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Frogが選ばれるわけ
私達がご提案していることは、単に英語や観光のための海外渡航ではありません
圧倒的な海外就業実績
GAFAMやユニコーン企業、北米ローカル企業での就職実績を基に、日本では得られないキャリアの可能性をご提案します。
北米最大規模のTechコミュニティ
現地で活躍するエンジニアとの情報交換や人脈形成を通じて、コミュニティ不足という国外挑戦の最大の課題を解消します。
ITに特化した500名以上の実績
「英語ができるようになる」という漠然としたサポート実績ではなく、IT分野の北米進出に特化した実績ならではの充実サポート
日本国内外を意識したキャリア提案
日本、カナダ、アメリカなどの国ベースのキャリア相談はもちろん、SaaS、エージェンシー、個人開発、スタートアップなど、あらゆる面からのキャリア提案が可能
イベント情報
イベントはすべてPacific Time(太平洋時間)でご案内しています
開発者コミュニティ主導のオープンイベント『Frog Builders Sunday』のお知らせ
週末に集まって自由に開発・学びに取り組むコミュニティイベントです
Frog ものづくり発表会 ─ 個人開発・デザイン・プロジェクトを語る会
「自分の手で何かをつくる」。その熱量をFrogメンバー同士で共有し合うイベントが再びスタートします
海外経験者って日本企業に必要なの?Sonyのデザイナーに聞く、帰国者の実態を追うウェビナー
Sonyでデザイナーとして活躍する元FrogメンバーのYujiさんに聞くクリエイティブ職の海外キャリア!
サービス内容
Frogが提供している各種サービスに関するご説明
サポート内容
渡航後に提供している各種サポートに関するご説明
最新インタビュー
日本で営業からデザイナーへ転身し、カナダでUI/UXデザイナーとして活躍するYunaさんに聞く海外キャリア
今回お話を伺ったのは、日本で営業職からキャリアをスタートし、デザインスクールを経てUI/UXデザイナーへと転身、そしてカナダでの就職を実現したYunaさんです。 学生時代からデザインに関心を持ちながらも、最初は人材会社の営業職に就職。その後「プロダクトを作る側に携わりたい」という思いからデザインの道へ進み、日本ではマネーフォワードでプロダクトデザイナーとして経験を積まれました。さらに海外で働くチャンスを求め、Frogとの出会いをきっかけにカナダへ。 インタビューでは、日本とカナダでのキャリアの積み上げ方の違い、ポートフォリオ作成の工夫、PEO制度を使った就労の実際、そしてアメリカ企業で働くメリット・デメリットなど、現地でしか得られない貴重なお話を伺うことができました。これから海外でのキャリアを目指す方にとって、多くの気づきやヒントが詰まった内容です。 Eri: じゃあ昔からの経歴をお願いします。 Yuna: はい。まず日本で大学を卒業して、新卒ではデザイナーではなくて、人材会社の営業として就職しました。そこでだいたい1年半ほど働きました。 もともとデザインはすごく好きで、学生時代にサッカーの大会のパンフレットやチケットを制作するボランティアのようなことをしていたんです。ただ、グラフィックデザイナーとしてやっていくのは難しいだろうなと感じていたので、全然違う方向で営業職を選びました。 営業職では、フリーランスの方をお客さんに紹介する仕事をしていて、そこでサービスデザイナーやUXデザイナーといったビジネス寄りのデザイナーの方々と出会いました。「こういう仕事があるんだ」と知ったのが転機でしたね。 もともと海外に行きたい気持ちはあったのですが、営業は言葉で勝負しなければならないので海外では難しいと思いました。そこで「手に職をつけたい」と思い、いいタイミングだと思って会社を辞め、日本でデザインスクールに通うことにしました。 デザインスクールでの学習とウェブデザインの仕事 Yuna: その後日本で半年ぐらい学んだ後、デジタルハリウッドに通いました。そこで学んでいるうちに、卒業生の会社にアルバイトとして拾ってもらいました。 最初はデザイナーではなく、WordPressの入力作業のような単純な仕事から始まりました。そのうち少しずつデザインの仕事も任せてもらえるようになり、ワイヤーフレームファイヤーを作ったり、下層ページのデザインを展開したりしました。トップページなど重要な部分は当時の自分にはまだ力不足で任せてもらえませんでしたが、それでも8ヶ月ほどウェブデザインの経験を積みました。 その中で、プロモーションのように短期間で使われるものではなく、長く使われ、改善を重ねて成長していくプロダクト作りに関わりたいと考えるようになりました。それで転職活動を始め、日本でマネーフォワードに入社しました。 入った部署はB2Bで中小企業向けに会計ソフトや給与ソフトなどを開発しているチームでした。そこで初めてプロダクトデザイナーとしてUI/UXの仕事に携わることになりました。それが今から4年ちょっと前のことです。 海外就職への思いとFrogとの出会い Eri: 当時から、いつか海外に行こうと考えていたんですか? Yuna: マネーフォワードに入社した頃は、海外就職なんて考えてもいませんでした。受かると思っていなかった会社にたまたま受かり、ありがたく入社させてもらったという感じでした。 その中で、会社に海外拠点やグループ会社があることを知り、実際にベトナムで開発しているプロダクトに関わる経験をしました。それで海外で働きたいという思いがさらに強くなり、「具体的にどうすれば海外で働けるのか」を考えるようになりました。 イギリスやアメリカの大学院進学も調べましたが、そのタイミングでFrogに出会ったんです。「大学院に行くより費用もかからないし、カナダですぐ働けそう」と思いました。 3年前の夏頃にFrogを知ってから、わずか2〜3ヶ月後には会社に退職を伝えていました。自分にはこの道しかないと思ったんです。 Eri: なるほど。他にもいろんな国の選択肢があったと思いますが、その中でカナダを選んだ理由は? Yuna: どこに行くにもお金がかかりますし、当時ちょうどデジハリの学費を払い終えたばかりで余裕がなかったんです。英語圏で探していたので、カナダは英語圏だし、アメリカやシリコンバレーにも近そうだし…という軽い気持ちでした。 Eri: フィーリング的な選び方だったんですね。 Yuna: そうです。深く考えて「カナダに行きたい」と思っていたわけではなく、英語圏ならどこでもいいという感じでした。 カナダでの学校と就職活動 Eri: カナダに来てすぐに就職活動を始めたんですか?それともまずは学校に? Yuna: 学校に通いました。CICCCに入学して1月から授業が始まりました。その間も日本の仕事を業務委託で少し続けていました。 入学から2〜3ヶ月経ってようやくポートフォリオを作り始めましたが、現地で「カナダの就職は意外と厳しい」という話を聞くようになり、「正攻法だけではなく別の方法で探した方がいいかも」と思うようになりました。 ボランティアから最初の仕事へ Yuna: 最初の仕事は、Vancouver Design Communityというコミュニティイベントでのボランティア活動がきっかけでした。 「ぜひボランティアをさせてください」とお願いして参加していたところ、一緒に活動していた方から「自分の会社で求人があるけどどう?」と声をかけてもらいました。 他にも少し応募はしていたんですが、学校に通っていることもあり、ガンガン応募するよりは、ちょうどパートタイムでいいと言ってもらえたので「じゃあ働きます」と決めました。これがカナダでの一社目の仕事です。 カナダ一社目での経験 Yuna: 一社目は制作会社というか、開発会社のようなデベロップメントスタジオでした。デザイナーは私と、紹介してくれた方の2人だけ。私はUXをメインで担当しました。 そこで4〜5個のプロジェクトに携わりました。例えば、先住民コミュニティのアプリなどカナダらしい案件もありましたし、母親2人で立ち上げた会社の子どもがオンラインセーフティーついて学ぶゲーミフィケーションアプリなどもありました。 日本で働いていたマネーフォワードではBtoBの堅いプロダクトが多かったのですが、この会社ではBtoCやカルチャー的な要素が強いプロジェクトもあり、幅広い経験をさせてもらいました。 カナダでのスキル習得について Eri: カナダに来てからのUX/UIのスキルは、学校や実務を通じて学んだんですか? Yuna: そうですね。ただ正直、学校のカリキュラムはあまり役に立たなかったと思っています。デザイナーを目指す人向けの内容だったので、自分が独学や日本での実務で学んできたことと重なる部分が多かったです。 結局のところ、日本から受けていた仕事や、カナダでの実務の中で失敗を重ねながら学んでいったのが一番大きかったと思います。 ポートフォリオ作成の工夫 Eri: UX/UIデザイナーの就職活動ではポートフォリオがとても大事だと思うんですけど、私自身も苦戦していて…。その中で、Yunaさんがご自身のポートフォリオを作るときに意識したことや気をつけたことはありますか? Yuna: ポートフォリオ…。もう遠い昔のことのような気がします(笑)。正直、私はポートフォリオ作りがすごく苦手で、全然頑張れなくて…。でも意識したことは大きく2つあったかなと思います。 1つ目は、一緒に頑張る仲間を見つけたことです。一人でやるのは本当に大変で、適当に流してしまうこともあると思うので、私は「もくもく会」というものを主催していました。前の会社は金曜日が休みだったので、金曜と土曜の午前中にカフェに集まって、黙々とポートフォリオを作る時間にしました。「今日はこれをやります」と宣言して、みんなで作業するんです。 Eri: 参加していたのはデザイナーさんたちですか? Yuna: そうです、そうです。去年はよく開催していたんですけど、転職してからはあまりできていないんです。 Eri: そうなんですね。もしよかったら、そのもくもく会のグループを教えてほしいです。私も仲間探しに苦戦していて…。同じモチベーションの仲間と取り組めたら、自分ももっと頑張れる気がします。 Yuna: ぜひ!