかったので、ロジカルに考えるスキルという意味では仕事に役立っている面もあります。
ーー 在学中にお仕事はしていましたか?
日本の会社から仕事をもらったり、アメリカなどから単発プロジェクトのオファーも受けていました。オファーはDribbble経由がほとんどで、常に仕事がありましたね。日本からの仕事はWebデザインが主で、アメリカなどの方はアプリやUIのデザインもありました。
ーー 学校よりそちらの方が勉強になったかもしれませんね(笑)
そうなんです!
ーー アメリカなどから仕事を受けていて良かったことはありますか?
仕事の進め方、交渉の仕方を学べたことですね。デザインについても、北米のデザインは日本と違うので勉強になりました。
ーー 初めは北米流の仕事の仕方・デザインを知らない状態だったはずですが、それでもオファーをもらえたのはなぜでしょう?
知らないなりに勉強しながら、パーソナルプロジェクトとして自己作品を作ってdribbbleに上げていました。それを気に入ってもらえたみたいです。
ーー 仕事を受けながらの時間管理は大変そうですよね
そうですね、専門学校に行っていた間は全然プライベートが無かったです。プライベートな時間を持つと罪悪感を感じちゃって…。英語の勉強のためとはいえ映画を観るのにも罪悪感があったので、仕事をしながら後ろで流したりしていました。なので、観たことあるような気がするけど観たことない映画がたくさんあります(笑)。
これが良いかどうかはわからないけど、そういうストイックな、「とにかくやる」という時期も必要ですよね。
方向性の決定
ーー Minamiさんは渡航時からデザイナーという方向性を持っていたようですね
そうです。
バンクーバーに来る前はデザインだけでの海外就職は厳しいと思ってたんです。だからバックエンドも学んでスキルを強化しようと思ってて。
でも、今となってはデザインだけで働いていけるという自信が芽生えてきています。業務内容もデザインに集中していますし。
バンクーバーに来る前からの夢も、気づいたら叶ってたんです。「あなたのデザインが好きだから一緒に仕事しましょう」と海外からオファーをもらってプロジェクトベースで働くっていう夢だったんですが、さっき話した通り、学生時代に実現していました。
就職活動
ーー 経験者で、学生時代から海外からオファーをもらって…というお話を聞くと順調に就職できたのではないかと思うのですが、実際どうでしたか?
デザイナーって倍率高いと思うんですよ。しかもCOOPということもあり、レジュメ結構送ったけど全然でした。50社くらいには送ったと思います。デザイナーだけでなくフロントエンドエンジニアなど職種を広げて応募しました。
学校は就活を全然サポートしてくれなくて…。就活準備も個人でやるしかなく、セナさんに相談してポートフォリオにアドバイスをもらいながらやっていました。連絡をもらえたのは数社ですね。連絡来たうちの多くはフロントエンド系です。デザイナーはポートフォリオに全てが出るので、「とりあえず話してみませんか?」という連絡はなかなか来ません。
それでも最終的にはマーケティング会社からデザイナー職でオファーをもらうことができ、そこに入社しました。
ーー 面接ではどんなことを聞かれましたか?
まだ英語が全然ダメで、面接官が何を言っているかわからない場面が結構ありました(笑)。わからないところは濁しつつ、給与のことなど基本的なことはちゃんと会話しましたね。あと、面接の中で「3日以内にこれを作って」という課題が出て、提出しました。
ーー ということは、技術のポイントが高かったということでしょうか?
