「点」から「面」へ。AmazonエンジニアのYaoさんが考える、広がりをもった人生設計
みなさんこんにちは!FrogメンバーのHiroshiです。今回インタビューに応じてくださったのは、あのAmazonでエンジニアとして働かれているYaoさん。(彼は普段、日本人に対しては「よう」と名乗っています)
彼は幼少期から高校卒業までの時期を日本で過ごし、UBC (University of British Columbia) という、カナダでも非常に高名な大学に進学されました。そして同大学を卒業後、誰もが知るあのAmazonにエンジニアとして就職されたという、素晴らしい経歴の持ち主です。
日本では「留学」と言うと「語学留学」がかなりポピュラーな選択肢ですし、このFrogのインタビューでも、カナダ国内のカレッジ (1〜2年) で学習された方のお話が大半だったと思います。一方、彼のように、4年制の総合大学で学位を取得する留学・移住を経験した人の母数はそう多くないかと思うので、今回のインタビューは、その観点から非常に貴重な内容となっています。
2023年10月現在、彼が同社で働き始めてから3年が経過しましたが、1年経過時点でポッドキャストに出演し、その時の状況について語っていらっしゃいます。
東大を超えるカナダの有名大学卒業後、新卒でAmazonのエンジニアとして働くとどうなるのか
上記ポッドキャスト出演から約2年。昇進も経験されたYaoさんに、現在のお仕事、ポッドキャストではカバーしきれなかった彼のバックグラウンド、そして将来の展望についてお聞きしました。
現在すでに社会人として働かれている方はもちろん、進路に悩む中高生、あるいはお子さんの将来を案じる親御さん達にとっても非常に有益な内容かと思います!ぜひ最後までご一読ください。
日本 → カナダ → 日本 → UBC
Hiroshi: 本日はお時間頂きありがとうございます!
Yao: よろしくお願いします!
Hiroshi: 今のお仕事の話は追ってお伺いするとして、まずは時系列に沿ってYaoさんのバックグラウンドについてお聞きできればと思います!お生まれは日本なんでしたっけ?
Yao: そうですね、生まれたのは日本ですが、両親は中国人です。彼らは僕が生まれるよりもずっと前に日本に来て、日本で学位を取得・就職し、僕が生まれる頃にはもう日本の永住権を取得していたと聞いています。その後、僕が3歳か4歳の頃にカナダに一度来たんです。
Hiroshi: そんなに小さい頃にもうこちらに来てたんですね。
Yao: はい。僕の母親がカナダの市民権取得を目当てに来たんですよね。当時のカナダは今よりも移民がしやすい国だったみたいで、5年くらい滞在すればもう市民権は普通にもらえる、みたいな状態だったみたいです。なので、母親は合計5年くらい滞在したんですが、僕自身は2年くらいしか滞在しませんでした。
Hiroshi: その頃の記憶は何かありますか?
Yao: 一応小学生として過ごしたはずなんですけど、ほとんど何も覚えてません。笑 小学1年生の後半ぐらいの時期に日本に戻ってきて、そこから高校卒業までは日本に住んでいました。
Hiroshi: なるほど。それで大学進学を機にカナダに戻ったというわけですね。
Yao: そうですね。
Hiroshi: ポッドキャストを聞いた感じだと、ご家族が元々海外志向だったというか、Yaoさんには海外の大学に行ってほしいと思われていたようですが、やはりその影響は受けていますか?
Yao: おっしゃる通り、その影響はかなり強かったです。またさっきお話しした通り、小さい頃にカナダ市民権を取得していたので、学費が安かったというのも大きな理由ですね。
Hiroshi: なるほど!学費の高さが海外進学のネックになっている方が一定数いらっしゃる中、そこの問題がクリアできているのは強いですね。
Yao: あとは、その当時の中国って、国として不安定な時期があったので、海外に出て暮らすという選択肢は割と一般的だったんですよね。じゃあどこに住もうかって考えた時に、当時一番栄えていたのが日本とアメリカだったので、日本の永住権とカナダの市民権を取るという選択肢に落ち着いたんだと思います。
Hiroshi: 大学出願の際、最終的にはオタワ大学とUBCからオファーをもらったとのことですが、大学の情報とかって全部ご自身で調べられたんですか?
