コーヒーも注文できなかった渡航初日から、Amazon Web ServiceのCSEへ海外就職を達成したObaraさん
本記事では、カナダでの学び直しを経てAWSトロントでカスタマーサポートエンジニアとして働き、現在は日本でTAMとして新たなキャリアを歩むObaraさんにお話を伺いました。
日本では鉱山エンジニアとして働き、その後Excel VBAをきっかけにITへ転身し、スタートアップでフルスタックとしてキャリアを積んできたObaraさん。人生の大きな転機を経て海外挑戦を決め、カナダへ渡航します。
到着直後のスターバックスでは言葉が全く出てこず、日本人スタッフに助けてもらいながら「ブラックコーヒーください」とようやく伝えられたというエピソードが象徴的でした。その後も英語の壁に苦しみながら、CICCCでの学習やTim Hortonsでの勤務、そして何十件応募しても決まらない就活を粘り強く続けます。
AWS面接では30個のOLPエピソードを用意し、仲間と面接練習を重ねて内定を獲得。トロントで経験を積んだあと、Obaraさんは日本での新しいポジションへ踏み出す決断をします。
本記事では、こうしたキャリアの背景やカナダでの挑戦、そして帰国に至るまでの心境を、Obaraさんの言葉とともに丁寧に追いました。
Frogとの出会いとカナダへの道のり
Senna: Frogのインタビュー記事って見たことありますよね?
Obara: はい、見たことあります。
Senna: 覚えてますか?Obaraさんが一番最初に連絡いただいたときの内容とか。
Obara: 最初お問い合わせしたときは、まだ気持ちが決まっていなくて。Sennaさんに面談いただいた気がするんですけど、その直後にプライベートで色々ありまして。
Senna: そうですよね。一回連絡いただいた後に、ちょっと2年くらい時間空きましたもんね。
Obara: そうですね。色々事情が重なりました。
Senna: そういった事情もあってという部分で、再度ご連絡をいただいたのが多分2022年末か、もうほぼ2023年ですね。
鉱山エンジニアからITエンジニアへ
Senna: 懐かしいですね。LinkedInなんかも先ほど拝見させていただきながらキャリアの部分を振り返っていたんですが、Obaraさんエンジニア経験者としてカナダに渡航されてましたよね。
Obara: そうですね、エンジニアとしては3年ぐらい経ってからカナダの方に渡った感じですね。
Senna: 僕、最初ObaraさんのLinkedInに「マイニングエンジニア」って書いてあるのを見て、「ビットコインのマイニングしてんのかな?」って思って見ていたら、多分これ本当のマイニングですよね?
Obara: そうです。最初の新卒から5年間は、セメント会社の鉱山部門で鉱山の管理の仕事をしてました。生産量を管理したり。今考えると、本当にびっくりするぐらい、今の仕事とはかけ離れてる仕事ですね。
Senna: 間違いない。しかも結構長いですよね、5年くらい。ここは新卒から入られたんですかね。
Obara: そうですね。大学で地質学っていう、地面の地層の重なりみたいなのを扱う学問をやっていて。その関係で、石油系かセメント系みたいなところに入社する人が多いんですけど、石油は結構年収もいいので人気で。自分はセメント業界の方でご縁あって採用していただいて。技術系総合職っていう枠で、その会社が全国に何個か鉱山を持ってたんですけど、そのうちの一つの山口県の鉱山で、現場の方の勤務を3年ほどやってました。
プログラミングとの出会いはVBAマクロがきっかけ
Senna: なるほどですね。そういったお仕事をされている中で、次のキャリアがいきなりフルスタックエンジニアって書かれているから、「どんな転機があってエンジニアに転向されたのか、すごく気になるな」と思っていて。何かきっかけがあったんですか?
Obara: 新卒の会社で、やっぱり定年まで勤めようと思っていたんですけど、あまり仕事できなくて、成果も出なくて。「自分には向いてないのかな」っていう気持ちが結構あって、だんだん疑問に感じるようになってきて。そんなときにExcelのVBAマクロっていう、エクセルのプログラミング言語みたいなのを組んだことがあって、それが結構面白かったんですよね。作業みたいなのがボタン1つでできる、というのが。
Senna: いいですね。入り方としてはよくあるパターンですよね。マクロ組んでみたら、そこから初めてプログラミングに携わる、みたいな感じですよね。
Obara: そうですね。それでIT業界に結構興味を持ち始めて、転職活動を開始したところですね。
Senna: でも、マクロ組めるだけだったら、さすがにプログラマー・エンジニアとして就職するのは無理じゃんって思うんですが、そこはどうやっていけたんですか? 学校かなんか通ったんですか?
