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営業職4年からエンジニアへ転身、苦戦するもリファラル採用を成功させたSuguruさん

営業職4年からエンジニアへ転身、苦戦するもリファラル採用を成功させたSuguruさん

今回は化学メーカーの営業職として4年間勤務し、その後エンジニアに転身。日本での3年の実務経験を経て、カナダ・バンクーバーでの就職を成功させたSuguruさんのインタビュー記事です。

Suguruさんの最大の特徴は、まず日本で文系出身・営業職からのエンジニア転職という異色のキャリアパスを歩みながら、結果として海外就職まで実現させたことです。コロナ禍で自身のキャリアと向き合い、「ものづくりがしたい」という思いから始まった挑戦から、カナダでのネットワーキングとリファラルによって厳しい海外市場を突破するまでの道のりまで詳細に語っていただきました。

特に注目していただきたいのは、シンプルながら本質的なネットワーキングへの姿勢と、完璧を求めすぎず、それでも行動し続けることの重要性を体現した行動力です。技術力だけでなく、人間関係構築力が海外就職成功の鍵となることを、Suguruさんの体験が証明してくれているのではないかと思います。ので、そういう点にも着目しながら是非本記事ご覧いただければと思います!


Senna: というわけで、今日はSuguruさんにお話を伺っていきたいと思います。実は毎回のインタビュー恒例なんですけれども、一番最初にFrogに連絡いただいた相談内容を今ちょっと拝見しておりまして。覚えてますか?Suguruさんが一番最初にFrogに連絡した頃。

Suguru: いやー、正確には覚えていないですが多分2023年とかじゃないかなと思うんですけど。

Senna: 2023年の12月9日ですね。

Suguru: ちょっと恥ずかしいですね。これ(笑)

Senna: 相談の内容としては割と普通ですね(笑)「キャリアステップとして海外での就業を経験したいのが目的」「いろいろ調べてはいるけど情報があふれていて一人で判断するのは難しいと思った」「どういう準備が必要になるか」という、なんかもう絵に描いたような素晴らしい普通のメール(笑)

Suguru: 普通ですね。よかった、あんまり恥ずかしくなくて。

Senna: そうですね、でもご相談いただいたこの時期には海外就職のことを本格的に考えられていたのかなと思うんですけど、改めてちょっと経歴の方と、なんで海外に行こうと思ったのかっていうところを教えていただいてもいいですか?

Suguru: 分かりました。大学卒業してから化学メーカーに総合職として就職しまして、最初全然エンジニアとか関係なく、営業として4年ぐらい働きまして、その後エンジニアにキャリアチェンジしています。エンジニアとしては3年くらいかな、金融系だったり産業系だったりの業務系のウェブシステムの開発をしていました。

Senna: なるほどですね。営業さんで4年経験を積まれてたんですね。

Suguru: あんまりいないですかね。

Senna: エンジニアに転職するきっかけとかって何だったんですか?

Suguru: 直接的なところで言うと、コロナが2020年ぐらいに始まって、自分のキャリアに向き合う時間が生まれたっていうのがまずポイントだったかなと思ってますね。結局、大学の時からあんまり自分のキャリアに真剣に向き合ってこなかったなっていうのが、ちょっと反省点なんですけど。

Senna: そうなんですね。

Suguru: はい。まあ、就職してからも日々自分の仕事で手一杯で、今後どうしていこうみたいなのが全然なかったんで、そこでちょっとどうしようかなって真剣に考えた時期がやっぱりコロナの時にありまして。

そもそも「なんでメーカーに就職したんだっけ」っていうところを思い返すと、やっぱりものづくりが好きだったかなっていうのがポイントだと気付いたんです。それで、営業職だと自分で物を作るわけじゃないですし、今後物を作る方に行くこともまあ難しいだろうなっていうので、何か自分が情熱を注げる仕事がないかなっていうので、エンジニアって面白そうだなっていうのが経緯ですね。

文系からエンジニアへの現実的な選択

Senna: ものづくりっていう文脈だったらまだ他にもいろいろありそうだなっていう中で、エンジニアにフォーカス当たるのって何でだったんですか?