Yao: 基本的には自分でリサーチしたんですが、僕のいとこがアメリカの大学に通っていたので、海外の大学に進学する際のプロセスに関するベースの知識はもともとありました。英語のテストを受けて、その点数によって応募できる大学が変わるんですが、このシステム自体はアメリカもカナダも同じなんですよね。
Hiroshi: 日本の受験のシステムとはだいぶ違いますね。
Yao: そうですね、日本の受験よりは簡単だと思います。その英語のスコアを基に、あとは予算の許す限りたくさんの大学に応募して、最終的にどこか選ぶ、という流れが一般的です。大学によって少し手続きが違ったりはしますが、基本的にはその英語のスコアに加えて高校の成績とかを出すだけなので、皆さんが想像するほど複雑なプロセスではないと僕は認識しています。
Hiroshi: 応募先の大学の選定基準は、CS (コンピューターサイエンス) の学部の有無と知名度、といったところでしょうか?
Yao: そんな感じですね。当時はこちらの大学の序列にそこまで詳しいわけではなかったので、大学ランキングに掲載されているところに本当に手当たり次第送りました。笑 また、志望学部については、コンピューターサイエンスがやりたい、とまでは絞り込めていなかったので、理系という大きなくくりで探してましたね。
海をまたいだインターン活動
Hiroshi: ありがとうございます。2016年から2020年にUBCに在学されてたかと思いますが、その期間でインターンはどのくらいの数参加されましたか?
Yao: インターンは2回ですね。他にはアルバイトとして、プログラミングアカデミーでチューターをしたり、大学の教授のプロジェクトに参加したりもしてましたね。
Hiroshi: 教授のプロジェクトに参加することもあるんですね。
Yao: そうですね。教授が個人でやられてるプロジェクトで、こういうスキルがあった学生がいてくれたら助かるんだけどな〜というものについて、学内で募集がかかったりするんです。普通に飲食店とかでバイトするよりは、自分が目指す領域でのスキルアップにつながるので、そういう動機で応募しました。
Hiroshi: LinkedInを拝見すると、初めのインターンは、Vancouver Community Networkという地元の団体なんですね。ここにはどういった経緯で行き着いたんですか?
Yao: こっちの夏休みって4ヶ月ぐらいあってむっちゃ長いんですが、この年は日本に帰ったりする予定がなかったので、この空き時間何しようかな〜って思ってた中で見つけたインターンです。
Hiroshi: え、長!笑 確かにそんなに休みがあると何かに取り組まないともったいないですね。
Yao: この時は、空き時間を埋める、みたいなモチベーションから始まったので、あまり名の知られていないところに行き着きましたけどね。笑 ただこの頃、授業外でも自主的にプログラミングに取り組み始めてたんですよね。どういうことができるのかな〜みたいな感じで。なので、授業外で自分の実力を試す良い機会だったかなとも思います。
Hiroshi: インターンはグノシーでもなさってたとのことですが、これは東京でのことですか?
Yao: そうですね。夏休みのうち2ヶ月を使って東京に滞在しました。
Hiroshi: ポッドキャストでは、せっかく日本のバックグラウンドもあるから、日本の労働環境も経験しておきたい、みたいな話があったかなと思うんですけど、そういうモチベーションからの応募でしたか?
Yao: もちろんそれもあるんですが、正直こっちのインターンに全然受からなかったっていうのもあるんですよね。両方視野に入れてやってたんですけど、最終的にオファーを頂けたのがグノシーだけだったんです。
Hiroshi: そうなんですね。今はAmazonで3年くらいの経験がおありですが、グノシーで働かれていた期間と比較して、労働環境の観点から何か大きな違いは感じますか?
Yao: 今の仕事はリモートと対面のハイブリッドなんですが、グノシーではずっとオフィスで働いてたんですよね。僕は対面で仕事をする方が好きなので、その点から、グノシーで経験した環境の方が好みですね。
Hiroshi: 対面でしか生まれないものもありますよね。僕も概ね同じ意見です。
Yao: Amazonに入ってすぐの頃は、コロナ禍真っ盛りだったので、今より更に家で働く時間が長かったんです。そこが自分的にはとても残念でしたね… 質問する時はメッセージなので時間かかりますし、同僚の顔もよくわかんないですし。緊張感というか、同じ空間で一緒に何かを作っているという感覚がなかったのは辛かったですね。
Hiroshi: 入社直後でその状態は確かに辛いですね。
Yao: 今はだんだんみんなオフィスに戻ってきていますが、もちろん完全に戻る感じでもないですし、グノシーで体験したような環境が少し恋しいという気持ちは正直あります。まあ1ヶ月だけだったからいい面しか見えてない…っていう可能性もありますけどね。
Hiroshi: 今色んな会社がオフィス回帰の動きを見せていますが、労働者側としてはそれに反対している、っていうのが世の中の大まかな構図としてありますよね。Amazonではその辺りいかがですか?