もくもく会のメンバーの一人はカルガリーの会社でインターンが決まったりと、みんな活躍しているので刺激になりますよ。 ポートフォリオ発表会の重要性 Yuna: もう一つ大事なのは、ポートフォリオ発表会のような場を持つことです。 Eri: 確かに。作っても、見せる相手がいないと完成しないですよね。 Yuna: そうなんです。ポートフォリオって、見せないと永遠に完成しないんです。だから、「プレゼンから始めてもいい」と思っていて。実際に人に見せる練習をすることで、どんな情報が必要で、何を削るべきかがクリアになっていくと思います。 友達とそういう発表の場を作ったりしながら、自分のポートフォリオを仕上げていきました。 それから、ポートフォリオも自分のプロダクトのひとつだと思っています。自分をどう見せたいか、どう売りたいかというブランディングをしっかり考えた上で、作品を選ぶことが大事です。「なぜこのデザインにしたのか?」と聞かれたときにちゃんと答えられるように準備することが、他の人と差をつけるポイントだと思います。 Eri: なるほど。ありがとうございます。 現在の仕事について Eri: では、現在のお仕事についても詳しく伺いたいです。答えられる範囲で大丈夫なので、教えていただけますか? Yuna: 今はアメリカ本社のヘルスケア企業で働いています。ただ、拠点はアメリカにあるものの、社員はヨーロッパやオーストラリア、北米など世界各地にいて、完全なリモートファーストの会社です。 その会社が持っているのは、咳の回数をカウントできる技術なんです。例えば「ゴホゴホ」という咳をAIで検知して回数を数える。それを応用して、薬を使わずに慢性的な咳を行動療法で治療するアプリを開発しています。 私はそのアプリの日本向けプロダクトに携わっています。会社は日本の製薬会社とパートナーシップを結んでいるので、社内は英語でやり取りしながら、最終的には日本語にローカライズされた製品を作っています。 Eri: すごく面白いですね!そんな技術を使ったアプリがあるなんて初めて聞きました。 日本とアメリカ企業の働き方の違い Eri: 実際に働いてみて、日本でのお仕事との違いや、驚いたことはありますか? Yuna: 驚いたこと…そうですね。個人的には、日本の事業会社とアメリカの事業会社では働き方に大きな違いはないと感じています。それよりも、事業会社と制作会社の違いの方がデザインの観点では大きいと思います。 日本と北米の企業の違いでいうと、働き方の自由度は大きく違います。特に今の会社はかなり緩くて、どこから働いてもOKなんです。 Eri: 場所は本当に関係ないんですか? Yuna: そうです。 Eri: 例えば日本にいても働ける? Yuna: 時差の関係でアジアから働くのは結構大変なんです。日本の朝早くに対応しないといけないので。でも2〜3週間メキシコでワーケーションはしてました。そういうふうに、忙しいながらも自分の望むライフスタイルを実現できるのは日本と大きな違いですね。 日本だと「8時間しっかり働く」というルールが厳しくありますが、今の会社はもっと自由で、その点はとても働きやすいです。 PEO制度について Eri: 今働かれているのは、PEOという制度を使われていると思います。それについて質問させてください。この制度を私自身も知らなかったのですが、知ったきっかけや使うに至った経緯を教えていただけますか? Yuna: 何がきっかけだったかな…。日本にはあまり帰りたくないという思いが強くて、来た当初からFrogの藤井さんに永住権を取るまでのプランをかなり細かく見てもらっていました。前の会社はBC(ブリティッシュコロンビア州)に拠点がある会社だったので、BCPNP Techを使って取ろうと思っていたんですが、レイオフがあって、さらにBCPNP Tech自体も難しくなってしまって。「どうしようかな」と考えていたんです。 Yuna: 今の会社に入るときは、まだコープビザの期間中だったので(PEOのことは)特に相談していませんでしたが、ビザ切り替えのタイミングで「こういう制度があって、カナダに住みたいと思っている」と会社に相談しました。そうしたら、とても前向きに対応してもらえることになって、そのタイミングで進めようと思いました。 Yuna: たぶん、自分のステータスが変わるたびに藤井さんに相談しています。「これ、どうしたらいいですか?」「次はどんな手を打てばいいですか?」という感じで。その流れの中でPEOを教えてもらいました。使おうと思った背景には、会社がアメリカ本社であることと、カナダの職歴が貯まらない問題がありました。カナダにいたい思いがあるので、まずは最初の数ヶ月でパフォーマンスを出し、PEOとして会社にお願いして対応してもらえるようにした、という感じです。 Eri: 知らないだけで、そういう制度がいろいろあるんですね。だからこそ、自分の情報をアップデートしていくのが大事なんだなと。 Yuna: そうですね。Frogさんにちょこちょこ相談するのが一番確実だと思います。ビザ制度は変わっていくので、「生活がこう変わった」「今こういう仕事をしているが、どうするのがいいか」と相談すると、気軽に対応してもらえるはずです。 カナダ在住でアメリカ企業で働くメリット・デメリット Eri: なるほど。カナダにいながらアメリカ企業で働くスタイルには、メリットやデメリットはありますか? Yuna: あると思います。会社にもよりますが、私の場合はカナダ在住・アメリカ本社勤務で、会社にカナダの拠点がないため、アメリカの会社に直接、業務委託(フリーランス)として雇われています。なので支払いはUSドルでした。これはPEO導入前の一番のメリットでしたね。 Eri: そう、やっぱり全然違いますよね。 Yuna: それ以外は「すごく良い点がたくさん」というほどではないかもしれません。それに、カナダに法人がない状態で採用しているアメリカ企業は、そこまで多くない印象です。多くの会社は税務や雇用管理の観点からカナダに拠点を持っています。うちの会社は小さくはないのですが、その意味で一般化しづらいところもあり、あまり役立つことを言えないかもしれません。 Eri: なるほど。カナダもアメリカも、そんな感じですかね。 Yuna: 個人的に思うのは、「アメリカ人はよく働く」ということ。肌感ですが、本当によく働く。休日や時間よりパフォーマンス主義というか。カナダの会社で働く良さも感じますし、アメリカの会社で働く違いも実感しています。 Eri: そうなんですね。北米で一括りに考えがちですが、違いがありますね。 これからのキャリアについて Eri: これからのキャリアで、目指していることややってみたいことはありますか? Yuna: そうですね、今はすごく悩んでいる最中です。少し脱線しますが、AIの登場でUIを作ること自体はだいぶ簡単になると思っています。プロダクトデザイナーの仕事は幅が広いので、リサーチ、要件定義、サービスデザイン(デジタルの外側も含む体験設計)、デザインシステム構築など、何でも屋になりがちだと感じています。 Yuna: まだ「こうしたい」と決め切れてはいませんが、AIがあるからこそ、“作る” ことに専念するより、何を・誰のために作るか/どんなコンセプトで作るかといった上流に寄りたい気持ちが強いです。機能はどの会社でも作れるけれど、コンセプトがなければ機能は決められない。なので、プロダクトマネジメントやコンセプトメイキングの方向でキャリアを築けるといいのかな、と。 Yuna: とはいえ今の仕事は楽しいです。スタートアップなので、会社やチームに足りないところを積極的に埋める動きも好きです。その一方で、今後自分は何を専門にしていくのかは、そろそろ決めていきたいと思っています。 Eri: わかりました。ありがとうございます。 海外就職を考えている人へのアドバイス Eri: 最後に、カナダに限らず留学や海外就職を考えている人へアドバイスをお願いします。 Yuna: 「行きたい」と思ったときに行くのがいいと思います。「行きたい」と思った瞬間が一番エネルギーがある。海外へ移る、学校へ行く、仕事をするのはすごくエネルギーが要ること。綿密な計画は必要ですが、まずは直感や強い“やりたい”の気持ちを大事にしてほしいです。 Yuna: もちろん大変な時期はあります。人によっては、「デザイナーは稼げそうだから」「エンジニアは稼げそうだから」という理由で選ぶこともあるけれど、今のカナダの状況だと、それだとしんどくて続かないかもしれません。「どうしてもこの仕事をやってみたい」という気持ちがある方が、難しい局面でも踏ん張れる。私自身も“やりたい”を信じて乗り越えてきたと感じています。 Eri: 本当に興味深いお話でした。ありがとうございます。 Yunaさんのインタビューを通して印象的だったのは、「やりたい」という直感やエネルギーを信じて行動に移してきた姿勢です。営業職からデザイナーへ、そして日本から海外へと大きな転換を重ねるなかで、その選択の裏には必ず「本当にやりたい」という強い気持ちがありました。 また、ポートフォリオ作成における仲間づくりや発表会、さらにはカナダでのキャリア構築におけるコネクションの重要性など、実践的なアドバイスが随所にちりばめられていました。特に「PEO制度を活用してアメリカ企業に勤めながらカナダに在住する」という実体験は、今後の働き方を考える上で非常にユニークで参考になる事例です。 最後にYunaさんは「やった方がいいではなく、やりたいを信じて動くことが大事」と語ってくれました。海外就職やキャリアチェンジは多くのエネルギーを必要としますが、その根底に「やりたい」という気持ちがあれば、困難を乗り越える力に変わるのだと強く感じました。
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文系から大手、そして海外へ。コードを書き続けた先にキャリアの自由を手に入れたYamatoさん
