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「駐在」という王道から外れた挑戦、元外資コンサルがMatch Group(Tinder)のファイナンス職に就くまで

「駐在」という王道から外れた挑戦、元外資コンサルがMatch Group(Tinder)のファイナンス職に就くまで

今回お話を伺ったのは、バンクーバーでMatch Group(Tinder等を運営する米国企業)のFP&Aとして働くudonさんです。日本では外資系コンサルティングファームL.E.K. Consultingを皮切りに、トリドール(丸亀製麺)の海外事業、PEファンド、ITスタートアップと4社で経営企画の経験を積んでこられました。

外資コンサル出身者が海外で働くケースは珍しくありませんが、そのほとんどは社内トランスファーや駐在です。udonさんはそのどちらでもなく、パートナーのカレッジ留学に同行する形でバンクーバーに渡り、ゼロから現地就職を果たしました。バンクーバーで同じ道を歩んだ日本人の前例はほぼ見つからなかったそうです。経営企画のキャリアをFP&Aとして再定義し、約60社に応募、73日でオファーを獲得。駐在でもリロケーションでもない、コンサル出身者の海外キャリアの切り拓き方を伺いました。

コンサルから丸亀製麺、そしてカナダへ

Senna: まず簡単にバックグラウンドを教えてもらえますか。

udon: バンクーバー3年目で、こっちの会社でファイナンスの仕事をしています。日本で10年くらい働いたあと、3年弱前にこっちに来ました。日本生まれ日本育ちで、日本の大学を出て、4社経験して、仕事やめてこっちに来たって感じですね。

Ryo: ファイナンスって具体的に何をされてるんですか。

udon: FP&Aっていう職種で、Financial Planning and Analysisの略です。欧米でもここ10〜15年くらいの比較的新しい仕事ですね。日本だとFP&Aという職種で働いている人はあまり多くなくて、経営企画とか事業企画の人がカバーしている範囲に近いです。

Ryo: じゃあ日本でやってたことを英語で今やってるような感じですか。

udon: おっしゃるとおりですね。もちろん新しい領域はありつつ、基本的には日本でやってきたことの延長にあるんで、ゼロから学んでって感じではないです。

Senna: てっきり日本でもずっとファイナンスの人だと思ってました。コンサルも入ってたんですね。

udon: そうなんです。新卒が外資コンサルで、そのあと丸亀製麺の経営企画、PEファンド、直近がスタートアップ。ファイナンスという看板を掲げて働くのは今の会社が初めてです。

Senna: 丸亀製麺の経営企画をやってたから「うどん」なんですね。

udon: そうそう。アメリカにうどん屋を広げる仕事をしてたんですよ。ハワイが海外1号店で、オープン以来ずっと売上ナンバーワンの店なんですけど、そこからアメリカ本土にも出していくぞってタイミングだった。でもコロナで全部なくなっちゃって。

Ryo: 海外に行こうと思ったきっかけは?

udon: 海外志向はお互いあって、5年以上前から「海外に住んでみたいよね」って話はずっとしてました。丸亀のアメリカ展開で行けるかなと思ってたけどコロナでなくなって。そうしてるうちに妻がBCITに留学するってなったんで、「わ、ラッキー、俺も行くわ」って感じで仕事やめて一緒に来ました。

Senna: パートナーの方がBCITでめちゃくちゃ忙しそうにしてる横で、udonさんはビール飲んでサッカーしてたと。

udon: 東京にいたときは週5、6で飲み会してたのが、こっち来たら週5、6で運動して。めちゃめちゃ体重減って、すごい健康的になってました。で、数ヶ月そうしてたら妻に「なんかしたら」って言われまして。

英語力は飲み会で鍛えた

udonさん

Senna: 英語はもう完全にできた状態でカナダに来たんですか。

udon: 元々できる方でした。最初の海外経験は5歳から7歳のときに親の仕事でドイツにいたこと。田舎だったんでインターも日本語学校もなく、現地校にぶち込まれて。「ハイはヤー、いいえはナイン、がんばれ」みたいな感じで送り出されて、半年後にはドイツ語ペラペラでした。でも日本に帰ったらすぐ忘れちゃうんですよね。

udon: 大学で英語をちゃんとやろうと思って、留学生と一緒の授業を取ったりしてました。グループワークでは全然貢献できないんですけど、飲み会のセッティングはめっちゃやるし、飲み会でよく喋る。飲み会イングリッシュで鍛えていきました。オーストラリアとオーストリアに交換留学もしています。