Obara: オンラインのプログラミングスクールに通いました。会社に通いながら、夜にオンラインのプログラミングスクールに通って、Ruby on Railsのアプリを作るみたいなカリキュラムだったかなと。
Senna: なるほど。じゃあ最初はRailsエンジニアだったわけですね。
スタートアップでのフルスタック開発経験
Senna: そこからキャリアがスタートしていく中で、Obaraさんのご経歴を見るとフリーランスの案件数が多いですよね。
Obara: 何個かフリーランスの案件を転々としていたので、経歴がたくさんあるように見えるんですけど。最初はスタートアップの会社で、ゼロからだったんで、いろいろ教えてもらいながら、ひたすらコードをたくさん書かせてもらいました。バックエンドはRuby on Rails、フロントはReact、ネイティブアプリはReact Nativeみたいな。全部やらせてもらえて、たくさんコードを書かせてもらえたので、それが2年くらいですね。
Senna: すごいな。その経験をしてからフリーランスになられたと。
Obara: そうですね。
Senna: それが最初の案件、最初に入られたのはどんな会社さんだったんですか?
Obara: いや、最初にフルスタックでやっていたのが、Tunagateっていう会社での正社員の仕事ですね。そこで働いてから、その後、とある受託開発会社さんに業務委託で入ったんですけど。元々の案件の方が、国内のレジャー系サービス企業さんのアプリシステムみたいなのを改修するような仕事で、それは基本的にはRubyとフロントとバック、Ruby on RailsとReactっていう感じでした。
Senna: なるほど。じゃあ、キャリアとして本格的に始めたのはTunagateさんの方が先だったんですね。
Obara: そうですね。Tunagateさんの仕事は、カナダに来てからも続けてやらせてもらっているので、そういう風に見えるんだと思います。
Senna: 素晴らしいですね。じゃあ本当に最初、Tunagateさんがキャリアのきっかけになっていて、それが今に至っているってことかなと思うし、期間もすごく長いですよね。しかも4年と1ヶ月という期間、ずっと一緒に仕事されていたっていうのもあるので。カナダに来てからも、このTunagateさんとの案件はずっとやり続けていたってことですね。
Obara: そうですね、はい。
Senna: 一番美しい形ですね。だいたい皆さん、日本で仕事をされていて、一度辞めて、こっちに来てから頑張ってフリーランスの仕事を見つけるみたいな方が多いですが、日本で既に関係のある会社との仕事をそのまま海外生活に持ち込めると、収入面でも精神面でもかなり安定するので、理想的ですよね。なるほど、じゃあ日本でのキャリアという意味では、このTunagateさんでのキャリアが一番長くて、メインになってくるってことですね。
海外への憧れは冒険への情熱
Senna: カナダに渡航するきっかけみたいなところは、皆さんすごく気にすると思うんですけど、実際にどういう経緯があって海外行こうと思ったんですか?
Obara: 漠然とした理由と、途中からは結構具体的になってきて、「もうこれは行かないと」とみたいな感じになったんですけど。漠然とした理由としては、社会人になって落ち着いてきてから、昔「電波少年」っていう番組でヒッチハイクの旅ってあるじゃないですか。
Senna: ありましたねー。むっちゃ懐かしいな。
Obara: 小さい時に見たので、そのときはものすごくは記憶に残ってなかったんですけど、改めて社会人になってから見てみて、「いいなー」と思っちゃったんですよね。海外でちょっと放浪の旅いいなーって思っちゃったのと、あと沢木耕太郎さんの「深夜特急」っていう、脱サラして海外に放浪の旅に出るっていう小説があるんですけど、そういうのを読んだりしていて。自分はずっと日本にいるので、ワンピースとかハンターハンターとか、あとドラクエとかもそうですけど、「冒険いいなー」って。
Senna: 現実的な理由かと思いきや、いきなり少年みたいな感じの理由に転化されましたね
Obara: 中二病な感じ全開なんですが、そういう漠然とした憧れが常にあったんです。
行動に移すきっかけとなったYouTubeとFrogのブログ
Senna: とはいえ、「電波少年」だったり小説読んだりっていうのは、みんな多分やってることだと思うんですけど、なかなか実際に行動に移す人ってほとんどいないわけで。それこそ、行動に移すことになった決定的なきっかけとかはあったんですか?