今回は、日本で大手企業・日立からキャリアをスタートさせ、Web系ベンチャー、医療系スタートアップを経て、現在はカナダ・オタワのヘルステック企業Fullscriptでフルスタックエンジニアとして活躍されているYamatoさんにお話を伺いました。 文系出身ながら、社会人になってからエンジニアリングの世界に飛び込み、「コードを書き続けたい」という意思を軸にキャリアを築いてきたYamatoさん。 日立での長期研修、メドピアでのフロントエンド部署立ち上げ、そしてコロナ禍を挟みながらの海外就職挑戦まで、エンジニアとしての道のりは一貫して「自分の意思で動く」ものでした。 同じエンジニアとして話を聞く中で、“行動力と一貫性”という言葉が何度も頭に浮かびました。 ここからは、Yamatoさんのキャリアを振り返りながら、日本とカナダでの働き方の違い、リセッション期の就活、そして海外挑戦に込めた想いをたっぷりと伺っていきます。 日本でのキャリアの始まり Senna: あらためてなんですが、日本での経験年数、結構長かったですよね。Yamatoさん、何年ですか。 Yamato: 7〜8年ぐらいですね。最初は日立からエンジニアとして入りました。もともと大学時代からエンジニアを目指していたわけではありません。大学は経済学部で、エンジニアとは関係ない学部でした。ただ就職活動のときに、たまたまSE系の会社の説明を聞いて「あ、これ面白そうだな」と思いSEを目指してみようと考え、それをメインに就職活動をしました。 Senna: それは、経済学という勉強していたことからはずれますけど、日立の説明会がすごく楽しかった、みたいな? Yamato: 最初は日立の説明会ではなく、別の会社だったんです。そこでSEに興味を持ち、日立を含めたいろんなSE系の会社を受けました。 Senna: なるほど。珍しいですね。SEの説明会って僕は出たことがないので「そうなんだ」としか言えないんですけど、そんな心惹かれる説明だった? Yamato: なんか心惹かれましたね。なぜかはちょっと覚えていないですけど。言語化しづらい部分もあると思います。 Senna: 大学時代はプログラミングは触ってないということですか? Yamato: 全然。例えば、当時のSE採用は未経験・文系でも採ってくれることが多かったので、特に苦労した覚えはあまりないですね。 転職と新たな挑戦 Senna: NTT系とかもそうですけど、大手の研修ってすごいですよね。もう学校じゃんっていう。 Yamato: あれは学校ですね。おっしゃるとおり、4月入社で9月くらいまで研修していた記憶があります。 Senna: じゃあ半年くらい。やっぱり大手からのエンジニア人生だったと思いますが、半年が研修だとすると、その後1年くらい勤めて次の会社に移られた、ということだと思います。やっぱり大手の仕事の仕方とか、違う環境を求めて転職? Yamato: 理由は何個かあります。まず自分でコードを書きたいと思ったこと。日立だとキャリアレンジが上がるにつれ、コードを書くより人をマネジメントする方向にシフトしていきます。1年目はコードをガンガン書いていて、それが自分の性に合っていて楽しかった。もっとコードを書くキャリアを続けたいと思ったのが一つ目。二つ目は、いわゆるJTC(日本的大企業)の雰囲気や上下関係が自分に合わないと感じたこと。Web系のベンチャーに入ったほうが合うのでは、と考えて転職しました。 メドピアでの成長とカナダへの興味 Senna: 最近、日本の大手で働いている外国人エンジニアの話を聞く機会が多いですが、その話に重なりますね。縦社会構造の問題は日本にいる外国人エンジニアやデザイナーさんからもよく耳にします。じゃあ次の会社さんは小規模な会社? Yamato: マーケティングアプリケーションズという会社で、Webアンケート等のツールを作っている会社です。 Senna: その後がメドピアさん。ここはRailsエンジニアとして勤めた会社ですか? Yamato: そうです。最初はRailsエンジニアとして入り、在籍の半分くらいからシニアのフロントエンドになりました。当時、会社にフロントエンドに詳しい人があまりいなくて、自分でフロントエンドの部署を立ち上げて、採用や技術的な布教も含めて色々やっていました。 Senna: メドピアさんって日本の会社ですよね。名前的に外資っぽいかなって一瞬思ったんですが Yamato: 日本です。医療系のコミュニティサイトを運営している会社がメインです。 Senna: メドピアさんでは在籍3年2カ月くらい? Yamato: 3年2カ月ですね。前半がRails、後半がフロントエンドです。後半にシニアへ移りました。フロントエンド大好きっ子でした。 カナダでの就職活動 Senna: そのあと、カナダに行くつもりだったけど、コロナで行けず……という流れですよね。 Yamato: そうです。メドピアをやめたあとカナダに行くつもりでしたが、コロナで行けなくなった。すでに会社には辞めると言っていたので無職になるところで、一旦国内で転職し、コロナが終わってからカナダに来ました。 Senna: やっぱり。2020年のあの絶望感は覚えています。じゃあその時点で海外挑戦の熱量はすでに高かった? Yamato: 前職在籍当時の先輩がカナダで就職していて「こういう選択肢もあるんだ」と分かったのが大きいですね。自分もやってみたいと思いました。 英語学習の継続 Senna: 僕も実はそのタイプですね。周りにバンクーバー行った人がいて。Yamatoさんはその先輩の背中を見て「こういうキャリアもある」と考えたわけですね。もしその出会いがなかったら、バンクーバーを考えていなかったかもしれない? Yamato: そうかもしれないです。 Senna: で、コロナが終わって、カナダ行きを本格的に決めたのは2022年の初めくらい? Yamato: だいたい2022年の初めですね。渡航制限がなくなってきて、そろそろ行けるな、じゃあ行くか、という流れです。カナダにキャリアを移したいというイメージは漠然と持ち続けていました。 Senna: よくコロナで諦めなかったですね。 Yamato: いつか海外で働きたいという夢はずっと持ち続けられました。なぜかは分からないですが。 Senna: コロナ禍で相談は多かったですが、諦める人も相当多かったんですよ。5年くらいは見送ろうか、みたいな。そこで諦めていたらYamatoさんも来てなかったかもしれませんよね。 Yamato: 大学在籍時から、いつか海外で働いてみたいという漠然とした思いはありました。大学までは海外旅行も一度も行ったことはなかったけど、大学で先輩がバックパッカーをした話を聞いて、「なるほど、そうやって海外旅行できるんだ」と。自分もバックパッカーをやってみて、海外は思ったより近いと実感しました。そこから派生して、いつか海外で働きたいという思いを持ったのだと思います。 バックパッカーの経験と国選び Senna: バックパッカーはどこへ? Yamato: 2回行っていて、1回目が20歳のときにドイツ・イタリア・オーストリアを約1カ月、2回目が大学卒業前に東南アジアを約2カ月ぐるっと回りました。 Senna: 僕は10年以上「やるやる」と言いながら結局できなかった人間で……今からでも行けますか? Yamato: 行けます行けます。 Senna: 今の年齢だとお金に物を言わせてしまいそうで、バックパッカーってそういうんじゃないじゃないですか。お金がない時期にやるものというか…それはどうでも良いのですが、改めて渡航先の選定についてお伺いします。渡航先は英語圏ならどこでも良かった感じですか? Yamato: そうですね。2022年はカナダにするかイギリスにするか迷っていて、イギリスのYMS(2年の抽選制ワーホリ)にも当たっていましたが、前述の先輩もカナダだったため、自分もカナダへ行くことに。 Senna: なるほど。イギリスに特別な思いがあったというより、英語圏+ワークビザの取りやすさで比較した、と。 Yamato: そのとおりです。結構調べました。ワーホリや就労ビザのことは。 カナダでの就職活動と最初の会社 Senna: 改めてですが、カナダへ渡航して最初の入国はワーホリを持っていた状態? Yamato: 最初は観光ビザで入国して、就活し、仕事が決まったらワーホリに切り替えるパターンを取りました。 Senna: 観光→就活→国内切替は王道ですね。観光期間の半年はどう過ごしていました? Yamato: 実はバンクーバーに来て3週間で仕事が見つかって、観光ビザの状態は1カ月ちょいでした。 Senna: 2022年9月というとコロナ後の採用バブルのど真ん中ですね! Yamato: そうです。正直めちゃくちゃ就活しやすかったと思います。 Senna: この時期は確かにすごかった。Frogの過去12年の中でほぼ100%に近い数字で就職したのが2022年でした。もしかして、狙って渡航したとかですか?(笑) Yamato: まさか、こればっかりは完全に偶然です。 Foundationでの経験 Senna: 最初のカナダの会社は3週間で見つかったわけですが、レジュメは何通くらい出しました? Yamato: 正確には覚えていませんが、面接は5〜6社。書類通過率もそこそこ高く、マスアプライはしませんでした。結局20〜30通くらい送ったかな。 Senna: 今の人が聞いたら超羨ましがりますね。最初の英語面接は人生初? Yamato: 実は英語面接は日本でShopifyを受けたことがあり、その時4〜5回経験しています(2021年)。最終的に落ちてしまいましたが、良い英語面接の練習になりました。 Senna: 英語周りの自信は、バックパッカーや学習の積み上げから? Yamato: いや、そもそも自信はなかったですね。2019年ごろから3年ほど、オンライン英会話や海外ドラマで継続学習はしていました。何度も挫折してきたのですが、2019年に始めたのが3〜4回目の挑戦で、たまたま続いた。DMM英会話を使っていました。 Senna: 英語学習を長期で継続する人が結局強いんですよね。 リセッション期の転職活動 Senna: Shopify面接は日本からオンライン? Yamato: そうです。4〜5回で、面接官は毎回違いました。日本在住のカナダ人、シンガポール在住、中国圏の方など。シンガポール訛りが強くて、コーディング面接の説明が一切聞き取れずフリーズした回もありました。 Senna: 訛り対応は早く実地経験したのが良かったですね。カナダでの面接内容は? Yamato: オーソドックスでした。電話→コーディング→アルゴリズム→システムデザイン→ビヘイビア。