Senna: 英語の最初ってやっぱり自信をつけるところですよね。

udon: そうですね。ウィーンに留学したとき、ヨーロッパ人は英語できると思ってたけど「あれ、俺の方ができるな」って気づいて。劣ってはいないなっていう自信がつきました。

Ryo: 1社目のL.E.K. Consultingで英語はどうでした?

udon: 仕事が全部英語で、コンサルという仕事もわからないなかで外国語っていう掛け算だったんで、最初の2年はかなり大変でした。でもそこで「英語で働くこと自体はもう全然いける」ってなりましたね。お客さんは日本企業なのに、全部英語なんですよ。

Ryo: 日本の企業が相手なのに全部英語?

udon: そう、思うじゃないですか。でも全部英語なんです。ヘルスケア、特に製薬業界のクライアントが多くて、製薬業界って結構グローバルなんで、やり取りが全部英語でしたね。

友達がほしくて始めた就職活動

バンクーバーのサッカーチーム

udon: 就活を始めた理由は、正直「友達がほしい」っていうのが大きいです。サッカーチームに入ったりジムに行ったりで友達はできてたんですけど、いまいち増えない。東京にいたときを振り返ると、やっぱり仕事を通して広がった同僚や同業の繋がりが大きかったな、と。そうか、仕事した方が友達できるな、って。

Senna: その自信がすごいですよね。

udon: いやほんと、英語めっちゃできるし、職歴もあるし、結構いい奴だし、仕事なんか見つかるだろうなっていう、すごい甘い想定で来たんですよ。で、応募してくんだけど全然返事が来ない。1、2週間経って「これはおかしいぞ」と。日本だと向こうからジョブが降ってくるじゃないですか。3週間くらい経って周りの人とも話しだして、「あ、前提が違うんですね」ってなりました。

Ryo: 最初からファイナンスで探してたんですか。

udon: 最初は「コーポレート・ストラテジー」で探したんですけど、全然ないんですよ。じゃあ日本でいう「元コンサル」の人はこっちで何やってるんだろうと思ったら、元コンサルっていう概念がそもそもない。マッキンゼーもBCGもベインもバンクーバーにオフィス持ってないし。結局、僕がやってきたことに近い職種がシニア・フィナンシャル・アナリストとかFP&Aマネージャーだったんで、2週目くらいから「ずっと10年ファイナンスやってます」みたいなキャラクターにレジュメを切り替えました。

Senna: バレませんでした?

udon: 先週アメリカに出張したとき、上司に「Your resume was weird」って言われました。バレてたんですよ。すごいファイナンスの人です、ってすまし顔してたんですけどね。

Ryo: ATS対策もされてたんですよね。

udon: こっち来たときは当然ATSなんて知らなくて。ウェブセミナーとかに出るうちに存在を知って、ジョブスキャンに課金して対策しました。ファイナンス職はポジションが少ないんで、1つ1つの応募が勝負なんですよね。

udon: 結局60社くらい出して、面接呼ばれたのが4社。オファーもらったのが今の会社です。73日、約200時間かけました。

Senna: こっちの平均は半年から9ヶ月ですから、ずいぶん早いですよ。

udon: 運が良かったですね。でも面接まで呼ばれりゃ受かるだろうっていう乱暴な自信はありました。

Senna: ファイナンスの面接ってどんなプロセスですか。

udon: まずリクルーター面接。志望動機と自己紹介、「AIじゃなく人間なのか」みたいなチェックですね。次がビヘイビアルで、実務者からどういうモデリングしてたか、レベニューのフォーキャストはどうするか、みたいなことを聞かれる。そのあとにケース面接があります。コンサルの面接と似ていて、あるお題をベースにしたビジネスケースを解く。僕の場合はコンシューマー向けアプリのフィールドでした。

Senna: ケース面接って慣れでどうにかなりますか。

udon: 書籍もあるし、練習すれば対策はできます。僕はコンサル時代は面接する側だったんで、逆にしばらくやってなくて「やべえ」と思って。現役コンサルのマネージャーの友達を5人くらい引っ張り出して模擬面接しました。おかげで本番はするっといけました。

北米のファイナンスで働くということ

Ryo: 北米で実際に働いてみて、日本との違いは感じますか。

udon: ファイナンスという立ち位置は結構いいなと思います。まずアクセスできる情報が多い。財務データはもちろん、事業責任者との議論にも入れるんで、上で何が話されてるかがわかる。「なんでこれをいつまでにやらないといけないのか」がちゃんと理解できるのは、仕事のモチベーションにつながりますね。

udon: あと、職種ごとの専門性がリスペクトされているのがいいです。日本のスタートアップだと「いい感じになんでもやってくれ」みたいなのがあったけど、こっちではファイナンスの人はファイナンスの仕事をするし、それが尊重される。「ファイナンスの人が言ってるからこうだよね」みたいなリスペクトがある。

