海外挑戦で得た視点を武器に、カナダから帰国後プロダクトデザイナーのキャリアを築くまで
デザイナーとして海外に挑戦したいという思いを抱き、カナダへ渡航したYoshikaさん。
渡航当時は採用が冷え込んでいた時期でもあり、現地就職を目指す環境としては決して簡単ではありませんでした。それでも、ポートフォリオづくりや面接準備など、「やれることはすべてやる」という姿勢で取り組み続けた様子がとても印象的でした。
最終的には活動の拠点を日本へ戻し、現在はリタリコでプロダクトデザイナーとして活躍されています。カナダでの手探りの試行錯誤や、現地での就活経験は、帰国後の転職活動や仕事の進め方にも確かに活かされていると話します。
この記事では、海外を目指した背景から、カナダでのリアルな就活、日本での再出発、そして「日本でできる準備は全部しておくべき」という確信に至った理由まで、率直な言葉で語っていただきました。これから海外を目指す方にとって、現実を知りつつも前向きになれる内容になっています。
Senna: というわけで、改めてにはなるんですけど、このインタビューに応じていただいた方へのちょっとしたサプライズとして、皆さんがFrogに一番最初にお問い合わせをいただいた時のメールを今見ていてですね。覚えてますか?中島さんが一番最初に連絡くださった時の内容とか。
Yoshika: え、でも多分内容的には、まずそもそもデザイナーにするかエンジニアにするか迷ってる、みたいな感じじゃなかったでしたっけ?
Senna: あー、覚えてるんですね、そういうのって。
Yoshika: 覚えてますね。
Senna: いや、素晴らしい。そうなんですよ。で、一番最初に連絡いただいたのが2021年の12月ですね。
Yoshika: 2021年。4年前ですね。
Senna: 当時のことを思い出していただくという意味も込めて、その時どういうことを書かれていたのか、ちょっとだけお伝えしようかなと思うんですが。「20代のうちにデザイナーへキャリアチェンジして、海外での就労体験を積みたいと考えている」と。それから、「実際に利益が出る部分に近いところに関わりたいから、グラフィックデザインよりはUI/UXの方に興味がある」と書いてくださっていました。
Yoshika: うんうん。
Senna: それで、大学院を出られて、新卒で入ったのが組織人事系のコンサル会社。そこで勤務されていて、ちょうどデザイナーのポジションに異動されたばかりのタイミングで、ご連絡をいただいた、という感じですね。
Yoshika: そうですね。うんうん。
Senna: で、「イラレ」「フォトショ」みたいなツールでデザイン模写はしているものの、さらにDribbbleにもいろいろ作品をアップロードされていて。さっき久しぶりにDribbbleを開いてみたら、むちゃくちゃクオリティの高いものばかり上がっていて。「これ、さすがにカナダ渡航したあとに作った作品かな?」って思ったんですよ。
Yoshika: あ、本当ですか?いや、それカナダ行く前じゃないかな。
Senna: 行く前なんですか、これ。
Yoshika: あんまり触った記憶がそんなになくて。
Senna: へー、まじか。じゃあ元々レベル高かったんですね。
Senna: ただ、英語力の部分は「スピーキング・リスニングは苦手」ということで。過去に取得したTOEICスコアが、その当時から8年前のもので550点。それしか情報が出されていなかったので、これだけ見るともう絶望しか覚えない数字なんですけども。
Yoshika: 本当ですよね(笑)
Senna: というわけで、未経験からUIデザイナーへのキャリアチェンジ、海外就労ということで、エンジニアも含めて考えるべきか悩まれていた時期にFrogへご相談頂いたのかなと思います。
人事コンサルからデザイナーへ
Senna: 改めて、人事コンサルのところからデザイナーに意識が向くまでの経緯みたいなところを教えてもらってもいいですか?
Yoshika: はい、私は元々、人事系のコンサルからデザイナーになった経緯としては、社内の部署異動でして、特に自分の意思が入っていたわけではなく、「デザイナーになりたいです」とか言ったわけでもないんです。
Senna: あー、そうなんですね。
Yoshika: 会社側が適性とかを見たのと、ちょうど部署異動のタイミングが重なって、デザイナーになった、という経緯なんです。なので、「デザイナーになりたい!」と自分から目指したという感じではなかったんですよね。
Senna: え、そんなことあるんですね。
Yoshika: なかなか珍しいキャリアではありますけど。
Senna: 「あなた今日からデザイナーね」っていう人事異動、どういう背景だったんですか?
Yoshika: そうですね。ただ、意外と自分の中ではすっと受け入れられた部分もあって。元々デザインに興味はあったんですよ。興味はあって、「ちょっと自分でも学んでみたいな、でもどうしようかな…」って思っていたくらいのタイミングでちょうどその話が来たんです。「なんならラッキー!」というか、「会社で勉強させてもらえるならめっちゃいいじゃん」という感覚だったので、受け止め方としてはかなりポジティブでしたね。
海外を目指したきっかけ
Senna: Frogに連絡いただいた時というのは、もう「海外どこかしらに行こうかな」というのは考えていたんですか?
