文系卒エンジニア。日本のメガベンチャーを経て、サンフランシスコ発FinTech企業でカナダ支社の立ち上げメンバーになったYugoさん
今回お話を伺ったのは、アメリカのFinTechスタートアップTransCryptsでiOSエンジニアとして働くYugoさんです。サンフランシスコ発の会社がカナダ支社を立ち上げるタイミングでジョインし、現地の正社員としては第1号。本人は「カナダブランチで一番古参になりました」と笑います。
日本では2019年に国際系の文系学部を出たあと、元請けのSIer、家計簿アプリの会社、渋谷のメガベンチャーと、独学のiOSを軸にキャリアを積んできました。大学3年の夏にバンクーバーへ1ヶ月の語学留学をし、そこで「今度はここで働きたい」と思ったことが、エンジニアと海外就職を同時に志す起点になっています。2024年12月にバンクーバーへ渡り、コーナーストーンのウェブ開発コースへ。iOSの求人が少ない西海岸では仕事が見つからず、カナダ全域で約100社に応募して、トロントのオファーを掴みました。求人の比はバンクーバー対トロントで「本当に1対8くらい」。立ち上げ期の面接は、CTOとCEOとの90分のシステムデザインと、3時間のライブコーディング。英語で説明できず「落ちた」と思った選考が、なぜ通ったのか。Podcast「海外キャリアログ」でのインタビューをお届けします。
文系、SIer、独学でiOS
Ryo: キャリアの始めくらいから教えていただけますか。
Yugo: 2019年に文系の大学を出たあと、最初は元請けのSIerにシステムエンジニアとして入社しました。そこで初めてプログラミングの学習を研修でやって、楽しいなと思ったんですけど、配属後は基本的にExcelばっかりで。もっとコードを書く仕事がしたくて、趣味で学んでいたiOSアプリ開発ができる、家計簿アプリの会社に転職しました。そこで2年ほど働いたあと、渋谷のメガベンチャーに転職して、ストリーミングサービスのiOSアプリ開発をしていました。そこを2年しないほどで辞めたあと、2024年12月にバンクーバーへ渡航して、コーナーストーンのウェブ開発コースに入りました。就活はすぐに始めて、半年経ったぐらいで今のトロントの会社からオファーをもらって、働き始めてちょうど1年2ヶ月ぐらいです。
Ryo: ビザの計画は、どんな形でしたか。
Yugo: Frogがよく提唱している、コープとワーホリを組み合わせて2年ぐらいいる、みたいなプランで入りました。当時はまだワーホリ2年という話もなかったんですけど、今は3年目ももらえそうです。
Ryo: 趣味で始めたプログラミングのきっかけは。当時は今ほどiOSの開発環境が整っていなかったイメージもありますが。
Yugo: 新卒研修でJavaをやって楽しいなと思って、その延長で。もともとiPhoneアプリ開発に興味があったので、始めました。当時でもMacBookがあって、Xcodeを入れたらすぐにシミュレーターを立ち上げてアプリをビルドできた。そこが楽しくてやれました。最初はUdemyを見ながら独学でした。
メガベンチャーの「ギラギラ」と、来やすさ
Senna: Frogに海外へ行きたいという問い合わせはいろいろ来るんですけど、メガベンチャーは件数自体はそんなに多くない。なのに、実際に来る人の割合がむちゃくちゃ多いんですよ。メルカリさんとか他のところも問い合わせはたくさんあるのに、実際来るのはそのメガベンチャーなんです。行動力の塊なんですかね。
Yugo: ギラギラしてる子は、めちゃめちゃ多かったです。僕は中途だったんですけど、新卒の子とか見てても、めちゃめちゃギラギラしてる子は多かったですね。
Ryo: 聞きづらいけど、メルカリと比べて給料的な面でキャリアを捨てやすい、みたいなのはあるんですか。Sennaさんがよく言う、日本にある外資、AmazonだったりMicrosoftだったりは、やっぱ来ないじゃないですか。日本の中で一番いい層にいるから、捨てられない、という感じもあるのかなと。
Yugo: 人によってはあるのかもしれません。