Obara: 「どうやったらそういうことができる方法があるのかなー」とは思っていて、なんとなく調べてはいたんですよ。Sakai JunさんっていうYouTuberの方がいて、海外でエンジニアとして働いている人たちを、かなり具体的に生で紹介していて、「こういうルートがある」みたいな話をされていて。それで結構解像度が上がってきたんです。で、やっぱり調べていくうちに行き着くのが、やっぱりFrogさんだったんですよね。それで、Sennaさんの「今バンクーバーという街がどれだけ熱いか」っていう昔のブログ記事を読んで。
Senna: 書いたなー、懐かしいですね。
Obara: あれが結構衝撃で、「これはもうバンクーバーしかないな」と思って、一気にそこで具体的になったんですよね。Frogさんのプランを見て、すごい具体的じゃないですか。「1年目は学校に通いながら、2年目はそのビザを使って、3年目はワーホリを使って」っていう、かなり具体的なプランが書いてあって。あとSennaさんの書かれていた日本にハイグイが必要っていう記事、この「ハイグイ」という言葉はNHKスペシャルで見たことがあって。Sennaさんのブログを見て、すごい気持ちが熱くなったというか。
Senna: それは執筆者冥利に尽きますね。ありがたいです。
Obara: 結構色々な事に感化されて熱くなるタイプなんですよ。気持ちが熱くなってきて、「そういう人材になりたいな」というか。具体的なプランっていうのはFrogさんのプランを見て、「これはいけるな」ということで計画を立てていましたね。
カレッジへの準備:TOEICと英語学習
Senna: 2022年の末頃に再度ご連絡いただいたときには、もうすでに30歳を超えられていて、ワーホリが使えない状況になっていたと思うんですが。「31歳を超えていてワーホリが無理だよね」という話になると、自然とカレッジ進学のプランになりますよね。そのあたりの説明についても、割とすんなり納得された感じでしたか?
Obara: そうですね。プライベートでいろいろあって、気づいたらワーホリが使えない年齢になってしまった、というのは正直かなり残念でした。でもそのぶん、「技術力としてはまあ問題ないかな」と思っていたので、「なんとかなるんじゃないかな」という楽観的な気持ちはありましたね。
Senna: その楽観視が、みんななかなか持てないんですよね。だからこそ踏ん切りがつかない。いいことだと思います、本当に。
Obara: 計画は自分の中でものすごく前倒しで立てていました。人生で「チャレンジしない後悔」だけは絶対したくなかったので。もう私にはCo-opしか選択肢はなかったですけど、「行こう」と決めました。
Senna: もう一つ驚いたのが、2022年末にいただいたご連絡のときのTOEICスコアが830点だったことなんですよ。日本人としては相当高いですよね。英語は昔から勉強されていたんですか?
Obara: 自分は完全に受験英語タイプでしたね。大学のときもスピーキングやリスニングは全然できなくて、ほぼ単語力で戦ってきた感じです。社会人になってから、新卒で入った会社の福利厚生で「英語力を鍛えよう」という制度があったので、そこで頑張って700点台まで上げた感じです。
Senna: その時点でもう既に高かったんですね。素晴らしい。
Obara: その後、カナダに渡ろうと決めてから、1年くらいかけてさらにスコアを伸ばしました。CICCCに入るのに確か850点以上必要だったと思うんですけど、必死に勉強してなんとか830まではいったんです。でもその時点ではまだ足りていなくて、その後なんとか超えたという形ですね。
Senna: なるほど。でもね、あと20点くらいならすぐに超えられるだろうな、という手応えもきっとあったと思いますし、英語の部分に関しても「なんとかなる」という感覚はあったと思います。そこからFrogに相談にも来ていただいて、ワーホリが使えない中で「CICCCに2年間通って、その間でキャリアを作る」というプランを一緒に組み立てた、ということですよね。
Obara: はい。ただ実際の英語は結構苦手で、実践経験もほとんどなかったので……カナダに着いてからはかなり苦労しましたね。
カナダ到着後、コーヒーも注文できない現実
Senna: 実際に渡航するっていう部分に関しては、割とFrogのよくあるパターンで渡航されたってことになったのかなと思うんですが、渡航前の部分、入学までは特に問題なかったですか?
Obara: 入学までは特に問題なかったと思いますね。ただ、学校に通い始めてから、英語がとにかく喋れなくて。
Senna: やっぱそうだったんですね。
Obara: リスニングもスピーキングも全然ダメで、コーヒーも注文できないみたいな状態だったんですよ。
Senna: TOEIC 850点持っていてですか?