Yao: 同じような感じだと思いますね。社員としてはオフィスに戻りたくないけど、会社側は戻ってきてほしい。でも大企業であるが故に強くは言えない、みたいな。笑 僕からはそういう風に見えます。
Hiroshi: インターン2つと、学校でのプロジェクト参加、その他アルバイトも…と聞くと、キャリアを見据えた活動としてはかなり盛んな印象を受けますが、周りの学生さんを見ても同じような感じでしたか?
Yao: そこは結構まちまちですね。ただ、UBCにもCo-op (Cooperative education: 学生ビザの下で行う有給インターンシップ) プログラムはあるので、インターンという概念自体は、CS学部も含めて生徒の間にかなり浸透しています。なので、就活の手段としてインターンを選ぶというのは割と一般的なのではないかと思います。
Hiroshi: やっぱり実際に働いた感覚を基に就活をした方がミスマッチは減りますしね。
Yao: 4年生の学部であっても、インターンにしっかり時間を使いたいから5年かけて卒業する、という人も結構いっぱいいます。なので、僕自身のキャリア関連活動は抜きん出て盛んというわけではなく、割と平均的な感じだと思います。
Hiroshi: そうなんですか!僕が大学生をしていたのは10年前くらいですが、当時はそこまでインターン活動が盛んだったイメージはありませんね。面白いです。
昇進に伴う変化
Hiroshi: では、Amazonでのお仕事の内容に移りたいと思います。ポッドキャスト出演当時は、トラックの出入庫を管理するソフトウェアの開発に携わっていたとのお話でしたが、業務領域的には今も同じ感じですか?
Yao: そうですね。同じチームに所属しています。
Hiroshi: 2020年に入社して、今年 (2023年) の6月に昇格なさったとのことですが、昇格によって仕事上の変化は何かありましたか?
Yao: Amazonみたいに大きな会社だと、1年の間で何をやるかっていうのは、年初の時点で大体決まるんですよね。なので、仕事の内容自体はあまり変わっておらず、新しいプロジェクトをアサインされたりもしていません。
Hiroshi: そうなんですね。だとすると、最も変わるのは周りからの期待値ということになりますか?
Yao: おっしゃる通りですね。僕は今回肩書でいうと、SDE (Software Development Engineer) 1からSDE2にレベルが上がったんですが、SDE2だったらこのぐらいの情報量でこのくらいのタスクはできますね、といった認識が社内でなされているんです。
Hiroshi: なるほど、タスク自体の難易度や、それをアサインするのにかけられる労力が減るといった感じですね。
Yao: はい。SDE1の人たちには、タスクをアサインする時に与えられる背景情報がより多かったり、行き詰まった時の為のフォロー体制が手厚く敷かれていたりするんですが、SDE2には、上流工程のタスクが抽象的なままアサインされるようなイメージです。それでも詳細まできちんと詰めてやってくれるだろうという期待があるというわけです。
Hiroshi: 1を聞いて10を理解するようなマインドが求められるわけですね。
Yao: そうですね。タスクのやり方とか、求められる質が変わったように感じますね。
Hiroshi: 今回は入社から3年程度での昇進だったようですが、これはAmazon社内での平均的なペースと比べてどうなんですか?
Yao: うーん、自分の感覚だと、アベレージか、それよりちょっと遅いぐらいかなっていうイメージですね。
Hiroshi: 定量評価の為のテーブルのようなものはあるんでしょうか?
Yao: こういうレベルのエンジニアだったら、こういうことができるべきだよね、っていうようなことがリストアップされたテーブルはあります。各項目を満たす人材になったと会社が認めたら昇進、という感じです。
Hiroshi: なるほど、そろそろ昇進だよ〜みたいな感じで、会社から声がかかる感じですか?
Yao: そういうパターンもあるかもしれませんが、やっぱり自分の方から言ってかないと昇進は遅くなっちゃうと思いますね。昇進の基準を満たすスキルをつけるために、より難易度の高いプロジェクトにアサインしてもらえるよう打診してみるとか、そういうことを積極的に提案していくことは結構大事なんじゃないかと思います。
Amazonの組織風土:大企業の宿命
Hiroshi: 今Amazonで働かれ始めてちょうど丸3年くらいが経った頃かと思うんですが、その3年を総括して、職場に対してはどのような感想をお持ちですか?