Yoshika: そうですね。ちょうど「海外行きたかったんだ、そういえば自分…」って思い出したタイミングだったと思います。
Senna: ということは、「そういえば行きたかった」というのは、もっと前のタイミングで海外を目指していた時期があった、という感じなんですかね。
Yoshika: そうですね。大学生とか大学院生の時期に『留学はしてみたいな』とずっと思っていたんですが、結局行けなかったんです。そのまま社会人になって、社会人2年目ぐらいの頃に「あれ、今なら行けるんじゃない?もしかして」と気づき始めて。
Senna: おー。
Yoshika: どうせ行くなら、短期の語学留学とかより、自分の職歴的にもプラスになる形で行きたいなと思っていて、いろいろ探していた時にFrogさんを見つけた、という感じですね。
デザイナーかエンジニアか迷った話
Senna: デザイナーとして行くか、それともエンジニアとして行くかは、その当時はまだ迷ってらっしゃったということですかね。
Yoshika: そうですね、迷ってました。というのも、Frogのインタビュー記事とかも拝見していましたし、Sennaさんの発信も見て問い合わせたんですけど、その当時も、まあ今もだと思いますけど、やっぱりデザイナーの就職はかなり厳しいという状況があると思っていて。
Senna: 数が少ないですね、とにもかくにも。
Yoshika: そうですよね。そこで、「じゃあ海外に行ってもデザイナーとしては難しいのかな」という感覚があったので、「ならエンジニアとして入るっていう選択肢もあるのかもしれない」「そこからあとでデザインに戻る、みたいなキャリアもあるのかな」という感じで考えてました。
Senna: 大学院時代に少しプログラミングを勉強されていて、その時Rubyを触っていたというのもあったので、なおさら迷われていた、ということですよね。
Yoshika: そうですね。
Senna: 実際、「なぜカナダなのか」というところはどうなんですか?留学といえばアメリカやイギリスがよく出てきますし、オーストラリアも人気ですし。その中で、なんでわざわざカナダを選んだのでしょう?
Yoshika: そうですね。一番はやっぱりビザかなと思っていて。外国人が現地で働くとなった時に、ビザのところで悩むことが多いというのは聞いていたので、アメリカだとかなりハードルが高い印象があり、他国も長期雇用という面だと難しそう、結果的に消去法でカナダが残っていたという感じになりますね。
Senna: そうですよね。もうFrogのビジネスをやって12年くらいになりますけど、ほぼ9割方は消去法でカナダを選んでいるので。まあ、かくいう僕もそうなんですけどね。
Yoshika: あ、そうですよね、やっぱり。別に「カナダじゃなきゃ絶対ダメ」という理由があったわけではなかったかもしれないです。
Senna: ないです。そう。「プーティン食べたいから」とか?そんな理由で選ぶ人…いるんですかね。
他の国も検討した?
Senna: 他の国だと候補はありました?
Yoshika: オーストラリアは迷ってましたね。あとは一応、ヨーロッパ系の学校に行くという選択肢もあるかなとは思ったんですけど、学費が結構高くなりそうだなというところがハードルになって、やめたという感じですね。
Senna: ヨーロッパ系というと、具体的にはドイツとかですか?
Yoshika: あ、そうですね。ドイツとかも一応見たのは見たんですけど、学費問題にぶつかってしまって。
Senna: あまり検討しなかったというより、検討した上で「高いな」となった、という感じですか?
Yoshika: いやー、ちゃんと調べればもっといろいろ手はあったと思うんですけど、パッと見た段階で「金額感が合わなさすぎるな」と思ってしまって、深堀りしなかったですね。
カレッジ選び:CICCCを選んだ理由
Senna: どうしてカレッジを決めたのか、どういう経緯でカナダのCICCCを選んだのかって覚えてます?
Yoshika: そうですね。学校選びに関しては結構検討する時間があったんですが、その中でまず、「エンジニアではなくデザイナーとしてチャレンジしよう」というのが自分の中で固まったんです。そうなると、当時デザイン系の学校って少なかったんですよね。で、長期で行くと考えると、1年間のCo-opが出るところがいいなと思って調べると、本当に選択肢がほとんどなくて。
Senna: そうですよね。ほぼ一つか二つぐらいしかなかった印象です。
Yoshika: そうですよね。美大に行くか、カレッジに行くか、みたいな選択肢で。「Langaraに行くか、CICCCで1年のCo-opをやるか」、もう本当にその二択ぐらいしかなくて。金額感的にも「まあCICCCかな」という感じで決めました。
Senna: Frogに連絡いただく方々って、「WebデザイナーかUIデザイナーになりたいのか、それともエンジニアになりたいのかまだ分かりません」という方も多いんですけど、その中で中島さんは、日本でしっかり踏ん切りをつけていたという印象があって。迷ったままカナダに来る人が多い中で、よく日本で決められましたよね、と感じたんですが。
Yoshika: 確かに。なんか自分の中で「迷ったまま行く」というのがそもそも選択肢になかった、というのはありますね。仕事がちょうどデザインの部署に変わったぐらいのタイミングでFrogさんに問い合わせをして、そこから半年くらい悩んでいたと思うんです。その間にデザイナーとして少しずつ経験を積んでいったことで、「やっぱりデザインの方をやりたい」という気持ちが固まりやすかったのかな、とは思います。
TOEIC850点を3〜4ヶ月で達成
Senna: カレッジに行くということは、それなりに英語力も必要ですよね。2021年のタイミングって、CICCCに行く時の英語力の規定とか覚えてます?