Senna: メガベンチャーの中では、そんなに給料が光ってるわけじゃないところからの問い合わせは、ちゃんと来るな、というのは確かに思う。一方で技術レベルで言うと、そういうメガベンチャーってめちゃくちゃ高いイメージがありますよね。メルカリよりも、イメージだけは高い。
Yugo: 全然詳しいこと知ってるわけじゃないので、言えません。
大学生のバンクーバーと、英語を先に学ぶ選択
Ryo: メガベンチャーの人も多いとはいえ、海外に行くぞ、というきっかけはどのあたりにあったんですか。
Yugo: 海外に行きたいと思っていたのは、ずっと前からです。大学3年ぐらいの頃に、バンクーバーへ語学留学で1ヶ月行ったことがあって。夏だったんですけど、その経験がすごく良くて、今度はここで働いてみたいなと。働くなら何がいいんだろうとなったときに、エンジニアが海外就職しやすいと聞いて、海外就職とエンジニアを同時に志すようになりました。プログラミングをやる、もっと前から海外で働きたい、というのは持っていて。勉強を始めた頃には、エンジニアなら海外で働けるしありだな、というのが頭にありました。
Senna: 英語の勉強は、その頃から。
Yugo: 大学が国際系の学部で、授業を英語で取るものも複数あったし、英会話の授業もありました。大学生の頃から英語は結構勉強していました。
Ryo: 英語だけじゃダメだよ、英語プラスアルファじゃないと使えない、というアラートを出す人はいっぱいいる。でも海外に出たい、海外で働きたい、というのが起点なら、先に英語を学んで、技術はその後に考えてもいいのかな、とちょっと思います。
Senna: ただビザの話だけは言っておくと、文系と書いてあってエンジニア、というと、門が狭まるよね、とは思っちゃう。永住権の時は英語で挽回できるんですけど、就労ビザの時は申請条件に入ってきたりする。絶対不利、ではないけど、たまにそういう局面はある。
Yugo: 今で言うとそうかもしれないけど、長い目で見たら英語の方がつぶしがきくんじゃないか、と思ったりもします。
Ryo: 大学卒業時点で、英語はもうできた、というイメージですか。IELTSやTOEICは。
Yugo: 英会話は、自信ないわけではないですけど、今のベースは本当に大学で学んだ頃のまま、という感じです。IELTSは受けたことがなくて、TOEICは大学生の頃に850ぐらい持っていました。コーナーストーンに来るのにIELTSは必要なくて、TOEICで許されていた時代でした。
4年のiOSで動いた。早かったのか、遅かったのか
Ryo: メガベンチャーで1年、2年働いて、次の瞬間には海外、ですよね。Excelをいじっていた時期もあるとすると、技術的にはもうちょっと頑張ってから来た方がいい、というコメントもありそうで。熱いうちに急ごう、だったのか、もうちょいメガベンチャーで積んでもいい、という葛藤もあったのか。計画はいつから。
Yugo: 新卒ぐらいの頃から計画自体はしていて。新卒の終わりぐらいにコロナが来て。それで2社目の家計簿アプリの会社にiOSエンジニアとして転職して、そことメガベンチャーを含めて約4年分のiOSの経験があって。ワーホリやコープのビザを考えると、そろそろ行かないと間に合わないなと思って動き出しました。
Senna: 相談を受ける側としては「まだ4年しかないんですけど、行っていいですか」が多いんですよ。Yugoさんは大学生の頃から海外を計画していたから、むしろ短いくらい、遅いくらい、と感じた。ご自身としては、早かったですか。もっと準備できた、もっと早く来れた、のどちら。
Yugo: 正直、半々ぐらいです。もっと早く行ってもよかったなと思うし、今の経験がなかったら就職できていなかったかもしれない、と感じる時もあります。
Ryo: 家計簿アプリの会社とメガベンチャーは、日本人からすると綺麗なレジュメだと思うんですよ。こっちの人からしたら、その会社をほとんどの人は知らない。2年抜けててもいけたんじゃないか、とも思ったんですけど。とはいえ技術力の強い人が多い会社で、そこで学んだ経験はある、と。半分の不安は、そこですか。