Obara: はい…、今でも鮮明に覚えていますが到着してすぐに注文するスタバの店員さんに、とにかく口から何も出てこなくて。見かねた店員さんが「奥に日本人がいるから」って、奥から日本人のスタッフさんが出てきてそこで『ブラックコーヒーください…』って言うっていう。今思い返すと情けない最初のスタートでした。
Tim Hortonsでのバイト経験
Senna: 英語はその状態からどうやって克服したんですか?
Obara: それが、以前FrogのKeiさんが『カフェバイトで英語が超伸びた』って話をしてた動画あったじゃないですか?
Senna: ありましたねー。
Obara: それを見て、自分の課題はとにかく英語だと割り切り。とりあえずバイトしないとなと思って、ダウンタウンのカフェにひたすらレジュメ配りをしました。2件面接に行けたのですが、1件は落ちて、1件は試用で体験をさせてもらいました。体験は英語の説明が聞き取れなくて、例えば、牛乳の種類がいろいろあるじゃないですか。ホールミルクとか、アーモンドミルクとか、オートミルクとか。他にも脂肪1%とか2%とか聞き取れなくて、結局全部落ちてしまいました。結構凹みました。それでカフェじゃなくて、カナダの有名なドーナツ屋でTim Hortons(ティムホートン)っていうチェーンがあるんですけど。
Senna: ありますね。
Obara: ある時、積極的に採用しているTim Hortonsを見つけて、2回レジュメを持って行ったところやる気を認めてもらい雇ってもらいました。
Senna: そういう経緯があったんですね。
Obara: それでTim Hortonsで4ヶ月ぐらいバイトしてました。
Senna: すごいですね。実際カフェバイトが英語力向上に役立つというのは知識では知っていても、実行に移す人はなかなかいないです。ちなみに、そのTim Hortonsでのバイトって英語環境だったんですか?
Obara: そうですね。お客さんは現地の人とか同僚とのやりとりとか、英語環境でしたね。
Senna: なるほどですね。そういったところで英語力も鍛えつつ、学校の方にも通われていた、ということですよね。
就活50件以上の応募とリセッション
Senna: 就職活動自体は、いつ頃から始められたんですか?
Obara: 僕は2023年4月ぐらいにカナダに渡ったんですけど、Tim Hortonsで働き始めたのが6月ぐらいかな。それから10月とか11月ぐらいになってから、一旦Tim Hortonsを辞めました。その時周りの方も結構エンジニアの仕事に就き始めている人も出てきていたので「流石にそろそろ英語云々っていうより、早くエンジニアの仕事取らないといけないな」と。レジュメとか、いろいろあると思うんですけど、50件ぐらい応募したかな。
ただ、全然どこにも引っかからなくて。学校が紹介してくれた1つと、あともう1個面接できたところがあったんですけど、そこももちろんダメで。やっぱりうまく自分の良さみたいなのを説明するのが結構大変でした。
Senna: 準備期間が結構あるといいんですけどね。
Obara: 結構ちっちゃいスタートアップであればあるほど、連絡来てから2、3日後とか1週間後とかに「面接やろう」みたいな話になるので、準備が間に合わないというか。そこを含めて単純に準備不足であったと思うんですけど、とにかく全部落ちていました。
Senna: レジュメを50件くらい送った、っていう部分の中には、CICCCの紹介だったりとかも含まれていたってことですよね。就職活動の時期としては、4月に渡航して、6月くらいからTim Hortonsで仕事を始めて、4ヶ月くらいだから10月くらい、その年の冬くらいにはTim Hortonsを辞めて、そこから就活に本腰を入れ出したってことですよね。
Obara: そうですね、はい。
Senna: 2023年の後半頃って言ったら、もうリセッションど真ん中じゃないかっていう、かなり不景気な時期だなと僕は思っているんですが。さっき、周りにも決まり出した方々がいたっていう話もされていたと思うんですけど、とはいえ全体としては、やっぱり周りも含めてそんなに景気よくはなかったんじゃないかなと思うんですが。
Obara: 確かに、景気よくなかったと思いますね。
AWSとの出会いと友人からの情報
Senna: そんな中で、僕は正直、気がついたら「いつの間にかObaraさんがAWS行くらしい」みたいな、寝耳に水みたいな感じで聞いて。「え、どういうこと?」ってなっていたんですけど、その辺はどういう風に決まっていったんですか。
Obara: 年明けの2024年ぐらいに、友達の方にLinkedIn経由で連絡があったっていう話を聞いて。インタビュー記事、他の方のを見ていると、直接連絡が来たっていう話が書いてあるんですけど、自分には残念ながら特に連絡はなくて。その友達の話を聞いて、自分はAmazonのジョブの募集フォームから、自分で応募しましたね。
Senna: でもね、それで実際に受かるわけだから、すごいなとしか思わないんですが。実際に対策だったり、面接に臨むにあたっての準備だったりっていうのは、ご自身一人でやられたんですか?