Yao: これは大企業だったらどこでもそうかもしれないんですけど、ビジネスドメインが細分化されすぎてるなーと感じることはありますね。
Hiroshi: 例えばどのような時にそれを感じますか?
Yao: 先ほどお話しした通り、僕はトラックが倉庫に出たり入ったりするところに関わっているわけですが、これってものすごくニッチで、流通全体の視点から見たら、ものすごく小さい場所なんですよね。なので、どのように配送ルートが決まるのかとか、どのようにスケジュールが組まれるのかとか、そこでどういう問題が発生するのかとか、そういうのがあんまり見えてこないんですよ。
Hiroshi: なるほど。確かにこれは、高度に効率化・細分化が進んでいる大企業ならではですね。
Yao: エンジニアとしては成長しているかもしれませんが、流通というビジネスドメインに身を置く人間としての成長、という観点では、あまり満足できていないというのが正直なところです。
Hiroshi: 大企業の宿命というか、業みたいなものですね。
Yao: ただこういうのって絶対的な正解・不正解があるわけではないのでちょっと難しいとこですよね。そういう風に細分化された環境で、細かいことに特化したスキルを磨くのが性に合っているっていう人もいるでしょうし。
Hiroshi: おっしゃる通りですね。Amazonの企業文化について、Yaoさんがいいなって感じている点とかありますか?
Yao: 僕自身は使ったことないんですけど、所属するチームを変えるっていうのは、結構他の大企業と比べると簡単にできるみたいですね。チーム間での健全な競争を発生させるというのが目的です。
Hiroshi: なるほど。ちゃんとチームの環境を相対的に良くしないと、みんなが逃げていっちゃうってことですね。それは確かに組織の健全化に貢献しそうです。
Yao: そうですね。そういうところはいいなって思います。
Hiroshi: 今って1日のスケジュールはどんな感じなんですか?始業時間、オフィスへの出勤頻度、残業とかについて、差し支えのない範囲で教えていただけたらと思います。
Yao: 今は、オフィスへの出社は週3ですね。基本的には9時か10時くらいから仕事を始めて、5時か6時くらいには終えています。残業はほとんどしませんね。
Hiroshi: 素晴らしいですね。そういった1日のリズム的なところも、SDE1の時と2の時で大きく変わっていませんか?
Yao: そうですね。そこも特に大きな変化はなく、ミーティングが増えたりとかもありません。ただこれは、まだ昇進してあまり時間が経っていないというのもあるかも知れません。来年の年初に計画を立てる時、アサインされる業務量が増えたりする可能性はありますね。
Hiroshi: なるほど。その1年の計画って、会社から一方的に降ってくる感じなんですか?それとも、従業員側からの提案の余地もあるんでしょうか?
Yao: こういうところを改善したら、チームにとってもカスタマーにとってもいい影響がある、というのを、データに基づいてきちんと示すことができれば、こちらから提案をする余地は全然あります。もちろん、最終決定権はマネージャー陣にありますが。
休日の過ごし方・業務外での学習
Hiroshi: ここからは、仕事以外のことについて伺いたいと思います。休日の過ごし方とか、日々の勉強とか。休日は普段どういう風に過ごされてますか?
Yao: めっちゃ普通な休日ですよ。趣味に取り組んだり、友達と出かけたり、たまってる家事をやったりとか。
Hiroshi: 技術関連の学習についてはどうですか?
Yao: 僕以上に勉強してる人って全然いると思うので、そういう人たちを参考にしてもらった方がいいとは思いますが、技術書を読んだりとか、流行っている技術を触ってみたりとかはしますね。例えば、Next.jsは業務では使ってないんですけど、かなり人気が出てきているので、まあ触っといた方がいいかな〜と思ってちょこちょこなんか作ったりはしてます。
Hiroshi: 今業務で携わられているソフトウェアの技術スタックってどんな感じなんですか?