Yugo: そうですね。メガベンチャーでの2年近くが、自分の中でも濃密だったので。あの経験がなかったら、今はちょっと分からないな、というのが大きいです。働いている人たちのレベルがすごく高かった。iOSアプリのチームだけでも、多い時は15人ぐらいいて、1つのプロダクトに関わっていた。OSSを触っている人も結構いたし、日本のiOSカンファレンスで登壇されている方も多かったです。
Senna: 日本での技術者のレベルと、今の会社でのレベルを比べると、どっちが高い、みたいなのはありますか。
Yugo: 今の会社でiOSアプリ開発をメインでやってきた経験があるのは自分だけで、他のメンバーはバックエンドやWebフロントのバックグラウンドなので、単純に比較はできないんですけど。それでも、普段の開発に対する意識や、バグを出さない意識で言うと、日本で働いていた環境の方がきっちりしていたな、という感覚はあります。ベクトルはめちゃくちゃ違うと思います。
バンクーバー対トロント。iOSの求人は1対8

Senna: トロントに移ったのは、バンクーバーにモバイルのポジションがないから、ですか。もともと行きたかったとか。
Yugo: 行きたいとは全く思ってなかったです。iOSエンジニアとして就職できるなら、最初は場所を選ばずに、カナダ全域で就活していました。本当に1対8くらいの割合ですね、バンクーバーとトロント。
Ryo: アメリカの会社のフルリモートや、コントラクトみたいなポジションは。サンフランシスコならモバイルチームもいそう、というイメージもあるんですけど。
Yugo: 少ないと思います。正直、最初はUSの会社をあまり探していなくて。ビザ的な理由ですね。最初ちょっとだけ探して応募もしてみたんですけど、LinkedInやIndeedのVisaの欄で、スポンサーシップ入れますか、みたいなところで大体弾かれて。全然ダメそうだったので。
Senna: 今はコープだと、カナダのBC州の会社じゃないと探しちゃダメ、くらいになっている。Yugoさんの時はまだ良くて、トロントの会社でもよかった。今はBC州だけになっちゃったから、コープの人気がちょっと衰えた、というのもあります。アメリカの会社でコープを満了しているFrogメンバーもいますけど、やり方はあるにはある。基本は、コープの人はカナダの仕事、がルールです。
Ryo: バンクーバーとトロントは、人口がほぼ3倍くらい、会社の数もだいたい2.5倍くらい、トロントの方が大きい。打てる玉が多いので、就活の成功率やキャリアの選択肢はトロントの方が多い。戸橋さんも、次のキャリアを探すならカナダだったらトロントくらいしかないんちゃうか、とよう言います。開発者として、生活者として、どうですか。
Yugo: 開発者としては、本当にトロントの方が求人は多いです。特にトロントはファイナンシャル・ディストリクトがあって、カナダのメジャーな銀行もモバイルエンジニアを募集していたり。モバイルエンジニアだったら、ほぼトロントにしかいないんじゃないか、と感じるぐらいチャンスはあります。
Senna: トロントってフィンテック、バイオテック、AI。金融以外でもテックの厚い会社が多い。トロント大学もあって、ジェフリー・ヒントンがいたり。生活面は。
Yugo: 寒いですね。寒いに尽きる。夏も結構暑くて、たまに35度ぐらいまで上がったりします。暑くて寒いです。地下は発展していて、地下鉄で4駅分ぐらいは地下街みたいになって歩ける。そこからオフィスもほぼ繋がっているので、電車を使ったあとは外に出る必要はあまりない。それでも寒いものは寒いです。
Ryo: マイナス20度、30度いっても、家があたたかくて会社まで外に出ない街づくりなら困らないのでは、という話も聞くんですけど、辛いものは辛い、と。
Yugo: そうですね。辛いものは辛いです。
ビザはバンクーバー、仕事はトロント、暮らしは人による