Ryo: それはエンジニアもめちゃくちゃ似てます。日本だとエンジニアにもいろいろやらされるけど、こっちではプロとして任せてもらえる。

udon: そうですよね。で、こっちの方が職種によって年収の差はドラスティックだったりするけど、だからといってへりくだるとかは全然ない。カスタマーサポートの人とMLエンジニアで年収が3〜4倍違うかもしれないけど、みんな同じようにリスペクトし合ってる。そこはすごく働きやすいです。

Senna: ファイナンスってエンジニアよりレイオフされにくいんですか。

udon: ファイナンスが守られてるとは全然思わないです。ただ、僕がやってる仕事は社内のコミュニケーションが結構求められる立ち位置なんで、リプレイスしにくい要素はあるかもしれない。エンジニアだとうわっと倍増して景気が悪くなったら切る、みたいなことが起こりうるけど、ファイナンスのヘッドカウントが急に倍増するってことはそもそもないんで。

udon: コンサル時代から感じてたんですけど、意思決定を動かすのって結局エモい部分なんですよね。M&Aのデューデリジェンスも、会社が買いたいかどうかってだいたい決まってて。恋愛と一緒で、「あの子めっちゃ好きだけど軽々しく好き」って言えないときに、ロジカルな理由を外から持ってきてあげて背中を押す。「お前行けよ、コクれよ」って言ってほしいだけなんだから。そういうエモい部分の仕事は、AIうんぬんに限らず長持ちする機能なのかなと思います。

これからのキャリア — 「どこまでいけるか」

バンクーバーの自然

Ryo: これから長期でカナダにいたいと思いますか。

udon: 永住するぞっていう気持ちはないけど、今すぐ帰りたいとも思わない。ボードゲームみたいな感覚で、「どこまでいけるか」を試してみたいんですよね。バンクーバーにはビジネス系で高い位置にいる日本人ってあまりいないんで、じゃあ自分はどこまで食い込めるか。昇進とか、面白いポジションとか、年収もそうかもしれないけど、ゲーム的に面白い。

Senna: ファイナンスだったらトロントの方が良さそうですよね。

udon: いや、本当にそう思います。バンクーバーはジョブも飲み会もないですからね。自然しかない。就職が第一だったら絶対トロントの方がいいと思いますよ。ただ僕の場合は妻がBCITに来たのがきっかけだし、バンクーバーの気候が好きなんで。

Senna: ビザの面ではどうなんですか。

udon: 最初は妻の配偶者ビザで来て、今はC20っていう多国籍企業ビザで働いてます。会社がUSの企業でカナダにもオフィスがあるっていう枠組みで出してもらいました。配偶者ビザが切れるタイミングで「切れるんだけど」って言ったら、割とあっさり出してくれて。

Ryo: ワーホリから来て仕事ゲットして、そのままワークビザ出してもらえるっていうのは朗報ですね。

udon: それはあり得ると思います。ただ最初からビザなしの状態だと厳しいかな。僕も1年以上働いて「こいつ悪くねえな」って認めてもらった状況だったから出してもらえた部分はあると思います。

udon: 最近、毎週金曜にやってるモーニングコーヒーで妻と話したんですけど、「海外行きたいって僕の方が言ってたのに、結局自分でプランしてなかったよね。サンキュー」って言ったら、向こうは「この人はサバイバル能力が高いから、何かしらの手段で連れてきゃ仕事とか私より見つけるだろうと思ってた。作戦通り」って。

Senna: すごい。よく見てますね。


外資コンサルや経営企画の経験を持ちながら、駐在でも社内トランスファーでもなく、現地就職という形でカナダでのキャリアを切り拓いたudonさん。先輩がほぼいないなか、自身のスキルセットを現地市場に合わせて「ファイナンス」として再定義し、短期間でオファーにつなげた柔軟さと行動力がとても印象的でした。

準備と情報収集を怠らず、ポジショニングを柔軟に変えること。そして「面接まで呼ばれりゃ受かる」と信じて動き続けること。udonさんの経験は、駐在以外のルートで海外キャリアを模索している方にとって、具体的なヒントになるのではないでしょうか。

このインタビューはPodcastでも配信しています。ぜひ合わせてお聴きください。 Spotifyで聴く

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