Yao: Webアプリなんですけど、フロントはReactで、バックエンドはJavaですね。Amazonのチームって、基本的にはJavaを使ってるんですよ。なので、特別な理由がない限りは基本的にみんなこの技術スタックなんじゃないかなと思います。
Hiroshi: そういえば、Yaoさんが最近Flutterを始めた、みたいなことを小耳に挟んだような気がします。
Yao: 今年の前半に、簡単なアプリを1個作りましたね。別にFlutterの専門家になろう!って思った訳ではないので、さっきお話ししたような、自主的な学習の一環で試してみたという感じです。そこまで深掘りした訳ではありません。
Hiroshi: そうなんですね。
Yao: 確か、大学卒業間近の頃にFlutterが世に出て、FlutterとReact Nativeを比べる人が結構が出てきたんですよね。その時に自分もFlutterに興味を持ち始めました。そこからしばらく着手できずにいたんですが、ようやく行動に移したという感じです。笑
Hiroshi: ちなみに、どういうアプリを作られたんですか?
Yao: 孫正義さんが学生の頃、アイデアを生み出す為のアクションの一環として、単語カードに色々書いて持ち歩いてたらしいんですよね。物の名前とか概念とか。そのカードをランダムに3枚引いて、その組み合わせで何か新しいもの作れないかな…っていうのをやってたみたいです。それをデジタル化したようなアプリですね。すごいシンプルなものですよ。
Hiroshi: 面白そうですね!普段から、そういった起業家界隈の情報にはキャッチアップしてるんですか?
Yao: 自分ではあまり満足にできてないと思っているので、これからはそういうところにもしっかり時間を使っていこうかなって思っています。まだまだ1日の時間を効率的に使えてない自覚があります。
将来のキャリア・Web3への情熱
Hiroshi: ポッドキャストでは、将来スタートアップでも働いてみたいというお話がちらっと出ていましたが、今後2~3年で、キャリアについて何か考えられていることはありますか?
Yao: 先程も話題に挙がりましたが、今の仕事は大きなものが細分化された一部分なので、もうちょっと自分が責任を持って広い範囲を見られるような仕事がしたいという気持ちはありますね。おっしゃるように、スタートアップはひとつの選択肢です。
Hiroshi: やはりその思いは強いんですね。
Yao: もっと言ってしまうと、今のチームも、特に自分の希望で所属した訳でもないんですよね。Amazonって、新卒入社時の配属先は基本的には会社の一存という感じなんです。なので正直、僕も流通にものすごく興味があったって訳ではなくて。次のキャリアを考えるなら、もっと自分の興味が強く惹かれる分野に進んでみたいと思いますね。
Hiroshi: そうなんですか!配属先の希望は受け付けられないんですか?
Yao: 応募する際に希望を言えたのは、どこの都市で働くのか、だけでしたね。
Hiroshi: なるほど。3年というと、エンジニア界隈では割と転職を視野に入れる時期かなとも思うんですが、Amazon社内ではこのあたりどのような様子ですか?やっぱり会社としてのネームバリューはすごいですし、出ていくっていうのは大きな決断かなと思うんですけど。
Yao: 僕のチームで言うと、比較的保守的な方ですね。みんな結構長期で在籍しています。大学の時からの知り合いも何人かAmazonに来てるんですけど、まだ一人も転職してませんね。
Hiroshi: そうなんですか!意外です。
Yao: でも会社全体のデータを見ると、1年くらいで辞める人が結構多いみたいですね。Amazonの社員の中で、自分が在籍年数ランキングのどのくらいの位置にいるかを確認できるツールがあるんですけど、1年経つと真ん中ぐらいまで行くんですよ。
Hiroshi: そんな面白いツールがあるんですか!
Yao: まあ色んな理由があるとは思いますけどね。入ってみたけど合わないとか。
Hiroshi: 入れ替わりの激しい部署とかがあったりするんですかね?
Yao: それは、チームの年齢層とか文化にもよるものかも知れませんね。僕のチームって、結構年齢高めの人が多くて、お子さんがいらっしゃるという方も多いんです。そういう方々って、やっぱり転職する時の負担とかリスクが大きいので、転職願望も少ないんじゃないかな、と思いますね。
Hiroshi: なるほど。聞く限り働きやすそうな環境ですね。
Yao: そうですね。安定した空気感はあります。マネージャーも含め、産休を取ることとかに対する理解がある人が多いように思います。
Hiroshi: 僕の中では、YaoさんってWeb3とか仮想通貨とかその辺に強い興味をお持ちのイメージがあるんですが、その辺りの分野でのキャリアチェンジとか考えたりしてますか。
Yao: おっしゃる通り、その辺りの分野に対する興味はすごく強いですね。ついこないだも、わざわざトロントまで行ってカンファレンスに参加してきました。将来的なキャリアの選択肢としてもかなり有力です。
Hiroshi: 今ご自分でブロックチェーンとか触ったりしてるんでしたっけ?