Senna: トロントかバンクーバーか、という問い合わせはFrogにめちゃくちゃ多い。ビザに関しては、残念ながら圧倒的にBC州、バンクーバーの方がオプションが多い。テック系に即しているものが多い。仕事は、数も多ければ給料もトロントの方が高いだろう。生活は気候が合う合わない。チルな環境がいいならBCかな、とも思いつつ、エアコンの効いた家ならええんちゃうの、という意見も分かれる。勝手な理想を言うと、BCで永住権を取ったりビザがなんとかなったら、すぐトロントに行っちゃったらいいんじゃないか、と僕は思っているんですけど。
Yugo: チャンスで言ったら圧倒的にトロントの方が多いですよね、会社の。ただ、生活面を本当に求めるんだったら、バンクーバーほど生活しやすい海外はないんじゃないか、と思ってしまうぐらい、僕はバンクーバーの方が生活はしやすいです。
Ryo: 新しく来た人にとって、永住権を取った方がいいよ、と言われるとちょっとビビる、というのはあります。2、3年いたいだけなのに、なんでこいつ永住させようとしてんの、と。永住権を取ったら永住しないといけない、日本を裏切ったみたいな雰囲気が出る。僕たちの目線で言うと、永住権はオープンワーク、どこの会社でも働ける権利、みたいな意味で使っています。ビザがないとチャンスも取りに行けない、というのもあるから、難しいところではあります。
Senna: バンクーバーほど、日本人やアジア人にとって住みやすい、アジア以外の国はないと思っている。8年経ってなお住んでいる理由を分析すると、嫌なことがない、というのがすごく大きい。ご飯もまずくない、中国系、韓国系、日本系の食材も手に入る。夜も一人で歩ける。ある程度全部整っていて、嫌なことが少ない。
Yugo: 去年のバンクーバーの冬も経験しましたけど、雨が、とみんな言うと思うんですけど、僕は気にならなかったです。キャリアを取るか、生活を取るか、みたいな感じだと思います。人にもよりますしね。
カナダに選んだ理由は、大学の経験が大きかったのもありますし、海外エンジニアで検索したらだいたいFrogがトップで出てくる。当時読んだのが、MinaさんのiOSエンジニアのインタビューで。そこからFrogの界隈を知って、YouTubeを見たり、前身のバンクーバーのエンジニアのポッドキャストをめちゃめちゃ聞いたりしていました。自分がインタビューされる側で出られるのが、今回すごく嬉しくて。
Ryo: トロントに移ってから、コミュニティはどうでしたか。渡航後、誰かに頼ったとか。
Yugo: Xで「トロントでジョブゲットしました」とツイートしたら、Shoさんがトロントの日本人エンジニアのコミュニティに招待してくれて。Discordは、当時50人ぐらいで、今見たら80人ぐらいになっています。ShoさんとMarieさんがイベントを企画してくださっていて、バーベキューしたりピクニックしたりご飯に行ったり。多いと月に1回ぐらい。トロントではそこのコミュニティに助けられています。
Senna: バンクーバーだと、学校に行っている時から一緒に頑張った友達がいる。就活はつらいので、返事が来ないのにレジュメだけ送るのを一人でやるのはきつい。友達とダベりながらアプライできる、文句を言いながらやれる、そのあとご飯に行ける。そういうコミュニティがあるのは、バンクーバーでもトロントでもいいですよね。
Yugo: そうですね。間違いないです。
Section 174と、カナダ支社の1人目

Ryo: 今の会社は、カナダでは1社目ですよね。どういうことをやられているんですか。会社名は出して大丈夫ですか。
Yugo: 大丈夫です。TransCryptsという会社で。もともとアメリカのサンフランシスコの会社で、ベリフィケーションチェックのプロダクトを作っていたんですけど、自分が就職する直前にカナダのブランチを立ち上げて、全く別のプロダクトを作ろう、という形でジョインしました。ちょうどSection 174の影響で、アメリカの会社がカナダに支社を作る動きが増えていた時期だったと思います。
