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予想外の長期戦!しかし様々な挑戦が実を結び、無事カナダでのエンジニアとしての海外就職を達成したShoさん

公開日: 2025年2月25日
予想外の長期戦!しかし様々な挑戦が実を結び、無事カナダでのエンジニアとしての海外就職を達成したShoさん

今回は、カナダでの就職を成功させ、現在カナダの証券取引所 Canadian Securities Exchange (CSE) でソフトウェアエンジニアとして活躍するShoさんにインタビューをさせていただきました。

「経験も英語力もあるから、ワーキングホリデーで渡航すればすぐに仕事が見つかる」という渡航時の目論見がハズれてしまったShoさん。その中でShoさんは試行錯誤の末に、約190社に応募し、半年以上の就職活動を経て現在のポジションを獲得しました。

Shoさんの経験には、これから海外就職を目指すエンジニアにとって重要な示唆が多く含まれています。面接対策、ビザの選択肢、現地の雇用市場の変化など、海外就職のリアルなプロセスが詰まった本インタビューを、ぜひ最後までお読みください。

また、Shoさんはご自身のブログでも海外就職の経緯を詳しくまとめています本記事とは異なる視点で自身の経験を振り返っており、海外就職を考えている方にとって貴重な情報が詰まっていますので、ぜひこちらも合わせてご一読ください。


Senna: では、始めましょうか。今日はよろしくお願いします。

Sho: はい、よろしくお願いします。

Senna: さて、どこから始めようか毎回迷うのですが、最初にShoさんからご連絡をいただいたのが、去年の3月頃だったと記憶しています。

Sho: そうですね。そのぐらいのタイミングだったと思います。

Senna: 何をきっかけにご連絡をいただいたか、覚えていますか?

Sho: はい、もともとFrogの名前は聞いたことがあったのですが、最終的にはパンさんに紹介していただきました。

Senna: パンさんは日本からRubyエンジニアとしてカナダ企業での就労を達成された方ですね。他にも何名かご紹介いただいているので、こうした繋がりを作っていただけるのは本当に嬉しい限りです。Shoさんは現在フランス語学習のコースへ通うためのROワーホリで滞在されているんでしたっけ?

Sho: そうですね。学校自体はまだ始まっていませんが、ビザはすでに取得していて、現在ROワーホリで入国している状態です。

Senna: なるほど。英語力にある程度自信がある方が、フランス語のコースを経てROワーホリを取得するというルートは、今後人気が出るかもしれませんね。今日はそのあたりについても詳しく伺えればと思っています。

Sho: そうですね。私はまだ受講していないので、授業の内容自体については詳しくお話しできませんが、経緯についてでしたらお話できます。

Senna: 了解しました。それではまずはこれまでのキャリアについてお伺いしたいと思います。Shoさんはエンジニア歴が長いですよね?

Sho: そうですね。大体6年くらいになると思います。

Senna: 日本での最初のエンジニアとしての職場はEC系の会社と伺っています。

Sho: はい、Enigmoですね。BUYMAという海外通販系のファッションECサイトを運営している会社です。

Senna: なるほど。そちらの会社が最初のエンジニアとしての職場だったんですね。でも、経歴を見ると、その前はマーケティング分野に関わっていたようですね。

Sho: そうですね。マーケティングといっても、大学が経済学部だったので、その流れでビジネスデベロップメントやマーケティング関連のインターンシップをいくつか経験しました。

Senna: 経済学部に在籍されていたのは、日本の法政大学ですね?

Sho: はい、その通りです。その後、社会人になってから University of Nicosiaにも在籍しました。

Senna: University of Nicosiaはどの国の大学ですか?

Sho: キプロスにある大学で、オンラインで学位が取得できるプログラムを提供しています。現在は学位の発行を待っているところです。

Senna: なるほど。卒業予定が2025年1月と記載されているので、まさに最近ですね。専攻はブロックチェーン関連ですか?

Sho: そうですね。ファイナンス系の知識とブロックチェーン技術の両方を学びました。

Senna: すごいですね。オンラインでヨーロッパの大学に通いながら、学士号ではなく修士号を取得される予定なんですね。

Sho: そうなりますね。

Senna: なるほど。経歴のお話に戻らせていただくと、マーケティング畑のキャリアから、急にWebアプリケーションエンジニアとして就職されていますね。何か転機があったのでしょうか?