奇抜な出題は特になし。日本での転職経験もあって、英語になっただけという印象でした。 Senna: 最初の会社はFoundation(ファンデーション)。選んだ理由は? Yamato: 社員5〜6人の創業初期で面白そうだったこと。バックエンドRails/フロントReactという馴染んだスタックで力を発揮できると思ったこと。ハイブリッド勤務で週2〜3回出社し対面で働けたことでしょうか。 Senna: 創業初期でRailsは珍しいですね。 Yamato: 一人目のエンジニアが「0→1ならRailsが速い」と判断したと聞いています。その方はバックエンド寄りでRailsの経験はそこまで深くなかったので、Railsに関しては自分のほうが経験が上だったかもしれません。体制は、インド在住のバックエンド1名(リモート)、バンクーバー在住のカナダ人ジュニア1名、私(シニアフロントエンドエンジニア)。 Fullscriptでの業務内容 Senna: 入ってみての感想は? Yamato: 良かった点は、技術的な採用や実装でイニシアチブを持てたこと。大変だった点は、2023年に資金調達環境が悪化して会社の雰囲気が悪化、社長が強圧的になり、レイオフで人が半減。自分はレイオフされませんでしたが、ストレスフルで辞めました。 Senna: Foundationを辞めてから、次の会社に移られたのはどのくらい経ってからですか? Yamato: 会社を辞めてから就活を始めたのですが、これがまた時間がかかりました。地獄でしたね。 Senna: 地獄(笑)。 Yamato: ほんとに地獄です。正直自信は多少あったんです。カナダでの職歴もあるし、渡航当時よりレベルも上がって経験も色々したので。ですが、レジュメを送っても全然通らないし、面接にも全く進めない。 Senna: リセッションの時期ですよね。2023年の冬〜春と言えば。 Yamato: そうです。まさにリセッションの真っ只中。とにかく状況が悪くて。50件出して1件面接があったら良い方みたいな。 Senna: やはりそうですか…。2023年の中盤に入ってから一気に悪化しましたよね。僕らのところにも「全然通らない」とかレイオフの報告が毎週のように来てました。 Yamato: そうですよね。僕もそのとき本当にきつくて。就活しても結果が出ないので、精神的にかなり落ちていました。 Senna: わかります。あの時期に就活してたメンバーは全員心が削られていたと思います。最終的にどうやって次が決まったんですか? Yamato: 実は日本時代の会社の同僚のリファラルで、今の会社に入ることができました。Fullscript(正式社名 Healthy Web Inc.)という会社です。 給与と待遇の変化 Senna: リファラル、つまり紹介採用ですね。 Yamato: そうです。元同僚が先にFullscriptに入っていて、僕をリファラルしてくれた感じです。 Senna: 期間としては? Yamato: 就活期間は約2ヶ月くらいでした。リファラル入社ではあったのですが、普通に4回面接がありました。 Senna: 4回。プロセスとしてはリファラルだからと特別扱いな感じじゃなかったんですね。 Yamato: はい。テクニカル面接・システムデザイン・カルチャーフィット・ファイナルといった流れでした。 Senna: リファラルは魔法のカードではない、という話もよく聞きます。やっぱり、通るときと通らないときの差は大きいですよね。 Yamato: 本当にそうです。自分が入社してから、元同僚を何人もリファラルしましたが、全員落ちてしまいました。 Senna: 全員… Yamato: はい。だから、リファラルだから通るというわけでは全くないです。最終的には会社が求めているポジションとの適合性や、面接での印象、技術面の評価が重要。僕の場合は、スキルスタックや過去の経験、そして技術への向き合い方を評価してもらえたんだと思います。 日本とカナダの働き方の違い Senna: Fullscriptではポジションはフロントエンド? Yamato: 肩書きはフロントエンドエンジニアですが、実際にはバックエンド(Rails)も触っているので、ほぼフルスタックです。もともとバックエンドの経験もあったので、自分から「やらせてほしい」とお願いして関わるようになりました。 Senna: 自ら手を挙げるタイプですね。実際、どんなプロダクトを作っている会社なんですか? Yamato: 簡単に言うと、サプリメントを扱うEコマースなんですが、普通のECと違って、医療従事者が患者さんにサプリを“処方”して、患者がそのプラットフォームで購入するという仕組みです。つまり、医療とECが融合したようなビジネスモデルです。日本にはあまりない形だと思います。 Senna: なるほど。いわゆるD2Cでもなければ、病院でもない中間のような立ち位置。 Yamato: そうです。たとえば、自然療法医やパラメディカルの先生が、患者に「このサプリを飲んでください」とオンラインで伝えると、患者はそのままFullscript上で購入して自宅に届く。そんな流れです。 Senna: 従業員数はどれくらい? Yamato: 1000人以上ですね。配送センターなどのスタッフも含めると結構な規模になります。 Senna: かなり大きいですね。バンクーバーではなく本社は? Yamato: 本社はオタワです。僕もオタワ在住です。 Senna: オタワ。じゃあ、英語環境としてはよりコアなカナダ文化圏ですね。業務フローはどんな感じですか? Yamato: かなり整っています。まずPMがPRD(Product Requirement Document)を書いて、それをもとにデザインチームがデザインを作ります。そのあとエンジニアがDesign Docを書いてレビューし、実装→テスティング→テスティングパーティ→リリースというサイクルです。 Senna: テスティングパーティって何ですか? Yamato: 全員で新機能を触ってバグやUXの違和感を報告する会です。デザイナーもPMもエンジニアも全員で確認します。 Senna: かなり構造化されていますね。 Yamato: はい。自分の意見を言いやすく、チームとしての議論が前提になっています。 Senna: そうですよね。日本だと「仕様が決まってから呼ばれる」みたいなこともありますが、こっちは議論の段階から関わる。 Yamato: まさにそうです。エンジニアが黙ってコードを書く環境ではありません。設計の意図やリスク、技術選定の背景を言語化してチームに共有することが求められます。 Senna: チーム規模は? Yamato: 僕が今いるチームは8人です。PM、デザイナー、エンジニアがいて、デザイナーは複数チームを掛け持ちしています。 Senna: なるほど。デザインドリブンだけど、エンジニアも意見を出せる環境。理想的ですね Yamato: そうですね。僕はIntermediate(中級)として入社して、1年後にPromotionして今はシニアフロントエンドエンジニアです。 Senna: 昇進がすごく早いですね。 Yamato: 入社から1年で昇格しました。ありがたかったです。 Senna: 給与レンジも気になるところですが……。 Yamato: 大丈夫です。公開して問題ないです。 Senna: ありがとうございます。では日本時代とカナダでの推移を教えてください。 Yamato: 日本の最終年収が約888万円。カナダ1社目(Foundation)が110,000 CAD、Fullscript入社時も110,000 CAD。今のベースが140,000 CAD。今年はストックオプションを行使して+30,000 CADほど上乗せされたので、実質170,000 CADくらいになりました。 Senna:2年3カ月でベースが+30,000 CAD。成果次第で昇給・ストックが明確に反映されると。 Yamato: はい。日本より上がるスピードは速いです。ただし、その分パフォーマンス評価もシビアですね。 Senna: 確かに。解雇が容易なぶん、結果がすべてという側面もありますね。 Yamato: そうです。給与は上がるけれど、雇用の安定は日本より確実に低い。一長一短です。 Senna: 転職の頻度は高いですか? Yamato: 思っていたより高くないですね。数年単位で働いている人が多いです。 Senna: 働き方や文化の違いは感じますか? Yamato: 思っていたより個人主義ではないです。チームで協力し合う文化がしっかりあります。自分のタスクが終わったら、他の人のタスクを手伝うのが普通です。 Senna: なるほど。 Yamato: ただ、オタワは東アジア系が少なくて完全なマイノリティなので、そういう意味では多少気を使うこともあります。でも、リスペクトを持って接すれば全く問題ないです。 これから挑戦する皆様へメッセージ Senna: 最後に、これから海外でエンジニアを目指す人へ、メッセージをお願いします。 Yamato: 実は…昨日、中学の同級生が亡くなったという悲報がありました。本当に人生何が起こるか分からない。だから、やりたいことは早めにやったほうがいいと思いと改めて思います。 海外就職も「いつか」ではなく、やるなら今です。今回の悲報を受け、次は自分かもしれないと考えるようになりました。なので本当に一日一日を大事に生きようと思いましたし、海外挑戦含めやりたいことは後に回さず今すぐ行動に移すべきだと伝えたいです。 取材を通して印象に残ったのは、Yamatoさんの「やると決めたら迷わない」という姿勢です。大手からベンチャーへ、安定から挑戦へ。キャリアの転換点ごとに、迷いながらも「自分が一番成長できる環境」を選び続けてきました。 特に印象的だったのは、渡航時の就活とリセッション期の就活の落差。本当に海外就職はタイミングが非常に重要だと改めて感じたお話だったので、大事なのはいかなる時もチャレンジし続ける事と、ダメだったからといって腐らない心持ちだなと思いました。 「やりたいことは後に回さず、今すぐ行動に移す。」 それは、技術や英語力よりも先に持つべき、挑戦者としての姿勢だと思います。Frogはこれからも、そんな想いを持つエンジニアたちのリアルな声を届けつつ、精一杯サポートしていければと思います!