Obara: たまたま同じように受ける人が周りに結構いたので。仲がいい友達と、タイミングもちょうど同じぐらいだったので。自分で、もちろん「どういう面接か」みたいなのは調べるんですけど、自分一人で調べると「方向性間違ってないかな」って不安になると思うんですよね。なので、友達とすり合わせたり、「あまりおかしい方向には行ってないかな」というのをお互いに確かめ合ったりしてました。あと、面接練習も、お互いに片方が面接官になって、もう片方が候補者として、交互にやってみたいなのを練習しましたね。
Senna: いいですね素晴らしい。じゃあ学校でできた繋がりなんかも含めて、AWSのチームにご自身で応募されて、実際に受かったっていうことだと思うんですけど。面接の過程だったりとかって、AWSって結構その辺、秘密主義というか「あんまり言っちゃダメ」みたいな空気感がちょっとあるんですが、話せる範囲で教えてもらうことってできます? どんな流れだったかみたいな。
AWS面接、OLPエピソード30個の準備
Obara: 最初は一次面接で、応募するポジションに近いポジションの人と面接しました。そこで合格したら、次にループ面接っていうのに入るんですけど、一次面接とループ面接の間に、ソフトウェアエンジニアだったら多分コーディング面接みたいなのが入ると思いますね、技術面接みたいなの。それが終わるとループ面接になるんですけど、ループ面接の方はマネージャークラスか、その同等クラスの人が、自分の場合は4人でしたね。4人に面接されて。
自分のカスタマーサポートエンジニアのポジションに関しては、OLPっていう、リーダーシッププリンシパルですね。Amazonのプリンシパルが16個だったかな、あるんですけど、それに沿ったエピソードを準備しないといけないんですね。そのリーダーシッププリンシパルに沿ったエピソードを、自分は30個ぐらい用意していました。
Senna: すごいですね。
Obara: エピソード作りが結構つらいんですけど、もうなんとか、ひねり出すしかないですね。それを何回も何回も友達と壁打ちして、エピソードを熟成させておいて、聞かれたら話す、という形で臨みました。ループ面接は、半分がOLPに沿った行動面の質問、もう半分が技術知識を問うような質問でした。技術側はOSとかネットワークとか、その辺りが中心ですね、質問は。
Senna: ありがとうございます。ちなみにこれ、あれですよね、ジョブチェンジのヤンマーさんのチャンネルの方にもご登場いただいていましたよね。
Obara: そうですね。
Senna: すごいありがとうございます。こんなに詳しく書いてくれてるとは正直思ってもいなくて。バンクーバー組の人たちは、「この人誰?」ってなってたんで。
AWSトロントと日本人コミュニティ
Senna: AWSトロントって日本人の人数、多いじゃないですか。Frogにも色々皆さんが何されているのかとかコミュニティのSlackに投稿して欲しいなとは思っているんですがやはりどうしても距離があるのでなかなか難しく。ObaraさんはFrogのSlackにも情報を投稿してくれますよね。本当にありがとうございます。実は結構感謝していまして。
Obara: そうですね。AWSトロントは日本人が多いので、やはりそこでだけ情報が完結しちゃうんですよ。なのでFrogのコミュニティの方に向くエネルギーがなくなっちゃうというか。
Senna: まあそうですよね。ビックテックは特に一つのコミュニティとして強いですし。
Obara: でもやっぱり他の国の人とか見ると、会社の垣根を越えて、その国人達同士でかなり活発に情報共有とかしてるのが普通で、僕もそれを見て何か出来ないかなと、それはでもヤンマーさん(よくFrogでコミュニティ活動をしてくれる方)に感化されて投稿しました。
Senna: ありがとうございます。十分すぎるぐらい今回のインタビューも含めてご貢献いただいているので、言うことないんですけど。
もう少し教えて欲しいのが、インタビューの部分において、2024年2月くらいにジョブサイトの方から応募申し込んで、結構働き出すまでが早かったんですね。
Obara: はい。
1〜2ヶ月の集中準備、面接対策期間
Senna: インタビュー対策に関しては、結局1ヶ月から2ヶ月くらいかけて行っていった感じですかね。
Obara: そうですね。その間は本当にそればっかりやっていて、他のことは全くしてなかったです。
Senna: これなんですよね。実際FrogでAWSの採用説明会を開かせていただいた後に応募する人たちを見てきましたが「絶対この人受かるだろう」と思ってた人が受からなかったんですよ。それで「この人は正直厳しいんじゃないか」と思っていた人が受かったという光景を何度も目にしました。正直その差が何かって言ったら、もう本当に「準備にどれだけ時間かけたか」っていう一点しかないなと思っていてですね。
Obara: そうですね。自分が何をしたのかはどこかでちゃんとお話出来たら良いかもしれないですね。
Senna: トロントのAWSっていうことで、バンクーバーから離れるわけじゃないですか。ご本人としては、バンクーバーからトロントに移るって決まったとき、迷いとか心配事とかはなかったですか?