Sho: もともとものづくりに興味があって、独学でJavaScriptを学んでいました。 就職活動も一般的な経済学部の学生が選ぶような分野で行っていたのですが、「このタイミングを逃したら、一生この道に進むことになるだろう」と思ったんです。当時、ブートキャンプが流行っていたので、3ヶ月間のプログラムを受講しました。

Senna: なるほど。卒業間近にブートキャンプを受講し、その後Enigmoさんに入社されたんですね。

Sho: そうですね。卒業してすぐではなく、1ヶ月ほど間が空きましたが、5月頃にEnigmoへ入社しました。

Senna: 時系列を整理すると、マーケティングは学生時代のインターンシップで経験され、実際に新卒として採用されたのはエンジニア職だったということですね?

Sho: そうです。

日本でのエンジニア経験

Senna: つまり、文系出身のエンジニアとしてキャリアをスタートされたということですね。

Sho: そうですね。なので、マーケティングについては詳しくないですね(笑)。

Senna: なるほど、軽く関わった程度ということですね。ありがとうございます。では、エンジニアとしてはずっとWeb系の開発をされていたのでしょうか?

Sho: はい。もともとEC関連の開発をしていて、その後CRMのシステム開発にも携わりました。それを経て、海外に移住したという流れになります。

Senna: なるほどですね。EC関連の開発というと、2018年頃にはどのようなプラットフォームが主流でしたか?やはりShopifyですか?

Sho: そうですね。日本だとZOZOや楽天もありますが、Shopifyも当時から普及していたと思います。

Senna: なるほど。業務内容としては、どのようなEC開発をされていたのですか?プラットフォーム開発でしょうか?

Sho: はい、基本的にはECプラットフォームの開発に携わっていました。イメージとしてはZOZOのようなサービスですが、海外在住の方が商品を出品し、日本にいる方がそれを購入する形のC2Cマーケットプレイスでした。

Senna: なるほどですね。日本のエンジニアは、最初はSEやSIer経由でキャリアをスタートし、その後Web開発に移行する方も多いですが、Shoさんは最初からWeb開発にフォーカスされていたんですね。その理由は何かありますか?

Sho: もともと独学でJavaScriptを学んでいたことが大きいですね。それに加えて、ブートキャンプではRuby on Railsをメインに学んでいたので、学んだ技術を使える職場を探していました。その流れでWeb開発に進んだ形です。

Senna: なるほど。確かに、日本のブートキャンプではRuby系のカリキュラムが多い印象があります。その流れも影響しているんですね。では、Enigmoさんには2018年から2022年まで、約4年間在籍された後、フリーランスに転向されていますね。もともとフリーランスを目指していたのでしょうか?

Sho: もともと目指していたということでもないですが、フリーランスの働き方には以前から興味がありました。ちょうど大学院にも通い始めるタイミングだったので、仕事と学業を両立できるスタイルが良いと考えていました。

Senna: なるほど。大学院に通いながら、並行してフリーランスの仕事もされていたということですね?

Sho: はい。フルタイムではなく、週3〜4日程度の稼働でした。

Senna: すごいですね。ちなみに、大学院に進学された理由は何かありますか?

Sho: もともと経済学を専攻していましたが、より技術的な分野、特にコンピューターサイエンスやブロックチェーン技術を学びたいと考えたのがきっかけです。当時、ブロックチェーンが注目されていたこともあって、学部時代に卒業論文で仮想通貨に関する研究を行いました。その流れでより専門的に学びたいと思い、大学院に進学しました。

Senna: なるほど。文系出身のエンジニアの方は、大学院でコンピューターサイエンスを本格的に学ぶケースが多い印象ですが、Shoさんはブロックチェーンやデジタルカレンシーにフォーカスされたんですね。その理由は何かあるのでしょうか?FinTechの分野に特に興味があったのでしょうか?

Sho: そこまで明確に「FinTechに進む」と決めていたわけではないですが、新しい技術に触れるのが好きで、あまり人と同じことをやりたくないという気持ちがありました。そういった理由で、ブロックチェーンを専門的に学ぼうと考えました。

カナダ移住の決断

Senna: では、大学院時代にフリーランスの仕事も続けていたんでしょうか?

Sho: そうですね。卒業するまではフリーランスとして働き続けるつもりでしたし、実際に2年間続けてきました。ただ、このタイミングでカナダに来ることになったのですが、その理由も関連しています。

Senna: なるほど。カナダに来る決断をされた背景についてもお聞きしたいのですが、どのような経緯があったのでしょうか?