Senna: Section 174は、2、3年前くらいにアメリカでエンジニアを雇うと、今まで経費扱いできていたのができなくなって、人を一人雇うとむちゃくちゃな税金を取られる、という話です。何千万円の人をアメリカで雇うより、同じ英語圏、同じ時差でビザも簡単なカナダで雇った方がいい、となって、たくさんのブランチがこっちにできてポジションが空いた。バンクーバーにも相当多かった。普通に考えるとサンフランシスコからバンクーバーに出した方がいい、と思うじゃないですか。バンクーバーとトロントだと平均年収も、ちょっとトロントの方が高い。金融の街、という文脈が大きいのかなと。
Yugo: トロントの方が応募は来る、とは言ってましたね。人口だけでも2、3倍あるので。
Ryo: 人を確保するために、SF側との連携を重視するか、欲しい人材を重視するかで、企業によって方針はずれる。別プロダクトだったら、そこまで密な連携もいらない、というのもありそうです。
Yugo: ベリフィケーションチェックのプロダクトと、自分が今作っているのは、本当に完全に全く別のプロダクトです。簡単に言うと、証券口座と連携して、そのデータをAIに読み込ませてインサイトをもらう、みたいなアプリです。マネーフォワードの、もうちょっと北米によっている版、という感じで。完全に消費者向けのB2Cです。一般ユーザー向けに作っています。ベリフィケーションチェックの方はアメリカがメインで、ただ今カナダにも広げていて、カナダのブランチで営業の人を雇ったり、新しい人が増えてたりもしています。プロダクトはその2つが今メインです。
Senna: 新しいプロダクトの開発部隊としてトロントにチームができて、そこにジョインしたのがYugoさん。本当に初期から入れた、と。
Yugo: 初期メンバーです。カナダブランチで一番古参になりました。エンジニアの正社員が今6人で、インターンシップが2人ぐらい。出来たてホヤホヤですね。
Ryo: 同じチームに、FrogのKansukeさんも入られた。リファラルを出せるくらい影響力がある人なんだ、と。初期メンバーの推薦で優遇、みたいなのはあったんですか。
Yugo: 同じチームにいます。Kansukeさんは選考を全部ゼロから受けて受かっています。自分自身も、一番古かったのもあって結構気に入ってもらえて、「誰かいい人いない?」と結構聞かれていたので。リファラルしていた時は一気に3人ぐらい増えました。今は募集はストップしています。
100社出して、最終まで残ったのは1社
Ryo: 就活は、バンクーバーでもレジュメを送って通った、みたいなのはありましたか。
Yugo: あります。全部で100社出して、バンクーバーは本当に1社ぐらいしか通らなかった。トロントとか他の州を含めると3件ぐらいで、全部で4件ぐらいです。最終まで行ったところは、今の会社しかないですね。時期は去年の2、3月ぐらいです。100件は、トロントとカナダ全域を含めての話です。
Senna: 100件して4件あったら、打率はいい方じゃないですか。
「落ちた」と思った90分と、3時間のライブコーディング
Ryo: 今の会社の面接は、どんな流れでしたか。
Yugo: 全部で2ラウンドです。1ラウンド目がCTOとCEOで約90分。モバイルのシステムデザインと、個人開発したプロジェクトの概要とソースコードを見せて、一緒にウォークスルーしていく形式でした。メールでインタビューのアジェンダをもらっていたので、事前に対策はしていました。HRの前段はなくて、いきなり自己紹介してテック、という感じです。ちっちゃいからなのか、できるだけ早くしてほしかったのかな、と思います。求人は一応シニアでした。システムデザイン自体も、お題を与えられて、バックエンドのインフラ周りは全く無視して、モバイルだけに特化したデザインでした。APIのレスポンスからデザインしていく、という感じです。ビヘイビアはその中にあって、他社では経験していました。
Senna: メガベンチャーに2年いて、その前もスタートアップで2年いたiOSエンジニアが、英語でのシステムデザインを受けた感触は。いけたな、と。