Suguru: いやでもそうですね、やっぱりリモートワークが当時盛んだったじゃないですか。

Senna: 確かに。

Suguru: あの時期だったので「リモートで働ける仕事」っていうのがまずあったかなと思うのと、あとは現実的に文系の自分がこれからそのキャリアチェンジするとして、ものづくりに携わる仕事でできることって何だろうって思ったら、エンジニアが一番現実的かなっていうのがありましたね。

Senna: それは確かにそうですね、まあ学ぶにしても別に資格が必要なわけでもなしみたいなところですよね。ちなみに文系っておっしゃってましたけど、大阪大学を出られてますよね。これは何学部ですか。

Suguru: 経済学部です。

Senna: じゃあバリバリの文系ってことですね。出られて化学メーカーの方行かれて、4年営業されて、キャリアに本気に向き合うきっかけがコロナで、いろいろとものづくり職業で考えていたけど、実際問題として文系の自分がっていうところで次にものづくりキャリアを選べるんだったら、エンジニアが現実的かというそういった流れってことですね。

Suguru: そうですね。

プログラミングスクールから実務経験へ

Senna: 素晴らしい。実際やっぱりエンジニアへの転向を考える人って多い中、とはいえ多分感覚値の8割くらいは諦めてる気がするんですが、Suguruさんは実際に日本で就職もされたとのことですが、ここは自力で見つけたんですか?

Suguru: いえ、結局スクールに行きました。スクールは意味がないとかいろいろ記事が出てきましたけど、最初いろんな転職サイトで相談をして、それも含めて転職活動をする中で、とにかく実務経験が一番大事だという結論に至って。なんとかして実務経験を積める企業に入り込もうというのがまずあったんですね。じゃあどういうルートが一番近道かなっていうので、転職エージェント付きのスクールみたいなのがあって、学ぶことが目的というよりは転職するのを目的でとりあえず使おうということで入りましたね。

Senna: へー、やっぱそういうのあるんですね。

Suguru: スクールのコンテンツとかはちょっと、ほんとマチマチで、僕が入ったところも内容自体は一般的でしたが。

Senna: なるほどなるほど。やっぱ需要あるんだな、そういうのって。ではスクールに行かれて、実際それでどうなったんですか?現場に出られるレベルになったんですか?

Suguru: うーんと、さっき言ったように教材とかのコンテンツは一般的なので、基本的には自学自習ですね。でも、内容はさておき、こういうことを知らないといけないみたいな、一種のガイドラインじゃないですけど、そういう体系立てた道筋はスクールにあったので。エンジニアになるためにはこういうことを知らないといけないんだなってところで、そこで一応、自習のためのガイドにはなったかなっていう感じですね。

Senna: ではこの時転職された会社さんは、転職エージェント経由でのご紹介っていうことで入れたことですね。

Suguru: そうですね、エージェント経由で面接もさせてもらって何とか受かったっていうところですね。

Senna: これちょっともう本当に日本を離れて17年とかのおじさんの言うことだと思っていただければいいと思うんですが、シンプルに聞きたいのが、やっぱりプログラミングスクールとかに行かれた方とかも含めてなんですけど、やっぱり実務経験がもちろんないっていう状況で入るわけじゃないですか。会社側はやっぱり育てるっていうことを前提にそういうジュニア一歩手前みたいな方を雇われるのか、やっぱりそう考えると長期的に雇用することを前提に雇われるのか、どういう要因で入ることができたのかなっていうのをシンプルに知りたくて。

Suguru: そうですね。僕のいた会社は未経験者も経験者も採用していましたが、長期的に育てるイメージだったと思います。あとは、最初からプログラミングできる人が仕事できるとは限らないんですよね。だから仕事ができる人にプログラミングを教えた方が早いんじゃないかみたいな、そういう考えはあったように思います。

Senna: なるほど。そういう考えがあったんですね。

Suguru: 僕以外にも未経験スタートで入った人も何人かいましたんで、その人たちも今活躍してると思いますね。

海外就職への意識の芽生え

Senna: では日本で3年間在籍されて、その間にコロナが来て海外も視野にはいってきたという流れですか?