Yao: ブロックチェーン上にコードを載せて、一定の条件下で自動的にプログラムを実行させる、スマートコントラクトという概念があるんですが、それを実際に作って公開したことはあります。とりあえずどんな感じのものなのかを知りたかったので、それが手っ取り早いかなと。
Hiroshi: すごい!もうそんなアクションも取られてるんですね。
Yao: Web3界隈は、オープンソースコミュニティみたいな場所なので、そういうことをきっかけに少しずつコミュニティの中に入っていって、っていうのがスタートになりましたね。まだまだ自分も開拓初期の段階なので、色々見ながらチャンスを窺っています。
Hiroshi: AmazonにはWeb3系の部署ってないんですか?
Yao: AWS (Amazon Web Service) 内にマネージドブロックチェーンというものがありまして、言うなればそこかなっていう感じです。そこ以外はほとんど耳にしませんね。
Hiroshi: なるほど。プライベートブロックチェーンというやつですね。
Yao: そうですね。自前でブロックチェーンを設置することが困難な企業に向けて売られているものだと思います。
自由になるための資産形成
Hiroshi: この間、Yaoさんが投資のことについてすごく熱く語っている場面を見かけました。僕はカナダでの投資については全然まだ素人で、これから勉強って感じなんですけど、Yaoさんご自身は、お金のこととか結構長期目線で色々考えられてるんですか?
Yao: 自分としては、転職を考えるとなった時、一番根っこにくるのが給料なんですよ。スタートアップで働きたいという気持ちはもちろんありますが、一方で、自分が満足するような給料がもらえないかもしれないっていう不安もあって。
Hiroshi: 確かにいくらやりがいのある仕事でも、そこがともなっていないと生活が成り立ちませんしね。
Yao: そんな状況下にあっても、自分でちゃんと資産形成しておけば、経済的に縛られることなく良い決断ができると思うんですよね。そういう状態に行き着きたいという思いはあります。根本的にあるのは、自由になりたいという思いなんですよ。笑
Hiroshi: おっしゃる通りですね。
Yao: 自分がカナダに長くいる理由の一つに、日本より給料が良いという点は確かにあるので、やっぱりお金って想像以上に自分を縛ってるなって思うんです。自分を自由にするためにも、やっぱり資産形成とはしっかり向き合っていきたいですね。給料に左右されて自分のやりたい仕事が選べない、みたいなことにはなりたくないんです。
Hiroshi: 素晴らしいマインドですね。大賛成です。Yaoさんの周りのご友人にも、そういうふうにお金のことをしっかり考えてる人たちは多いんですか?
Yao: 人によりけりというイメージですね。何にもやってない人ももちろんいます。周りの人について明確な傾向がある訳ではありませんが、僕自身はおそらく投資とかに対する興味が強い方に分類されると思います。
Hiroshi: 昔から投資に興味をお持ちだったんですか?
Yao: おそらく、多くの人が一度「投機」をどこかのタイミングでやってると思うんですよ。なんとなく伸びそうな株買って、チャートに張り付いて、あ!伸びた!売る!みたいな。笑 僕は大学4年生の時にそれを経験しまして、それが興味のスタートになりましたね。
Hiroshi: 僕も似たようなことは確かに経験しました。笑
Yao: ただ、最近になって、そのような短期的な「投機」ではなく長期的な「投資」についてしっかり考え始めました。当然「投機」では失敗したので。笑
読者の方々へのメッセージ:「点」から「面」へ
Hiroshi: このFrogのメディアの読者の方々の中には、これから海外に行こうかな、と悩んでいる方が結構いらっしゃると思うんです。そのような方々に向けて、何かYaoさんからメッセージを頂くことはできますか?