Yugo: いや、全然もう落ちたなと思ってました。全然できなかった。必死だったので、とにかく黙っちゃダメだと思って、ずっと喋っていました。技術的なところで言えない、というより、それを英語で説明するのが一番難しくて。
Ryo: 国際学科にいて英語に慣れていたYugoさんでも、そこは大変、と。技術については理解しているな、というのは相手に汲み取れたから受かった、ということでしょうね。日本人あるあるだと思うんですよ。完璧主義だからちゃんと答えられないといけない、コミュニケーションが成立しないといけない。でも日本人って、会話のキャッチボールや、聞かれていることにちゃんと答える、のスタンダードがめちゃくちゃ高い。技術を理解しているな、というのが汲み取れれば、自己採点とは裏腹に受かっているケースは多い。
Yugo: 技術的に分かっていて、英語でのコミュニケーションがうまくいかなかった、ということですよね。今の会社でも面接官は出たことはあります。他のエンジニアと一緒に、置物ですけど。問題を出して、一緒に答えに近づいていく過程を見ている人は多いな、と思います。分からなくてもいい、と。
Ryo: 僕も2時間の面接をやるんですけど、英語が上手な人も下手な人も来る。理解しようとするから、英語のことまでそこまで考えていない。自分がこの質問をした時に、こういうのが返ってきてほしいな、それに引っかかっているか、を見ている。日常会話がなんとかやっていけそうだな、と思ってもらえて技術面接まで来れば、テストしているわけではない。最初の回答用紙がどうだったかは、僕は全然気にしない。ディスカッションの中で理解できて、答えに導き出せるならいい。Yugoさんのシステムデザインがボロボロで受かって、しかも初期メンバー。日本の方々には自信を届けるんじゃないかな、と思います。
Senna: 最終のフェーズ2は。
Yugo: 3時間使って、プロジェクトのソースコードを渡されて、画面共有しながら、使っているアーキテクチャ、今どこにバグがあるか、機能追加の演習を、ライブコーディング形式でやっていく、という内容でした。稼働しているプロジェクトではなくて、仮想プロジェクトの中にバグが用意されている感じです。GitHubのリポジトリ検索アプリみたいな題材で、文字を打つたびにAPIが走るのをデバウンスで減らしたり、お気に入り機能を追加してデータをどこに永続化するか、みたいなのを、口頭の指示を受けながらコードを書いて説明していきました。LeetCodeとかはなかったです。CSの知識か、というより、iOSでアプリ、お前作れるのか、を聞かれている面接だなと思います。
Ryo: バンクーバーのAxiom Zenは、昔は本当のプロジェクトに参加させられて、本当のチームメンバーと組まされる、というガチなやり方をしていた。聞く感じだと、即戦力を求める感じは多いですね。最近、システムデザインで地頭を見て、自分たちのプロジェクトを想定した問題を出す、というのが増えた気がする。アルゴリズムやCSの知識がいまだに大事なのか、実務によった問題の方が出されるのか。
Yugo: 僕の会社だと、今作っているプロダクトに似たようなお題のシステムデザインを結構やらせていました。過程のやり取り、コミュニケーションも含めて取れるかな、というのがシステムデザインでは見られる。LeetCodeとかはうちではやってないです。
Senna: 会社のサイズにもよりますよね。その会社の言語やフレームワークにアダプトできるか、というCSベースの測り方と、今このiOSのこのページを作れる人が来てほしい、というフェーズの測り方。AIが出てきて、面接でAIを使っていいか、どうかでも変わる。Yugoさんの時は。
Yugo: 使っていいよ、とは言われてたんですけど、自分は使いませんでした。今の会社でも、使っていいよとは言いつつ、使っている人はあんまり見ないです。やってる内容自体がシステムデザインなので。プログラミングの面接なら使いやすい気もするけど、システムデザインでプロンプトに打たなくちゃいけないことが、たぶん面接官に聞くべき内容になってしまう。変なことを聞いたら、これ知らないの、というのがそこから見える。AIを使えることがアドバンテージにあんまなってなさそう、だから使わないのかな、というのはあります。