Suguru: 具体的にいつから海外を意識しだしたかはあまり覚えてないんですけど、エンジニア転職して本当に最初の頃に海外って選択肢もあるんだなぐらいに頭に残ってて。2年くらい働いたら海外行こうかなみたいな、多分そういうイメージだったかなと思います。あとは未経験スタートというキャリア的なハンデを埋めたいという思いはずっとあって、その選択肢の一つに海外就職があったという感じですね。

Senna: なんかぶっ飛んでるところもありますよね。日本で例えば外資目指すとか、メガベンチャー目指すとか、だからその辺が王道ルートな気はするんですけど。

Suguru: 確かに。

Senna: そこから思考が海外って、なんか幼い頃から海外に行くきっかけがあったとかそういう何かあるのかなって思うんですけど。

Suguru: そういう意味で言うと海外に住んだことがなかったから逆に行ってみたいなっていうのがあったかもしれないですね。留学行ってたよって人が結構周りにいたんである意味コンプレックスみたいなところがあったかも。

Senna: 周りの方々も、別に海外でエンジニアとして働いた経験があるわけではなかったんですよね?

Suguru: そうですね、もちろんそういうわけではなかったです。

Senna: でも、そうした環境やちょっとしたコンプレックスが巡り巡って、逆に次のステージへ進む原動力になったのかもしれませんね(笑)。

Suguru: そうかもしれないですね。

Senna: 素晴らしいですね。いろんな要因が、細かいことも含めて重なって、結果的に「国外でのキャリア」を意識するようになった、ということですね。

\#\# バンクーバー選択の理由

Senna: ではここからは、実際に海外を意識し始めたあとの話を聞かせてください。海外といってもいろいろありますが、やっぱり最初に思い浮かぶのはアメリカじゃないですか?

Suguru: そうですね。

Senna: 特にエンジニアとしてとなると、選択肢はいろいろ考えられたと思うんですが、その中で「カナダ」を選んだ理由って何だったんですか?

Suguru: それはですね、どこかのタイミングでFrogさんの記事を読んだ影響が大きかったと思います。

「カナダでエンジニアとして働く」というキーワードが、すごく印象に残っていたんです。

Senna: そうだったんですね。

Suguru: それで、「海外に行こう」と決めたときに、最初に検索したのが「カナダ エンジニア」っていうワードだったのを覚えてます。

Senna: それで検索したら、うちしか出てこないですね(笑)

Suguru: ですね(笑)。それでいろいろ調べていくうちに、ビザの制度とかも踏まえると、長くキャリアを積むにはカナダかオーストラリアぐらいしか現実的な選択肢が浮かばなかったんです。アメリカはビザの問題もあるし、いきなり行くのはちょっと難しいなと。

Senna: なるほど。そのあたりのリサーチの過程も興味あります。例えば、イギリスはどうでした?

Suguru: イギリスも一応選択肢にあったんですけど、当時はワーホリ(ワーキングホリデー)を使うことを前提に考えていて、イギリスのワーホリって抽選制で枠がすぐ埋まっちゃうんですよね。

だから、その不確実さがネックで…。一方カナダならワーホリがほぼ確実に使えるだろうという安心感があって、自然とイギリスの優先順位は下がっていきました。

Senna: なるほど。オーストラリアかカナダというのは、けっこうみんなが悩むところだと思うんですが、最終的にカナダを選んだ決め手ってやっぱりFrogの情報があったことですか?

Suguru: それは大きかったですね。Frogがあったことで情報量も多くて、「何かあってもきっと乗り越えられるだろう」と思えたんですよね。

オーストラリアについては、エンジニアの情報がなかなか出てこなくて、カナダのほうが間違いなくイメージが湧きやすかったです。

Senna: ありがとうございます。よくわかりました。バンクーバーを選んだことに、何か葛藤はありませんでしたか?カナダに行くと決めたとしても、例えばトロントやモントリオールといった他の大都市も候補になり得ると思うんですが。

Suguru: そうですね。まずモントリオールはフランス語圏というのがネックでした。そこが最初に候補から外れた理由ですね。で、トロントとバンクーバーは確かにちょっと悩んだんですけど、技術スタックの傾向や、自分の経験レベルを考えると、バンクーバーの方がジュニア向けの求人が多い印象があったんです。