そうですね。担当者が課題を受け取った時に「よっしゃー!採用ー!」ってなったらしいです(笑)。
実はこの会社が決まってすぐに、別の会社からフルタイムのオファーがDribbble経由で来たんですよ。しかもすごく良いポジションで。デザインとフロントエンドがうまく融合された仕事だったんです。
私は自分のデザインをHTML、CSS、JavaScriptあたりでコーディングするのも好きで、そういう仕事をしたいのですが、バンクーバーにはほとんど無いように思います。デザインとコーディングがはっきり分かれているか、デザイナーとコーダーの中間の仕事が多いです。中間の仕事だと扱うのは自分のデザインじゃないので、私のやりたいこととは違います。
それでとても魅力的なオファーだったんですけど、就職先が決まった後だったので残念ながらお断りしました。
実際に働いてみて
ーー マーケティング会社のデザイナーということですが、どのようなお仕事内容なのでしょうか?
働いている会社は、製造者から商品を仕入れてWebを通して売るというビジネスをしています。だから商品を売るためのWebデザインが主な仕事です。デベロッパーによってコーディングされた自分のデザインをチェックして、CSSを修正したり、スタイルガイド制作時ににCSSの指定もします。
Webデザイン以外にも幅広い仕事をやっていて、UIを作ったり、商品を管理する自社システムのインターフェイスを作ったり。ロゴやパッケージのデザインもしますし、一時期は人が足りなくてビデオ部門に行っていました。
たまに翻訳もやりますね、日本人が私1人しかいないので。日本もマーケットなので、英語で作ったサイトを日本語に訳しています。基本的に翻訳は外注するんですが、急ぎの時はやっています。
主な業務であるWebデザインのプロジェクトは、プロジェクトマネージャー、コピーライター、ディレクターと一緒に進めます。一つの商品のサイトが終わったら次のサイトを作る、という流れです。
インハウスの事業がほとんどなので、その分ワークフローなどを常に改善していかなければいけません。デザイナーがオフィスに5人くらいいて、チームでミーティングしながらやっています。
ーー 日本で働いていた頃と比較して、今の環境はどうですか?
日本の環境については、単に労働時間が長いという話ではなく、ビジネスの仕組み自体がまどろっこしいと感じています。ダイレクトな文化じゃないと思うんですよね。ミーティングにしても核心からそれてそれてそれて、相手を伺いながら、とか。クライアントにNOと言わない文化もあります。そういうのが辛かったです。
今働いている環境では全てがダイレクトです。思ったことは同僚とも全て話し合いますし、今日も口喧嘩みたいなミーティングをずっとしてたんですけど(笑)。側から聞くと喧嘩しているように見えるかもしれません(笑)。
あと欧米は褒める文化なので、同僚にデザインを見せるといつも褒めてくれてモチベーションが上がります。
早く帰る文化で、仕事に集中して取り組めるのも良いですね。日本だと「先輩が残ってるから帰れない」とか「クライアントが夜にミーティングしたいから行く」とかあるじゃないですか。
ーー 人間らしさがちゃんと出せる環境という感じがしますね。他の方の話を聞いていても、バンクーバーではそのような環境が多いと思います
そうですね。日本にいた時は”LIFE”が無かったなぁと思うんですが、今はバランスを取りやすくて、プライベートを楽しめています。
働き始めた時はそんな余裕無かったんですけどね(笑)。英語が不自由だったのもあって、もう怖くて怖くて。会社にいない間も何かプロダクティブなことをやっていないと不安で仕方なかったです。プライベートプロジェクトだとか、何かしていないと取り残されそうですごく怖くて。
半年ちょっと経って、「慣れてきて同僚の信頼も得られたから大丈夫だ」と思えた時にようやく一息つけました。
ーー 2017年1月から働いているということは、もうすぐ1年ですよね
そうです。この前ワーキングホリデーのビザに書き換えて来ました。
最近決断したんですけど、今の会社でPR(永住権)を取ろうと思っています。ワーキングホリデービザだと一年しかいられないので。会社にワークビザのサポートをお願いするのも一手段ではありますが、会社の負担が大きいからそもそも難しいし、そこまでして取りたくないと思っています。
ーー 申請は順調に進んでいますか?