Sho: コロナ禍の影響もありました。実はコロナが始まった頃から慎重に状況を見ていて、海外に出るタイミングを図っていました。そして、ちょうど2年ほど経ったタイミングで状況も落ち着いてきて、「今なら海外に行ける」と判断し、2024年2月にカナダへ渡りました

Senna: なるほど。昨年の2月、つまり2024年の2月頃ですね。その頃に、パンさん経由でご連絡をいただいたので、そこに繋がるんですね。

Sho: そうですね。

Senna: では、フリーランスの仕事を続けながら、大学院に通い、さらにカナダへの移住を考えていたということですが、カナダを選んだ理由は何だったのでしょう?ほかにも選択肢はあったと思いますが。

Sho: もともと学生時代に2年間休学していた期間があり、そのうち1年間をトロントで過ごしました。そのとき生活していたこともあり、土地勘があったのが大きかったですね。

Senna: なるほど。ほかの国も検討されていましたか?

Sho: もちろん他の国も調べました。例えばオーストラリアも選択肢に入っていましたが、ワーキングホリデービザでは同じ雇用主のもとで働ける期間が最大6ヶ月と制限があったんです。Tech系の仕事だと6ヶ月は短すぎると感じたので、厳しいなと思いました。

Senna: しっかりとリサーチされたのですね。確かに、オーストラリアはファームステイなどなら問題ないですが、Tech系の仕事だと少々難易度が上がりますよね。国によってルールが異なるので、そのあたりの見極めは重要ですね。

Sho: そうですね。現実的に取得しやすいビザを考えたとき、ワーホリで収入を得やすくキャリアに繋がる国で絞ると、選択肢が限られてきました。その結果、英語圏で現実的に収入を得やすいカナダが最適だと考えました。

幾度も挑戦、過去の留学歴

Senna: そもそも、海外で働くということ自体は、どのくらい前から考えていたのでしょうか?

Sho: 学部生のときからですね。トロントに滞在していた頃から、将来的には海外で働きたいと考えていました。

Senna: 何歳の頃でしょう?

Sho: 21歳くらいだと思います。大学を2年間休学していたので、その期間にトロントに滞在していました。

Senna: ありがとうございます。ちなみに、私が個人的に気になっているのですが、大学生のときに1年間も留学するというのは、大きな決断だったのではないでしょうか?しかも休学までして。

Sho: もともと短期で海外に行ってみたいという気持ちがあって、最初は冬休みを利用して2ヶ月間だけカナダのトロントに滞在しました。

Senna: なるほど。

Sho: 当時は「2ヶ月あれば英語が完璧に話せるようになるだろう」と楽観的に考えていました。でも、実際に行ってみたら全然話せなくて、現実を突きつけられました(笑)。

Senna: 2ヶ月でペラペラになると思っていたら、コテンパンにされたと(笑)。

Sho: そうですね(笑)。日本にいるとTOEICの点数を取ることが重要視されがちですが、実際に英語を使って話すのは全く別の話だと痛感しました。

Senna: じゃあ、ある程度英語には自信を持っていた状態で渡航されたんですね?

Sho: そうですね。「そこそこできるだろう」と思っていたのですが、現地に行ったら全く通用しなくて、ショックを受けました

Senna: そういう経験をされたからこそ、再度1年間しっかりと留学しようと決めたのですね?

Sho: そうです。短期ではなく、次は長期で腰を据えて学ばなければダメだと思いました。それで半年後にもう一度、今度は1年間しっかりと学ぶためにトロントに戻りました

Senna: そういう経験をしている人、意外と多いですよね。「数ヶ月でなんとかなる」と思って行ってみたら全然通じなくて、その後本格的に学び直すという流れ。

Sho: そうですね。やはりいくら点数で英語力を測っていても、実際に現地で生活してみないと、語学の難しさは分からないと思いました。

カヌー旅 in アルゴンキンパーク

カナダへの再挑戦

Senna: なるほど。そしてその時の留学経験を得たあと日本で大学を卒業し、エンジニアとしての社会人経験を経て、去年の2月に再びカナダに来られたということですね?

Sho: はい。実際にトロントに渡ったのが2024年の2月頃ですね。

Senna: そのタイミングでFrogにもご連絡をいただいたと記憶していますが、その頃のお話は覚えていますか?