Senna: なるほど、なるほど。

Suguru: なので、自分にとって可能性が高いのはバンクーバーかなと思って、そっちを選びました。

Senna: なるほどですね。ジュニア向けかどうかっていうのは、僕はあまり実感としてはないんですけど、それ以上に都市ごとの業界特性の違いは確かに大きいですよね。

トロントはニューヨークが近いこともあって、東海岸の流れを受けて、研究、バイオテクノロジー、金融、AIといった分野が強い印象があります。
一方で、バンクーバーは完全にサンフランシスコの影響下にあって、商業系のSaaS企業が多いですよね。

Suguru: 確かにそれは言われてみればそうかもしれません。

カレッジ選択の経緯

Senna: でも、やっぱり気になったのは、3年の日本での実務経験があって、そこから「もう一度カレッジに通う」という選択をするのって、正直迷いはなかったのかな?と思いまして。

Suguru: 最初は、ワーホリだけで行こうかなって考えてたんですよ。でもやっぱり…就職活動にどれくらい時間がかかるかわからないですし、「ビザが1年だけです」っていう状況だと、企業側もなかなか雇ってくれないっていう話は聞いてたので。だから、正直あんまり勉強はしたくなかったんですけど(笑)就職の可能性を少しでも上げられるなら、カレッジに通うのもアリかなと判断しました。

Senna: なるほど。でも結果としては良い選択だったと思います。大阪大学を卒業されて、しかも文系だと、当時は就労ビザの選択肢ってLMIA(雇用主スポンサー)しかほぼなかったですよね。そうなると、ワーホリ1年 → その中で半年間の就労期間にLMIA申請って、かなりギャンブル要素が強い。

Suguru: そうですよね。うまくいく人もいるにはいるけど、自分としてはちょっと博打だなと思ってました。

Senna: 結局、運の要素も大きいんですよね。「たまたまその時期はそういうチャンスがあった」っていう話で。だから、可能性の高いルートを選んだのはすごく堅実な判断だったと思いますよ。

CICCCデータサイエンスコースの体験

Senna: これ、ずっと聞きたかったんですよ。正直、悪いレビューが来るんじゃないかな…って内心思ってるんですが、CICCCのデータサイエンスコース、実際どうでした?

Suguru: いやー、レビューが難しいですね。

Senna: やっぱりそうですか。

Suguru: というのも、できたばかりのコースだったこともありトラブルも多かったんです。ある程度経験があって、就労できるビザを目的に通ってる人なら、そこまで大きな問題にはならないかもしれませんが、未経験の方は辛かったと思います。

Senna: データサイエンスとしての“ハウツー”的な内容って、結局ちゃんと学べたんですか?

たとえば、パイプラインの構築とか、データの扱いとか。

Suguru: 基本的な部分は網羅しました。ですが、授業期間が9ヶ月しかないので、結局どれも表面をなぞる程度で終わってしまいましたが、そこは致し方ないですね。

Senna: やっぱりそうですよね…。あの内容で「未経験がインターンに行けます」って言われても、正直難しいとは思っていました。ちなみに、僕の記憶が正しければあのコース取った未経験者はいなかったと思うんですけど、いました?

Suguru: いましたよ。もちろんFrog経由の人じゃなかったですけど。

Senna: ですよね…。いやそれは本当に気の毒。最近、「未経験なのにこのコースに入れられました」っていう相談がすごく増えてるんですよ。

Suguru: 未経験者にはちょっと厳しい内容なのは間違いないですね。基礎から学ばないといけないけど時間もない。

CICCCのクラスメイトとその友達と、BARにて

就職活動の現実とリファラルの重要性

Senna: Suguruさんが実際にカナダで就職活動を始めたのはいつ頃からでしたか?

Suguru: 就職活動は渡航してすぐ、2024年9月から始めました。具体的には、ESL(語学学校)を1ヶ月だけCICCCの付属のところに通って、その後在学が始まったぐらいから、もう応募を始めようということで動き出しました。

Senna: かなり早い段階から動かれていたんですね。そのきっかけは何かあったんですか?

