日本でのエンジニア経験を生かしフロントエンドデベロッパーとして海外就職を果たしたTaichiさん
今回は日本でフロントエンドエンジニアとして実務経験を積まれてからカナダへ渡航。私立カレッジを経てフロントエンドエンジニアとしてヘルステック系の企業に就職されたTaichiさんにお話を伺います!
Taichiさんは日本の会社でフロントエンドエンジニアとして勤務、その中で日本企業での働き方に疑問を抱き渡航されました。カナダではカレッジでの勉強と並行してフリーランスとしても活動されていました。
就職活動でのコツやどのようにカナダにてフリーランスの仕事を得たかなどのライターの僕も含めカナダにて現地就職を目指す方々にとって、日本でのエンジニア経験の有無を問わず大変参考にしたい内容となっています!!
※カナダではWeb系エンジニアとしてDeveloper(デベロッパー)という言葉が使われることが多いのですが、本記事内では日本語でよく使われる”エンジニア”で表記しています。
バンクーバーに渡航するまでに日本にてフロントエンドエンジニアとしての経験を積む
Yuto: バンクーバーに来る前に、すでに日本でエンジニアとして働かれていた経験があるのですね。
Taichiさん(以下敬称略): はい。日本では電気系のメーカーで1年間C系の言語を使う部署、1年間はフロントエンドエンジニアの部署にて勤務していました。技術としてはHTML,CSS,JavaScriptとjQueryを触っていました。
Yuto: 僕もメーカーに勤めていたので、少し気になるのですが具体的にどのような開発をされていたのですか?
Taichi: Webアプリ上で計算やグラフを描くといった教育系のプロジェクトに携わっていました。
Yuto: なるほど。
Taichi: その後はコロナウイルス感染拡大の影響ですぐにカナダへ渡航できず、1社目を退職後に半年ほど派遣としてホームページの管理運営に携わっていました。そこでVueやPHPを使っていました。
留学のきっかけはエンジニアの待遇の違い
Yuto: いつ頃、カナダへの渡航を考え始めましたか?
Taichi: 就職してから考え出しました。きっかけは日本の会社の労働環境が僕と合っていなかったのが大きいです。
Yuto: かなり忙しかったんですか?
Taichi: はい。人数がかなり少なく、残業もそれなりにはありました。それに加えて、納期もかなりタイトで休日出勤なんかもありました。
Yuto: それはかなり厳しい環境ですね、、、
Taichi: 上下関係が厳しく新人が会議で意見しても、まともに取り入ってもらえないこともありました。
Yuto: もの凄くわかります!僕が以前勤めていた会社も年功序列が根強く、たとえ良い意見でも”誰が言うか”によって採用されるか、されないかが変わっていました。
Taichi: エンジニアとして現場で働き続ける場合の待遇も日本の場合は良くないということを聞いていました。僕の理想である”エンジニアとして働き続ける”ということとマッチしていませんでした。日本は昇進すると管理職になってしまい、第一線から退くことがどうしても多くなってしまいます。
Yuto: なるほど。
Taichi: それに比べると、海外ではシニアエンジニアの待遇は保証されているように思います。
Yuto: 確かに求人サイトを眺めていてもシニアエンジニアは引く手数多という印象があります。
Taichi: ですよね。なので人生設計を考えた場合、海外の方が選択肢が多いと思いました。
カナダを選んだ理由
Yuto: 海外での就職を目指すにあたりカナダ以外にもアメリカやヨーロッパ等の選択肢もあったかと思うのですが、どうして最終的にバンクーバーを選んだのでしょうか?
Taichi: 「海外就職 エンジニア」と検索してFrogさんが出てきたので、そこで体験記を読んでみて「これだな!」と思ったからです。
Yuto: 僕も同じです。色々な体験記があり、リアルなことが書かれているのでしっくりときますよね。
Taichi: はい。そこから留学相談に乗っていただきました。
Yuto: その時点でカナダになったわけですね。
Taichi: そうです。他にもオーストラリアやドイツのベルリンも候補にありました。ドイツの場合は生活環境が合わなさそうで、オーストラリアは具体的な体験記が出てこなかったのでそれぞれ候補から外れました。その反面、バンクーバーはAmazonやFacebookも進出しておりIT産業が盛んという印象がありました。
Yuto: シリコンバレーが近いので土壌が出来上がっていますしね。
Taichi: そうですね。アメリカに挑戦するということもできる環境なのが良いと思いました。それにLinkedIn経由でアメリカのリクルーターから連絡が来ることもあるのでバンクーバーにいることがアドバンテージになっていることも感じます。
Language Exchangeで英語力を伸ばす
Yuto: これまで英語はどのように勉強してきましたか?