Sho: はい。確かそのとき、ROワーホリ(ビザや就職の選択肢)についてもご提案いただいたと思いますが、まだ具体的に決めていませんでした。

Senna: なるほど。そこから時間をかけて就職プランを考えていかれたということですね。

Sho: そうですね。最初の頃は割と楽観的に考えていて、ワーキングホリデーで来て、その後ワークビザ、さらに永住権を取るという流れを想定していました。

Senna: 確かに、2022年頃とかだとそのルートでスムーズに進んだ方も多かったですよね。

Sho: そうなんです。でも、実際に調べてみると、最近は状況がかなり変わっていて、当初の想定通りにはいかないことが分かりました。

Senna: なるほど。コロナ前後でカナダの移民政策や就労ビザの状況は大きく変わりましたしね。特にエクスプレス・エントリーのCRSスコアの基準が一時的に大幅に下がった時期もあり、その時は書類に名前を書けば永住権が取れていた時代もあったくらいです。

Sho: そうですね。調べていた記事や事例の多くが2022〜2023年頃のもので、その頃はまだ移住が比較的簡単だったのを理解していきました。その時の情報を鵜呑みにしてしまいました。そういった情報に触れていると**「経験もあるし、英語もある程度できるなら、すぐに仕事が見つかるだろう」と考えていたので、正直「これは余裕だな」**と思ってカナダに来ました。

Senna: Frogの説明会でもよく伝えることですが、採用においてスキルや経験が占める割合は2割くらいで、残りの8割は景気やビザの要件など、コントロールできない要因が影響してくるんですよね。

Sho: そうですね。渡航した2月の間にすでに勉強会に参加したり、自分で企業に応募したりしながら、「これは長期戦になるな」と感じ始めました。

Senna: なるほど。

Sho: ただ思えば兆候はあって、ちょうど渡航の1ヶ月前、つまり1月くらいに、日本に来ていたカナダの銀行で働くデータアナリストの友人と話す機会があったんです。その時に、**「カナダで仕事を見つけるのは相当大変だぞ」**と言われました。

Senna: それを聞いてどう思われましたか?

Sho: 「まあでも、自分は経験もあるし、英語もできるし、大丈夫でしょ」と、正直そのときは他人事のように考えていました

Senna: なるほど。でも、実際にカナダに来てみて、「あれ、思っていたのと違うぞ」と感じる瞬間があったんですね?

Sho: そうですね。実際にアプライを始めたり、勉強会で現地のエンジニアと話したりする中で、「ああ、彼が言っていたのはこういうことか」と実感しました。

Senna: その時点でワーキングホリデービザはもうアクティベートしていたということですね?

Sho: はい。入国時にワーホリビザを有効化したので、滞在期限が少しずつ減っていく状況でした。

Senna: なるほど。つまり、就職活動を進めながらも、ワーホリビザのカウントダウンが進んでいくという状況だったわけですね。そうなると、少し焦りも出てきたのではないでしょうか?

Sho: そうですね。自分が考えていた状況と現実が少し違うことに気づき、6月頃からROワーホリ(就労ビザや永住権取得の計画)についても真剣に考え始めました

190社を超える企業へ応募

Senna: 2月にカナダに来て、そこから約4ヶ月間はひたすら企業にアプライしていた感じでしょうか?

Sho: はい。基本的にはずっと応募を続けていました

Senna: なるほど。そのあたりの話は、これからカナダで就職を考えている方にとっても気になる部分だと思います。具体的にどのくらいの企業に応募されたのでしょうか?

Sho: ちょうど最近、記事を書くためにまとめたのですが、合計で192社に応募しました

Senna: 192社ですか! それはすごいですね。

Sho: はい。でも、そのうちリジェクトされたのが104社で、返事がまったくなかったのが87社でした。

Senna: つまり、実際に面接まで進めたのは、かなり少なかったということですね?

Sho: そうですね。日本の就職活動とは全然違うと、この時実感しました。

Senna: なるほど。でも、それだけの数を応募し続けるというのは、精神的にもかなり大変だったのではないでしょうか?

Sho: そうですね。ただ、過去にシンガポールでインターンを探したときも100件ほど応募して、ようやく1〜2社から返事がもらえた経験があったので、精神的にということでしたら耐性はついていたと思います。

Senna: そうなんですね。シンガポールも競争率が高いですもんね。では、就職活動を続ける中で、何か特に苦労したことや工夫したことがあればお聞きしたいです。

Sho: そうですね。まず感覚的には8月頃から面接に呼ばれる回数が増えたな、という印象がありました。

Senna: なるほど。面白いですね。Frogのメンバーでも、8月から10月くらいにかけて面接の機会が急激に増えたという方が多かったんですよ。

Sho: そうなんですか。

Senna: 以前、Frogでインタビューさせていただいたヤンマーさんという方も、英語もできて、経験もある、永住権も持っているにも関わらず、5ヶ月間全く音沙汰がなかったとおっしゃっていました。でも、9月から10月にかけて急にオファーが増えたそうです。

Sho: そうですね。実際、景気や採用のタイミングに左右される部分が大きいと思います。

Senna: なるほど。では、2月にカナダに渡航して190社以上に応募されたわけですが、8月から9月にかけて通過率が上がったということですね。その間、応募の仕方などに何か変化はありましたか?