Suguru: 実は周りが結構早めに始めている人が多かったんです。データサイエンスのコースに、僕以外にもFrogの人がいて、その人ともう1人 Frog以外を利用してエンジニアで来た人の二人が結構序盤からどんどんアプライしまくっていて、これはやらないといけないなということで始めました。

Senna: なるほど、周りの影響も大きかったんですね。実際に応募状況はどうでしたか?

Suguru: トータルで60〜70件ぐらい応募したと思います。EasyApplyとかも含めてですけど。ただ、実際に書類が通ったのは確か3件だけでした。

Senna: 3件ですか。それはかなり厳しい数字ですね。

Suguru: そうですね。2件は実際のインタビューまでは行けなくて、確か適性検査みたいなメールが来て、そこでまた落ちたという感じでした。技術的な質問とかがあるテストみたいなもので、レジュメが通った人がやるテストという位置づけだったと思います。1件はLinkedinで繋がった人からのリファラルだったんですけど、スクリーニングインタビューでトロントへのリロケーション必須と言われて、状況的にそれは難しいなということで無しになりました。

Senna: 2024年の9月頃といえば、確かに就職市場が決行厳しかった時期でしたよね。

Suguru: いやもうひどかったですね。本当に何の音沙汰もないという状況が続きました。レジュメの精度もまだ全然整備できていなくて、そういったところもありましたけど、それにしても反応がなさすぎて。

Senna: 応募してもフィードバックがないと、何が悪かったのかもわからないから改善のしようがないですよね。時期的に少しでも動きがあった時期とかありましたか?

Suguru: 12月ぐらいかな、12月ぐらいはちょっと返信というか、動きがあるところが少し増えたような気がしました。リクルーターからのメッセージも何件か来てた気がします。でも結局、応募して落ちても何がダメだったかがよくわからないから、なんとも言えないですよね。

Senna: そんな厳しい状況の中で、今の仕事を見つけられたわけですが、どうやって突破口を見つけたんですか?

Suguru: 実は、リファラルで今の会社に入ることができたんです。データサイエンスのクラスメイトで、ソフトウェアエンジニアとして働いている人がいて、その人の会社でポジションが空いているという話を聞いて。

Senna: リファラルだったんですね。具体的にはどういう経緯だったんですか?

Suguru: そのクラスメイトとはESLから同じクラスで、日本人ということもあって自然と仲良くなったんです。お互いにエンジニアとしてのバックグラウンドがあったので、技術的な話もよくしていました。それで、 たまたま彼の会社でポジションが空いて、「興味ある?」って声をかけてもらえたんです。

Senna: リファラルの重要性を本当に実感される瞬間ですね。

Suguru: 本当にそうですね。結局、リファラルだと話がトントン拍子に進んで。書類選考も通って、面接の機会をすぐにもらえました。

Senna: リファラルを獲得するために、何か意識していたことはありますか?

Suguru: 正直特別なことはしていないですけど、クラスメイトとは仲良くしておこうと思っていました。技術的な話はもちろん、普通の雑談もよくしていましたし、困っていることがあれば助け合う関係を築いていました。友達として仲良くなるのもそうですが、リファラルを獲得するためということであれば、「この人となら一緒に働けるかな」って思ってもらえることが一番大事だと思います。

Senna: シンプルだけど、本質的なアドバイスですね。実際の面接はどんな内容でしたか?

Suguru: 面接は約2時間でした。内容としては、まずアルゴリズムの問題が出されました。

Senna: アルゴリズム以外にはどんなことを聞かれましたか?

Suguru: 特に重視されたのは、スタートアップでの環境適応能力でした。今の会社は急成長中のスタートアップなので、変化の激しい環境で柔軟に対応できるかどうか、新しい技術をすぐに学んで実装できるかどうか、といった点を重点的に確認されました。

Senna: 面接の雰囲気はどうでしたか?

Suguru: リファラルということもあってか、比較的フレンドリーな雰囲気でした。技術的な質問は当然しっかりありましたが、圧迫面接のような感じは全くなくて、むしろこちらの経験や考えをじっくり聞いてくれる感じでした。

Senna: 今振り返って、就職活動で一番大変だったことは何でしたか?