Yoshika: 覚えてます。入学するのに、その時はまだTOEICが使えて。TOEICで「850点」に変わったぐらいのタイミングだったんですよ。700何点だったのが850ぐらいに上がって、「おお、ちょっと上がってる」という記憶があります。
Senna: そうか。めっちゃ上がった時ですね。それどうしたんですか?
Yoshika: えーっと、「渡航する」と決めてから…いや「学校を決めた」ぐらいのタイミングで「勉強しなきゃ」と思って勉強し始めて、結構短期で3〜4ヶ月ぐらい、TOEICだけをひたすらやる期間がありました。
Senna: おおー。それで到達したんですか?
Yoshika: 到達しましたね。ギリギリ。
Senna: ええ、まじですか。すごいですね。才能か。
Yoshika: いやいや。元々英語が得意…というか、苦手ではなかったのもあって。大学受験をちゃんとやっていたタイプだったので、「勉強すればいける、TOEICなら」という感じでした。
Senna: どうしても、この相談の時に書かれている550点というのが目にちらついてしまうので、「よく行けたな…」って思ったんですが、これは8年前って書かれていたから、そりゃそうか。
Yoshika: 本当に。あれは大学入って遊び散らかしてた時のスコアなんで。
Senna: その期間で850とか860とかに到達したというので、英語の部分においては、先ほども「英語が苦手ではなかった」とおっしゃっていた通り、試験英語的な意味で得意だったって感じですか?話すほうはまた別で?
Yoshika: いやもう完全に試験英語ができるタイプで、喋るほうは本当に経験がほぼなくて。今まで留学もしたことないですし、外国人の友達がいっぱいいるわけでもなかったので、スピーキングは全然できませんでしたね。
Senna: 僕の勝手な印象なんですけど、こっちに来られてからもすごく楽しそうにされていたイメージがあって、「英語めっちゃ得意だったんだろうな」と勝手に思っていたところがあるんですけど、日本ではあんまりそういう友達がいたわけではなかったんですね。
Yoshika: いたわけではなかったです。ただ、一応日本でオンライン英会話はやってました。渡航するって決めてから、フィリピンの方とかと喋ったりはしていました。
Senna: あー、よくあるDMM英会話的なやつってことですよね。
Yoshika: あー、そうですね。はい。
渡航までの準備期間
Senna: 学校に行くことを決めてから実際に行くまでの期間って、どれくらい時間があったんでしたっけ?
Yoshika: えーっと、学校行くぞって決めたのいつだったかな…。2023年に渡航してるので、22年の春ぐらいには決めてたと思います。だから渡航する1年前ぐらいに決めて、その何ヶ月後か、半年後ぐらいに学費を払って、という流れでしたね。
Senna: トータルすると1年くらいは勉強・準備の期間があった、というイメージですよね。
Yoshika: ありましたね、はい。
Senna: その1年の間で英語をなんとかして、話すほうも頑張って勉強されて、カナダに渡航されたと思うんですが、その期間、日本の会社ではずっとデザインの仕事をされていたんですか?
Yoshika: そうですね、してました。ただ、UI/UXっぽい仕事というより、どちらかというとWebデザイン、グラフィック寄りのWebデザインが中心でした。アプリケーションを作ったりはしてなかったですね。
Senna: じゃあ日本の職歴として見ると、1年と数ヶ月くらいはデザイナーとしての経験がある状態で渡航できた、ということなんですかね。
Yoshika: そうですね。1年半ぐらいある状態でした。
Senna: あ、それは大きいですね。
CICCCの1年間:前半は良かったが後半は中だるみ
Senna: CICCCに入られるのかなと思うんですが、どうでした?1年間。
Yoshika: そうですね。正直に言うと、1年間全部授業を受ける必要はなかったかもって思う部分があります。
Senna: なるほどね。半年のコースでもよかったかもしれない、みたいな。
Yoshika: そうですね。CICCCはUI/UXでも半年と1年を選べたので、前半半年の授業は結構よかったんですよ。デザインの概論からツールの使い方、チームプロジェクトまでやる内容だったので、満足度は高かったんですが、後半の半年はカリキュラム的にデザインと距離がある内容が多くて。コーディング・エンジニアリングもやりますし、プロジェクトマネジメントやPMの概論もあって、結構広いんですよね。UI/UXの周辺知識の概論が続いて、長くて中だるみしたという印象です。
Senna: 実は最近ちょっと不思議な現象が起きてて、エンジニア系の方がUIのコースに入るケースが増えているんですよ。新しいことも学べるし、ワーホリが2年間使えるようになったから「短いコースでいい」というのもあって。その中で、半年だけ受けてるエンジニアからのレビューがすごく良いんです。
Yoshika: あ、そうなんだ。
Senna: そうなんですよ。だから「後半の半年に、もしかしたら必要以上の要素が含まれているだけなのかもしれない」という可能性が…
Yoshika: それはあるかもしれないです。
学校期間中の過ごし方:日本の案件+ジャパレス+学校
Senna: この1年間の学習期間の過ごし方を色々聞いてみたいんですが、もちろん1日4時間くらい勉強する時間があったと思うんですけど、それ以外の時間ってどう過ごされていたんですか?