Sho: 実は、特に何かを大きく変えたわけではないんです。

Senna: そうなんですね。やはり景気や採用の波が影響していたということでしょうか。

Sho: そう思います。

現在の仕事内容

Senna: なるほどですね。現在の会社は Canadian Securities Exchange (CSE) という会社さんだと思いますが、具体的にどのような事業をされている企業なのでしょうか?

Sho: TSX(Toronto Stock Exchange) というカナダの大手証券取引所があり、日本でいう東京証券取引所(東証)のような位置づけです。私の勤務する CSE(Canadian Securities Exchange) も証券取引所を運営している会社ですが、TSXより小規模で、中小企業向けのストックマーケットを提供している 取引所になります。

Senna: つまり、カナダ版の「2番手の証券取引所」ということですね?

Sho: そうですね。規模で言うと2番目か3番目くらいの位置づけになると思います。

Senna: なるほど。証券取引所といえば、日本だとこういう業界はSIerや外部のシステム開発会社に委託することが多い印象がありますが、カナダではエンジニアチームを社内に持っている企業が多いということですかね?

Sho: そう思います。うちの会社も、証券取引所としての業務を行いつつ、社内にエンジニアリングチームを持っています。 会社全体の規模は 約80人 で、そのうちエンジニアは 5人程度 です。

Senna: 5人のエンジニアチームで開発を回しているんですね。 大手証券取引所としては小規模に聞こえますが。

Sho: そうですね。でも、カナダではこのように小規模なチームで内製開発を行う企業は少なくないように思います。

Senna: なるほど。ちなみに現在、入社してどれくらい経ちましたか?

Sho: 5ヶ月くらいですね。

Senna: 最初の3ヶ月間は試用期間(プロベーション) だったと思いますが、何か特別な評価プロセスなどはありましたか?

Sho: 特に「試用期間が終わったから何か変わる」ということはなかったですね。一応、3ヶ月経ったときにチームでランチに連れて行ってもらったくらい です(笑)。

Senna: なるほど。プロベーション期間はあるけれど、実際にはあまり意識されていない というのはよく聞く話ですね。

Sho: そうですね。あくまで形式的なものだと思います。

勤務形態と開発業務

Senna: ちなみに、現在の勤務形態は リモート ですか?それとも ハイブリッド勤務 でしょうか?

Sho: ハイブリッド勤務 ですね。自分の場合は、オフィスも割と近いのでほとんど出社しています。

Senna: なるほど。では、現在担当されている業務についてお聞きしてもよろしいでしょうか?もちろん話せる範囲で構いません。

Sho: そうですね。詳細は言えませんが、上場企業向けのアプリケーション開発を担当しています。 現在取り組んでいるプロジェクトでは、フロントエンド、バックエンド、サーバー周りまで、一通り私が担当 しています。

Senna: すごいですね。5人のエンジニアチームの中で、各自の担当領域は分かれているのですか?

Sho: そうですね。ある程度役割分担は決まっています。ただ、チームの規模が小さいので、1人が複数の領域をカバー することもあります。例えば、1人はマネージャーとしてプロジェクト管理 を担当しています。

Senna: なるほど。SaaS企業のような開発スタイルが主流になりつつありますが、証券取引所のシステム開発となると、開発プロセスも異なるのではないか と思います。いわゆる スクラム開発 や アジャイル開発 とは違う形でプロジェクトが進むのでしょうか?

Sho: いえ、意外と近い形で進めていますね。チームが小規模なので、大手企業のように厳格なスクラム体制ではありませんが、スクラム的な要素は取り入れています。

Senna: なるほど。やはりチームの規模に応じて柔軟に開発プロセスを適用している のですね。

Sho: そうですね。

フリーランスとの違い、金融業界の特性

Senna: これまで フリーランスとしての経験 も長かったと思いますが、企業の内製チームで働くことになって、フリーランス時代との違いを感じることはありますか?

Sho: うーん、実はあまり大きな違いは感じていないですね。ただ、金融系ということもありセキュリティ面は非常に重視されています。 例えば、新しいシステムを導入しようと提案しても、すぐにはOKが出ず、かなり慎重に検討される ことが多いですね。

Senna: なるほど。金融業界ならではの厳しさ がありますよね。特に 証券関連のシステムでは、少しのミスが大きな問題につながる可能性がある し。

Sho: そうですね。その分、開発の自由度は若干低い ですが、慎重なプロセスを踏むのは仕方がない部分でもあります。

Senna: ありがとうございます。仕事の内容についてもイメージが掴めてきました。

日本とカナダの職場環境の違い

Senna: これまでのキャリアの中で、証券取引所のシステムを扱うのは今回が初めてですよね?