Suguru: やっぱり返事が全然来ないことですね。自分のレジュメの何が悪いのか、スキルが足りないのか、それとも時期が悪いだけなのか、全くわからない状態で応募し続けるのは精神的にきつかったです。

Senna: そんな中でモチベーションを保つ秘訣はありましたか?

Suguru: 同じ状況の仲間がいたのが大きかったですね。みんなで情報交換したり、お互いに励まし合ったりしていました。あとは、とにかく行動し続けることですね。応募を止めたら可能性はゼロになってしまうので。

アメリカ企業での経験

Senna: それでは、実際に今カナダで働かれているわけですが、現在のお仕事について詳しく教えていただけますか?

Suguru: 現在はeコマース向けの分析システムを開発しているスタートアップで、バックエンドエンジニアとして働いています。具体的には、異なるeコマースプラットフォームのユーザーの購入データを集積して、購買行動を分析したり、広告効果の最大化、在庫管理の最適化をサポートしたり、売上予測のアルゴリズムを実装したりといった、データ分析基盤の開発保守をメインで担当しています。

Senna: eコマース分析というと、かなりデータ量も多そうですね。技術スタックはどんな感じですか?

Suguru: メインはTypeScriptを使っています。バックエンドはNodeJSとServerless Frameworkを使用してAWS Lambda上でマイクロサービスを構築しています。データベースはPostgreSQLとAWS DynamoDBを併用しています。

Senna: なるほど、モダンな技術スタックですね。バックエンドエンジニアとしての役割について、もう少し詳しく教えていただけますか?

Suguru: 主な役割は大きく2つあります。まず一つ目は、ユーザから問い合わせのあるバグやデータ同期のトラブル対応です。内容によってはデイリープロセスのジョブ管理や、インフラ系の改善もここに含まれます。あとは追加機能開発ですね。スタートアップ企業ということもあって、ユーザからのリクエストにタイムリーに応えることと、企業として、競争力のあるバリューを速やかに提供することに重きを置いているので、常に何かしら新しい機能は開発している状況です。

日本に居た頃との違い

Senna: どうですか?実際入社してみて日本で働いていた時との違いは。

Suguru: 正直言って、入社した時のコードベースはめちゃくちゃでした(笑)。イメージとしては、もうちょっとこう北米の企業は洗練された、メンテナンスのしやすいコードが入ってるんじゃないかなっていうイメージが勝手にあったんですけど。

Senna: 会社のステージによりけりですよね。

Suguru: でもイメージ通りだったのは、やっぱスピード感かなと思いますね。早いですね、とにかく意思決定が。

Senna: そのスピードの速さというのはよく取り立たされると思いますが、なぜその違いって生まれるのでしょう。

Suguru: 多分ですけど、責任範囲が明確なんじゃないですかね。決定権がある人が、とにかくすぐ決定をするっていう感じだと思いますね。

Senna: なんか日本でいうところのあれですよね、「ちょっと一旦お持ち帰り」みたいな。

Suguru: 上長が部下から相談を受けたら、「じゃあこれでいこう」ってその場ですぐ結論を出してるイメージですね。

Senna: なるほどね。なんかその上に行ったりとか、社長まで行ってようやく意思決定されるみたいな、あれがないってことですかね。

Suguru: ないと思います。

Senna: 結構日本だと「じゃあちょっと一回ミーティングしよっか」みたいな感じでミーティングをして、そっから決まるとかね、あるんですけど。

Suguru: あんまりないですね。

多様性のあるチーム構成

Senna: ちなみに人種構成的にはどういう人たちが多いですか、会社として?今やっぱりリファラル採用が連鎖したこともあって、日本人3人いらっしゃるわけじゃないですか。

Suguru: そうですね。やっぱりアメリカの企業なので、アメリカ人は多いですね。でも名前的に、デベロッパーの方は結構多国籍だと思いますね。人種まではちょっと分からないですけど。

Senna: なるほどですね。わりかし多人種な環境にいらっしゃるということで。そういう意味で言うと多分、クライアントとやり取りするところにはちゃんと英語が流暢なネイティブをつけてるっていう感じですかね。

Suguru: そうですね。デベロッパーは別にそこはあまり重視しないというところだと思います。

日本と海外の働き方の違い

Senna: 日本と海外に出て、日本ではもちろん働かれていたんじゃないかなと思うんですけど、実際海外に出てみて、なんか日本と海外でこれ変わったなとか、日本で働いた時と比べてこれ違うなとか。さっきの話だと意思決定の部分が大きいのかなと思いますけど、他の例えばエンジニアの方々なんかもフォーカス的に見て、やっぱり日本との海外との違いってこれだよねみたいな、なんかあります?