Taichi: 元々、英語が好きだったのでお互いの母国語を教え合う言語交換をしていました。僕が日本語を教え、ネイティブスピーカーに英語を教えてもらうといったような。Conversation ExchangeというWebサイトを使って週に1,2回は話していました。
Yuto: Language Exchangeですか。今は色々なプラットフォームがありますよね!それは日本にいた時から続けられていたんですか?
Taichi: はい。大学時代から始めて入社してからも続けていました。
Yuto: なるほど。そこで英語を喋ることに対する抵抗は取り払われていたということですね。英語を知っていても声に出せるかどうかはかなり大きな壁ですよね。
Taichi: それに義務教育を含めて英語は10年以上勉強していたので英語の文章はある程度わかっていたので、スピーキングとリスニングをそこで伸ばしました。
Yuto: ということはカナダに来られてから英語で苦労したことはありませんでしたか?
Taichi: それが結構苦戦しました(笑)やはり週に数回程度しか話したくらいでは中々上手くいかないのが現実でしたね。バンクーバーには色々なアクセントを持つ方が多いので…。それに職場で飛び交うネイティブ同士の会話のキャッチボールについていくのが難しく「僕と話すときは手加減してくれていたんだ」と実感してしまいました。
Yuto: ネイティブの本気を見せられたって感じですね(笑)バンクーバーに来てからは語学学校(以下ESL)へは通わず、直接CICCCのWMADに入学されたんですか?
Taichi: すぐに入りました。今思うと”自分の実力を過信しすぎた”と思うこともあって、「ESLへ通っても良かったのかな?」と思うこともあります。
Yuto: ESLもメリット・デメリットがあるので”全員通うべき”とは言えないところがありますよね。授業料は高いですしクラスによってはスピーキングの機会が少なかったりと、必ずしも良い環境とは限りませんしね。
Taichi: そうなんですね。なるほど。
Yuto: バンクーバーに来られてから追加で始めた勉強や取り組んだことはありますか?
Taichi: 渡航する直前に英語でのインプットを増やすために、Udemyで英語のプログラミングのコースを購入して使い始めました。プログラミング関係のイディオムや単語をそこで勉強していました。
Yuto: 今は色々な教材がUdemyやYouTubeをはじめ、かなり豊富ですよね。僕も利用しています。
技術力はどのように身につけたか
Yuto: 元々、エンジニアとしての経験を持って渡航されましたが、バンクーバーでは技術はどのように身につけていきましたか?
Taichi: ひたすら実践とUdemy、学校の課題をしっかりとやることを意識していました。それに加えてLanguage Exchangeで知り合った方とアプリを共同開発したりしていました。学んだことをアウトプットして技術を定着させていきました。
Yuto: フリーランスですか!学校と並行して活動されてたんですね。
Taichi: そうです。あくまでも僕とトロントにいる友人との個人間での契約でしたが、そこではReactは使っていました。
Yuto: 思わぬところからきっかけが生まれたんですね!
Taichi: はい。Language Exchangeをしていて良かったと思った瞬間でもありました。
Yuto: 学校外で活動された部分が多いように見えますが、学校と職場を含めた学校外で身につけた知識ではどちらの方が役に立っていますか?
Taichi: 正直言うと、学校で身につけた知識はそれほど役に立っていないと思います(苦笑)
Yuto: やっぱり…。
Taichi: 入学してから半年後にReactを使ったチームプロジェクトがあり、そこはアウトプットの場として役に立ちました。基本はインプットだけでは知識の定着も難しいので、個人でもチームでもひたすら実践をすることが大事ですね。
Yuto: 学校で学べることには限界がありますもんね。やはりチームプロジェクトを経験できることが学校で得られる一番大きなことなんですね。
Taichi: そうですね。僕の場合は周りに経験者が少なかったこともあり、僕がプロジェクトの方向性や使う技術を決めたりしてチームのリーダーのようなことをしていました。英語でそれらを伝えるいい練習になりました。
Yuto: 日本語ではわかっていることを英語で伝えるのって、本当に難しいですよね。”頭でわかっていても言葉が出てこない”、これをとても痛感しています。
Taichi: 新しい環境で、新しい言語を使って1つのプロジェクトを進めるので脳がフル回転しますよね。
Yuto: 終わった後の達成感と疲労感は言葉に表せない何かがある気がします。
Taichi: そうですよね。こうやって成長していくのかなって思います。
Yuto: 僕もそれを肝に銘じて頑張ります!!