Sho: そうですね。ただ、最初に働いていた ECサイトの開発 も自社サービスでしたし、その後の CRMツールの開発 も自社サービスだったので、業務の進め方としてはそこまで大きな違いは感じませんでした。

Senna: なるほど。では、日本での就業経験と比べて、違いを感じる点はありますか?

Sho: 一番の違いは 「言語」 ですね。英語が共通言語 になりますし、業界自体が異なる部分もあるので、その点は影響しています。あともう一つ大きな違いとしては、勤務時間の感覚 ですね。日本では夜7時や8時になってもオフィスで人を見かけますが、こちらでは5時にはほとんどの人が帰ります。

Senna: それは大きな違いですね。金曜日の午後3時くらいには、もうオフィスに誰もいない、みたいなこともありますよね。

Sho: そうですね。日本の企業とは働き方が違うなと特に実感する部分 です。

応募の進捗と面接の流れ

Senna: ありがとうございます。では、応募の進捗について詳しくお聞きしたいのですが、最終ラウンドまで進んだのが3社ということですが、実際にレジュメが通過した数はどのくらいだったのでしょうか?

Sho: レジュメが通過したのだと22社ですね。スクリーニングや最初の電話面接があった企業の数を含めて22社です。

Senna: なるほど。最終的に残った3社の傾向について教えていただけますか?

Sho: 1社目はバンクーバーにあるHealthTechの会社、2社目はトロントのFinTech企業、そして3社目が現在働いているファイナンス関連の企業です。

Senna: どの企業もRuby on Railsを使っている企業だったのでしょうか?

Sho: そうですね。基本的に、自分の得意な技術スタックを活かせる企業に応募していました。Ruby on Railsを使っている企業を中心に探していたので、その点では共通していました。

Senna: では、最終的にオファーをもらったのが今の会社ということですね?

Sho: はい、そうです。

面接対策と技術試験

Senna: ちなみに、面接対策として特に意識されたことや、実際にどんな質問が出たのか教えていただけますか?

Sho: そうですね。面接は一般的なビヘイビアル・インタビュー(行動面接)がありました。その後、技術試験としてホームワーク形式のコーディング課題が出され、それを一定期間内に提出するという流れでした。

Senna: なるほど。その後、提出した課題についてフォローアップの面接があった感じでしょうか?

Sho: はい。その後、課題についての質問や、それに関連する技術的な知識についての面接がありました。その後に最終面接という流れでしたね。

今後の予定、ROワーホリの選択

Senna: では、フランス語のROプログラムを選んだ理由についてもお聞きしたいのですが、もちろんROワーホリ獲得のためではあると思いますが、それにしてもなぜフランス語を学ぼうと思ったのでしょうか?英語の勉強にはもう十分な自信があるからですか?

Sho: そうですね。英語については語学学校で学ぶことはもうあまりないかなと感じていました。それに、言語を学ぶこと自体が好きなので、新しい挑戦としてフランス語を選びました。実は以前、韓国語も学んでいたことがあるので、新しい言語に対して特に抵抗感はないんです。

Senna: なるほど。では、ROワーホリのビザもすでに有効化されているということですし、順調に進めば、来年の2月くらいまでROワーホリが使えるということですね。

Sho: はい、その通りです。

ビザの選択肢

Senna: とはいえ、ROワーホリのタイムリミットまであと1年程だと思いますが、その後のビザ面の予定はどう考えていますか?

Sho: そうですね。来年以降のことはまだ分かりませんが、一応 2つのプラン を考えています。
1つは、現在のPR(永住権)スコアが470くらいなので、カナダでの就労経験が1年を超える9月には500を超える見込みです。その場合、PRの申請が可能になるかもしれないというのが一つのプランです。

Senna: それは大きなチャンスですね。

Sho: もう1つのバックアップとして、会社にビザサポートを依頼していて、今回 理系の修士号を取得することで、T52ビザ(CPTPP)を利用できる状態 になっています。

Senna: なるほど。どちらのルートでも 永住権の取得を視野に入れながら準備 されているのですね。

Sho: そうですね。最悪の場合、フランス語でポイントを上げる という選択肢も考えています。

Senna: ただ、フランス語の場合、IRCCのスコア換算では CLB7以上 が求められますよね?