Yoshika: その他の時間は、バイトをするか、日本の仕事をリモートで受けてフリーランス的にやっていた感じですね。それを並行してやってました。
Senna: カナダでの仕事…つまりバイトもされてたんですか?
Yoshika: してました。普通にジャパレスとかでバイトしていた時期もあります。
Senna: えー、超忙しい人じゃないですか!
Yoshika: そうですね。ただ、そこまでガッツリ入っていたわけではなくて。「海外で一回ぐらい、そういうバイトしてみたいかも」みたいな、ちょっと経験としてやってみた、くらいの感覚でした。
Senna: なるほど。金銭的にめちゃくちゃカツカツで、という感じでもなく?
Yoshika: カツカツとまでは「めっちゃ稼がなきゃ」というほどではなかったですね。
Senna: 週1〜2日くらいの負荷感ですか?
Yoshika: そうですね。週2ぐらいでバイトして、他の日はフリーの仕事をして、ポートフォリオも作って、という感じでした。
日本のフリーランス案件をどうやってゲットしたか
Senna: 日本の案件というのは、日本で元々働かれていたところからの案件なのか、新しくつかまえたものなのかで言うと?
Yoshika: あー、どっちもありました。前職からのお仕事もありましたし、カナダに来てからとか、日本にギリいる段階でいただいたものもあって、複数並行していましたね。
Senna: これ、実は結構多くの人に聞かれるんですが、デザイナーのフリー案件ってどうやって取るんですか?
Yoshika: いろんな手があって、私は本当に色々試してました。ひとつは「デザインシップ」っていうデザイナー向けのカンファレンスがあって、そのコミュニティに登録していたんですが、そこ経由でプロフィールを見て「お願いしたい」と言ってくださった会社さんが1社。
Senna: はいはい。
Yoshika: あとは単純に、自分の知り合いが起業していて、そこからお仕事をいただいていたところがひとつ。ほかにも、フリーランス向けの案件紹介サイトに複数登録していたり、ビジネスSNSの「YOUTRUST」という日本版LinkedInみたいなサービスでも声をかけていただいたり、Wantedlyも登録だけしていました。
Senna: Wantedlyもやっぱり多いですね。
Yoshika: そうですね、とりあえず登録できるところは一通り登録してました。
無料インターンの落とし穴
Senna: 学校期間中に、カナダ系のボランティアとかインターンは特にやらなかったイメージなんですが?
Yoshika: あ、インターンやりました。1社だけ。ボランティアですね。インターンというか、無給だったので。その時期ちょうど、X(旧Twitter)で「日本人に限らず留学生の労働を無料で使っている会社がある」という話題が燃えた時期があって、覚えてますか?
Senna: あー、いましたね。燃えやすいやつですね。
Yoshika: 燃えやすいですよね。その時それを見て「確かに…」と思って。私も「わ、なんか普通に無料の労働力としてしか使われてないし、これキャリアに繋がるんかな?」と感じて。
Senna: あー、そうだったんですね。
Yoshika: 「何のプラスにもならない」と思って、結構すぐ辞めました。
Senna: 日系の会社だったわけではなく?
Yoshika: 日系ではなかったです。アラブ系の、よく分からない会社で。本当に名前も知られてなくて、教育もなくて、なんでもインターンに任せてるみたいな会社でした。
Senna: あー、それはちょっと怖いやつですね…。
Yoshika: 「別にこれ意味ないかもしれない」と思って辞めました。
Senna: じゃあ作品もアップできないし、リファレンスにもならないし、時間だけが過ぎていく…というイメージですかね。
Yoshika: そんな感じでした。
Co-op期間の就活:リセッション直撃
Senna: 具体的にその後どうされてたんですか?就活を始められたのかなと思うんですが、どのあたりから?
Yoshika: Co-opに入る2ヶ月前くらいから…ちょっと遅かったんですけど、2〜3ヶ月前からアプライし始めました。でも初めて面接に呼ばれたのはCo-opに入ってからで。入って3ヶ月くらいのタイミングで初めて呼ばれました。なので結構半年くらいは「アプライしかしてない」時期が続いてました。
Senna: 就活に入った時期って覚えてます?年と月くらいで。
Yoshika: えっと、2023年に渡航してるので…2024年の冬、1月・2月とかですね。
Senna: あー、はいはいはい。わりかし暗黒期ですね。
Yoshika: 完全に暗黒期です。
Senna: わりかしまだリセッションの波がまったく去ってませんよの時期ですよね。
Yoshika: そうですね。結構厳しい時期だったと思います。今もですけど。
Senna: そのど真ん中に当たってしまったわけですね。
Yoshika: そうですね。春ぐらいに一瞬、「あ、戻ってくるんじゃない?」みたいな兆しはあったんですけど、そんなことなかったです。
「運ゲー」を受け入れる覚悟
Senna: かなり苦戦された印象があります。もう「苦戦どころの話じゃない」くらいだったのかなと。
Yoshika: そうですね。「これアプライしてる意味あるんかな…?」って思うくらいでした。
Senna: Frogでもカウンセリングでずっと言い続けていますが、結局のところ景気の影響があまりにも大きいので、どれだけ頑張っても「運ゲー」の部分は絶対あるんですよね。
Yoshika: そうですね。もう運ゲーだし、自分のコントロール外の部分なので、「そういうこともあるよね」と思ってました。円安とかもそうですし、どうしようもない要素じゃないですか。「行ってみてダメなら分からないな」と思っていたので、そこは覚悟してました。
Senna: 逆に言えば、2022年に渡航した人たちなんて、もう「送れば受かる」くらいの時期もあったわけで…。本当に、運ゲーの要素は強いですよね。
就活の葛藤:カナダに残るか日本に帰るか
Senna: 「いつのタイミングでカナダに居続けるべきなのか」「日本に帰るべきなのか」、その辺の葛藤って思い出せたりしますか?