カナダでの就活準備はCoop期間が始まる前から開始
Yuto: 就活の準備はいつ頃から始められて、どんな点を気にして進められたんですか?
Taichi: Coop期間が始まる4ヶ月前からレジュメやカバーレターの添削を学校の先生にしてもらっていました。相談や添削は無料なのでOKと言われるまで何回も見てもらってました。
Yuto: なるほど。それなら安心して提出できますよね。ポートフォリオはどうされていますか?
Taichi: ポートフォリオやGithubはSennaさんにチェックしてもらっていました。
Yuto: なるほど。それから就職活動を開始されたわけですね。
Taichi: はい。Coop期間が始まる3ヶ月前から始めた方が良いと言われていたので、それまでに準備を整えていました。
Yuto: 何社くらい応募されましたか?
Taichi: 条件が当てはまる会社にひたすら応募していたので40,50社ほどです。10社ほどから面接等の次のステップへ進む返事をもらい、最終的に2社からオファーをいただくことができました。
Yuto: おお!2社も!
Taichi: ただ、その内の1社は契約を合意する場でビザの話になりCoopの話をしたところ、相手の顔色が変わりまして…。
Yuto: というと?
Taichi: カナダ政府からサポートを受けている企業だったので通常の企業とは少し違う状況で、留学生を雇うために特殊な手続きがあるらしく、オファーが取り下げられてしまいました。後々、わかったのですが実は特に問題は無かったようです。
Yuto: そんな特殊なことがあるんですね。初めて聞きました。ということはオファーを貰っていたもう1社に就職されたということですか?
Taichi: そうですね。ヘルステック系の会社でフロントエンドエンジニアとして働いています。
Yuto: どのような事業を展開しているのですか?
Taichi: Next.jsやChakra UI、TypeScriptを使ってアプリケーションを開発しています。具体的には怪我をした人に対してリストバンド型のデバイスを貸し出し、iPad上のソフトウェアでリストバンドと連動したゲームをすることでリハビリを行うサービスを提供しています。
面接で聞かれたことやその対策
Yuto: 面接ではどのようなことを聞かれましたか?
Taichi: いろいろあるのですが、一番多かったのが自己紹介でした。8,9割はこの質問がありました。他にはReact関連の質問や学校やフリーランスでテックリードとしての経験があったので、そこでの苦労した点を聞かれました。
Yuto: なるほど。コードインタビューはありましたか?
Taichi: ありました。Reactのライフサイクルや持ち帰りのタスクが多かったです。その他にもコードを書きながら答える方式やアルゴリズム関連の質問がありました。
Yuto: 色々な質問をされたんですね。オファーを貰うまでに面接は何回ありましたか?
Taichi: 2,3回ですね。1次面接は人事と英語力や経歴、ビザのチェック、2次面接ではCTOとのコーディングインタビューでした。2次面接を通った会社からオファーをいただきました。3回目で契約書をもらって契約という流れでした。
これは就職活動の面接対策なのですが、コーディングインタビュー対策で友達とLeetCodeを使って模擬面接をしていました。これがかなり役に立ちました。ぶっつけ本番だと緊張して、予想外のバグが出て実力を出しきれないことがあります。これは場数を踏むことが大切なのですが、友達同士でお互いを高め合いながらできたのが良かったですね。
Yuto: なるほど、僕も取り入れます。面接はリモートでしたか?それとも対面でしたか?
Taichi: 全てリモートでした。
Yuto: やはりリモートなんですね。オファーはいつ頃、貰うことができましたか?
Taichi: 2社ともCoop期間が始まる前に貰うことができました。
Yuto: すごいですね!Coop期間が始まったと同時にフルタイムで働きはじめることができたということですね。
Taichi: そうですね。
コミュニケーションの量が日本とは違う職場環境
Yuto: 実際に働かれてみて、日本とバンクーバーの違いを感じることはありますか?
Taichi: かなりあります。具体的には、会社での立ち位置がまだ低い僕にも技術の選定の際に意見を求められることが多々有ります。それ以外にも事あるごとに「これについてどう思う?問題があったら教えて」などコミュニケーションをとる機会がとても多いですね。上下を問わずに自由に意見を言い合える環境なので、とても良いと思っています。
Yuto: ”チームの一員”としての自覚が芽生える素晴らしい環境ですね。
Taichi: その通りです。
Yuto: 技術的な面やプロジェクトの進め方も日本とは違いますか?
Taichi: 違いますね。Agile開発をしていて新しい技術に触れる機会が多いです。日本だと新しい技術を導入することに抵抗があるように感じました。
Yuto: その違いで日本と世界とで差が開いていくんですかね。
Taichi: 間違い無いですね。アメリカ等で広く認知され終わった後に日本で普及し始めるイメージがあります。
Yuto: 今の会社では残業はありますか?