SlackのDMと、残業の少なさ
Ryo: 海外で働きたいのは、英語で働くことへの憧れですか。給料みたいなところもあると思うし。その中で、なぜカナダ、海外に出ようと思ったんですか。
Yugo: 単純に、英語を使って働きたかったのと、一生に一度の人生なので海外でちょっと暮らしてみたいな、というのが一番大きかったです。当初の目的は達成したと思います。
Senna: 来てみて、思ってたのと違うな、というギャップは。ポジティブでもネガティブでも。
Yugo: 今でも感じるのが、SlackのDM文化がすごいな、というところです。日本の会社だと、業務にまつわることはパブリックなチャンネルで記録を残して、何をやっているか見せるのが常識だったので。こっちに来て、CTOやCEOから急にDMで依頼が飛んでくるのが、結構意外でした。急にインターンの子がプルリクをオープンしたから見て、みたいな。「この仕事どこで進んでたの」「社長から飛んできて」みたいなことが起きたりします。
Ryo: 日本からエンジニアがたくさん来るので、FrogはなぜDM禁止にしないんですか、と今まで10人くらいに言われたことがあります。日本のDM禁止は、どれが共有すべき情報か分からないから全部パブリックにしておきましょう、という意味は分からなくはない。ただ、知る必要のないこともあるし、会社入りたての頃はパブリックでいろいろやりたくない。ちょっとこそっと聞きたい、この聞いてることって僕だけが知らないことだったっけ、調べたらあった、全部パブリックで聞くのはプレッシャー、という人もいる。北米圏でDM禁止にしているところは。
Yugo: ないです。パブリックにしてほしいな、と思うこともあるし、アンバランスですね。情報回ってきてないな、と感じることはあります。
Senna: 働き方は。立ち上げたばっかりのアメリカの会社でも、イージーなんですか。
Yugo: 楽ですね。最近ちょっと忙しくなってきた感覚はありますけど、それでもほぼ残業したことはないです。5時に帰る人がほとんどで、5時になってなくても帰る人も多い。コアタイムは9時5時で、そこが終わったら帰る、みたいな感じです。
プロダクト側へ。カナダに居続ける前提ではない
Senna: 英語で働きたい、海外で暮らしてみたい、は達成した、と。これからやりたいことは。転職だったり、ドメインを移りたいだったり、給料を上げていきたいだったり。
Yugo: 会社がまだ小さいので、新機能の提案を、画面を作って上に出す、ということを今やらせてもらっています。プロダクトのディレクションとかグロースの方面に力を入れていきたい。日本ではやっていなくて、趣味が個人開発なので、そっちに舵を切りたいなと。実装者よりもずっと難しいです。PMやビジネスの人、会社によってはデータアナリストとも話していかないといけないので、英語の難易度が一気に上がる。今まではJavaScriptプラス英会話ができれば、エンジニアの英語はいけるかな、みたいな感じだったのが、そこからいきなり難しくなる。カナダでできたらすごいですけど、日本に帰ってそういうことをやるのも、全然前向きには考えています。
Ryo: 海外で何かやりたい、は一旦達成して、次を考えている。長期的には。他の国は。
Yugo: 長期的には、今まさに考えてはいます。全然決まっていないんですけど。カナダにずっといるかと言われると、いないような気もするし、いつでも日本に帰ってもいいなとは思っています。他の国は、正直あんまり考えていないです。
Senna: 北米に来る理由として給料、という面もある。日本に帰国すると給料は落としながら、になりがちだと思うんですけど。プロダクト全体を見ていきたい、があれば、給料は落としてもいいかな、と。