Yoshika: いや、めちゃめちゃありましたね。カナダ全体がリセッションの雰囲気で、「これ結構就職厳しそうだな」という予感はもちろんあったし、自分はジュニアだから余計に厳しいだろうな、というのもあって。周りを見ても「就職した」という話は聞かないのに、「レイオフされた」という話ばかり聞こえてくる時期だったので。
Senna: 間違いない。
Yoshika: 「これ結構無理じゃない?」という空気は漂ってました。デザイナーとしてのスキルもまだ足りてない自覚があったし、英語力も他と比べて特別高いわけでもなかったので、「自分がカナダで戦えるポイントってどれぐらいなんだろう」という不安と、「早くキャリア積みたい」という気持ちがあって、葛藤はすごく大きかったです。
Senna: その葛藤の期間がどれくらいだったかは分からないですが、割と切り替えも早かった印象があって。実際どう動かれたんですか?
Yoshika: そうですね。自分の中では、カナダに来た目的として「現地就職にチャレンジする」というのが大きかったので、「やりきった」と言えるところまではやろうと決めてました。アプライもそうですし、ポートフォリオをブラッシュアップしたり、自分ができる範囲は全部やって、「もうやれるだけやった」と思えたら踏ん切りがつくなと考えて、そこまでは結構ガーッとカナダの就活に集中していました。
Yunaさんと同じポジションを争った話
Yoshika: そうやって動く中で、面接に呼ばれたところもあったんですけど、友達とバッティングしてしまって…。Yunaちゃんです。
Senna: おお。
Yoshika: そうです。Yunaちゃんと同じポジションを争ったりもして。
Senna: ああ、アメリカの会社の。
Yoshika: そうですそうです。そういうこともあって、「まあもうある程度やったな」「清々しいわ」と思えるところまでやれたので、そこで切り替えられました。
Senna: 友達同士で競い合うくらい、ポジションの数が少なかったということですよね。
Yoshika: そうですね。あの案件は特に、日本語がアドバンテージになるポジションだったので、そもそも間口がかなり狭かったと思います。
Senna: 今YunaさんはFrogのPEOを使ってあそこで働き続けていますし、SaaS系の会社でのデザイナー採用は本当にレアなので、あのケースは特に貴重な事例として語られますよね。やっぱり枠が少ない。
Yoshika: そうですね。エンジニアに比べたら、デザイナーって本当にポジションが少ないと思います。
Senna: やりきったな、と思えたのはいつ頃でした?
Yoshika: 2024年の秋ぐらいだと思います。9月とか、9〜10月ぐらいに「そろそろ日本の方に切り替えるか」と感じました。
日本での就活方法から、LITALICOに内定が決まるまで
Senna: 日本での仕事はどういう風に探されたんですか?
Yoshika: そうですね。まず日本のエージェントさん…あとは日本のIT系の普通の転職サイトにも登録してましたし、自己応募もしてました。気になる企業があれば、自分で直接応募したりもしてました。
Senna: 最終的にリタリコさんへの就職が決まったのは、いつ頃だったんですか?
Yoshika: リタリコに決まったのは、今年の3月頭ですね。2月末ぐらいにオファーをいただいて、という流れでした。結構ギリギリでした。
Senna: ギリギリというのは、どういう意味でのギリギリですか?
Yoshika: 日本に帰国するのが今年の3月末で、本当は4月の頭から働けたらいいと思ってたんですよ。2025年の4月1日から。ただ実際の入社は4月15日になったんですけど、その4月入社を目指すにあたって、内定をもらうのが本当にギリギリだったなという意味です。
Senna: 4月を目指していた理由って何かあったんですか?
Yoshika: なんか4月1日が一番入りやすそうだなと思っていて。新卒の方も入るタイミングなので企業側の研修体制も整ってますし、一番ウェルカムな時期じゃないかっていうのがひとつ。それと、日本に帰ってからブランクを空けたくなかったんですよね。何もしない時間ができるのがあまり好きじゃなくて、「就活は早めに終わらせて、日本に戻ったらすぐ働きたい」と思っていたので、その意味でも4月1日入社を狙って動いてました。
Senna: そう考えると、日本に「そろそろ帰国しようかな」と思っていた2024年の9月頃から考えると、半年くらいは就活されていたことになるんですかね。
Yoshika: そうですね、なんだかんだ動いてはいました。ただ、私2025年の1月末にバンクーバーを出ていて、2月・3月は完全に旅行していたので、ずっとガッツリ就活していたわけではないんです。トータルで見ると、実際に就活に当てていたのは3〜4ヶ月くらいかな、というイメージです。
Senna: 内定自体は年末とか1月とかでした?