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英語も技術もゼロからの挑戦!ディレクターからエンジニアへの転身と、ボランティア経験を武器に海外就職を成功させたSatomiさん
今回は東京でウェブディレクターとして5年勤務し、その後エンジニアへとキャリアチェンジするためにカナダへ渡航。海外就職を成功させたSatomiさんのインタビュー記事です。 Satomiさんの最大の特徴は、「海外で働きたい」という思いを原動力に、英語や技術に不安を抱えながらもゼロから挑戦を始め、渡航後はボランティアやアルバイトを通じて現地での経験を積み重ねていった点です。半年間の就職活動では、応募数わずか30件という中で苦戦しながらも、面接後のフォローアップによって逆転内定を勝ち取った行動力が光ります。 特に注目していただきたいのは、準備不足を感じながらも「やり切る精神」で挑戦し続けた姿勢と、孤独にならず周囲のサポートを得ながら乗り越えたプロセスです。就職活動の現実と向き合いながら、それでも海外就職を実現できた背景には、完璧さではなく「工夫と継続」があったことを、本記事を通じてぜひ感じていただければと思います。 経歴とこれまでの仕事 Ryo: 今日はよろしくお願いします。まず最初に、これまでどんな経歴を歩まれてきたのかをお聞きしてもよろしいですか? Satomi: はい。私は東京にあるデジタルマーケティングの会社で、ウェブディレクターとして5年間働いていました。主な業務は、クライアントが持っているウェブサイトの運用や更新を担当する部署に所属していて、デザイナーさんやコーダーさんとクライアントの間に立ってコミュニケーションを取りながら進める仕事でした。具体的には、成果物の確認やスケジュール管理、要件定義といったことをやっていました。クライアントが大企業であることが多かったので、直接その会社に常駐して勤務するという形がほとんどでした。 Ryo: なるほど。大手クライアントの案件に直接関わる形で、かなり責任も大きい仕事だったのではないでしょうか。 Satomi: そうですね。常にお客様に気を使う立場でしたし、納期の管理や調整、修正依頼などもたくさんありました。自分が直接手を動かすというよりも、周りと調整して全体を進めていく立場だったので、精神的に疲れることも多かったです。 Ryo: そうした中で、カナダに渡航されたということですが、それはいつ頃だったんですか? Satomi: カナダに来たのは2023年の8月です。現在はコーナーストーン・カレッジに通っていて、ウェブデベロップメントのコースを受講しています。そのコースは1年間の座学と1年間のコープから成り立っていて、合計で2年間のプログラムです。 Ryo: 日本でウェブディレクターをされていたところから、ソフトウェアエンジニアを目指して勉強することになったわけですが、なぜキャリアチェンジしようと考えたのか、そのきっかけをお聞きしてもいいですか? Satomi: 一番大きな理由は「カナダに来たかったから」です。ウェブディレクターの仕事をカナダで続けるとしたら、かなり高いレベルの英語力が必要になります。クライアントと英語で細かい調整をしたり、高度なコミュニケーションを取るのは私にとってハードルが高いと感じました。その一方でエンジニアなら、プログラミングというスキルを通してコミュニケーションできる部分が大きいと考えました。そういう意味で、エンジニアに転職することが自分にとって現実的だと思ったんです。 Ryo: なるほど。大学の頃からそういったウェブやIT系の仕事を目指していたんですか? Satomi: 大学の時点ではそこまで明確には考えていませんでした。当時は「将来どんな会社に就職しよう」とか「どんな職種に就こう」といった具体的なイメージは全然なくて…。でも就職活動をしている大学4年生の時に、「何かを作る仕事をしたい」「クリエイティブなことに携わりたい」と思うようになったんです。それでデジタルマーケティング会社のウェブディレクター職に出会い、興味を持って就職しました。 日本での働き方と忙しさ、海外への憧れ Ryo: ウェブディレクターのお仕事って、ソフトウェアエンジニアリングに近い部分もあるのかなと思うんですが、実際にやってみてどうでしたか?例えばSIerみたいに常駐してお客さんとやり取りをして、その会社の文化に合わせて働くみたいなイメージもあるんですけど。 Satomi: そうですね、確かに近い部分はあるかもしれません。私の場合はクライアントごとに社風や働き方がかなり違っていました。忙しさについてもそれによって変わって、ある部署に入ったときは残業が多くて大変でした。日本では残業時間の上限が月45時間って決まっていると思うんですけど、その限界に達しないように自分たちで工夫していました。とにかく業務量が多かったので、1か月の中でどう調整するかというのが課題でした。その時期はかなり忙しかったです。 Ryo: なるほど、やっぱりそういう働き方だとSIer的な感じに近いですよね。請け負っているクライアントの要望に合わせてずっと動いていくみたいな。 Satomi: はい。クライアントが持っているウェブサイトを長期的に運用しながら、例えばキャンペーンページを作ったり、新商品のリリースに合わせてページの更新をしたり、そういう仕事をしていました。基本的には常にお客さんがいて、その方々の要望を叶えるために調整していく仕事でした。 Ryo: 子どもの頃や学生時代から「海外で働きたい」とか「海外で暮らしてみたい」っていう気持ちはあったんですか? Satomi: はい、子どもの頃から漠然と海外への憧れはありました。ただ、英語が得意だったわけではなくて、むしろ苦手意識が強かったんです。大学のときに留学を考えたこともありましたが、結局は実現しませんでした。 Ryo: じゃあ、就職して日本で働いている間に「やっぱり海外に行きたい」と思うようになったきっかけがあったんですか? Satomi: そうですね。社会人になってからも「海外で暮らしたい」という気持ちはずっと心の中にありました。青年海外協力隊を調べてみたり、何か海外に行ける方法はないかと探したりしたこともありました。でもなかなか実行には移せませんでした。そんな中で大きなきっかけになったのが、同じ部署で働いていた先輩が退職する時に「カナダに行く」と聞いたことでした。驚いて詳しく話を伺ったら、カナダで生活する準備をされていて、連絡先も交換して一緒にご飯を食べたりしました。その先輩は実際にバンクーバーに行かれたんですが、当時の私はすぐに決断できず、「自分にはまだ無理かな」と思っていました。 Satomi: でも、2022年のゴールデンウィークに突然「やっぱり海外に行きたい」という気持ちが強く湧いてきたんです。そのときに先輩に連絡をして、カナダでの生活について具体的に話を聞きました。そこでFrogのことを紹介してもらって、すぐに説明会に参加しました。説明会を通じて、自分が海外に行くことが少しずつ現実的にイメージできるようになりました。 カナダを選んだ理由と英語学習 Ryo: 先輩がカナダに行かれたということでしたけど、実際に話を聞いて「カナダに行きたい」と強く思ったんですか?それとも、まずは「海外に行く」ということが先にあって、その行き先がたまたまカナダだったという感じなんですか? Satomi: そのときは「カナダに行きたい」というよりも、まずは「海外に行く」ということ自体が現実的なのかどうか全く分かっていない段階でした。ただ、先輩が実際にウェブディレクターからキャリアチェンジして、現地で快適に暮らしているという話を聞いて、良い印象を持ったのは確かです。そしてFrogの説明会で具体的に「コーナーストーンのCICCCなら、予算を抑えながら2年間(1年座学+1年コープ)通えて、さらにワーホリを足せば最大3年間滞在できる」という話を聞きました。しかも学費と生活費を含めて400万円くらいで挑戦できると知って、自分でも可能かもしれないと感じました。その時点で他の国を調べることは全くせず、「カナダに行こう」と決めました。 Ryo: なるほど。最初からカナダ一択だったんですね。具体的に費用とか滞在期間のイメージができると現実味が出ますよね。 Satomi: はい、本当にそうでした。 Ryo: 英語についても伺いたいんですが、大学のときから勉強していたんですか?それとも渡航を決めてから改めて力を入れたんですか? Satomi: 大学受験のときに文法を一通り勉強して基礎はありました。大学では国際関係学科に所属していたので、英語を使う授業は多かったです。ただし得意ではなくて、どちらかというと苦手意識の方が強かったです。コーナーストーンに入学するときにはTOEICのスコアが必要だったので、そこで本格的に勉強しました。条件としては、TOEIC850点以上ならESLなしで直接入学、800点以上あれば1か月ESLを受けてから入学可能でした。私のスコアは845点でギリギリ直接入学できるラインに届かなかったので、1か月ESLを受講してからプログラムに入りました。 Ryo: なるほど。TOEICは大学時代に取ったんですか?それとも渡航を決めてから勉強し直したんですか? Satomi: 渡航を決めてからです。