Sho: そうですね。その基準をクリアするのは簡単ではありませんが、1年後には達成できるように頑張りたいと思っています。

Senna: ちなみに、LMIAの50点なしでCRSのスコア470を超えるということですが、それは 修士号の換算スコアが加算される からですか?

Sho: はい、修士号の加算 でスコアが上がるので、その分を見込んでいます。

Senna: それにしても、昨年の2月に 「ワーホリでカナダに行ってみよう」 という軽い気持ちで来たはずなのに、今では PR申請やT52ビザなど、さまざまな選択肢を持つまでに至った のはすごいことですね。もともと計画していたんですか?

Sho: いや、正直 すべて結果論 ですね。最初からここまで計画していたわけではなく、たまたま以前からやっていたことが、PRやT52ビザの条件にうまく合致した という感じです。

Senna: Frogのコミュニティ内でも、T52ビザの申請ができずに苦労されている方は多いので、非常に理想的な流れに見えます。特に、Frogの中にはT52のためにカナダのカレッジに進学する方も多いくらいなので、それが結果的にすべて線でつながるのは本当に素晴らしいですね。

Sho: はい。結果的には 良い方向に進んでいる と思います。

Senna: スティーブ・ジョブズの 「Connecting the dots(点と点がつながる)」 の話ではないですが、振り返ると いろいろなことがつながっていた ということですね。

Sho: そうですね。たまたま振り返ってみたら、すべてがつながっていた という感じです。

キャリア面での展望

Senna: では、最後に今後の展望についてお聞きしたいと思います。永住権取得の目標はよく分かりましたが、キャリアとして今後どのような展望をお持ちですか?

Sho: そうですね。永住権が取れれば、より自由度が増し、就職活動もしやすくなると思うので、次のステップとしてアメリカの大手企業に挑戦も視野に入れています。

Senna: なるほど。アメリカの大手企業というと、テックジャイアントも視野に入っている感じでしょうか?

Sho: はい、そういった企業も視野に入れつつ、挑戦したいと思っています。

Senna: ポジションとしては、引き続きソフトウェアエンジニアとしてのキャリアを続ける予定ですか?

Sho: そうですね。当面はエンジニアとして経験を積んでいきたいです。

永住権取得とその後の計画

Senna: 永住権取得のスケジュールを考えると、1年の就労経験が9月に満たされる予定ですよね。そのタイミングでエクスプレスエントリーのスコアが上がると考えると、順調にいけば半年後には永住権が取得できる可能性もありますね。

Sho: そうですね。計画通りに進めば、来年には永住権が取得できるかもしれません

Senna: では、もしかすると来年にはアメリカの企業で働いている可能性もあるということですね。

Sho: はい、あくまで可能性としてですが。

Senna: それは楽しみですね。その時は、ぜひもう一度インタビューさせてください。

Sho: 是非是非(笑)。

Senna: どんな人になっているのか、今から楽しみですね。このインタビュー記事を**5年後に振り返ったら、「こんな時期もあったね」**と言えるようになっているかもしれませんね。

Sho: そうですね。もし何も達成できていなかったら恥ずかしいですが(笑)。

海外就職を目指す人へのアドバイス

Senna: では最後に、これからカナダやアメリカへの渡航を考えている方々に向けてアドバイスをお願いします。

Sho: そうですね。とにかく準備をしっかりしてほしい、ということですね。

Senna: 具体的にはどのような準備が重要だと感じましたか?

Sho: 面接対策はもちろん、市場調査や求人の動向をしっかり把握することも重要です。私自身、何の準備もせず裸一貫でカナダに来てしまったので、その分苦労しました。実際にカナダに来る前にできる準備はたくさんあると思うので、できる限りのことをしてから渡航するのが良いと思います。

Senna: 確かに、その通りですね。一昔前のようにワーホリだけで楽に就職できた時代もありましたが、今はそう簡単ではないですからね。

Sho: そうですね。運よく私は仕事を見つけることができましたが、それでも6か月かかりました。その間、生活を支えるだけの貯金があったからこそ耐えられた部分もあります。

面接対策と事前準備の重要性

Senna: 逆に、もし渡航前にもっと準備していたら、6か月もかからずに就職できていたと思いますか?

Sho: そうですね。それこそ、最初に受けた面接はリファラルを頂いたものでしたが、事前の準備を入念にできていれば、異なる結果になっていたかもしれません。

Senna: なるほど、準備というと、例えばコーディングや面接対策ということですか?