Yoshika: 内定をもらったのは、旅行中でした。旅行しながら、その合間に面接も受ける、みたいな感じになっちゃって。本当は1月末にカナダを離れるまでに決めたかったんですけど、全然間に合わなかったですね。
他社からも内定をもらっていた
Senna: リタリコさん以外にも、内定や選考が進んでいた会社はありましたか?
Yoshika: あ、ありましたね。1社内定をいただいていたところがあったり、他にも選考が進んでいた会社はいくつかあったんですけど、最終的にはリタリコが第一志望かなと思えたので、お断りしました。
Senna: その時の決め手というか、何を基準に最終的な判断をされたのか、教えてもらってもいいですか?
Yoshika: 最後に選んだ基準としては、業界的なところと、自分が関わるプロダクトの内容的に面白そうかどうかという部分ですね。その点で一番惹かれたのがリタリコでした。条件面はどこもほとんど変わらなかったです。
プロダクトデザイナーへのこだわり
Senna: しかもポジションとしてはプロダクトデザイナーですよね。プロダクト全体を見るデザインのポジションかなと思うんですが、このプロダクトデザイナーという職種を希望されたのは、Yoshikaさんご自身の希望だったんですよね?
Yoshika: そうですね。日本に帰ると決めるうえで大きかったのが、「プロダクトデザイナーとして経験を積みたい」という思いでした。それをカナダで貫こうとすると、就活はかなり厳しそうだなと感じていて。コミュニケーションデザイン寄りとか、自分がこれまでやってきたグラフィック寄りにシフトすれば、カナダに残る就活ももしかしたらできたのかもしれないんですけど、逆に言うとその職種へのこだわりは結構強かったと思います。
Senna: こないだFrogのイベントに出てもらった、SONYのデザイナーのユウジさんっていう方も、カナダにいる時はエンジニア+デザイナーだったから仕事があったけれど、「本当はデザインだけでやりたかった」という理由で日本に戻った方だったんですよね。そういう意味では、自分のやりたいこととマーケットの需要を合わせる過程で、どうしてもズレが出るケースはありますよね。
カナダでの経験が日本の面接でどう評価されたか
Senna: 海外にいらっしゃった期間がトータルで2年くらいと、比較的長いと思うんですが、その2年間のカナダでの経験って、会社によってはブランクと捉えられることもある一方で、チャレンジとして評価する会社もあると思っていて。今回の就職活動の中で、カナダでの経験については当然いろいろ話されたと思うんですが、どう受け取られている印象でしたか? ネガティブ・ポジティブ含めて覚えている範囲で教えてもらえますか?
Yoshika: そうですね、面接まで進んだ会社さんに関しては、どこもポジティブに受け取ってくれていた印象です。逆に、ネガティブに捉えられる会社さんは、書類の段階で落ちていた可能性が高いと思います。
Senna: ああ、なるほどですね。「2年間海外に行ってたんでしょ?」というだけで落とす、みたいなケースもありますよね。
Yoshika: そうですね。これをブランクとして見ている会社さんは、多分書類で落としているんだろうな、という感覚はありました。
Senna: 実際に3社ほど面接まで進まれたとのことですが、そのあたりの会社さんはポジティブに見てくれていた、ということですよね。どのあたりからそれを感じました?
Yoshika: 一番評価していただけたのは、英語力そのものというよりは、チャレンジしたことや、自分で学ぼうとする姿勢といった部分だったと思います。カナダでの就活や、そこで実際にやってきたことへのチャレンジ、自分でポートフォリオを作ってケーススタディをまとめていったことなど、そういった姿勢に対してポジティブなフィードバックをいただけたと感じています。
カナダでの経験が今の仕事に活きていること
Senna: Yoshikaさんご自身として、「カナダでのどういう経験や瞬間が、日本に帰ってから一番評価された」「今の仕事に活きている」と感じますか?
Yoshika: そうですね…。就活という観点で言うと、そもそもカナダ向けにポートフォリオを作っていて、カナダで面接も受けて対策もして、という経験が、そのまま日本向けバージョンに置き換わっただけ、というところが大きいです。仕事の面で、入社後に活きている部分でいうと、手探り状態で進めていたカナダでの就活や勉強を、自分でなんとか推進しようとする力ですね。
Senna: レールが全くないところから進めていく、という感じですよね。
Yoshika: そうですね。そういう状況でなんとかしていく、いわゆる海外ならではのサバイブ経験みたいなところが活きていると思います。
Senna: 誰かに聞けばすぐ答えがもらえるわけでもなく、決まったレールが用意されているわけでもない中で、とにかく自分でやれることを片っ端からやっていく、という暗中模索感は絶対ありますよね。特にデザイナー系はメンターらしいメンターの数もそこまで多くないですし、「教わりながら」よりも「試行錯誤しながら」の経験が効いている、という感じですよね。
Yoshika: そうですね。そこはすごく活きている実感があります。そもそもみんなハート強くなりますよね。
今の仕事:障害者福祉のプロダクトデザイン
Senna: 実際に入社されてみてどうですか? 今の仕事の内容だったり、どんなことをされているのか、教えていただける範囲で伺えますか?