大学時代はTOEIC必須ではなかったので受けていませんでした。TOEFLの勉強コースを追加で取ることはできたんですが、それもそこまで力を入れていなかったので、点数が伸びた実感はありませんでした。Frogの説明会を受けて「行くならTOEICが必要」と分かってから勉強を始めました。 Ryo: じゃあ、説明会を受けてからどのくらいで850点近くまで上げたんですか? Satomi: 実は説明会を受けた直後は熱が少し下がってしまって、1年くらい準備を怠ってしまったんです。でも「2023年8月入学に間に合わなければ年齢的に厳しい」と感じて、そこから3か月集中して勉強しました。結果的に850点近くまで伸ばすことができました。 Ryo: 3か月でそこまで伸ばすのはすごいですね。最初は何点くらいからのスタートだったんですか? Satomi: 最初に模試を受けたときは560点くらいでした。そこから3〜4回受けて、回数を重ねるごとに少しずつ点数が伸びていきました。 Ryo: それは相当努力されましたね。短期間でそこまで点数を上げられたのは本当にすごいと思います。 渡航前の準備と技術学習 Ryo: 技術的な準備についても伺いたいんですが、エンジニアとしては未経験で渡航されたんですよね?カナダに来る前に何か学習はされましたか? Satomi: はい、完全に未経験というわけではなく、仕事の中でウェブサイトがどう作られているか、制作の流れは知っていました。要件定義から設計、開発、テスト、ローンチまでの一連の工程を理解していたのは大きかったと思います。そのうえで、渡航前に自分でも勉強しようと思って、オンラインのテックスクールに3か月ほど通いました。 Ryo: なるほど。Udemyみたいに完全に動画だけの学習ではなく、ちゃんと先生がついてくれるスクールということですか? Satomi: そうです。メンターが付くタイプのスクールでした。ちょうど会社に教育援助制度があって、授業料を10万円まで補助してくれる制度があったので、それを利用して通いました。せっかく会社にそういう制度があるならと思って、Udemyのような完全独学ではなくメンターがいるスクールを選びました。 Ryo: そのスクールでは何を学んだんですか? Satomi: フロントエンドのコースを選んで、HTML、CSS、JavaScriptの基礎から学びました。そこからjQueryもやって、最終的にはVue.jsを使ってプロジェクトを作るところまでやりました。 Ryo: しっかり基礎からフレームワークまでカバーしていたんですね。そのコースを終えてからカナダに来られたんですか? Satomi: はい、そうです。余談ですが、そのスクールが主催していたプログラミング部門のコンテストに応募して、最優秀賞をいただくことができました。応募者数は少なかったと思いますが、それでも自信につながりました。 Ryo: それはすごいですね。小さなコンテストでも「評価された」という経験は自信になりますよね。 Satomi: はい。そこからカナダに来て、学校の授業に加えてUdemyでもReactを学びました。さらに、クラスメイトと一緒にチームプロジェクトを組んで開発を進めることもしました。社会人経験があるメンバーと協力してやったんですけど、チームでの開発を通じてGitの使い方や、チームでの動き方を学べたのはすごく大きかったです。 アルバイト経験と英語力の向上 Ryo: 学校に通っていると、生活費のためにアルバイトをするかどうか迷う人も多いと思うんですけど、Satomiさんはアルバイトをされましたか? Satomi: はい。コープに入ってからなかなか仕事先が見つからなくて、貯金も尽きそうになってきたので、やむを得ずアルバイトを始めました。 Ryo: 具体的にはどんなアルバイトをされていたんですか? Satomi: カナダのローカルカフェ「ブレカ」でサンドイッチ職人をやっていました。ひたすらサンドイッチを作る仕事です。 Ryo: それは英語を使う機会にもなったんじゃないですか? Satomi: そうですね。責任を持って働いて、お金をもらいながら英語でコミュニケーションを取らなければならない環境は、本当に大きな練習になりました。学校で勉強しているだけでは身につかない部分を実践できたと思います。ミスが許されない状況で「ちゃんと話さなきゃ」という責任感が生まれるので、アルバイトでも現地で働くことはすごく意味があると感じました。英語力を伸ばすためにも、現地で働くのは賛成です。 Ryo: 学校の座学期間は、授業に沿って学習していたんですか?それとも自分で工夫して補ったりしていましたか? Satomi: 授業をベースにはしていました。ただ、自分が身についていないと感じた部分はUdemyで勉強したり、チームプロジェクトを通じて実践したりしていました。学校の課題も、必須のものは提出しましたけど、任意課題についてはチームプロジェクトを優先したいときはやらない、といった形で調整していました。 Ryo: 学校での英語コミュニケーションはどうでしたか?座学期間で「英語力が伸びた」と感じることはありましたか? Satomi: 学校の中ではそこまで伸びた感覚は正直ありませんでした。ただ、こちらで出会った彼と普段から英語で会話するようになったことで、多少間違っても伝わるんだという自信がついて、英語を話すことへの抵抗感がなくなったのは大きかったです。 英語での学習と教材選び Ryo: 技術の勉強についてなんですけど、カナダに来てからは英語で学ぶ機会が多いと思うんです。最初にスクールで勉強したときは日本語だったんですか?それとも英語の教材を使っていましたか? Satomi: 日本にいたときに通ったスクールは日本語でした。講師の方も日本人で、日本語で説明してくれる形でした。でもカナダに来てからは、できるだけ英語の教材を使うようにしました。英語字幕をつけて講義を見たり、どうしても理解できない概念が出てきたときだけ日本語の教材を調べて補完する、というやり方に切り替えました。やっぱり英語で学んだ方が、そのまま実務に直結しますし、自分のためになると感じたので、なるべく英語で勉強するように意識していました。 Ryo: 確かに、日本語の教材にもすごくわかりやすいものがあるんですよね。僕もどちらか一方に偏らず、日本語でも英語でも「良い教材」を選ぶようにしています。たとえば、面接対策でやるLeetCodeは英語の教材が充実しているので英語でやるんですが、言語の基礎を学ぶときは日本語の本の方が理解が早いこともある。そういう使い分けは僕もよくしています。 Satomi: それはすごくわかります。私も技術書を読むときはまず「英語の原書があるか」を調べて、あれば英語で読むようにしています。Udemyも基本的には英語の講座を受講しました。ただ、英語で理解できても日本語で説明しようとすると全然言葉が出てこないことがあって…。英語と日本語で用語が一致しないことに苦労する、というのは実際に働き始めてから強く感じました。 Ryo: なるほど。僕も「英語ではわかるけど日本語で言えない」という状況はよくあります。実際に説明しようとすると、うまく翻訳できなくて困ることがありますよね。 Satomi: そうなんです。日本語で学んでいたときの問題点は、専門用語を日本語では理解していても、英語でその用語を言えないということでした。実際に仕事を始めたときに「それ知ってるけど英語では言えない」という状況がありました。だから今では、なるべく英語で学ぶことを徹底するようにしています。 就職活動の始まりとボランティア経験 Ryo: ここからは就職活動について伺いたいんですが、どのタイミングで準備を始めましたか?座学中から動いていましたか?それともコープが始まってからですか? Satomi: 胸を張れるほど早くはなかったんですが、本格的にレジュメを整え始めたのは座学が終わってコープが始まるタイミングでした。ただ、座学の時点から「レジュメに書けることを増やしたい」と思っていたので、ポートフォリオを作ったり、チームプロジェクトに参加したり、ボランティアに応募したりしていました。 Ryo: ボランティアはどうやって探したんですか? Satomi: 合計で4件経験しました。1件目はMeetupの主催者が「ウェブサイトを作ってくれる人を探している」と投稿していたのを見て応募しました。2件目はFrogのSlackに流れてきたポストで募集があったので応募しました。3件目はそのFrogでのボランティアを通じて知り合ったプロジェクトマネージャーさんから「気候テックのイベントLPを作ってくれないか」と依頼を受けました。そして4件目は学校のジョブポスト経由で見つけました。 Ryo: その4件のうち、有償のものはありましたか? Satomi: はい。4件中3件は完全に無給で、イベントLP制作だけ有償でお金をいただきました。 Ryo: ボランティアの経験って、面接のときに役に立ちましたか? Satomi: すごく役立ちました。面接では「具体的にどんな経験をしたか」を必ず聞かれます。そのときに、カナダでの経験として話せるものがあるのは大きかったです。