Yao: これは僕の叔母さんが言っていた話なんですが、人間の人生って、その時々で過ごした場所で区分できるじゃないですか。ここで生まれて、ここで育って、ここで仕事して…みたいな感じで。そういう観点で考えた時、ずっと同じ場所にいたら、その人生は一個の点でしかなくなっちゃうんですよね。逆に、色んなところで過ごすと、点がいくつも増えて、それが広い「面」になっていくじゃないですか。その面の上で、自分が一番幸せを感じられるのはどこなのかを探し続けるのが大事だ、っていう話です。僕はこの叔母さんの話がすごく心に残ってるんですよね。
Hiroshi: とても示唆に富んだお話です。
Yao: なので、その面の上で、自分が一番幸せになれる場所を探す時、食わず嫌いせず、ちゃんと自分の身をもって確認して最適解を出す、っていうのはすごく大事なんじゃないかなって思います。
Hiroshi: 人生で後悔を残さない為にはとても重要ですね。
Yao: 僕の場合、その「点」は主にカナダと日本の2つ、それとちょっと中国って感じなんですけど、それぞれの良い点悪い点を知った上で、日本が好きだと今は思っています。僕大都市が好きなので。笑 まあ結論は色々あるにせよ、自分の取っている選択肢について、ちゃんと説明できる状態を作るっていうのは、納得感を持って生きていくためにもすごく大事なんじゃないですかね。
Hiroshi: 確かに、きちんと自分の意思で選択しているという感覚は大事ですね。
Yao: 日本に住んでいる方々にも、一度海外に出るという選択肢をぜひおすすめしたいですね。色んな「点」を作ってみて、その上で、やっぱり日本が好きで最終的に日本に戻ることになったとしても、それはそれで素晴らしいことじゃないですか。自分の感覚で決断した訳ですから。「失敗してまた日本に戻ってくることになったらどうしよう…」みたいなことも、あんまデメリットとして考えずに一旦挑戦してみる!っていう感じがいいんじゃないですかね。
Hiroshi: 確かにそうですね。他に住んでみたい国とか地域とかってありますか?
Yao: やっぱり僕近代的な大都市が好きなので、ロンドン、シンガポール、ニューヨーク、ソウルとかそういうところはどうしても気になりますね。
Hiroshi: 大都市ってやっぱりテクノロジーが進んでますし、雇用もたくさんありますもんね。
Yao: あとは、最新のものに最速で触れられる、みたいなところもそういった大都市の魅力ですね。正直、最新のテクノロジーが最速でバンクーバーに来ることってないじゃないですか。笑
Hiroshi: 確かに。笑 技術者の身としては、新しいものに触れられる機会があるというのはとても大きな要素ですよね。
Yao: そうですね。
Hiroshi: 高校時代までは愛知で過ごされていたとのことですが、当時のご友人は、Yaoさんが海外の大学に進学すると聞いてどのようなリアクションでしたか?
Yao: ま〜みんなびっくりしてましたね。笑 高校3年の頃に海外の大学に進学することに決めたんですが、受験期で空気感がややピリついていたので、結構ギリギリまで周りには言いませんでした。
Hiroshi: 確かにその時期だと少し言い出しづらいですね。
Yao: 一応、みんなと同じように大学受験自体はしたんですけどね。高校生活の集大成的な意味で、自分的にもやっとかないといけないなって思ったんです。ただ受けたところはみんな落ちちゃったので、周りが「浪人かな…」と思っていたところに、「カナダの大学にいきます!」と発表したというわけです。笑
Hiroshi: 予期せぬサプライズですね。笑
Yao: みんなびっくりしてました。笑
Hiroshi: 大学のこともお仕事のことも色々お聞きできて、僕個人としても本日はとても勉強になりました!今日本で海外進出を志されてる方々にとっても、非常に有益なお話がたくさんあったかと思います。ありがとうございました!
Yao: こちらこそ、ありがとうございました!
いかがでしたか?私Hiroshiは10年程前に大学生活を終えていますが、Yaoさんと自分の大学生時代を比較すると、その積極性にとても大きな差があり、私個人にとってもまたひとつ大きな刺激となりました。
Amazonという誰もが知る大企業での働きぶりに関する話も面白かったですが、自分の人生を豊かにする為に海外に出るという選択肢を後押しできる内容でもあったのはないでしょうか。
私個人としては、人材の流動性は、社会の健全性に密接に関わっていると信じています。最終的にどこの地に落ち着くことになったとしても、勇気を持って色々な場所・領域に進出してみるのは素敵なことですよね。
我々Frogは、これからもそのような方々の背中を後押しできるような情報発信に努めてまいります!
ではまた、次回のインタビューでお会いしましょう。
YaoさんのX (旧Twitter): https://twitter.com/yo_hiro_jp
YaoさんのLinkedIn: https://www.linkedin.com/in/boyi-yao/
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