Suguru: 失敗してもいいから、とにかくやろうぜっていうところが、こっちは大きいかなと思います。スタートアップっていうのもあると思いますが、とりあえずバグっててもいいから、バグってたら後で直せばいいじゃんっていう。とにかくクライアントが課題を抱えてて、その課題を解決してあげるっていうところにフォーカスしてるっていう。

Senna: なるほど。

Suguru: ある意味ビジネスの本質を見失わないようにしているのかなと思いますね。

Senna: 日本だとでもどうでしょう。SIerのやっぱり業態とかだったら客先のなんかシステムを構築しなくちゃいけないから、失敗なんてあっちゃいけない。だから業態とか業界構造みたいなところがちょっと日本はね、直すのが難しい所もありそうですよね。

Suguru: そうですね。とにかく慎重にテストして、バグがないようにないように作り込んでようやく2年後にリリースみたいな。

Senna: 納品という概念があってしまうと、なかなか難しいですよね実際。納品しちゃったらね、運用フェーズに入るとしても、やっぱり「お客様の元に」っていうイメージになっちゃいますもんね。

Suguru: ちょっとそこがギャップでしたね。こんな適当でいいんだっていうか。

Senna: SIerで今まで働いていて、自分たちのプラットフォーム持ってる会社、SaaS型の会社に移ったから感じたギャップだった可能性はあるってことですよね多分。

Suguru: おっしゃる通りですね。

今後のキャリア展望

Senna: ご自身のキャリアとしての今後の展望、今後何やりたいとかどういう姿が理想とかなんかありますか?

Suguru: これ、今の時代難しいですよね。多分いろんなエンジニアが今後エンジニアとしてどうキャリアを築いていこうか迷っていると思うんです。

Senna: LLM時代においてのキャリアは本当に今迷ってる人が多いですね。

Suguru: 学校のデータサイエンスのマネージャーがいるんですけど、その人はビッグテックで働いてたっていうバックグラウンドがあって、その人にちょっと相談してみたりとか、あるいは今の会社のボスに今後どうしていくのがいいかなみたいなカジュアルに相談してみたりとかしてるんですけど、その人たちもやっぱりわからないっていう回答ですね。

Senna: ここ最近聞く人たちはここで悩む人が多いです。

Suguru: でもやっぱり一つ言えるのは、結局5年先とか10年先なんて絶対分からないんで。

Senna: 間違いない。

Suguru: とにかく今できることを一生懸命やるっていうのが、最終的に未来に繋がってくって僕は信じてるんで。

Senna: コネクティングドットの話ですね。

Suguru: そのとおりです。

これから海外就職へチャレンジする方へメッセージ

Senna: では最後にこれから渡航される方々へのアドバイスってところになりますけど、何かありますか?

Suguru: 僕実は今のこの仕事をする前に、ちょっとこっちの就職は厳しいかもなと思って日本の仕事を探して業務委託で1ヶ月だけ働かせてもらったことがあるんですよね。運よく今のアメリカの仕事が決まって、それで本当に申し訳ないことにやめちゃったんですけど。

Senna: そうだったんですね。

Suguru: カナダに来る前に働いていた会社やその業務委託先のエンジニアたちを見ていて、結構、技術というよりも、仕事の進め方というか、仕事をどうさばいていくかみたいなところでアウトプットに差がついているケースがあるように感じたので、そこを鍛えていくと、大体のことは聞けば分かるAIがある以上、活躍の道が広がるのかもなってちょっと思いました。もちろんどんなキャリアを目指しているかにもよりますが。

Senna: 仕事をさばく方法っていうと、具体的には何でしょう?与えられたチケットをさばく能力というか、そういうイメージですか?