Yoshika: もちろんです。今やっているのは、リタリコという会社自体が障害者福祉などを扱っている会社で、その中にいろいろな事業があるんですが、私はその中で、障害や発達に特性のあるお子さんを学校で教えている先生、いわゆる特別支援学級などで教えられている先生方が使うサポートツールのようなソフトを担当しています。
Senna: なるほど。
Yoshika: そのプロダクトのプロダクトデザインと、コミュニケーションデザインも含めて担当している形です。アプリのデザインもやりますし、ときにはLPを作ったり、チラシを作ったり、デザイン全般を任せてもらっています。
Senna: プロダクトデザイナーって、割と領域をまたいでなんでもやっているイメージがあって。今のお話を聞いていると、Yoshikaさんがいらっしゃるポジションは、「福祉分野で教えられている先生がツールを使いやすくなるためなら、必要なデザインはなんでもやる」というイメージですね。
Yoshika: まさにその通りですね。その時々で必要なものを、デザイナーとして作っている感じです。事業部にデザイナーが1人か2人しかいないので、基本的にデザインまわりは全般的に見ています。
UIとグラフィック両方の経験が活きている
Senna: アプリのUX・UIを考える時の頭の使い方と、紙媒体やチラシなどリアルなものを作る時の頭の使い方って、正直かなり違うと個人的には思っていて。そのあたり、Yoshikaさんご自身の経験としては、カナダにいる間も含めると、どちらかというとアプリやUIの方が多かった、というイメージなんですが、実際はどうですか?
Yoshika: 実感としては、そこは結構半々くらいか、ややアプリの方が少ないくらいの感覚ですね。前職でやっていた仕事に、アプリ側の仕事がプラスされていったイメージに近くて。カナダでもアプリ系の案件に入らせてもらったことはあるんですけど、そこまで数が多かったわけではないので、トータルで見ると半々くらいかなと思います。
Senna: カナダだとUI系に進みたい人が多いので、受ける案件やフリーランスの仕事も含めて、アプリやWebサービス寄りになる人が多い印象なんですよね。その一方で、日本でプロダクトデザイナーとして採用されると、いきなりグラフィックや印刷物も含めて幅広くやることになって大変だった、という話もよく聞きます。そういう意味では、プロダクト全体を見るという点で、Yoshikaさんは最初から比較的適性があった、という感じなんですかね。
Yoshika: そうですね。前職でやっていた仕事がもともとグラフィック寄りの領域だったので、そこにCICCCで勉強したアプリやUIまわりの知識が乗ってきて、ちょうどいい形になっている、という感覚はあります。
今後のキャリア展望
Senna: 今のお仕事の中で、今後のキャリアとしてもプロダクトデザインをどんどん突き詰めていきたいのか、それとも「こういう領域にも今後手を伸ばしていきたい」といったイメージはありますか?
Yoshika: そうですね。しばらくは、まだリードデザイナーというポジションには至っていないので、「自分はデザインリードができます」と胸を張って言えるくらいまでは、まずプロダクトデザインをしっかり極めたいなと思っています。その後のキャリアについては、まだ少し迷っている部分がありますね。デザインを軸にずっとやっていくのか、もう少しPM的な立ち位置ににじんでいくのか、というのは、今も検討中のポイントです。
Senna: いわゆるICポジションとして専門性を突き詰めるのか、ピープルマネジメントやプロジェクトマネジメントにシフトしていくのか、というあたりですよね。
Yoshika: そうですね、そのあたりで揺れている感じです。
これから渡航する人へのアドバイス①:柔軟性を持つ
Senna: これからカナダに渡航しようとしている方もたくさんいると思います。「せっかくカナダに行くなら現地就職を目指したい」と考える一方で、現地就職って結局、景気やタイミングなど運の要素もかなり強いよね、というのは避けられない部分でもあって。そういう人たちに向けて、何かアドバイスや心構えとして伝えておきたいことがあれば、教えてもらえますか?