Taichi: 全くないです。やろうと思えばやれるのですが「残業とかしなくていいよ」って言ってくれます。ワークライフバランスがしっかりとしています。
Yuto: 仕事は基本的にリモートですか?
Taichi: そうです。なので、未だにオフィスに一度も行ったことがなければボスや同僚と対面で会ったことすらないです。
Yuto: それは辛いですね…。フルリモートならではの難しさはありますか?
Taichi: 対面で質問ができないのが辛いですね。大体はSlackを使って質問をしているのですが画面共有が難しくて苦戦しています。「きっと対面ならもう少しやり易いだろう」と思っています。
Yuto: リモートでも良いことばかりではないですよね。
Taichi: プライベートの時間が確保し易い反面で、先程のような問題で業務の効率が落ちることもあります。
日本から海外に出て身についた計画性と積極的な行動力
Yuto: 日本からカナダに来て、変わった点はありますか?
Taichi: 2つあります。1つ目は意見を率直に言えるようになったことです。空気を読む日本とは違って、英語では含みを持たすことがあまりできないので、しっかり話さないと意見を聞いてもらえないです。
Yuto: 主張が大事ですよね。その場に居るだけじゃなくて積極的に発言していく姿勢というか。
Taichi: そうですね。2つ目は英語に対する慣れですね。日々、英語を使っているので特に英語のドキュメントを読むことに対する抵抗感が無くなりました。
Yuto: わかります。僕も最近、洋書を読み始めてから読むスピードが格段に上がった気がします。それとReactの勉強もほとんど英語でやっているのでそれも役立っています。
Taichi: 良いですね。英語から日本語に翻訳する段階で違ったニュアンスが含まれることがありますし、特に技術的な文献は英語で書かれていることが多く、情報量も圧倒的に違うのでこの慣れがあるか無いかで理解するスピードが全然違うんじゃないかなと思います。
今後の展望
Yuto: 今後の展望として何か考えていることはありますか?
Taichi: 色々な職場で働いて、様々な技術を習得しながらキャリアアップをしていきたいです。
Yuto: 今後は転職も視野に入れているということですね。
Taichi: はい。今の目標は就労ビザを出してもらって、永住権を取得することです。
Yuto: 今後、関わっていきたい分野や業界はありますか?
Taichi: NFTに興味があります。就職活動時に応募して2次面接まで行ったのですが縁がなくて…。いつか携わりたいと思っています。
Yuto: NFTは盛り上がってますよね。僕も興味があります!
留学を考える人にアドバイス
Yuto: 最後に過去の自分や、留学を考えている人、勉強・就活中の人に向けてアドバイスをお願いできますか?
Taichi: ”自分を信じて前に進めば、道は必ず切り開かれる”という心構えが大事ですね。僕がバンクーバーに来た時はコロナ禍真っ最中で周りの人から「もう少し日本で経験を積むべき」とか「本当に大丈夫?」とか言われることが多かったです。でも、世界は思っていたよりも広くて、今こうして海外で働いて生活できていますし。日本の終身雇用制度が存続する可能性はほとんどありませんし、これからは個人の実力がかなり大事になってくる時代なので、努力すればチャンスは必ず訪れると思っています。
Yuto: とても心に響きました!僕も何があっても自分を信じて、やるべきことをしっかりと積み重ねていきます。
Taichi: 努力し続けられることも才能の一つなので、頑張ってください!
さて、いかがでしたでしょうか。
自分を信じて、とにかく行動することで現地企業への就職を果たしたTaichiさん。彼は日本に一時帰国中にも関わらず快くインタビューを受け入れてくださいました。その後、いくつかSlackで質問させていただいたのですが、すぐに返事をいただき、インタビューも含めTaichiさんの人柄の良さがとても伝わってきました。
業界経験の有無に関わらず、海外就職は簡単なことではないと思っています。Taichiさんの「たとえ道は厳しくても自分を信じ続け努力することで、必ずチャンスは舞い降りてくる」という言葉はとても説得力がありました。
これは就職活動だけに限ったことでなく、”自分自身を信じ続けれることができる”ということは長い留学生活に必要不可欠なことです。特に日本だけでなく世界中の情勢が不安定なこの先、予想していなかったことが起こる可能性もあります。その中でも一貫した姿勢があれば乗り越えられることもあると思います。
改めて自分を信じて努力を怠らないことの重要さを実感させられたインタビューでした!
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