日本での経験だけだと「それは日本の話だからカナダでは通用しないかも」と思われてしまうんじゃないかと不安だったんですが、ボランティアを通して「現地でこういうことをやりました」と言えたのは強みになったと思います。 Ryo: なるほど。実務経験に近い形で説明できる材料が増えるわけですね。実際、僕もいろんな人のレジュメを見てきましたけど、カナダでの経験がある人とない人とでは印象が全然違います。ちなみに、そのときレジュメはどんな感じだったんですか? Satomi: 正直に言うと、レジュメは完璧じゃなかったです。セナさんに添削していただいたときは、赤字だらけでした(笑)。でも、それでも面接に進めたのは、やっぱり「現地での経験を積んでいたこと」が大きかったと思います。 就職活動の苦労と内定までの道のり Ryo: 実際に就職活動を始めたのはいつ頃ですか? Satomi: 今年の1月末から2月くらいにかけて本格的に動き始めました。 Ryo: そこから最終的に今の会社に決まったのが7月末でしたよね。となると、活動期間としてはだいたい6か月くらいになると思うんですが、その間どういう気持ちで活動されていましたか? Satomi: はい、ざっくり6か月くらいです。その間は正直すごくつらかったです。毎日欠かさず応募していたわけではなくて、アルバイトが忙しくなったりして、気が向いたときに「自分でお尻を叩いて応募する」という感じでした。応募しても返事がないことが多くて、「どうせ就職できないんだろうな」という気持ちになることが多かったです。 Ryo: それはかなりしんどいですね。実際、こちらで就職活動をしていると「応募しても返事がない」「自分が何をやっているのか分からなくなる」「お金も減っていく」「勉強もストップしてしまう」といった感覚に陥りやすいんです。しかもそれが数か月続くと、精神的にすごくつらい。そういう状況の中で、半年間活動を続けられたのは本当にすごいことだと思います。 Satomi: ありがとうございます。でも正直、彼がいなかったら日本に帰っていたと思います。周りの友達やクラスメイトも日本に帰国して、日本でキャリアを積むという雰囲気だったので、「やっぱり就職は難しいよね」という空気に流されそうになりました。そういうときに支えてくれる人がいたから、なんとか踏ん張れたという感じです。 Ryo: 応募件数はどのくらいでしたか?こちらだと数百件応募する人も多いので。 Satomi: 実は合計で30件いくかいかないかくらいしか応募していません。 Ryo: 30件ですか!かなり少ない方だと思います。それでも結果を出せたのは、ボランティアやチームプロジェクトで現地経験を積んでいたことが大きいんでしょうね。 Satomi: そうだと思います。レジュメや経験が完璧ではなくても、現地でやってきたことを具体的に話せたのは大きかったと思います。 面接の流れとフォローアップ Ryo: 今の会社に決まるまでの面接の流れについて詳しく伺いたいんですが、レジュメを出してからどういうステップで進んだんですか? Satomi: 面接は全部で2回でした。1回目はHRの方との面接で、2回目はエンジニアの方を含めた面接です。それで終わりだったので、回数が少なくてラッキーだったと思います。 Ryo: まず1回目のHRとの面接はどんな内容でしたか? Satomi: 基本的にはよくあるビヘイビアルインタビューでした。自己紹介や志望動機、これまでの経歴について話しました。印象的だった質問は「開発を終えてシステムをローンチした後に、あなたならどんな作業をしますか?」というものでした。私は「PCや携帯などいろんなデバイスで表示を確認します」と答えました。 Ryo: 面接は対面でしたか?それともオンラインでしたか? Satomi: Google Meetを使ったビデオ面接でした。 Ryo: 面接は英語で進むし、緊張もあると思うんですけど、実際どうでした?ボランティアである程度は慣れていた部分もあったんじゃないかと思うんですが。 Satomi: 実は面接対策をほとんどしていなくて、日程が決まってから慌てて学校のキャリアサポートにMock面接をお願いしました。でもMockでは本当にボロボロで、途中で言葉が出てこなくなったりして不安が大きくなりました。そこで彼に頼んで、前日に4〜5時間くらい徹底的に練習しました。 Ryo: 2回目のエンジニアとの面接はどういう内容だったんですか? Satomi: 実際の作業テストはなく、質疑応答が中心でした。質問内容としては「テストツールを使ったことがあるか」「プロジェクト管理ツールは何を使ってきたか」「Reactをどう思うか」「新しいライブラリを学ぶときはどうやって学ぶか」といったものでした。 Ryo: 面接を終えたときの感触はどうでした? Satomi: 正直「絶対落ちた」と思いました。HRの方は反応を返してくれるので話しやすかったんですが、エンジニアの方々は表情が固くて、話が伝わっているのか分からず不安になってしまいました。緊張もあってどんどん言葉が出にくくなって…。特にテストツールについて聞かれたとき、授業で少し触れただけで実務経験がなかったので「使ったことはありません」と答えたんです。それで落ちたと思いました。 Ryo: そこからどう巻き返したんですか? Satomi: 逆質問のときに「御社で使っているテストツールを教えてください」と聞いたら教えていただけたので、その週末に急いで簡単なToDoリストのプロジェクトを作って、そのツールを実装しました。そして月曜日に「面接では答えられなかったけれど、週末に勉強して使ってみました。もしよければこちらをご覧ください」とメールを送りました。 Ryo: それは素晴らしいフォローアップですね。反応はどうでしたか? Satomi: 翌日にHRの方から「すごく参考になる、ありがとう」と返事をいただきました。本来は木曜日に結果が来る予定だったんですけど、月曜日の朝に「今日時間ある?」とメールが来て、その日のうちにGoogle Meetで「オファーを出します」と伝えられました。 Ryo: すごい!まさにフォローアップで評価が上がったということですね。実際にこちらでも「後から挽回した」という話はよく聞きます。 Satomi: そうなんです。実はFrogの動画で「フォローアップで挽回した」という経験談を聞いていたので、それを参考にしました。「やり切る精神」が大事だと思って挑戦しました。金曜日に面接があったのも運が良くて、土日に集中して取り組めましたし、面接を録画してAIの議事録を共有してもらえたので、テックスタックをもう一度確認できたのも大きかったです。 合格の決め手とオファーの詳細 Ryo: ちなみに、面接全体を振り返って「これが合格につながったかもしれない」と思うポイントはありますか? Satomi: 一つあると思っています。一次面接でHRの方と話したとき、逆質問のタイミングで会社のビジョンや価値観、競合他社について事前に調べて質問したんです。そうしたらHRの方がすごく喜んでくださって、「よく調べてくれてありがとう」と言ってくれました。その後の会話も盛り上がって、企業理解をきちんとして臨んだことが良い印象につながったと感じています。 Ryo: なるほど。やっぱり事前準備の差は大きいですね。では、実際にオファーの連絡はどんな形で来たんですか? Satomi: 月曜日の朝に「今日時間ある?」とメールが来て、Google Meetに招待されました。最初に少し雑談をしてから「オファーを出します、おめでとうございます」と伝えられました。その場で契約書や必要なドキュメントの説明があり、その後にメールで送られてきた書類にサインしました。 Ryo: そのとき、想定外だったことや驚いたことはありましたか? Satomi: 一つだけありました。オファーをいただいた後に「プロフェッショナルな経験からリファレンスを2件提出してください」と言われたんです。面接のときには何も言われていなかったので驚きました。幸い、前職の上司や、ボランティアで関わったプロジェクトマネージャーさん、そして石さんにお願いすることができて、最終的には3件提出しました。 Ryo: そのリファレンスは日本の元上司でも大丈夫だったんですね。形式は電話やZoomではなく、メールでのやり取りでしたか? Satomi: はい。HRの方がリファレンス先に直接英語で質問を送って、その人が答えるという形式でした。やり取りは全部メールで完結しました。 Ryo: それは助かりますね。ちなみに差し支えない範囲で伺いたいんですが、年収レンジはどのくらいだったんですか? Satomi: Indeed経由で応募したんですが、ジョブポストには「55K〜70K」と書かれていました。オファーのときに「このレンジの中でどうですか?」と聞かれたんですが、私は「仕事をいただけるだけでありがたいです」と答えて、そのまま提示された条件で決まりました。 Ryo: 日本での年収と比べるとどうでしたか? Satomi: 日本では残業も多くて、年収は450万円くらいでした。今回のオファーはそれより大きく上がったので、本当に嬉しかったです。ジュニアポジションで、カナダでの有給経験もなかったので、正直「レンジの下限で来るだろう」と思っていたんですが、上げてもらえたのは感謝しかありません。 Ryo: 初めての海外就職で、残業が少なくて、ジュニアとして育ててもらえる環境でのスタートは理想的ですね。 