Obara: 働く場所に関しては全く何も懸念はなかったというか、むしろ違う街に行けるのは結構楽しそうだなと思ってました。1つ懸念としては、BCPNPとかは使えなくなるのかなと、今となってはなんですけど、その当時はちょっと考えました。ただ正直、採用されたのが嬉しすぎて、あまり迷いはなかったですね。
Senna: そうですよね。ちなみにどのくらい嬉しかったんですか? やっぱり、50件何十件とレジュメ送って全く見向きもされずに、という状況の中での「Amazon AWS」っていう、いきなりのジャンプアップだったと思うんですが。
Obara: いやー、最初は実感はあまりなかったですね。でも「受かった」と聞いて本当に嬉しくて、言葉にならないくらいでした。
面接経験とFrogメンバーとの繋がり
Senna: ちなみに他に受けたところで、面接まで行き着いたことってありましたか?
Obara: 応募して面接までいったのは2件ほどあったんですけど、やっぱり落ちた、というのがありました。
Senna: じゃあもう本当に、バンクーバーに渡航して2024年に入ってからは、ほとんどがAWSに入るための対策の時間だったような感じなんですね。トロントの方に移ったのが、4月頃ですか?
Obara: そうですね、4月の22日から働き始めましたね。
Senna: Frogのメンバーも、他にもその時期から結構いらっしゃったんですか?
Obara: そうですね、Frogからのメンバーだと5人ぐらいいたかな。時期は結構みんなバラバラだったんですけど、数週おきにまた誰か入ってきたり、みたいな感じでした。
AWSでの業務、カスタマーサポートエンジニア
Senna: 実際に働き出してからのことも聞いてみたいなと思うんですけど、トロントの方に移住されたのが4月頃ということで、カスタマーサポートエンジニアっていうポジションにあまり馴染みがない方も多いんじゃないかなと思うんですが、話せる範囲で、Obaraさんが最初入ったときにどういう仕事をアサインされて、その後どんな変化があったのか、今に至るまで教えてもらえますか。
Obara: 業務内容としては、自分は今までコードを書くことをやっていたので、インフラをここまでガッツリやるっていうのは初めてで、とにかく最初は学ぶことが多かったですね。半年ぐらいはずっと勉強していました。
Senna: ちなみにカスタマーサポートエンジニアのポジションって、いくつか部署が分かれるじゃないですか。インフラのポジションだったんですか?
Obara: 自分はLinuxプロファイルっていう、Linux OS──EC2のLinuxを中心に、その周辺のサービスを担当していました。
Senna: 「EC2ならEC2だけのカスタマーサポート」なのかなと思っていたんですけど、EC2の中でもそういうプロファイル分けがあるんですね。
Obara: はい、EC2に関してはLinuxとWindowsで分かれていますね。
Senna: OSごとに分かれてるんだ。さすが大手は違う。じゃあLinuxの方ということで、そこもインフラの経験がむちゃくちゃあった、という経歴ではないですもんね。
Obara: そうですね、たまたま面接の時に、Linuxの質問に答えられたっぽくて。でも入ったらひたすら勉強でしたね。ただ今は、ある程度自信もついてきたので、かなり貴重な経験でした。やっぱり世界中からインフラの問い合わせが来るので、インフラに関しては世界トップレベルで情報が集まっているんじゃないかなと。
Senna: 素晴らしい。基本の業務としては、世界中の方からいろんな質問をされて、Obaraさんの場合だったらEC2におけるLinux側の質問がたくさん来ると。それに対して回答したり、他のチームに対してその質問を投げたり、その橋渡しをしたり、そんなイメージですかね。
Obara: はい、そうですね。
AWSでのキャリアパス、マネージャーとの壁打ち
Senna: 前に説明会でお話を聞かせてもらったときに、AWSのすごいなと思ったところが、ポジションに入るときにご自身のキャリアパスだったりを、マネージャーと最初から壁打ちできるみたいなことをおっしゃっていて。その部分においては、例えばObaraさんご自身も「将来的にどのポジションに移りたい」とか「どういうキャリア積みたい」とかって話されたんですか?