Yugo: 下がることに対しては、あんまり抵抗はないです。小さい規模は関係なく、ディレクション業でできたらいいな、とは思っています。
Ryo: 日本のアプリは日本で収まりがちじゃないですか。個人開発にするにしても、最初から日本語と英語対応にして、マーケティングも英語でできると幅は広がりそうですよね。カナダ人のカルチャーはアドバンテージになる、と。
Yugo: そうですね。こっちのカナダ人のカルチャーだったりは、アドバンテージになるかなとは思っています。
とにかく早くアプライする
Ryo: これから留学や渡航を考える人、カナダや海外に興味があるエンジニアへ、アドバイスは。今はワーホリが2年使える、学校で来る、という自分の時とは違う、というのもあると思うんですけど。
Yugo: 海外就職は、とにかく早くアプライを始めた人が、結局最終的に就職できるなと思っていて。カナダの景気に一番左右されるので、一番長く有効なビザを持っているのも重要です。50点のレジュメ、50点の面接対策でも、景気さえ良ければなんとかなってしまう要素が、自分は大きいかなと。書類が通ったら、その後の対策にもっと火がついて死ぬ気で準備するようになるので、本当に早く始めることが一番大事だと思います。
来る前で言ったら、英語がやっぱり一番大事。あと、Ryoさんのレジュメセミナーに去年の1月ぐらいに出て、会社のOKRや半期の目標から引用してレジュメを作る、という話をしていたと思うんですけど。今日本で働いている人は、そういうOKRや半期の目標をどこかで持っておいたら、レジュメ作成にめちゃくちゃ便利だと思います。日本だと事実ベースであったことだけを並べる感じだけど、こっちだと会社の目標があってチームの目標があって、その目標に対して自分は何をやって、何を達成したよ、という説明を入れるので。こっちでの就職の流れは、一回理解してから来るのはありかもしれないです。
Senna: 早くからアプライできるビザを長く取る、と。ただ8年見ていて、2年ずっとアプライし続けている人は一人も見たことがない。モチベーションの管理がめちゃくちゃ大変で、長く持っていても続かなかったらどうしようもない。どういうふうにしましたか。こういうふうにすればよかった、とか。
Yugo: 学校に通って、授業の合間にもアプライしていたので、あんまり苦しみは感じなかったです。長くいればいるほど中だるみする人も結構いるな、というのはおっしゃる通りで。自分たちの時は学校があってコミュニティがあって、友達とダベりながら送れたりできた。今のカナダは学生ビザが出にくくなって、その代わりワーホリ2年、コミュニティなしに来る人もいる。Frogみたいなコミュニティがあったとしても、トロントだと月に1回イベントがあればいい方。個人戦になって、家の机の上で30件、10件送るのは大変だと思うんですけど、自分のお尻を叩いても、コミュニティに入るしかないなと思います。
国際系の学部で英語のベースを作り、SIerのExcelから独学でiOSへ。家計簿アプリの会社とメガベンチャーで約4年積んだ経験を、ワーホリとコープの期限に間に合わせる形でカナダに持ち込みました。バンクーバーではiOSの席がほぼなく、カナダ全域100社のうち最終まで残ったのは1社。その1社がサンフランシスコ発FinTechのカナダ支社で、Yugoさんは現地の正社員1人目になりました。
面接では「落ちた」と思いながら黙らず話し続け、3時間のライブコーディングで「アプリを作れるか」を見られた。LeetCodeではなく実務。英語で説明する脳みそは、国際学部出身でも別物だった、と本人は言います。目的だった「英語で働く」「海外で暮らす」は達成済みで、次はプロダクトのディレクション側へ。カナダに残り続ける前提ではない、という率直さも、このインタビューの温度です。Yugoさん、ありがとうございました。
このインタビューはPodcast「海外キャリアログ」でも配信しています。毎週月曜更新、Spotify・Apple Podcast・YouTubeなどでお聴きいただけます。ぜひ合わせてお楽しみください。