Suguru: というよりは、そのタスクのブロックを取り除いていく力って言うんですかね。これをやるにはまず、こういうことをやらないといけなくて、そこはじゃあこの人と話した方がいいとか。

Senna: うーん。なんだろうタスクが目の前にあって問題解決しなくちゃいけないものが目の前にあるんだけど、何から手をつけたら分からない、手も動かせないみたいなのが一番怖いよねってイメージですよね。

Suguru: そうですね。こう、コードをこう書けばいいとかっていうのは分かる人はいっぱいいるんですけど、それを書くための、目に見えないタスクがたぶんいっぱいあるので。

Senna: なるほどね。

Suguru: 僕は英語ネイティブのエンジニアたちと張り合っていくだけの技術力や英語力に自信がなかったので、別の力で戦っていくことが自分なりの生存戦略といえるかもしれません。ただ、今の会社のボスも似たようなことを言っていたので、そうした能力を求められることがあるのは事実かなと。当然、色々なキャリアの方が渡航されるので、それぞれの戦い方があると思います。あとはもちろん英語ですね。

Senna: 分かります。結局は英語とお金。実際差はありましたか?Suguruさんがこっちにいらっしゃった時の英語のイメージしてたレベル感と、やっぱこっちに実際働き出しての英語のレベル感とっていうののギャップ。

Suguru: まあありますよね。やっぱりネイティブには圧倒されます。当然優しいので、ボスとはちゃんと会話にはなるんですけど、なかなかネイティブ同士の会話とかにはまだ割って入るのは難しいですね。

Senna: まあそうですよね。ここら辺は多分日本人である以上、一生たぶんついて回る。

Suguru: 英語をツールとして使って、仕事で成果を見せるってところはちゃんとやらないといけないなと思っています。

渡航前に旅行先の太宰府天満宮にて就職祈願の絵馬を書いているところ

精神的な準備の重要性

Senna: 素晴らしい、ありがとうございます。他にはありますか?

Suguru: あとはそうですね。僕10月とか11月ぐらいにすごい気分が落ち込んだんです。ちょうどあのレイニーシーズンというか。

Senna: うん、もうみんながやばい時期ですね。

Suguru: そうそう。天気で鬱なんてないだろうと思ってたんですけど、結構落ち込んじゃったので。多分天気だけじゃなくて、就職もなかなか光が見えなかった時期で。

Senna: そうですね。24年の中盤後半は結構辛かったですもんね、やっぱ。

Suguru: お金もどんどん減り続けていくしっていうところで、ちょっとそこに対する準備じゃないですけど、覚悟というか最悪の状態を想定して来たほうがいいとは思います。

Senna: 間違いないですね。来たらこっちで2ヶ月くらいで仕事見つけられるって思ってる人が多分多くて、その辺の温度差を伝えるのに苦労しています。実際、Frogには海外就職者が多いから気持ちは分かるんですよ。やってみないと分からないというか。

Suguru: そうですね。そういう成功体験を見ちゃうと、自分もいけるんじゃないかみたいな。

Senna: でもまあ本当にこれは、Suguruさんも実体験されたかなとは思いますが、なかなか落ちるというかね、気分がだいぶ落ち込んでしまうということで。

Suguru: そうですね。ちょっとそこは何とか自分をコントロール、メンタルをコントロールする技術じゃないですけど、そういう準備をしてきたほうがいいと思います。

Senna: 一般的かもしれないけど、お金、英語、メンタル。結局はこの3つをどう整えられるかで海外での安定性が決まってくるのは間違いないですよね。メンタルの維持のためにはビザ周りの余裕も是非持ってほしい今日このごろです。改めてお時間頂きありがとうございました!


文系出身からエンジニアへの転身、そしてカナダでの就職成功。Suguruさんの体験談は、海外就職が決して特別な人だけのものではなく、しっかりとした準備と継続的な努力、そして人との繋がりを大切にすることで達成可能な目標であることを示してくれたのではないでしょうか。

最後にとても親身になってこれから渡航される方々へのアドバイスを考えてくれていたことが印象的でした。挑戦にはリスクが伴いますが、その先に待つ成長と経験はかけがえのない財産となるでしょう。Suguruさんの示した道のりが、他の誰かの参考になることを願っています!