Obara: マネージャーが、違うポジションに行くことを結構推奨していて、「どんどんステップアップしていこう」というスタンスなんですよね。どうやったら昇進できるか、どうやったら違うポジションに移動できるかっていうのを、惜しげもなく情報くれるんです。
Senna: 雪村さんですよね。以前お話もさせていただきましたが。
Obara: 雪村さんは日本に移動してました。今は新しいマネージャーです。
Senna: あ、移動したんだ。そうなんですね。じゃあ今、カスタマーサポートエンジニアのポジションで1年半くらい経験積んだんですかね。
Obara: 最初の半年ぐらいは一人立ちするまで、メンターの方に教えてもらって、ひたすらつらい期間でしたね、最初の6ヶ月間は。ついていくのに必死で。その後しばらくは自立するような期間だったのかなと。最近はむしろ少し余裕も出てきて、他の人のサポートをしたりとか、自分のキャリアアップを考えたりとか、そんな感じでしたね。
日本帰国の決断、TAMポジションへ
Senna: 今回、日本の方のポジションに変わるって聞いてご連絡いただいたのもあるんですが、そのきっかけとかはあったんですか?
Obara: マネージャーの方から、日本のポジションが空いていて募集しているという情報をもらって。自分は永住権を目指していたんですけど、だんだん「ちょっと厳しくなってくるな」ということは感じていて。このまま在籍していれば永住権は取得できる、正直他の人からしたら喉から手が出るほどいいポジションだと思うんですけど、自分のプランとして計算したところだと、あと3年ぐらい働く必要があると思ったんですね。それがちょっと長いなという感覚があって。そんな中で今回いいポジションが空いていたので、応募して、採用という形になりました。
Senna: 素晴らしい。ちなみにこれはどのポジションなんですか? 聞いてもよければ。
Obara: TAMっていう、テクニカルアカウントマネージャーっていうポジションです。
Senna: マネージャーになるんですか、じゃあ。
Obara: これがややこしいんですが、マネージャーではないですね。特定のお客様に寄り添ったサービスを提供するっていうポジションですね。
Senna: そういうポジションがあるんですね。じゃあテクニカルアカウントマネージャーのポジションで、これから日本で働かれるっていうことかなと思いますが、もう来年から日本に帰られるんですか?
Obara: もう日本に帰ってきています。
Senna: え?今喋ってるのは日本なんですか?
Obara: そうです。
Senna: もう帰ってたのか、知りませんでした(笑)
帰国への想い、海外への情熱と今後
Senna: カナダから日本に帰国するっていう部分における、永住権の部分はもちろん皆の心配事・心残りとしてあるとは思うんですけど、それ以外の部分で、日本に帰ることに関しての不安だったりって何かありました?
Obara: 日本に帰ることに関しては、一回日本に帰ってしまうと、またカナダとか海外に出るのって結構エネルギーがいると思うので、若干「海外への挑戦は少し後退したかな」とは思いますね。
Senna: でもね、実際にカナダに渡航もして、学校も通って、AWSで働いていて、これ以上の海外経験がありえるのかっていうくらい、いい経験をされたんじゃないかなと思いますが。なんかまた、どこかのタイミングで海外行ってみたいなっていう感じはありそうですか?