Sho: そうですね。考え方自体を説明することはできていたのですが、面接の進め方や時間配分の計画が甘かったと振り返って思います。面接では「こういうことをやります」と説明するだけで、例えば実際のリファクタリング作業に十分な時間を確保できませんでした。**事前に模擬面接をして、「最初の何分で説明し、その後の時間でコーディングする」**という計画を立てていれば、もっとスムーズに進められたと思います。

Senna: なるほどですね。では、面接を多く受けている人の経験談を事前に聞いたり、模擬面接を実施したりすれば、結果が変わったかもしれないということですね?

Sho: そうですね。事前に情報収集をしたり、「Pramp」などの模擬面接プラットフォームを活用して練習しておけばよかったと思います。

Senna: やはり事前準備は徹底すべきということですね。これから海外就職を目指す方には、特に意識してもらいたい部分ですね。

Sho: そうですね。

トロントの冬とカナダ横断

Senna: ありがとうございます。ちなみに、他の州に移ることは考えませんでしたか? 例えばアルバータやBC(ブリティッシュ・コロンビア)など。

Sho: 実は、他州には行ったこと自体はあって、トロントからバンクーバーまで自転車で横断したことがあるんですよ。それで都市の規模の感じとかを考えるとトロントかなと。

Senna: え!? 自転車で!?

Sho: はい。

Senna: いやいや、信じられないです。何日くらいかかったんですか?

Sho: 77日間、約2か月半ですね。

Senna: すごい……。なぜ横断しようと思ったんですか?何か特別な理由があったんですか?

Sho: いや、特に大した理由はないんです(笑)。当時、学生だったのですが、周りの友人たちは卒業後にバックパッカーとしてヨーロッパを旅行したりしていました。でも、自分にはそんな資金がなかったので、「自転車なら安く行けるのでは?」と思って挑戦しました。

Senna: いや、すごいな……。そんな発想にはなかなか至らないですよ(笑)。 しかも、77日間もかけて。

Sho: 友人に話したら「絶対無理だ」と言われたので、「いや、絶対無理なことはないだろう」と、対抗心が燃えてしまって(笑)。

Senna: 負けず嫌いなんですね(笑)。 でも、実際のところ、トラブルなどはなかったんですか?楽しかったですか?

Sho: いや、1週間に1回くらいは死にかけていました(笑)。

Senna: いやいや、それはヤバいですよ(笑)。どんなトラブルがあったんですか?食べ物の問題ですか?

Sho: それもありますし、一番大変だったのは気候ですね。出発したのが5月だったので、「暖かいだろう」と思っていたのですが……

Senna: ああ……なんか嫌な予感がしますね(笑)。

Sho: 実際は、想像以上に寒くて地域によっては氷点下ということもあって、夜は凍えそうになりました。

Senna: いや、それはかなり厳しいですね……。

Sho: そのときも準備不足で、「まあ何とかなるだろう」と思っていたのですが、実際はかなり大変でした。

Senna: なんか聞いたことある話ですね(笑)。準備不足で挑んでしまうのは昔からの癖なんですか?

Sho: そう言われてみれば、性格の面もあるかも、あのときから変わっていないですね(笑)

Senna: でも、それを乗り越えた経験が、今の海外就職の挑戦にもつながっているんでしょうね。すごい話を聞かせていただきました! 今日はありがとうございました。

Sho: こちらこそ、ありがとうございました。

カナダ横断最終日 ビクトリアにて

いかがでしたでしょうか?

Shoさんの経験は、単なる「海外就職成功ストーリー」ではなく、計画と挑戦、そして試行錯誤の連続の中で道を切り開いてきたリアルな記録でした。

190社以上に応募し、半年以上の就職活動を経てカナダでのキャリアを築いた彼の姿勢からは、「努力と継続の先にしかチャンスはない」ということを強く感じます。特に、準備不足から学んだ教訓や、面接の進め方や時間配分の重要性といった具体的なアドバイスは、これから海外就職を目指す方にとって大きなヒントになるはずです。

また、彼のトロントからバンクーバーまでの自転車横断という驚くべき経験は、単なる冒険談ではなく、「困難な状況でも前に進み続ける力」の象徴のように感じられました。この精神があったからこそ、彼はカナダでのキャリアを手にし、さらにはアメリカの大手企業への挑戦を視野に入れられるまでになったのではないでしょうか。

海外就職は、情報収集・準備・行動のすべてが揃ってこそ成功に近づくものです。本記事が、これからカナダ・アメリカでのキャリアを目指す皆さんにとって、一歩を踏み出すための参考になれば幸いです。