はい。ただ、申請の枠が何種類かあって、早くPRを取得できる可能性のある枠で申し込むには英語のテストの高いスコアが必要なんです。もうすぐCELPIPという、カナダ人が作ったカナダ向けの英語のテストを受けます。申請に使える英語のテストがIELTSとこれの2種類あって、CELPIPの方が私の場合は都合が良かったんです。
あと、PRを申請するに当たってお給料を上げてもらわなければいけなくて、交渉がやっと終わったところです。大変でした…。もともと学生サラリーだったので、そこから社会人レベルまで上げてもらうのはなかなか…。
職種も変えてもらいました。もともとグラフィックデザイナーとして入りましたが、それだとPR申請時の加算ポイントが少なくて。実際にやっていることがWebやUIデザインなので本来の職種に修正してもらった形ですが、おかげで申請が通りやすくなりました。
ーー CELPIPに向けてどんな勉強をしていますか?
オンラインのサンプルテストがあって、それを解いています。CELPIPはオンラインテストで、スピーキングもマイクに向かって喋るので、慣れるためです。
今後の展望
ーー 今後はどんなことをして行きたいですか?
PRを取って自由を得て、場所にこだわらない生活をしたいですね。
元から「インターナショナルなデザイナーになる」っていうのがゴールなので、特にバンクーバーにはこだわっていません。PRを取ろうとしているけど、それによって選択肢が増える。選択肢が増える=自由だと思っています。ヨーロッパに行くかもしれないし、他の国に行くかもしれないし…。
いま北米の会社でデザイナーとして仕事をすることで欧米スタイルの働き方を学べていますし、それが身についたらフリーランスでも会社でもやりたいことできるな、と。
ーー その夢についてパートナーさんともお話していますか?
まだ何も決めていないので具体的には話してないですね。動くとしても、もう何年かバンクーバーで働いてからと思っています。女性は難しいですよね、妊娠とか出産とかもありますし…。それが大きなターニングポイントになるんでしょうけど。子供がいれば住む環境も重要になってきますしね。
パートナーってあまりインタビューには出てこないけど重要な存在ですよね。ライフスタイルに深く関わってきますし。
彼は業界未経験から私と同じ専門学校に留学して、今はゲームプログラマーをしています。職業としては別の国に行くのも問題無さそうですね(笑)。
ーー 次に住みたい国はありますか?
例えば、すごく可能性は低いですけど、サンフランシスコでの仕事のオファーが来たら行きますよね。アメリカのワークビザを取るのはすごく大変なので、もしそのチャンスがあれば絶対行きます。
あと、彼がオランダ人なのでオランダもあり得ますね。オランダに限らずヨーロッパの最近のデザインも素敵で、素敵なデザイナーさんも多いです。Sketchもオランダの会社なんですよ。ヨーロッパは英語で仕事できるし子育てする時のメリットも大きいですね。
知ってますか?オランダって、外国人の中で日本人が一番ビザ取りやすいんですよ。歴史的背景とかで。起業やフリーランスをやろうとしたら簡単にビザが取れるみたいです。
留学を考えている人へのアドバイス
ーー 留学を検討している方に向けて一言お願いします
考えているということはやりたいってことですよね!
興味あるならやるべきだと思いますし、失うものはないんじゃないでしょうか。日本に戻って就職する時にも絶対プラスになる。特に日本人は他の国に比べて海外に出る人が少ないと思うので、優遇されるんじゃないかなと。
やらないで後悔するより、やった方が良いですよね!
「やらないで後悔するより、やった方が良い」まさにそう思います!
スキルを持っている経験者の方にとっては英語がネックかもしれませんが、Minamiさんのように技術力でカバーすることもできそうです。未経験者の私にはうらやましい限り…。
みなさんがやりたいのに踏み留まっている理由は何でしょうか?
それは本当に取り除けないものでしょうか?
留学・海外就職に限らず、Minamiさんのように「やりたいことを実現するためにどうしたら良いか?」と考えて動くことが、満足のいく人生に繋がるはずです。
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