Obara: 一旦しばらくは日本で落ち着きたいなとは思ってるんですけど、将来もしITでハイグイになるんだったら、北米かなとは思うんですけど、そこまでの情熱がちょっと……すいません、消えてしまっていて。本当に。最近は、ちょっと東南アジアとか、日本より近くて、でもこれから力をつけていきそうな地域もいいなーって思ったりしてますね。
Senna: そういうことですね。ハイグイに関しては、僕も北米だけだとは思ってないですけどね。東南アジアも含めて、これから盛り上がる国々全部も含めてだなと思っているので。まさか「ブラックコーヒーが頼めない」というレベルからのジャンプアップとは、正直思ってもいなかったので、すごいなとしか思わないんですが。
これから海外を目指す人へのメッセージ
Senna: 最後に、もしよければなんですけど、Obaraさんと同じような形でカナダに渡航される方々もたくさんいるんじゃないかなと思うので、何か一言アドバイスみたいなものをもらえると嬉しいなと思います。
Obara: 自分が海外に行って思ったのは、日本にいるときはプライドが邪魔して、あまり大胆な行動ができない人も多いんじゃないかなということです。自分もそうだったんですけど、やっぱり一回海外に来ると、結構「部外者」というか。Frogの仲間とか、学校の仲間とかも、みんな同じような立場なので、ゼロからなんとか頑張ろうというモードに全員がなっているんですよね。それで「目標達成のために何もない所から頑張る」という、すごく貴重な経験ができたなと思っていて。日本で例えばプライドが邪魔している人は、一回それを捨てて、海外に渡った方がいいかなと。
Senna: プライドか。僕はその辺、実は馴染みがなくてですね。どういう感じのプライドなんですか?
Obara: やっぱり同じような人と常日頃から比べちゃうじゃないですか。それに日本でずっと培ってきた経験や肩書も捨てられなくなる、そういう所から来るプライドでしょうか。
Senna: なるほど。それらを捨ててゼロから挑戦することが貴重な体験になるという事ですね。
Obara: あと、自分は世の中の「雑音」にすごく弱いんですよ。オーストラリアで、ワーホリで月80万稼いでるみたいなのが地上波のテレビで流れたときがあったじゃないですか。あれがネット上で話題になったと思うんですが、あれでいいのかなって…
Frogって、ちゃんとバンクーバーでキャリアを積むための支援をしてるじゃないですか。とりあえずなんとなくワーホリ使って「一旦海外行ってきたぜ」「語学留学してきたぜ」みたいな人を大量に量産する、それが海外挑戦っていうイメージのところが世の中にはあって。自分はそれと一緒にされたくないっていう気持ちがあったのかもしれないですね。
Senna: それは僕もずっと抱いています。間違いないですね。
Obara: あとは僕のようにプログラミングスキルは及第点であり、受験英語をしてきてTOEICスコアもあるけど英会話が自信ない人に向けてよければ、発音練習をして口や舌の筋肉を鍛えることをおすすめします。
Senna: 口や舌の筋肉ですか?
Obara: 英語を口に出すのが恥ずかしいことの大きな理由は、発音が合っているか不安なことだと思います。僕みたいにプライドが邪魔してカタカナ英語を話したくない病の人は、遠回りに見えますが口や舌を大きく動かして発音練習をしてみましょう。僕はカナダに来てから「英語耳」という本を毎日近くの公園で見て練習していました。最初は使ったことのない筋肉が動くので不快に感じますが、2ヶ月くらい継続すると自然に口が動くようになってきます。
インタビューを終えて
Senna: 今日はありがとうございました。Obaraさんは2025年のCanadian Dreamにもご参加頂けるとのことで、今日の話を聞いてみたい方も沢山いるんじゃないかなと思うので、是非当日はよろしくお願いします!
Obara: ありがとうございます。もちろん僕の話で良ければ是非。バンクーバーでお世話になったRyoさんやTomoさん、Hiroshiさんにも会えると思うので、楽しみです。
Senna: またDMの方でやり取りさせていただくので、引き続きよろしくお願いします。
Obara: ありがとうございました。多分気軽にして頂ければと思いますので、いつでも連絡してください。
カナダに渡った当初、英語がほとんど聞き取れず、カフェバイトの面接で連敗し、ミルクの種類すら聞き取れなかったというObaraさん。
そこからAWSトロントでインフラ領域を担当し、世界中から届く問い合わせと向き合うまでになるとは、誰が想像できたでしょうか。
Obaraさんが繰り返し口にしていたのは、 「チャレンジしない後悔だけはしたくなかった」 という言葉でした。
そしてもう一つ、日本ではプライドや周囲の目が挑戦の邪魔をすることがあるけれど、海外に出るとみんなゼロからのスタートで、余計な比較が消える——そんな環境が大きかったとも話してくれました。
今回のインタビューを通して、 海外に出ることが偉いのでも正しいのでもなく、「自分がどう生きたいか」に素直に向き合った人が、環境を選び、人生を組み立てていくという当たり前だけれど難しい事実を改めて感じさせられました。
Obaraさん、インタビューにご協力いただきありがとうございました。そして日本での新しい挑戦、心から応援しています。