Yoshika: そうですね。自分が実際にチャレンジしてみて思ったのは、渡航前は「海外で現地就職する」というのを大きな目標として置いていたんですけど、それってどうしても運の要素があるので、行ってみないと分からないし、途中で変わることもあるよね、という前提を持っておいた方がいい、ということです。そこをガチガチに固めすぎると、うまくいかなかった時に自分を追い詰めすぎてしまう気がしていて。目標として掲げるのは良いと思うんですが、「実際に行ってみないと分からない部分もあるよね」くらいの余白を持っておいた方が、心は楽かなと思います。
これから渡航する人へのアドバイス②:行ったことで次が見える
Yoshika: ただ、行くこと自体にはすごく賛成なんですよね。海外にチャレンジしてみたい気持ちがあるなら、一度行ってみるのは本当に良いと思います。1回行ったことで、「もう一度カナダに挑戦したい」「また海外に挑戦したい」と思った時に、次はすぐ動けそうだなと思えるようになりました。
Senna: ああ、それはすごく分かりますね。
Yoshika: どれくらい準備が必要かとか、「英語力はこのくらいあると良さそう」とか、「日本にいる間にこういう準備ができそう」とか、そういう具体的なイメージが一度行ったことで掴めたので、「もう一回チャレンジしたい」となったら、いつでも行けるというマインドセットに変わりました。「とりあえず行ってから考える」くらいの感覚にはなりましたね。
Senna: ビザまわりや就活まわりのノウハウもどんどん溜まっていくでしょうし、プロダクトデザイナーとしてのこれからのキャリアや知見も積み上がっていくと思うので。もしまた挑戦することがあったら、その時はきっと今とは全然違う形になるかもしれないですよね。選択肢がすごく増えたということですよね。
Yoshika: うん、本当にそう思います。
これから渡航する人へのアドバイス③:日本でできる準備は全部しておく
Yoshika: あ、最後に「これから来る人へのアドバイス」というところで、もう少しだけ話してもいいですか。日本で…もう本当にいろんな人に言われていると思うし、Sennaさんも口酸っぱく言われていると思うんですけど、日本でできる準備はできるだけ全部しておいた方がいい、というのは強く思っています。
Senna: 本当にそうなんですよね。なんでこれがなかなか伝わらないんですかね…。
Yoshika: 例えば「デザイナー未経験からデザイン就職を目指します」とか、「キャリアがあまりない状態から就職します」というのであれば、日本にいる間に一通り学んでおいたほうがいいと思っていて。今は何でも学べるじゃないですか。学ぶための方法はいくらでもあるので、「UI/UXデザインとは何か」とか、「ポートフォリオってどう作ればいいのか」とかを一周学んで、自分でプロジェクトを1個やってみる。そのくらいの段階で渡航するのが理想的かなと思います。
Senna: そういう準備をせずに来た人って、周りにいましたか? Frogの中だと、デザイナーで完全未経験から、というケースはそこまで多くはない印象なんですが。
Yoshika: Frogの中では聞いたことがないですね。ただ、クラスメートにはいました。Frogではないけど、日本から完全未経験でデザインのコースに入ってきた子たちが何人かいて。その子たちがどうなったかというと、まず海外での現地就職はかなり難しくて日本に戻ってきていて、日本に帰ってきてから何をやっているかというと、結局デザイナー以外の仕事をしている人が多いです。
Senna: ああ、そうなんですね。
Yoshika: 一緒に勉強して、デザインを学んだのに、それを仕事にできていないのは、ちょっともったいないな…という気持ちにはなりました。
Senna: 学費もそれなりにかかっているわけですもんね。200万とか300万とか、多分それくらいはかけているはずで。
Yoshika: そうなんですよね。デザイナーになると年収が下がってしまうから、前職で経験のある領域に戻っている、というのもその人なりの判断だとは思うんですけど、何とも言えない気持ちにはなります。
留学のコスパを良くするために
Senna: 僕の最近の悩みでもあるんですけど、そういう事例が増えてしまうと、留学自体が「コスパが悪いもの」になってしまうんですよね。どう頑張っても、ふたを開けてみたら「留学しなかった方が年収が高かったよね」という話になってしまう。そういうケースが増えると、これから海外に出ていく人たちも、「なんでそんなコスパ悪そうなことをしなきゃいけないの?」という発想になってしまうと思っていて。だからこそ本当に、Yoshikaさんがおっしゃるように、日本でできる準備は全部した上で来てほしいなと思うんです。ただ、これって本人だけの問題じゃなくて、エージェント側の問題もあるなと思っていて。
Yoshika: ああ、確かに。
Senna: 「とりあえずこっちに来れば、よくわからないけどなんとか就職できるよ」みたいなことを言っている人たちが、本当に多いんですよね。
Yoshika: 現実は全然違いますよね。
Senna: 本当にそうなんですよ。正直、景気がよかったとしても、完全未経験からだと、かなり強い「ラッキー」がないと厳しいのは間違いないですからね。
Yoshika: いや、本当にその通りだと思います。
AI時代の留学準備
Yoshika: なので、もう「できるだけやっとけ」という感じですね。
Senna: そうですね。「できるだけ」の範囲が、特に最近はAIの時代になってきていて、やれることがどんどん増えているのもありますし。
Yoshika: 本当にそう思います。英語のポートフォリオを1個作って持っていくくらいの勢いで準備した方がいいと思います、今からやるのであれば。
Senna: このあたりをどこまでインタビューに載せるかはまだ分からないんですけど、本音としては「カナダで受ける授業なんて、全部復習だと思えるレベルまで頑張ってきてほしい」というのがあるんですよね。本当はそれくらい準備してきてほしい。ただ、Frogの発信力もまだまだ弱くて、なかなかそこまで届いていないというのが悩ましいところです。
Yoshika: 難しいですよね。このインタビューを実際にどう使うかは置いておいても、いろんな人に届けばいいなと思います。
Senna: 本当にそうですね。今日はお時間取って頂きありがとうございました!
インタビューを通して強く感じたのは、Yoshikaさんが「決めた目標に対してやり切る力がある」という点でした。厳しい時期のカナダであっても、できる限りの準備と挑戦を続けたからこそ、帰国という判断も前向きに受け止められたのだと思います。
そして印象的だったのが、Yoshikaさんが語っていた「日本でできる準備は本当に多い」という言葉です。実際に海外で挑戦したからこそわかるリアルで、これから渡航を考える多くの人にとって、非常に大切な視点だと感じました。
海外へ行くこと自体には大きな価値がありますが、その経験を次につなげるかどうかは自分次第です。今回のインタビューが、これから海外に挑戦する方にとって、準備と行動の大切さを考えるきっかけになれば嬉しく思います。