カナダでの働き始めと日本との違い Ryo: ここからは実際に働き始めてからのことを伺いたいと思います。日本の会社と比べて「ここが違うな」と感じたことや、「これはいい」と思ったことはありましたか? Satomi: 一言で言うと、最高です。もう日本には帰りたくないくらいです。 Ryo: そんなにですか(笑)。具体的にどんなところが違うんでしょう? Satomi: まず勤務時間です。9時から5時までで仕事が終わるのが当たり前で、残業をする雰囲気がありません。しかも自分のペースで働けるので本当に快適です。金曜日は3時から「ゲームタイム」があって、最近はみんなでジオゲッサーをやったりして、4時には「お疲れさま」と解散するような雰囲気です。 Satomi: それから、チームの雰囲気もすごく良いです。カナディアンが多いんですが、私のように英語が流暢でないノンネイティブにも本当に優しいです。「困ってない?」「質問があったらいつでも言ってね」と頻繁に声をかけてくれて、質問を歓迎する文化があるので、安心して働けています。ジュニアで分からないことが多い中でも、抵抗なく質問できて、楽しく仕事ができています。 Ryo: 会社の規模感やチームの人数はどのくらいなんですか? Satomi: 会社自体はストックフォトサービスを運営しています。イメージしやすいのはShutterstockやiStockのようなサービスです。もともとiStockで働いていた方が独立して、「アーティストにもっとフェアな報酬を支払うべきだ」という思いから立ち上げた会社です。社会的意識も高くて、カナダらしいDEIを大切にしている文化があります。 Satomi: 全体の規模は50人くらいで、契約しているアーティストは1900人ほどいます。私のいるテックチームは11人で、その中でクライアント側のウェブサイトを運用しているのが5人チームです。構成は、シニアディベロッパー、インターミディエイト、私ともう一人のジュニア、そしてUI/UXデザイナーです。 Ryo: 技術スタックはどんなものを使っているんですか? Satomi: フロントエンドはReact、バックエンドはPHPのLaravelです。テストツールはJestやRubyの自動テストを使っています。私はジュニアフロントエンドディベロッパーなので、基本的にはフロントエンドを担当しています。 Ryo: 入社してからのオンボーディングはどういう流れでしたか? Satomi: HRがウェルカムミーティングを開いて、人事ツールの説明をしてくれました。それから他部署の方とのイントロミーティングもあって、マーケティングや財務など色んな部署の人と自己紹介をしました。最初の1〜2週間は「はじめまして、日本から来ました」と挨拶ばかりしていた感じです。 英語でのコミュニケーションとカルチャーギャップ Ryo: 英語でのコミュニケーションについてですが、実際に働き始めてみて困ったことはありましたか? Satomi: 最初は本当に緊張しました。もともと英語に苦手意識があったので、「もし聞き取れなかったらどうしよう」「何を言われているのか理解できなかったらどうしよう」と常に不安でした。 Satomi: でも実際に働き始めてみると、みなさんすごく優しくて。もし私が聞き取れなかったときは「もう一度言おうか?」と自然に言ってくれますし、逆に私が「Sorry, can you repeat that?」と聞き返しても嫌な顔をされることはありませんでした。そういう雰囲気にすごく助けられました。 Ryo: それは安心できますね。僕自身もカナダで働き始めたとき、聞き返すのが怖くて「わかったふり」をしてしまうことがありました。Satomiさんもそういう経験はありましたか? Satomi: ありました。最初の頃は特にそうでした。でも「結局あとで迷惑をかけてしまうなら、その場で聞き直したほうがいい」と思うようになってからは、勇気を出して聞き返すようにしました。 Ryo: 実際に働いていて意識していることはありますか? Satomi: フルリモートの仕事なので、こまめにコミニケーションをとるように心がけています。特にジュニアなので、進捗状況などチームメンバーに伝えて、何をしているのか見えるようにしています。また作業完了した際に、「Nice work!」などと褒めてくれることが多いので、モチベーション維持にもつながります。 今後のキャリアとこれから挑戦したいこと Ryo: ここまでお話を伺ってきて、今後のキャリアについてどう考えているのかすごく気になります。今後、どういう方向に進んでいきたいと考えていますか? Satomi: まずは今の会社でしっかり経験を積むことを第一に考えています。ジュニアとして入社したので、まだまだ分からないことだらけです。だから一つひとつのタスクをきちんとこなして、チームから信頼される存在になりたいと思っています。そのうえで、自分の担当領域をもっと広げていきたいです。 Ryo: ということは、フロントエンドを中心に経験を積みながら、ゆくゆくは別の領域にも広げていきたいという感じですか? Satomi: はい。今はフロントエンドが中心ですが、バックエンドにも少しずつ関われるようになりたいと思っています。Laravelを触る機会もあるので、そこから経験を積んでフルスタック的に動けるようになるのが理想です。 Ryo: カナダでのキャリアをこのまま続けていきたいと考えていますか?それとも将来的には日本に戻る可能性もありますか? Satomi: 今の気持ちとしては、できるだけカナダで長く働きたいです。働き方や人との関わり方が自分にすごく合っていると感じているので、日本に戻る理由があまり思い浮かばないんです。もちろん状況によっては日本に帰ることもあるかもしれませんが、現時点ではカナダでキャリアを築いていきたいと考えています。 Ryo: 将来的に「こんなチャレンジをしてみたい」という夢や目標はありますか? Satomi: まだ大きなビジョンがあるわけではないですが、自分の力で何かを作り出せるエンジニアになりたいという思いがあります。今は周りに助けてもらうことが多いですが、いずれは自分がリードしてプロジェクトを進められるようになりたいです。 これから海外就職を目指す人へのメッセージ Ryo: 最後に、これから海外就職を目指す方に向けてメッセージをいただけますか? Satomi: まず伝えたいのは、「完璧じゃなくても挑戦して大丈夫」ということです。私は英語が得意なわけでもなく、エンジニアとしての経験もほぼゼロの状態でカナダに来ました。それでも周りのサポートや自分なりの努力を重ねて、今こうして働くことができています。 Satomi: もちろん、準備不足で苦労したこともありましたし、就職活動も簡単ではありませんでした。でも「できないから諦める」ではなく、「できないなりに工夫して進めていく」ことが大事だと思います。 Ryo: なるほど。準備が足りなくても、やり切る精神で挑戦することが大事なんですね。 Satomi: はい。それから、一人で抱え込まないことが本当に大事だと思います。就職活動がうまくいかないと「自分だけがダメなんだ」と思いがちですが、実際には多くの人が同じ壁にぶつかっています。私自身も彼やFrogの仲間に支えられて乗り越えることができました。だから、支えてくれる人や相談できる人を見つけて、孤独にならないようにしてほしいです。 Ryo: ありがとうございます。これから挑戦する方にとって、すごく力になるメッセージだと思います。 今回のインタビューを通じて強く印象に残ったのは、完璧ではない状況でも「工夫して行動し続けた」ことが、Satomiさんのキャリアを切り拓いたという点です。 半年間の就職活動は決して順風満帆ではなく、応募件数もわずか30件ほどと少なめ。それでも「現地での経験を積んでおくべき」という意識から、ボランティアやチームプロジェクトに積極的に参加し、レジュメに書ける材料を着実に増やしていきました。"応募数の多さ"ではなく、"経験の質"で勝負した点は大きな学びになると思います。 さらに、印象的だったのは「面接で答えられなかった質問を週末に自ら勉強し直し、フォローアップのメールで成果を提出した」という行動です。たしかにFrogではこの方法を推奨してきましたが、これを実際に実行に移せる方はそう多くはありません。結果として、その一歩が逆転内定へとつながったのは象徴的です。 そしてもう一つ大事なポイントは、孤独に戦わなかったこと。彼やFrogの仲間の支えを受けながら、精神的な負担を軽くし、挑戦を継続できたことも成功の背景にありました。『海外挑戦は孤独である』という、もはや当たり前と思われてきた常識を覆し、「一人で頑張らなくていい」という状況を作ったのはSatomiさんであり、海外就職を目指す誰もが心に留めておきたいメッセージではないでしょうか。 Satomiさんの体験は、完璧な準備がなくても「やり切る精神」と「支えてくれる仲間」があれば、海外就職という大きな壁を乗り越えられることを証明してくれています。 Podcastでも配信中 Podcast収録前半
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